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「小高パイオニアヴィレッジ」「haccoba -Craft Sake Brewery-」を訪ねる福島・小高ツアーへ出発!

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9月5日~8日の4日間にわたって開催されたICCサミット KYOTO 2022。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。こちらの記事では、最終日の人気コンテンツ、ソーシャルグッド・カタパルトで優勝を飾った小高ワーカーズベースと”クラフトサケ”のブリュワリー、haccoba -Craft Sake Brewery-による「福島・小高ツアー」の参加レポートをお伝えします。ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回300名以上が登壇し、総勢1,000名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2023は、2023年2月13日〜2月16日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


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ICC一行は、11月30日出発の1泊2日、SOZOWの小助川 将さんと位川 洋太さん、ICCパートナーズ3人、運営スタッフ2人の合計7人でツアーに参加した。東京駅を9時53分に出発していわき駅で常磐線に乗り換え、13時27分に小高に到着。平日のせいか車内は空いており、いわき駅までの約2時間はWi-Fiもあって快適に仕事ができた。

東京駅から出発!

小高駅は無人駅で、駅の構内で和田さんと佐藤さんが一行を出迎えてくれ、ここから2日間のツアーが始まった。

2日間に渡るツアーの主なコンテンツは、以下の3つ。

  • 小高を歩く 小高ワーカーズベース、 haccoba、小高駅前通りなどを見学
  • 体験プログラム ホースコーチング体験 / サウナ発達体験
  • 震災の記録を学ぶ 双葉町などの帰宅困難区域、Futaba Art District、請戸小、東日本大震災・原子力災害伝承館など

体験した時系列とは異なるが、ゼロから現在への流れとすべく、2日目に見学した「震災の記録を学ぶ」からご紹介する。

ツアーの拠点となった双葉屋旅館

【震災の記録を学ぶ】

和田さんと佐藤さんの運転する車に分乗し、一行は一路双葉駅へ。海に近いこの駅はすべてが新しい。

双葉町はずっと全町避難が続いていたが、2022年8月から避難指示が一部解除され始めており、立ち入り規制が緩和されたため、通過点としての駅の利用や車での通行は許されているが、いまだ町の96%が年間積算線量が50ミリシーベルト超の「帰還困難区域」のため、住んでいる人はいない。

震災から11年半、全町避難続く双葉町で避難指示一部解除…原発事故後初めて居住可能に(読売新聞 2022年8月30日)

FUTABA Art District

震災の記憶を残しつつ町の再生を願い、民間の団体がアート作品を描く「FUTABA Art District」を見ることができる。1つひとつの絵に込められた想いは、ぜひリンク先の記事を参照してみてほしい。

なお、同じシリーズではないが、ヘラルボニーの壁面アートも浪江町でいくつか見ることができた。

東日本大震災・原子力災害伝承館、請戸小学校

原子力発電所の歴史と震災の克明な記録が残る「東日本大震災・原子力災害伝承館」は、このときの情報にセンシティブな方はあまり見ないほうがいいかもしれないものも多く展示されている。中の展示もさることながら、この敷地の周辺一帯が何もないのも印象的だ。

続いて児童82名と先生全員が、近くの大平山へ無事避難できた請戸小学校へ。災害さえなければ、窓から海を臨む素晴らしい環境の学校だ。校内にある時計はどれも津波が到達した時刻で止まっている。

2階のバルコニーの青い印のところまで津波が到達

車で走っていると、信号の手前は人が住んでいて、向こう側は避難区域という場所も目にする。生活のある家と、崩壊したままの家のコントラストもすごい。「このままになるのでは」と地元の人が危惧する中間貯蔵施設もあちこちにあり異様だ。

見学の後は、浪江町の「道の駅なみえ」でランチ。人気のB級グルメ、なみえ焼きそばやしらす丼など、地元の名物を味わったり、おみやげを買うこともできた。道の駅内には鈴木酒造の酒蔵もあり、500円でなんとおちょこ5杯分を試飲することもできた。

【ゼロから作るまち、小高を歩く】

出発点は小高駅。和田さんは駅構内の待合のスペースを運営しており、Wi-Fi利用可能にして本や机、暖房器具などを入れて待ち時間に利用できるようにしている。

駅を出ると、これが小高の駅前通り。この周辺は床下浸水程度で済んだそうだが、空き地が目立つ。

和田さんが指を指している空き地は、カタパルトのプレゼンで語っていた、震災後にオープンした仮設スーパーマーケットの場所。2015年9月から2018年12月まで営業し、その役目を終えたということで、現在は更地に戻っている。

フルハウス

無くなる場所があれば、新しく生まれる場所もあり、駅から3分のここは2018年にオープンした作家の柳美里さんが移住して開いた書店「フルハウス」。本好きならぜひ訪れてもらいたい本屋だ。

作家・柳美里さんが福島につくった本屋「フルハウス」 絶望した人の「魂の避難場所」に(好書好日)

作家が経営しているからという理由だけではなく、さまざまなテーマに分かれたこだわりの選書、作家直筆の色紙やサイン入り本なども豊富。当初は本屋のみだったが、現在は喫茶も楽しむことができるカフェも併設している。当初は本屋のみだったが、現在は喫茶も楽しむことができるカフェも併設している。

小高工房

和田さんの姿を見ると、小高工房の店内から代表の廣畑裕子さんが手に試食用の一味を携えてやってきた。その名も「小高一味」。様々な段階の辛さの唐辛子の調味料と、家庭のカレーのように具が大きい小高ビーフカレーなどを作っている。

唐辛子を作るようになったのは、震災後に住民がゼロになり、イノシシが畑を荒らしたためだという。住民が戻ってきたあと、イノシシが食べられない激辛唐辛子を植えるところが増えているそうだ。

パッケージデザインもおしゃれな理由は「震災で同情して買ってもらうなんてまっぴら。商品の魅力で勝負だよ」と、きっぱりとした答えが帰ってきた。

小高工房さんのご紹介(GOOD DESIGN AWARD 2018)

すべて駅から5分といった徒歩圏内で、どの施設も近い。小高工房のすぐ裏手に和田さんたちの拠点、小高ワーカーズベースがある。

小高パイオニアヴィレッジ

小高パイオニアヴィレッジは複合施設で、イベントが開催できるような階段のスペース、ミーティングテーブル、キッチン、宿泊施設があるうえに、ガラス工房兼ショップのiriserも併設されている。

住んで、働いて、話し合う、スタートアップの秘密基地になりそうな場所で、合宿もできそうである。訪問時は2組がいて熱心に打ち合わせを行っていた。

宿泊スペースは石膏ボードの壁に、二段ベッド。手すりなどもニスを塗っていない簡素な仕上げがこだわり。ここは何かを生み出す場であって、完成形ではない。ずっと成長し続ける未完成の場所というアイデンティティが建物にも現れている。

ハンドメイドのガラスブランド iriser(イリゼ)の工房

プレゼンでも紹介していた、耐熱ガラスメーカーHARIO社とのライセンス契約で設立したガラスのアクセサリー工房iriser(イリゼ)。各地から集まった女性ランプワーカーたちが働いており、訪問時には3人の職人さんが作業中だった。ここで技術を身に着け、すでに独立した職人もいるそうだ。

小高パイオニアヴィレッジの外に出てみると、建物の外壁は白く特殊な素材で作られており、日が暮れると室内の明かりで内側からふんわりと発光する。地域を照らす行灯のような存在でありたい、という想いも込められている。

奥に白く見える建物が小高ワーカーズベース

そして小高ワーカーズヴィレッジから肉眼で見える至近距離、同じ通りにhaccobaがある。

【体験プログラム ホースコーチング / サウナ】

野馬を敵兵に見立てた軍事演習で、捉えた馬を神馬として氏神に奉納する「相馬野馬追」は、南相馬市の伝統行事。その由来は1,000年以上前、相馬氏の遠祖とされる平将門まで遡るといい、馬とのゆかりが深く、小高の町のあちこちには、馬をモチーフにしたものが見られる。

歩道沿いに

ICC一行は「相馬野馬追」のためだけに飼われている馬を、もっと地域に身近なものにして、馬の社会価値を高めることを目指すHorse Valueが提供するホースコーチングに参加。人の心をミラーリングするという馬について学び、馬のアンジェロと一緒に歩いて自分のリーダーシップのスタイルを客観視する体験などを行った。

体験プログラムを提供くださった神 瑛一郎さんと高田 崚史さんと

なお、ホースコーチング以外にも、その界隈では有名な洞窟サウナ「サウナ発達」を楽しむという体験もあり、SOZOWの小助川さんはサウナをチョイス。「”ととのう”の2つ先が、”発達”」とのことで、こちらも大満足の体験だったそうだ。

haccoba -Craft Sake Brewery-

一日の最後はみんなでhaccoba -Craft Sake Brewery-で合流して食事。仕込みをしているタンクをガラス越しに眺めながら、美味しいお酒と美味しい食事を楽しむことができた。

haccobaで造るものをはじめ全国各地の美味しいお酒・珍しいお酒を取り揃え、下戸でも食事だけで十分満足できる本当に美味しい料理を佐藤さんの奥様が担当。ここで出会って味わったLIBROMに、翌週の福岡出張で訪ねることになり、カタパルト登壇も決まった。

ちなみにhaccobaのお酒がすぐ売り切れてしまうのはこの規模でしか作っていないためで、2023年春には隣の浪江町での増設、増産を見込んでいる。

◆   ◆   ◆

昼間に訪れた南相馬市の市役所には、和田さんのソーシャルグッド・カタパルト優勝が飾られていた。市役所の中でも和田さんの活動に注目し、カタパルトの中継を見て応援してくださっている人がいるそうだ。

「地方はゼロイチをしていかないと、世界の変化に対応していけないし、街の持続性みたいなところを全部行政とかパブリックセクターにお任せすることになる。人口が減れば当然税収も減るし、パブリックセクターがやれることはどんどんシュリンクしていく。

そこに住んでいる人たちが主体的に課題を解決する事業や生業を持つとか、社会の変化に応じた新しい事業を立ち上げるということが当たり前な風土にならないといけない。僕らの地域でそれができれば他でもできると思うので、そんな勇気を与える存在になれればと思ってますし、ならないといけないと思いますね。

自分たちが生み出したモノやサービスによって地域が良くなっていき、自分たちの暮らしもよくなる連鎖がどんどん起きているところにやりがいを感じています。ベンチャーより収入は少なくても、あまりあるやりがいと、素晴らしい仲間たちがいる。地域の人から感謝してもらったりすることもありますし、いろんなものを得られています」

和田さんたちが事務局として運営するNext Commons Lab南相馬のスローガンは「予測不能な未来を楽しもう」とある。過去の出来事も予測不能だったし、、未来だって予測不能。しかし和田さんと佐藤さんが感じている手応えは確かなもので、私たちが1泊2日で出会った人たちや得た学びは確かなもので、フレッシュな勢いがあった。

浪江町の駅で2人とはお別れ

ここまで発展した日本で、他に類を見ないような「一切やり直す」という機会があるときに、あなただったら何をするだろうか?

現地を見て話を聞くと、和田さんや佐藤さんの挑戦がよりリアルなものに感じられる。しがらみなしのまっさらな環境で、何でもありの軽やかさと、実業を生み出すインキュベート施設を目の当たりにすることができる。その開拓者の精神に刺激を受けること間違いなしのこのツアー、1月には第2回目が予定されており、参加した人たちの感想を聞くのが楽しみである。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成

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