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原発事故でゼロになった町を、100の事業を創出する開拓者の町に変える「小高ワーカーズベース」(ICC KYOTO 2022)

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ICC KYOTO 2022 ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 -に登壇いただき優勝した、小高ワーカーズベース 和田 智行さんのプレゼンテーション動画【原発事故でゼロになった町を、100の事業を創出する開拓者の町に変える「小高ワーカーズベース」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2023は、2023年2月13日〜2月16日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

【速報】避難指示が解除された南相馬市で、自己実現のフィールドとしてゼロから街おこし「小高ワーカーズベース」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2022)


【登壇者情報】
2022年9月5〜8日開催
ICC KYOTO 2022
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

和田 智行
株式会社小高ワーカーズベース
代表取締役

2005年、東京のITベンチャーの役員就任と同時に故郷の福島県南相馬市小高区にUターンし、2社の役員としてリモートワークで経営に参画。2011年、原発事故により家族とともに約6年間の避難生活を送る。2014年、居住が認められない避難指示区域にて創業し、初のコワーキングスペースを開設。その後、食堂や仮設スーパー、ガラスアクセサリー工房、ローカルベンチャー事業の誘致・支援など、住民ゼロからの事業創出に取り組む。2019年にはゲストハウス併設型コワーキングスペース「小高パイオニアヴィレッジ」を開設。2021年にはU-29世代を対象とした創業支援プログラムをスタートし、福島の課題解決や価値創造に取り組む次世代の育成にも取り組んでいる。


和田 智行さん 地域の100の課題から100のビジネスを創出する、小高ワーカーズベースの和田と申します。

原発事故による6年間の避難生活

私は今日、福島県南相馬市小高区という、原発事故で一度は無人となってしまった街から来ました。

そこで、多様なローカルビジネスの創出に取り組んでいます。

現地について、おそらく、震災当時のネガティブなイメージをお持ちのままの方も多いと思いますので、今日は、「あ、何だか避難指示区域だった街って面白いじゃないか」と感じていただきたいと思っています。

そんな私は以前、東京でシステムエンジニアとして働いていました。

2005年にはUターンし、今で言うリモートワークで、ベンチャー企業2社のCTOをしていました。

しかし2011年3月、原発事故が発生、自宅が避難指示区域となった私は、家族とともに、6年間もの避難生活を余儀なくされました。

自宅にいつ戻れるのか、戻ったところで暮らせるのか……そんな先行き不透明感と大きな喪失感、そして何より、家族と自分の大事な大事な人生が、テレビのニュースに映っている一握りの人間の意思決定によって振り回されている。

この理不尽に対する怒りと、それを許している自分自身の情けなさ、これらの感情は、ベンチャーでいくら経済的な成功をしたところで、払拭できるものではないと感じるようになりました。

「店も仕事もゼロの街では、もう暮らせない」

これは、震災の翌年に地元の神社で撮影した、七五三の写真です。

住民不在のゴーストタウンで七五三を申し込んだのは、我が家だけだったそうです。

私たち家族はいずれ帰還すると意思を固めていたのですが、多くの住民は、「店も仕事もゼロの街では、もう暮らすことなんてできないよ」と口にしていました。

しかし、その店や仕事を作る事業者からすれば、住民ゼロの街で商売が成り立つわけがないという話に当然なってしまうわけです。

先に帰還するべきなのは、住民なのか事業者なのか。

この「卵が先か、鶏が先か」のこう着状態が、いつまでも続いていました。

僕は、この写真を見ながら考えました。

今のこう着状態をブレイクスルーするためには、やはり仕事と暮らしを同時に作っていくしかない、そしてそれができるのは、子供たちと共に帰還を決めている若い住民で、かつ起業経験がある自分だけではないか。

そう気づいた時に、猛烈に使命感がわき上がってきたのです。

食堂やスーパーなどを作り、生活環境を整える

そこでまず、駅前に小さなコワーキングスペースを作って、物理的に仕事ができる環境を整えました。

まだ、街灯も消えたままの真っ暗な街に、灯りを1つ点けるというところからのスタートです。

次に、お店が1軒もなかったので、地元のお母さんたちと食堂を始めました。

人もいない、汚染された街に誰が食事をしに来るのかと散々言われたのですが、おかげさまで繁盛しました。

それだけではなく、避難中の方々が食事に来ることで、バラバラにされた地域コミュニティが再生されていく、そんな起点にもなっていきました。

そのうち、「彼らができるのなら、自分たちも再開しよう」という事業者も、ちらほら出てきました。

それから、「スーパーやコンビニがないと帰れない」という声を受け、公設民営でスーパーを始めました。

こちらの男性(下写真右上)は、オープン当日に涙を流しながら、「和田くん、ありがとう」と握手を求めてきたのです。

引用元:震災で無人になった南相馬市小高地区。ゼロからのまちおこしが実を結ぶ(SUUMOジャーナル)

実は彼は、震災当時まで、地元でスーパーを営んでいました。

おそらく、スーパー再開は本当なら自分の役割だと思っていたのでしょう、でも年齢的にそんなリスクは取れないという葛藤を抱えていたのだと思います。

肩の荷が下りたのでしょうね、強く握られた手からその安堵感が伝わってきた時に、たとえこの方だけのためだったとしても、自分がやって良かったと思わず涙ぐんでしまいました。

こうして、生活環境が少しずつ整っていったのですが、一方、住民には強い諦めの気持ちもあったのです。

「どうせもう、若者たちは帰ってこないよ」ということです。

子育て中の女性をターゲットに魅力的な仕事を創る

そこで、若者たちに魅力的な仕事を創ることで、帰還は難しくても、通勤くらいの動きを作り出そうと考えました。

ターゲットにしたのは、子育て中の女性です。

なぜなら、帰還するかどうかの決定権を握っているのは彼女たちだからです。

始めたのは、ハンドメイドのガラス工房「iriser」です。

家庭の事情に合わせて、自立的に働きながら、かわいくてオシャレなものを生み出せる職人になれる。

そんな仕事で、彼女たちに訴求できるのではないかと考えました。

私も職人になりたいと熱望して、無人の街に通い始めた彼女たちは、7年間でこんなに素晴らしい作品を生み出せるようになりました。

工房には人々が訪れるようになり、さらには美大や専門学校でガラスを学んできた若者や外国人までもが、職人になりたいと、避難指示区域になった街に移住するようになったのです。

しかし、ここまでやってきて痛感したのは、やはり自分たちだけで100の事業を作るのは大変だということです。

創業支援プログラムで13人が移住、22の事業を創出

そこで、起業希望者の誘致と支援を始めました。

「住民ゼロのフロンティアを一緒に開拓しよう」という呼びかけに賛同してくれた13人が移住し、うち7人が起業しました。

この後登壇されるhaccoba 佐藤太亮さんも、そのうちの一人です。

haccoba -Craft Sake Brewery-(note)
自由な酒造りで多様性を取り戻す! 福島県南相馬市から日本酒の持続可能な文化をつくる「haccoba」(ICC FUKUOKA 2022)

そして、起業家たちの拠り所として、宿泊できるコワーキングスペースを始めました。

昨年より、29歳以下の創業支援プログラムをスタートすることにより、被災地支援ではなく、自己実現のフィールドとして小高区を選択してくれる若者が増えてきました。

こうして、直接的、間接的に生み出した事業は、22となりました。

多様な事業者が躍動する開拓者の町に

100まではまだまだ遠いですが、原発が廃炉となる30~40年後までには必ず実現したいと思っています。

そしてその頃には、1,000人を雇用する1社に依存する地域ではなく、10人を雇用する100の多様な事業者が躍動する、自立的な地域に生まれ変わっていると確信しています。

ここまでの話を聞いて、何だか面白そうな地域だと気になってきた皆様、是非、この成熟しきった日本に突如生まれた未開拓の地、そしてこれから大人になっていく子供のような町を体感しに、いらしてください。

小高でお待ちしております、ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成/大塚 幸

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