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諏訪発、空き家や古材の“健やかな循環”があるまちづくりを全国に広げる「ReBuilding Center JAPAN」(ICC KYOTO 2024)

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ICC KYOTO 2024 クラフテッド・カタパルトに登壇いただき2位に入賞した、ReBuilding Center JAPAN 東野 唯史さんのプレゼンテーション動画【諏訪発、空き家や古材の“健やかな循環”があるまちづくりを全国に広げる「ReBuilding Center JAPAN」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして 参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2025は、2025年2月17日〜 2月20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。

【速報】サケ造りで終わらない。男鹿のまちを醸し、日本の希望の星になる「稲とアガベ」がクラフテッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2024)


【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング

東野 唯史
ReBuilding Center JAPAN
代表取締役
公式HP | 公式X

84年生まれ。名古屋市立大学芸術工学部卒。 2014年より空間デザインユニットmedicalaとして妻の華南子と活動開始。全国で数ヶ月ごとに仮暮らしをしながら「いい空間」をつくりつづけてきました。 2016年秋、地域資源のリユースショップReBuilding Center JAPANを長野県諏訪市に設立。ReBuild New Cultureを理念に掲げ、次の世代に繋いでいきたいモノと文化を掬いあげ、再構築し、楽しくたくましく生きていける、これからの景色をデザインしていきます。 2022年に株式会社すわエリアリノベーション社設立し、諏訪の空き家活用を進めています。 2023年には「リビセンみたいなおみせやるぞスクール」の開催をスタート。全国にリビセンみたいなお店が増えて、みんなの地域資源が循環する仕組みづくりのサポートをしています。


東野 唯史さん 空き家と古材で暮らしを豊かにする地域資源のリユースカンパニー、ReBuilding Center JAPAN(リビセン)です。

よろしくお願いします。

多くの地方都市で空き家が増加

皆さん、最近地元に帰りましたか?

そこに広がる風景は、昔と比べてどうでしょうか?

開発されて栄えている場所もあるかもしれませんが、日本の多くの地方都市では人口が減少し、空き家が増えています。

空き家になる理由は様々ですが、みんな空き家にしたいわけでも解体したいわけでもなく、救われない気持ちを抱えています。

引き取り手のない古材や古道具を「レスキュー」

私たちはそんな地方都市の一つ、新宿から2時間の人口47,000人の街、長野県諏訪市に店舗を構え、近隣の空き家から他の事業者が引き取れなかった古材や古道具を買い取る活動をしています。

これを「レスキュー」と呼んでいます。

大家さんから思い出話を聞きながらレスキューし、釘抜き、清掃、値付けをして店頭で販売します。

およそ1,000平米あるお店の圧倒的な物量が魅力で、6時間以上滞在する方も珍しくありません。

レスキューした古材を加工してオリジナルプロダクトを制作したり、空間デザインに使用したりしています。

カフェも併設しているため一般客も多く、週末は県外のお客様を中心に賑わっています。

私たちはこのように次の世代に繋いでいきたいモノや文化を掬い上げ再構築し、たのしくたくましく生きていけるこれからの景色をつくっていくため、「ReBuild New Culture」というスローガンを掲げています。

ゲストハウスをつくりながら全国を移動

私はリビセンを始める前は、現場に住み込んでお店をつくっては次の土地に行くという暮らしをしていました。

▶︎ STORY | Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE

ゲストハウスを中心に、4年間で全国に12店舗つくりました。

私がつくったゲストハウスがその街の起爆剤となり、周囲にお店が増えて賑わっていきました。

1つのお店が持つ力強さを実感した4年間でもありました。

地方都市で知った空き家と解体時のゴミ問題

しかし、いくつもの地方都市に住み込みをして気づいたのは、全国の空き家と解体時に発生するゴミの多さです。

この問題をなんとかできないかと思い、2016年にリビセンをスタートさせました。

リビセンはレスキューしてきた古材や古道具を販売し、未利用食材を活用したカフェ(live in sense)も運営しています。

デザインした空間の内装に古材を使用したり、加工してオリジナルのプロダクトを制作したりして事業を展開しています。

オープン直後から様々なメディアに取り上げられ、地方のお店にもかかわらず毎月1,500人ほどのお客様で賑わいました。

空き家によって生じるリスク

しかし、リビセンができたからといって、ゲストハウスをつくっていたときのように周囲にお店が増えていくわけではありませんでした。

人もお店も減り、近所の商店街には相変わらず人通りはなく、空き家もたくさんありました。

空き家が増えると町は様々なリスクにさらされます。

諏訪市の空き家率は22.3%

データで見ると、諏訪市の人口はこの13年で8%減少し、空き家率は22.3%です。

諏訪市の空き家の半数以上が、リビセンのある上諏訪地区に集中しています。

▶︎ 手放したい土地、国が引き取る制度スタート 空き家は解体費が課題に(朝日新聞)

そんな諏訪市ですが、実は特別地価の低いエリアというわけではなく、長野県の市町村地価ランキングでも5位なのです。

一般的な地方都市と言えるのではないでしょうか。

都市経営の手法「エリアリノベーション」

さて、そんな街を自分たちがたのしく暮らしていけるようにするには、いくらかかるでしょうか。

資金力のない自分たちができることを考えていた時に出会ったのが、「エリアリノベーション」という手法です。

エリアリノベーションとは、「エリアを絞り」遊休不動産などの地域資源を活用することで、低コスト・低リスク・スピーディーに事業を生み出し育てる都市経営の手法です。

今まで全国にリノベーションでお店をつくってきましたが、これだと成果が分散して景色が見えにくいことに私たちは気づいたのです。

だったら諏訪に、それも徒歩5分の範囲に集中してお店を増やすことができれば、もっとたのしく暮らせる街を実現できるのではないかと思いました。

リビセンは不動産屋ではないですが、レスキューの問い合わせから空き家情報を知ることができます。

利活用が可能な場合は自社で購入したり、出店希望の事業者とマッチングしたりします。

マッチングできた事業者とは単なる設計・施工の付き合いだけではなく、事業計画、求人、DIY、資金調達まで、様々な側面から事業が軌道に乗るようサポートしています。

魅力的な店舗が上諏訪エリアに増加

2019年に同時に3軒の空き家を改修したことをきっかけに、エリアにお店が増えてきました。

その一部をご紹介します。

国道からすぐのところにはスペシャルティコーヒーロースター(AMBIRD Coffee&Tea)があり、すぐ裏手に4軒長屋を活用した複合施設(ポータリ―)があります。

公園のように使えるウッドデッキや麻婆食堂(麻婆食堂 どんどん)が人気です。

そこから歩いて2分のところにカフェと雑貨のお店(カフェと暮らしの雑貨店fumi )があり、すぐ裏手には古本屋(言事堂)さんがあります。

さらに2分歩くと創業108年の老舗のパン屋さん(太養パン店)があります。

すぐ向かいにはレコード屋を併設したお花屋さん(Olde)があります。

リビセンのカフェはキッズフレンドリーです。

授乳スペースにおむつがえスペース、2階建てのキッズスペースがあり、子連れに大人気です。

そしてなんと先日、わざマート諏訪店がオープンしました。

▶︎ コンビニ型店舗わざマート2号店開店のお知らせ(PR TIMES)

リビセンからは全て徒歩5分圏内です。

デザインや古材の提供で関わっているので、地域の古材や資源がまた地域に戻ってきます。

あの家の床だったものが、今このお店のドアに。

そんな風に街の景色がつくられています。

このようなお店のベースになっているのは空き家です。

公民連携によるまちづくりもスタート

諏訪の空き家は土地建物付きで200万円ほどです。

例えば空き家1軒の活用に1,000万円かかるとして、1億円あれば10軒お店を増やすことができます。

これだけで街の景色が変わると思いませんか?

空き家を効率良く活用していくために、信用金庫と地元の不動産会社とすわエリアリノベーション社を設立しました。

さらに諏訪市のまちづくりの重点エリアにも認定され、公民連携によるまちづくりも今年度よりスタートし、そのコアメンバーとして参加しています。

5年で30店舗が開業、戻ってきた活気

リビセンでサポートしたお店はいずれも経営が順調で、2店舗目をオープンさせたり、設備投資したりと事業を拡大しています。

さらに最近は、リビセンと関わりのない事業者の参入がエリアに相次ぎ、一気にお店が増えてきました。

その数なんと、5年で30軒にのぼります。

このエリアが育ってきたことを証明しています。

人通りがなく閑散としていた街に活気が戻ってきました。

エリアリノベーションに取り組み始めてからリビセンの来客数は3倍になり、年間でおよそ5万人の方が来てくれています。

そんなリビセンも現在の社員は13名。

全員が移住者で、みんな諏訪の暮らしを楽しんでいます。

諏訪の街に生まれた「健やかな循環」

リビセンは空き家から古材をレスキューすることからスタートしましたが、空き家を丸ごとレスキューするようになり、その積み重ねが街をレスキューすることにつながっています。

この地域資源の活用によるエリアリノベーションを、「健やかな循環」と呼んでいます。

空き家や古材といった地域資源をレスキューし、リノベーションで活かすことで人が増え、お店が増える。

身の回りにあるもので工夫して、誰かの幸せに寄り添うものになる。

その連鎖が諏訪の街をつくっています。

「健やかな循環」を全国に広げるスクールを開催

そんなノウハウや寄り添い方を学べるスクール(リビセンみたいなおみせやるぞスクール)を昨年(2023年)から開催しています。

グループワークや懇親会を通して仲間の結束が高まる2泊3日でのスクールです。

今まで4回開催し、100名以上が全国から参加してくれました。

スクール参加者をオンラインで継続支援するプラットフォーム「Local Reuse Collective」もスタートしました。

1|ようこそ!【Local Reuse Collective】の楽しみ方(リビセン通信)

50事業者が参加し、それぞれの街で展開しています。

一度、諏訪に集中した取り組みを行ってきましたが、これからはLocal Reuse Collectiveのメンバーとともに、全国にこの健やかな循環の輪を広げていきます。

日本は人口が減り、空き家や古材が溢れる時代になってしまいました。

でも、それが資源になり、レスキューを通じてモノも思いも救われていく。

地域に寄り添いながら、背伸びをしない小さなアクションの積み重ねによる健やかな循環のあるまちづくりがきっと地方都市の未来になります。

▶︎上諏訪中 リビセンとコラボ!~チャレンジショップ2023~(諏訪市) 

リビセンが考えるクラフテッドなまちづくり

最後にもう一度、私たちのスローガンは「ReBuild New Culture」です。

次の世代に繋いでいきたいモノや文化をすくい上げ再構築し、たのしくたくましく生きていけるこれからの景色をつくっていきます。

これがリビセンが考えるクラフテッドなまちづくりです。

ありがとうございました。    

(終)

▶︎実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/原口 史帆/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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