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6. ジャパンハート吉岡さんが起業家たちに送るメッセージ【終】

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ICC KYOTO 2025のセッション「ジャパンハート吉岡秀人 特別講演 「人のために生きることは、自分のために生きること」- これからの生き方を考えよう 」、全6回の最終回は、グッドバトン園田 正樹さんからの質問で、日本の子どもたちの置かれている環境について、吉岡さんが思うことを会場に集まった起業家たちに伝えます。最後までぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜 3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。


【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 4B
ジャパンハート吉岡秀人 特別講演 「人のために生きることは、自分のために生きること」- これからの生き方を考えよう
Supported by EVeM

(スピーカー)
吉岡 秀人
特定非営利活動法人ジャパンハート最高顧問/ファウンダー/小児外科医

(モデレーター)
白井 智子
CHEERS
代表取締役

山田 敏夫
ファクトリエ
代表

(リングサイド席)
上田 誠一郎
インターナショナルシューズ
専務取締役

岡本 拓也
LivEQuality大家さん
代表取締役社長

尾田 洋平
一般財団法人 地域・教育魅力化プラットフォーム
専務理事

鬼丸 昌也
認定NPO法人テラ・ルネッサンス
創設者

金谷 智
LX DESIGN
代表取締役社長

亀石 倫子
一般社団法人LEDGE
代表理事

川口 加奈
認定NPO法人 Homedoor
理事長

小嶌 不二夫
ピリカ
代表取締役

園田 正樹
グッドバトン
代表取締役

田口 一成
ボーダレス・ジャパン
代表取締役社長

冨田 啓輔
HelloWorld
代表取締役Co-CEO

中川 悠樹
特定非営利活動法人AYA
代表理事

野口 昌克
SMILE CURVE
代表取締役

廣瀬 智之
Tomoshi Bito
代表取締役社長

福寿 満希
ローランズ
代表取締役

松本 友理
Halu
代表取締役

三浦 美樹
一般社団法人日本承継寄付協会
代表理事

『ジャパンハート吉岡秀人 特別講演 「人のために生きることは、自分のために生きること」- これからの生き方を考えよう』の配信済み記事一覧


▶︎編集注:会場で投影された一部スライドや動画は、著作権の関係と患者さまのプライバシーを考慮し、非公開にしています。ご了承ください。

何もしないで静かに看おくる治療

白井 今年で先生の活動開始から30年ということですが、当時と比べて環境や医療の技術がだいぶ進化しているかなと思います。

ここから先について、先生のお考えをお聞かせください。

吉岡 はい。

この子たちは、神経から発生するがんのステージ4の子どもたちです。

▶︎編集注:ここで、笑顔で母親と写真に収まる子どもたちのスライドが映し出されました。

僕は医者をやってきて、医療者というのは治療してなんぼなので、治療できないということに対して、ものすごく敗北感がありました。

皆さんが子どもを日本の病院に連れていって医療にかかれば、色々な方法があって、治療を勧められると思います。

でも、この2〜3歳と5歳のこの子たちはステージ4で、日本で頑張ってフルで治療しても、1割ほどしか助からないと言われています。

ミャンマーでは、ほぼゼロだと思います。

だから、僕はこの子たちに何をしたかというと、何もしなかったのです。

ただこうやって写真を撮って、親子でそのまま帰しました。

なぜ「何もしない」という選択肢をとるのかというと、無理矢理手術をして、術後に調子が悪くなって亡くなった子もたくさんいるのです。

手術をしたら確かに1〜2カ月寿命が延びるかもしれないし、もしかしたらうまくいけば半年寿命が延びるかもしれませんが、死ぬ子は死ぬのですね。

何も治療をしないと、元気な期間が一番長いのです。

でも、それは僕ら医療者にとっては敗北なので、だから治療というものに手を染めると言うと変ですが、治療をしてしまうのですね。

でも、50を過ぎて、正解はないですが、僕はこの子にとって一番良いことは何かと考え始めたのです。

それで、ようやく最近できるようになったのは、医者でありながら「何もしない」という行為です。

この子たちの人生はあと6カ月で終わるかもしれないし、1年以内に確実に終わるのかもしれないけれど、それをそっと診てあげられるようになりました。

これが、最近僕ができるようになった治療ですね。

白井 それは、緩和ケアやホスピスなどとは違うものですか?

吉岡 ミャンマーには、ホスピスはほとんどないですね。

爆弾が行き交うような穴ぼこだらけの道を通って、治療のためにこの子たちに無理矢理病院に来させて、お金をかけさせて、じゃあ助けられるのかというと、助けられないじゃないですか。

だから、もう最初から治療をしないで、ホスピスももちろんないですから、最後は痛いかもしれないけれど、人間はご飯を食べられなくなったら、あっさり死ぬのですよ。

自分の中の電解質が狂ってきたら意識が飛んでくるので、思ったよりも苦しい期間が長くないかもしれないですね。

家族からは、子どもであっても高齢者であっても、最後まで大切にしてもらえますから。人間なんて、どっちが幸せかわからないでしょう?

僕はそういう姿もたくさん見てきたので、もう何もしないで静かに見送るということを、少しするようになりました。

白井 ありがとうございます。

残り3分ですが、リングサイドの産婦人科医で、ご夫婦で子どもの医療に携わっている園田さんから、ご質問をお願いします。

Q 日本の子どもたちの置かれている環境をどう見ている?

園田 正樹さん 株式会社グッドバトンの園田と申します。


園田 正樹
グッドバトン
代表取締役

医師17年目の産婦人科医(東京大学産婦人科学教室)。安心して産み育てられる社会を目指し、2017年に株式会社グッドバトンを創業。2020年4月に病児保育予約サービス「あずかるこちゃん病児保育」、2025年4月に産後ケア予約サービス「あずかるこちゃん産後ケア」をリリース。国の成育医療等協議会委員や健やか親子21幹事などを歴任。ICCサミット KYOTO 2023「ソーシャルグッド・カタパルト」優勝。

私は産婦人科医ですが、実は今年から医療をゼロにしました。

公衆衛生を学んでいる時に、お子さんが風邪で保育園に行けなくて仕事もままならなくなり退職した女性に出会ったことがあります。

日本ではそういうことを父親が選択することはあまりなくて、子どもの風邪のような普通の病気で、母親側が人生を変えざるを得ないという選択があります。

先生とちょっと近いのかなと思ったのは、僕も学会の仕事で全国に仲間の産婦人科医がいて、僕が医療をやらなくても(他に医療する医師がいるので)、もしかしたらこの課題に取り組んだほうがいいのではないかと思って起業して挑戦したことです。

先生の今日のお話を聴き、改めて初心に帰らせていただいたところがありました。

ご質問としては、先生は今、日本の子どもたちの置かれている環境をどのように捉えていらっしゃるのでしょうか?

私は子育て支援のDXの領域に取り組んでいますが、ユニセフなどから、日本の子どもの体はグローバルで1位、でもメンタルやソーシャルな部分がグローバルで結構低い位置にあるとデータとしても出ています。

先生が日本の20年先をいっているというのはすごく僕にとって励みになったのですが、先生はどのように日本の子どもたちの環境を捉えられているのか、また、もっとこうしたらよいのにということ伺って、最後に勇気をもらえたら嬉しいなと思いました。

あわせて読みたい

病児保育や産後ケアを通して、子育てに関わる社会と人をつなぐ「グッドバトン」(ICC FUKUOKA 2024)

A 子どもたちのために、皆さんのような起業家が社会に向けた発信を

吉岡 日本の子どもたちは、豊かさの基準が変わってしまったので、ある意味不幸と言えば不幸ですよね。

僕が若かった頃はバブルの頃で、物質的な豊かさが精神的な豊かさと直結していて、物質が豊かになると精神的に豊かになれる時代でした。

でも、それが2000年頃から変わり始めたでしょう?

今の若い人たちは別にお金がなくてもいいよねとか、大切な家族と一緒にいられたらいいよねとか、車を持っていなくてもレンタカーで一緒の時間を過ごせたらそれでいいと言います。

僕は、それは人間の意識の進化だと思っています。

僕らの頃よりも確実に若い人たちは進化していると思いますが、まだ過渡期で、そこへ本格的に移行していません。

大人たちの豊かさへの認識が、右に左に揺れている時代で、それに合わせて子どもたちが振り回されているのが、僕が大局的に見た状況だと思いますね。

ですから、まず、それぞれの親が豊かさとはどういうものなのかを決めることだと思います。

それを決めないから、物質的なことに振ったり、精神的なことに振ったりして中途半端になりますよね。

それはまず大人たちが先に、色々なことから抜け出さないといけないのです。

まぁ人はそれぞれ考え方が違うし、さっきから何回か言っていますが、正解なんてないので、それぞれ色々な考え方が世界に存在していること自体がセーフティーネットになります。

自分なりの温度感も違うでしょうし、程度も違うので、まずそういうものをしっかり皆さんのような起業家が社会に向かって発信していって、この指とまれでいいかなと思います。

自分にできる小さな一歩を選択しよう

白井 ありがとうございます。あっという間の時間でした。

このあと、会場を出たところでアフタートークセッションがありますので、よければぜひブースにいらっしゃってください。

アフタートークセッションの様子

ジャパンハートさんでは、金銭的な支援だけでなく、さまざまな形での関わり方を用意されています。今回のトークセッションを通じ、ぜひ「なにもしない」ではなく、「小さな一歩」を選択していただけたらいいなと思います。本日はありがとうございました。

山田 ありがとうございました。

▶︎寄付をする(ジャパンハート)

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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