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8月31日~9月3日の4日間にわたって開催されたICCサミット KYOTO 2020。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。今回は、リアルテック・カタパルトの模様をお伝えします。私たちの未来の生活を変えるテクノロジーが次々と登場します。ぜひご覧ください。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2021は、2021年2月15日〜2月18日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
胸熱。リアルテック・カタパルトが、正直、こんなに面白いものだとは思わなかった。
今まで取材する機会がなかったため、見る機会も無かったリアルテック・カタパルト。冒頭のオープニングムービーでは、リアルテックファンドがサポートしているさまざまな企業のサービスがシームレスにつながれた映像が流れ、この映像の内容からワクワクする。
「世界を変えよう、技術の力で、絶対に。」
映像の最後のメッセージが、同じ会場で直前に行なわれていたスタートアップ・カタパルトの、授賞式の雰囲気を一新する。新たなチャレンジャーたちが、決意を固めて登壇を待つ。
続いて流れる、このカタパルトをスポンサーするKOBASHI HOLDINGSの映像もイメージを喚起する。白い球体に赤い粒が落ち、それが血管のように白い画面に張り巡らされていく。
これがリアルテックのスケール感。身近な課題解決で始まったとしても、それが万国共通の課題であれば、テクノロジーは非言語ゆえ、世界へと一気にスケールすることがありうる。解決度が高く磨かれたテクノロジーほど、切実なニーズを求める人に刺さり、国境を超えて求められるものとなる。
そして、ナビゲーターを務めるリアルテックファンド/ユーグレナの永田暁彦さんのスピーチ。永田さんの熱の込もったプレゼンは、リアルテックが今こそ必要とされていることを訴えて、信じさせるに十分な説得力を持つ。おそらく会場に集まった人たちは、そんなことは十分承知だ。
「コロナ禍だからこそリアルテック。コロナを治す可能性があるのも、ウイルスを隔離するのも、空気を清浄する、遠隔で人を治すのもリアルテック。今の時代だからこそ私たちはテクノロジーに回帰すべきです。
リアルテックファンドが開始して5年。日本のベンチャー投資は変化してきました。
ベンチャー投資は5年前、ITが54%でしたが、今は47%です。IT以外の領域が過半を取り返し、バランスが変わってきました。これからこの先、新たなチャレンジをしたいと思います。
それは、リアルテックの新たなチャレンジです。
『地方から世界へ飛躍するユニコーン企業を創出する』」
永田さんは1号、2号ファンドでの経験値と、地方ベンチャーが実績も出てきて注目を集めている現状、投資は東京のベンチャーに集中している課題の解決に、リアルテックファンドで乗り出すという。
「本当は価値があるのに、理解されないベンチャーが今日は集まっています。
次の5年のコミットは、地球と人類の課題を解決するために、地方からリアルテックユニコーンを生み出すことです。みなさんのふるさとからユニコーンを。そのために、東京から人、金、意識を向ける。これによって、日本は変わります。
今日登壇するベンチャーが、未来のみなさんの生活を変えるベンチャーになると応援していただければと思います」
永田さんが最後に訴えたのは、テックベンチャーが今、何よりも必要としている投資をお願いすること。今は注目されていなくても、素晴らしい技術を持つベンチャーは世に出たら、必ず価値が上がる。集まったVCに、ぜひ投資してほしいと率直に訴えかけた。
登壇8社をご紹介
ここからは、登壇企業について1つずつ紹介していこう。リアルテックでこんなことができるのかという驚きと発見の連続で、いずれも互角に面白く、見応えがあった。
リアルテックは医療従事者のリソースを拡張する
アドダイスの伊東 大輔さんは、まさに今、必要とされている医療サービスをプレゼン。いまだ収まらない新型コロナウィルス感染症での医師不足、医療崩壊の懸念が続くなか、トリアージAI診断支援プラットフォームで、医師のキャパシティが5倍以上増えること、患者の急変リスクを見つけるウェラブル端末の開発を発表した。
現状のリソースを拡張できる機能は、リアルテックの出番といえるだろう。今すぐほしい課題解決のテクノロジーに、現場の医師から熱望の声があがっているそうだ。
リアルテックはリハビリの機会を拡げる
年間8万人が亡くなり、近年倍増している心不全からのリハビリ支援サービスを紹介したグレースイメージング中島 大輔さんは医師。従来の複雑なかつ非科学的な側面が残る運動療法のリハビリを、疲労物質ウェラブルセンサを用いたハードウェアで、簡便かつ定常的に提案でき、患者負担が従来約1,200万円のところを6分の1のコストで実現する。
がんに次ぐ日本人の死因の第2位は心疾患。後遺症の残ったときの予後を大幅に改善するサービスは、患者、医療側双方の負担を減らし、歓迎されるはずだ。現在患者の7%しか受けていないというリハビリを選択する人が増え、その後のQOLが改善するであろうことは想像に難くない。
リアルテックはアプリで農家を救う
農業情報設計社の濱田 安之さんは、農地のさまざまな作業で必要な「まっすぐに走る」技術をスマホのGPSガイダンスアプリで提供し、100万ダウンロードを突破するなど世界のトップシェアを誇る。ICC登壇でブラジル・ベンチャー・キャピタルの中山充さんと出会ってブラジルを訪問、ローカライズして飛躍的にサービスを伸ばしている。
高価なハードの導入が不要で、手軽なアプリで提供するものであるため、海を超えるスピードが速かったサービス。「まっすぐ走る」技術が、資材や労働を大幅に減らす威力を、日本国内の99%の農家はまだ知らない。
リアルテックはプラスチックを循環させる
3Dプリンターの専門家であるエクストラボールドの原 雄司さんは、遅い、サイズが小さい、材料費がかかるといった製造課題を解決する3Dプリンターを考案。従来はメーカー指定だった材料をリサイクル材料でも可能とし、多種生産が可能なモバイル仕様のコンテナ型大型プリンターを完成させた。
環境問題の視点から目の敵にされているプラスチックを循環させ、大型化かつ時間を大幅にスピードアップしたことで、車のコンセプトモデルやデザイン家具などにも活用できる。中小規模が多いアジアの工場には、将来はアームロボットでの導入も可能にすることをにらむ。
1つのイノベーションには、社会実装していくためにこうした研究開発・改善が欠かせない。実装レベルに、より近づく大きな一歩を感じさせるプレゼンであった。
リアルテックは新たな水インフラを実現する
水処理×AIとIoTのスタートアップWOTAの前田 瑶介さんは、宇宙ステーションのように水資源が制限された環境での水再生技術をもつ。昨年台風19号の影響で断水となった長野市全域の水需要を1.5ヶ月カバーした実績がある。
▶台風19号での豪雨災害から1ヶ月。「WOTA」が15企業・団体との連携で実現した過去最大規模の入浴提供と今後の展望について(WOTA)
新形コロナ感染症の拡大を受けて開発したのが、ポータブル手洗いスタンドWOSH。既存の水処理プラントの10万分の1の規模で水循環が可能で、電源さえあれば、水道がなくても手洗いとスマホの消毒ができる。消毒よりも手洗いのほうが感染対策として有効といわれており、日本ではコンビニ数以上の設置を狙う。
WOSHは水道管埋設と比較して飛躍的に安価に供給できるため、まずは現在のインフラを補完しながら、やがては水道を代替していくことを想定する。夢ではなく実現するという確信に満ちた口調が、日常生活を本当に刷新しそうな、ワクワクするような未来を描く。
リアルテックは建築現場で人とともに働く
人とともに働く建設ロボット実機とともに登場したのが、建ロボテックの眞部 達也さん。2012年まで鉄筋工の職人だった眞部さんが経験した現場の課題で生まれたのが、手作業を代替する「トモロボ」だ。
夏場は50度にもなるという過酷な労働環境、そしてその現場では、あと5年後には35万人超の作業員が不足するといい、日本は50兆円の建設産業で創る力を失いつつあるという。
六本木ヒルズなら3212万箇所ある床面の鉄筋の交点結束は、人力ならば2600人を必要とする。「トモロボ」は600台でそれが可能になり、建築での床作業の37%が人力から開放される。改善により機能が上がっていく様子、作業ビジュアルの面白さとともに、これが人間で行なっていた作業かと思うと、テクノロジーは人間を助けてくれるという事実に改めて気付かされる。
リアルテックは義肢装具を届けて、命を救う
世界で義肢装具を必要としている人は1億人以上いる。インスタリムの徳島 泰さんは、青年海外協力隊に赴任した経験から、フィリピンで栄養状態が悪いために、糖尿病とその予備軍の多いこと、脚を失っても義足がないため働けず、存在意義を失い、死を選ぶ人がいることを知った。
平均義足の価格は約50万円で、先進国でなければ、ほぼそれを手にすることができない。高度な技術と施設が必要とされるため製造も困難で、途上国では解決不可能な問題とされているその問題を、インスタリムは独自の3Dデジタルファブリケーションを開発して可能とした。義足1本は4万円で1日でできる。
義肢装具入手へのハードルを下げるとともに、設計や製作・機能の向上、経済的・地理的な医療格差まで解決しようとする心意気。テクノロジーは人間の尊厳までを救うのだ。
リアルテックは野菜の生産性を5倍アップする
プランテックス山田 耕資さんは、完全クローズド(密室)型で環境制御を行う植物工場ででGAFAを超えると意気込む。異なる装置でも再現可能な、光合成速度のようなインプット(環境パラメータ)と製品のアウトプットなどで数式化して、”完全制御の量産レシピ”を作成する。
このレシピによって面積生産性は従来の5倍になり、低コストで野菜を育てることができるうえ、機能性を強めた新しい野菜や薬品を生み出すことも可能となる。
将来的には、植物工場のプラットフォームを提供するビジネスだけではなく、医薬品や食品、化粧品などの分野を巻き込みながら、量産で得られた利益から研究開発への循環を生む未来を目指す。日本のエンジニアの緻密さが世界と戦う強みとなり、新しい産業を生むチャンスだという。
◆ ◆ ◆
すべての登壇者がプレゼンを終えた後、KOBASHI HOLDINGSの坂下 翔悟さんは、ハードウェアスタートアップのモノづくり問題を紹介。KOBASHIでは110年以上の量産・モノづくりの経験から、失敗の少ないノウハウ共有での支援を提案し、よりよい世界を創るために仲間たちをサポートしたいと熱く語りかけた。
審査員たちの感想は…
京セラ稲垣さん「みなさん社会貢献を意識していらっしゃって感心します。もちろん利益も必要ですが、そのうえで社会にどう価値を出していくか。それができるのがスタートアップの力だと思います」
パナソニック深田さん「社会課題の解決で、グローバルのインフラになる可能性があるもの。モノづくりでもITを駆使しながら、インフラを目指すというのがわかりました。
我々は家電ですが、登壇したみなさん×家電という可能性が見えました。お気に入りはWOTAさんです」
アーキタイプ中嶋さん「お金があれば全部投資したいです。どれも世界を獲れる可能性がある。あとで個別に相談させてください」
KOBASHI小橋さん「前回からスポンサーさせていただいていますが、過去に増して、今回は非常にレベルの高いプレゼンだったと思います。これから地方からもどんどんスタートアップを排出していきたいですが、我々も一緒にやっていきたいなと思います」
7分では伝えられない熱い想い
順位は既報のとおりだが、後日投票用紙を確認すると、プレゼンしたすべての企業に票が入っていた。いずれの企業も誰かしらの心にインパクトを残し、共感を呼んだという証拠だろう。
優勝を飾り、コメントを求められたWOTA前田さんには、優勝の感激よりも、まだまだ言いたいことがあるようだ。
「7分間では、言い切れなかったことがあります!
今の水インフラは、参入にリスクが大きすぎるビジネスです。現在の形では、投資回収に7、80年以上かかるビジネスです。
水道管をなくすことで、我々なら10年〜15年で回収できます。これを社会に実装可能なインフラにしたい。お子さんや未来の世代ために、水インフラを作りたいところに、応えられる技術があるという状態を作っていきたいのです。
水処理は、世界のどこよりも日本の技術が高いのですが、その輸出ができていません。
我々の技術の中には、さまざまな日本企業の技術が入っています。それをパッケージングして、海外で、新たなタイプの水インフラとしてやっていきたいです。ご協力、応援のほどお願いします!」
最後の最後まで熱かった。こんな熱こそが、「今の当たり前」を変え、未来を作っていく力になるのだろう。
初開催リアルテック・ラウンドテーブル
その後にランチを挟んで、会場を移して行なわれたリアルテック・ラウンドテーブルは、話したいテーマを挙手で募り、話したいテーマで集まって語り合うというもの。そこで出されたテーマは6つ。
- 初めての資金調達(アドダイス伊東さん)
- 大企業への営業・提携の攻略方法(MI-6木嵜さん)
- ニーズ開拓・新規マーケットをどう開拓するか(メタジェン福田さん)
- R&D、新規開発をいかにスピードアップさせるか(WOTA前田さん)
- コミュ力に代わるテクノロジーとは(オリィ吉藤さん)
- 人材不足が常態化。シェアや流動性を高められないか?(エクストラボールド原さん)
同様にラウンドテーブルを行っているCRAFTEDカタパルトは、モノづくり共通の悩みや、伝え方などの共通項で熱く盛り上がるのだが、ここリアルテックは研究開発で独立独歩をゆく人たち。初めは盛り上がらないのでは?と懸念したが、最初の緊張が溶けると次第に議論が盛り上がっていったようだ。
「初めての資金調達」について情報を共有しあうアドダイス伊東さんのグループ
意識、決済システムなどすべてが違う大企業との組み方をディスカッション
新しい価値にマーケットを創造するには?グループは、メタジェン福田さんの相談会に
リアルテック・カタパルト優勝WOTAの前田さんグループは、開発のスピードアップを議論
テクノロジーでコミュ力を補強したいオリィチーム。楽しそうに話し合っていたが……。
「ほぼ一人で開発するはめに」と人材不足を嘆くエクストラボールド原さんグループ
おそらくフェイスシールドがなければ、さらに議論は盛り上がったのではないだろうか。人気のテーマでは、大人数グループとなってしまい、話が拡散する様子も見受けたが、「すべて僕なりの回答がある」という永田さんが複数グループを渡り歩き、会話を盛り上げていた。
各グループの議論の内容は
たっぷり議論したあとは、最後に各グループからの発表となった。
アドダイス伊東さん「資金調達は、経営者が作りたい夢の世界を実現するためにあるので、小手先ではなく、それを事業計画やビジネスモデルの形で、心から信じたいものを創る。それが信用できるものであれば、それをもってVCを当たっていけば、出資してくれる人は必ずいるということです。
まずは、自分が信じ切れるだけのものをしっかりつめることが大事だと、学ばせていただきました」
MI-6木嵜さん「大企業への営業方法は、トップダウン、ボトムダウンのサンドイッチが効率がいいという結論になりました。パートナーシップでいうと、ジョイントベンチャーは容易にしてはいけない、シナジーを出せるまでに事業を作り、信頼関係を作ってからだとのことでした。
ベンチャーのほうが選べるぐらいになり、話を持っていかないとあしらわれるとのことでした。
みなさんに共有できるティップスがあります。まず大企業を見極めるときは、業界の経験が深い方に評判を聞いてみること。そして法務や知財が問題になるケースが非常に多いので、最初に契約書を投げておき、相手に柔軟性がないようならば、ある程度で見切りをつけること。時間が貴重なベンチャーにとっては意味があるかなと思います」
メタジェン福田さん「端的に結論を言うと『新しいマーケットは創造するな』です。なぜならば、いきなり創ろうと思っても、壁は高いし、難しいし、時間はかかるし、それはベンチャーのやることではないからです。
そこで、まずは既存のマーケットでリプレイスメントをせよとのことです。我々はウンチなのですが、そればかり連呼していないで、ヘルスケア、あるいは医療の既存のマーケットをうまくパッケージングしてまず代替して、資金を作れということでした。
その資金で、本当に解決したいアルツハイマーやエイズといった、現状の医療では治しきれないところにチャレンジしていくことができれば、うまくいけば産業ができる。そこで認知が初めてできて、産業ができたあとにマーケットができる。
リプレイスメントするときに、自分たちが大事だと思っていることが10%しか入らないかもしれないし、ともすれば、怪しいことをやっていると見えてしまうかもしれない。そうならないために、業界の人たちと連携をしたり、エビデンスとして、論文を発表していく。
そうすれば自分たちのやりたい方向になっていくのではないかという話でした」
WOTA前田さん「R&D、新規開発のスピードアップについて議論しました。研究と開発のフェーズがあり、共通の理想的な見解としては、それを並列してやっていければ、自分たちも投資家さんたちもハッピーという話になりました。ただ、実際どうやるかというと、分野によっても変わってきます。
ひとつの方式としては、組織化するか、しないかです。永田さんのユーグレナの話を聞いていて面白かったのが『自分たちではフラスコを振らない』ということです。僕らならば『手を動かして設計をしない』ということになります。
その代わりにミドルマネジメントができる設計者を採用して、その人に外注先をマネジメントしてもらう。要は研究企画と、開発プロセスの企画にリソースを振っていくということです。
その時点で組織化の構造を決められない場合は、あうんの呼吸で有機的にやっていこうという判断のもと、CXOクラスがコミットして、中でやっていくという方式もあります。
その分野で1つしかないのか、競合がいるのか、どういうファイナンスが可能かでも変わってきます。ファイナンスのコンセプトも大事で、自分たちの領域や技術を理解したうえでファイナンスのコンセプトがあるかどうか、それで実現するかどうかが変わってくるという話をしました」
オリィ吉藤さん「ICCというイベントにおいて、我々がいかにつらい想いをしているかということから話が始まりました。我々は自分から話しかけられない。名刺交換を同じ人と何度もしてしまうこと
もありました。それでどうやってビジネスをするんだとお叱りを受けるのですが、そういったことをテクノロジーで解決したいのです。
話しているときに割り込んでいいかどうかなど、上手い人はどうやって判断しているんだろうという話になり、『今はオープントークをしているから入ってきていいよ』『今は入ってくるな』とか、見える化できないものか。
今回はこのフェイスシールド、そして昨日のパーティはお弁当で着席式だったじゃないですか。あれは我々にとって一人ぼっちが”見える化”します。ぼっちの可視化現象が起こってしまうのです。座っているので、ドリンクカウンターの横に立ち、会話に入ろうとすることもできません。
そこで、我々としては人的解決、仕組みで解決、テクノロジーで解決の3つに、我々からの提案ということをまとめました。
まず人的解決策は、『コネクターの存在』です。ICC小林さんや、永田さんが、紹介したい人がいるよ、と言ってくださることがあります。すごくありがたくて、『神!』と思うのですが、神はあまり降臨しません。お忙しいですから当然です。そこで、繋げてくださるような人がいれば、人と人を繋げるイベントとして、ぼっちにとって価値が上がるかなと思います。
次に仕組みとしては、宇井さんとか私とか、カタパルトで優勝しているじゃないですか。それを知らなかったり、見てくださっていても顔が遠くてわからなかったりします。自分から優勝しましたと言えないのですが、それが話のきっかけになると思うので、ネームホルダーのところに『カタパルト優勝バッジ』のようなものがあるといいなと思います。
だから今回のようなラウンドテーブルはすごくありがたかったよねという話にもなりました。
あと1つはテクノロジーの解決です。入っていい会話かどうかがわかることに加えて、この人とあの人は話したらいいのではないかなどを人脈のある方から学習して、伝えてくれるようなボットを今後導入すればいいのではないか。フェイスシールドをディスプレイのように、この人がどこにいるかわかるとかにしたらいいのではないか。
最後に提案としては、ICCとしてコミュ力がない人を繋げていけるテクノロジーの開発を、この場を使ってやれないでしょうか。そこまではいきなり行けないと思うので、人的なものとして、いろんな人の情報や研究を頭に入れたプロのコネクターががいれば、イベントとして価値が上がるのではないか」
吉藤さんの必死の訴えを笑いながら聞いていた小林は、その提案に即答。
ICC小林「次回からコネクターを置きましょう!向いている人になってもらい、オフィシャルなコネクターとわかるようにして、コネクトした人数をKPIとしたりして。次までにそういう人を開拓・育成したいと思います。これはリアルテックだけじゃない課題ですね」
エクストラボールド原さん「人材の流動性の課題は2つあり、僕らみたいな特殊なことをやっていると本当に人材がいないし、探せない。資金調達をするにしても、最も大きいのは人件費です。給料を上げてもうまくいかないという経験が僕にはあり、大手の副業が開放されたら流出してくるかな?と思ったのですが、アメリカではそうではないと聞きます。
日本は会社への情や世間体を気にする文化です。だから、会社以外のコミュニティにどんどん参加する仕組みが必要だと思います。僕は自動車メーカー8社のデザイナーのコンソーシアムの幹事をしているのですが、そういう試みは初めてで、競合のデザイナーが集まることなどなかったらしいです。
そこでは展示会や単なる飲み会でないことをやったりしています。そうすると皆さん、こういうコミュニティのおかげで自分は動ける(転職できる)と思うらしいです。そういう精神的なものも大事だと思います。
僕らはベンチャーで、大企業の助けがないとできない技術があります。そこで、お互いに人材を派遣したり、共同研究する仕組みのハードルを下げられないかと思います。
大企業からベンチャーに出向すれば刺激になるし、持って帰れるものもある。ベンチャーにとってはコストを抑えつつ、知見を増やし、開発を進められる。どこで知り合うのかというと、こういったイベントです。さきほどのコミュニケーションのツール、ぜひ開発していただいて、我々もこういうところに出ていく姿勢でいたいと思います」
最後に、リアルテック・カタパルトのナビゲーターを務め、初めてラウンドテーブルに参加した永田さんから一言いただき、終了となった。「人付き合いが悪い」と自称する永田さんの、ICCに出席するときの密かな努力も明らかになった。
ユーグレナ/リアルテックファンド永田さん「今日の新しい発見としては、知恵や経験が集まると、自分にとって答えや新しい可能性が生まれるという体験をしたと思います。僕ら経営者はそれを再現しなくてはいけないと思って話を聞いていました。
知恵や経験は、ただで手に入ります。それに対して、実は期待感を支払っています。
ここにいる皆さんは経済人でもあり、何かしら下心があります。だからこの人に好かれたいという人間になるというのが、めちゃくちゃ重要だと思います。今日優勝したWOTAの前田さんにいいVCと思われたいとか、いい大企業と思われたいとか、深層心理にあるのではないでしょうか。
ネットワーキングもそうで、その瞬間に輝けるかどうかが大切だと思っています。僕はほとんどネットワーキングをしませんが、ICCでのすべての登壇について本気なので、あの人よさげだなと思わせるために、トークスクリプトをすべて書いています。自分からアタックするほうが、知恵も経験も集まると思っているからです。
人は結構教えたいものだし、シェアをしたい人がいっぱいいる。そして誰にそれを教えるかというと、素敵だと思っている人に集約すると思います。だから自分の輝き方を再定義すると、ICCはすごくいい機会になると思います」
世の中に価値をまだ知られていないベンチャーにとっては、あらゆる機会がチャンスになる。それを少しでも逃したくないから、自分たちの技術やアイデアをいつでも、誰にでも出せるように準備しているのだろう。もちろんそれは、テクノロジーの力を借りて行うのもありなのだ。
今回初開催のリアルテック・カタパルトはまだ未知数であるものの、それぞれが持つエッジはそのままに、お互いを知り、問題意識の共有や知見が集まるという意味があった場ではないかと思う。論理的に意見を交換している様は、リアルテックのイメージ通りどこまでも硬派だった。
◆ ◆ ◆
カタパルトでの永田さんのプレゼンにあったように、変化に直面している今こそ、リアルテックは社会の課題を解決し、未来を創る大きな力となる。そしてリアルテックに限らないが、その実現や実装を選び、後押しするのは私たちだ。この集合写真から、未来のユニコーンが生まれていく可能性がある。
未来の社会はどうなるのか?と思ったときは、このリアルテック・カタパルトにぜひ注目してもらいたい。おそらく、日常生活で知っていることよりテクノロジーは遥かに先まで来ていて、夢だったことが少しずつ実現していることがわかるはずだ。未来にはわくわくするような良い選択肢があり、よりよい未来を作っていける希望を感じられるはずである。
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/塩田 小優希/戸田 秀成
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