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「民間企業の経営と行政の仕事は、98%は同じ」——。湯﨑さんは知事の仕事を、経営の思考で捉え直しました。一方で、絶対に倒産しない行政組織には、自己規律が働かないという根本的な問題があります。営者が行政に入った時、何が同じで、何が違うのか。その核心に迫ります。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2026は、2026年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。
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【登壇者情報】
2026年3月2〜5日開催
ICC FUKUOKA 2026
Session 10E
特別企画 起業家・経営者から県知事になる
Supported by EVeM
(スピーカー)
湯﨑 英彦
広島県
前知事
(モデレーター)
三浦 崇宏
The Breakthrough Company GO
代表取締役
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お金と人を使い、目的を達成していく首長はCEOと同じ

湯﨑 起業は当然ゼロから作っていくわけですよね。
テクノロジーにしても組織にしても、あるいは営業活動にしても、全部ゼロからです。
三浦 人を採用して、マニュアルを作って、PDCAを回して…、本当に全部ゼロからですよね。
湯﨑 全部ゼロからやる、それがある程度立ち上がったら、今度はマネジメントしていかなければいけない。
もちろん、変化に合わせていろんなことをしていかなければいけない。
ずっと大企業にいる状態とも違うし、ある意味、マネジメントの実践をした感覚があって。
その前、僕は役所にいましたので、役所のプロセスや政治のプロセスもある程度知っていました。
三浦 官僚の仕事と起業家の仕事は全く真逆ですよね。
システムを運用する仕事と、ゼロからシステムを作る、あるいは既存システムを壊すような仕事の2つを経験されたわけですよね。
湯﨑 そうですね、その両方をどう役立てられるかを考えた時……、首長というものは、やはりマネジメント職なわけです。
そう捉えない人がいるのは問題ですが、CEOなわけですね。
結構な量のお金と人を使って、ある目的を達成していく仕事だからです。
三浦 地域の方々は、お客様であり株主みたいなものですよね。
湯﨑 そうそう、もうおっしゃる通りです。
それをマネジメントするというか、エグゼキューション(実行)するのが仕事です。
そういう意味では、ベンチャーや会社経営と同じです。
一方で、政治プロセスなど、独特のプロセスやカルチャーみたいな、役所としての特性もあるわけですから、それを分かった上で経営をしていくことが求められる職業なので、次に何をしようかと思った時に、首長が一つの選択肢だなと思いました。
元官僚だと、国会議員に推薦という話も来るのですが…。
三浦 国会議員になるには、直接民主主義で票を集めることとは違うロジックがありますよね。
湯﨑 そういう話もある中で、自分のこれまでの経験やスキルを考えたら、僕は国会議員になりたいという思いよりも、首長の方が良いのではないかと思っていたところに、ちょうど(藤田 雄山)前知事が「次の選挙に出ません」という宣言をされたのです。

三浦 退任されてから立候補まで、何年でしたか?
湯﨑 1年ちょっとです。
三浦 めちゃくちゃすぐにチャレンジしましたね。4年くらいは休もうと思わなかったですか?
湯﨑 いやいやいや、家族もいますし、仕事はしないと(笑)。
三浦 挑戦ジャンキーですね。
湯﨑 それはありますね、やはり挑戦をしたい。
三浦 チャレンジしていないと気が済まないと思ったのでしょうか?
湯﨑 そうですね、サメみたいな。
三浦 泳ぐのやめたら死んじゃうみたいな(笑)。
湯﨑 そういうのはあると思いますね。
故郷・広島への貢献を決意
三浦 それで、官僚経験と起業家経験を以て、ご自身の才能や能力を最大限に活かせる場所だということで、広島県知事になるぞと思われたということでしょうか?
湯﨑 そうですね、僕は広島出身ですが、地域に還元していくことを考えました。
それまでは地元のことなんて考えず、好き勝手にしてきたわけですよ。
それを当時、43から44歳になるタイミングで、このままでいいのかなと思いまして。
もともと官僚になりたいと思ったくらいなので、社会に直接貢献する、社会的なことをしたいという気持ちもありました。
アッカ・ネットワークスもインフラビジネスです。
三浦 社会全体に対して、価値貢献していきたいという気持ちですね。
湯﨑 そうですね、ですので、首長が良いのではないかと思ったのです。
三浦 なるほど。
僕は、政治家というキャリアの面白さがもう少し広く伝わるといいなと思っています。
僕の場合、チームみらいの安野 貴博さんや農林水産大臣の鈴木 憲和さんなど、たまにお話しさせてもらう方も多いのですが、政治家の仕事はめちゃくちゃ面白いと思っています。
▶︎5. 都知事選 安野 貴博さんの施策に見る、デジタル民主主義の可能性(ICC KYOTO 2024のセッション「デジタル民主主義を徹底議論!」より)
批判されやすいとか、気を抜くと汚職するとか、悪いイメージが結構あると思うのですが、政治家の仕事を選んで楽しかったのはどういうところですか?
県庁という既存の組織を仕立て直す面白さ
湯﨑 選挙で選ばれるので政治家だったわけですが、政治家というよりも、どちらかと言えば、やはり経営者の色が強いと思うのです。
政治家として面白い仕事と言うと、社会を良くすることに直接携わっていくところです。
あとは、広島県に限らずですが、いろんなものが割と漫然と進んでいるのです。
三浦 経営ビジョンをスケジュールに落とし込んでシナリオを作っていくという、経営者や起業家が課題解決のために当たり前に使う思考法が、インストールされていないということですね。
湯﨑 そうなんです。
むしろ、どれだけ予算を取ったとか、どこの道路を造るとかいう話がやはり多くて。

組織を、ある成果に向かって高いパフォーマンスを出していく仕組みを作るということは、あまりしてきていないのです。
既存の組織ではありますが、新しく仕立て直すという意味では、起業でゼロから作っていくこと、ベンチャーとすごく似ているのです。
それができたのは面白かったと思います。
既にハイパフォーマンスな組織でガンガン進んでいる状態であれば、自分が出る幕はあまりなかったかもしれませんが、ビジョンを作って実行し、社会に大きく影響させることができました。
社会や人の人生を変える仕事の醍醐味
湯﨑 あと、先日すごく嬉しかったことがあります。
人材育成にすごく力を入れていて、未来塾(グローバル未来塾inひろしま)というものを運営していました。
広島なので、平和について考えるもので、高校生が20~30人くらい集まります。
原爆にとどまらず、広く平和について、いろんなイシューについて考えるプログラムであり、半年くらいかけて行います。
フィリピンのスラムなどに研修に行くのですが、初期の頃に参加した女の子がそれをきっかけに、フィリピンに強い関心を持ち、貧困をどう改善していけばいいのかについて、大学で研究をしたのです。
かつ、大学院まで進学してフィリピンの社会改善について研究していたようで、ある企業に就職が決まりました。
人の生活のクオリティを向上させる事業を発展途上国にも展開している企業で、ミッションにすごく共感して就職したようです。

つまり、きっかけが我々の提供した研修で、彼女の人生を大きく変えたということです。
これは、僕が街の横断歩道で信号を待っていたところ、彼女のお母さんが来て、どうしてもこの話がしたかったと言って教えてくれたのです。
すごく嬉しかったです。
僕らは、どうしてもマクロで見がちですから。
三浦 制度やシステムを変えるとか、グラフの伸びを見つけるとかはあるけれど、解像度を上げていくと一人の人生を変えていることがあるということですよね。
湯﨑 そうですね。
今時に言えば、意識高いというか、志を持って、決めて、実践していることがすごく嬉しくて。
そういうことが、実はいろんなところで起きていると思います。
実際、最近はいろんな人から、ありがとうございましたと言われることが多いですし、すごく嬉しかったですね。
やはり、広く社会を変えられることが、知事という職業の醍醐味だと思います。
三浦 そうですよね。
やはり、自分のしている仕事が誰かの人生を変えることにつながるというのは、ものすごくやりがいがありますよね。
少し偉そうな言い方ですが、他人の人生を変えるって、こんなにやりがいのあることはないですよね。
湯﨑 本当にそう思います。人材育成面だけではなく、産業面でも同じことがありました。
僕が行った事業がなければこんなことにはならなかった、みたいなことを言われるのは、本当に嬉しいですよね。
民間企業の経営と行政の仕事は、98%は同じ
三浦 いろいろお話を聞いていて、知事を務めておられた湯﨑さんですが、やはりすごく起業家だなと感じました。
先ほど控室でポロッと、「起業家は政治家に向いている」とおっしゃいましたよね。
経営と行政について、似ている点と違う点を教えてください。

似ているからリーダーシップが取れる部分、もしくは、いつか行政に打って出たいという方がいれば、知っておいてほしいことはありますか。
湯﨑 まず、民間企業の経営と行政については、98%は同じです。
例えば何か物を売る場合、お客様のニーズが何で、どんな物を作って、どうやって売るかというプロセスですよね。
従業員のみんながどれだけやる気を起こして進めていくかという、組織や人事論の話です。
行政も同じで、県民の皆さんが必要としていることを考えて…。
三浦 お客様として。
湯﨑 実は我々は、政策を「プロダクト」と呼ぶこともありました。
三浦 それは、広島の湯﨑さんチームの特殊な制度ですか?
湯﨑 いやいや、単に議論の場でそう呼ぶだけで、常にプロダクトと呼ぶわけではなかったです。
でも、政策もプロダクトと同じだよねという考え方です。
マーケティングの思考で政策を届ける
湯﨑 例えば、なぜかは分かりませんが、広島では女性の骨が折れるのです。
三浦 ??? すみません、急に変な話をされましたね(笑)。

広島の女性は骨折しやすい、という謎のデータが出たのですね?
湯﨑 そうなんです。
そういうデータがあって、要するに、高齢女性の骨折が多いことが問題なのです。
骨折が多いと何が起こるかと言うと、介護につながるわけです。
そうなると、QOL(生活の質)がものすごく落ちるわけですね。
三浦 お年を召してからの骨折は、本当に生活が変わってしまいますよね。
湯﨑 はい、ですので骨折を防ぐために何が必要かを考えるのですが、それがつまりニーズですよね。
どうすれば骨折をしないのかを考えた時、例えば、30~40代の頃に運動や栄養が足りないのではという分析ができます。
それで若い女性に対して運動習慣をつけるための政策、これがプロダクトになるということです。
三浦 なるほど。
湯﨑 その政策をどう届けるかは、チャネル政策ですよね。4P(※) とか。
▶編集注:4Pとは、マーケティング戦略における4つの重要要素「商品(Product)」「価格(Price)」「流通(Place)」「販促(Promotion)」の頭文字をとったフレームワーク。
三浦 マーケティングとして考える。
湯﨑 そう、マーケティングそのものなのです。そう考えると、ほぼ同じですよね。
行政組織で自律と改善のメカニズムが働きにくい理由
湯﨑 違うのは「組織」のことですが、一番違うのは何だと思いますか?
三浦 やる気ですか?

湯﨑 いや、行政、つまり県とか市とか町とか、国もそうですが、行政は絶対に倒産しないのです。
三浦 おお~、羨ましい。
湯﨑 羨ましいけど、運営する側としては大変なのですよ。
三浦 リーダーとしては、危機意識がない組織になると。
湯﨑 そうそう、自律して何か改善するというメカニズムが働かないのです。
民間企業であれば、変な物やサービスを作って、お客様が買ってくれなかったら原資がもらえなくなって潰れますよね。
みんな、潰れたくないから、一生懸命良いものを作ろうとするサイクルが自動的に生まれます。
三浦 資本主義とは、まさにそういうことですよね。
顧客の課題を解決することで、自己の課題を解決していくというプロセスですね。
湯﨑 そうです。
ところが行政は、どんなサービスを提供しても、税金としてお金が入ってくるのです。
三浦 プロダクトと利益が紐づいていないのですね。
湯﨑 紐づいていないです。
だから何が起きるかと言うと、ものすごくゆるくなるというか、変なサービスを提供しても気にしなくなります。
三浦 本気で顧客やユーザーと向き合って、本気でプロダクトの精度を上げていく理由がないですよね。
湯﨑 そうなんですよ。
三浦 あんなに頑張れないですよね。
湯﨑 頑張らなくても給料は変わらないし、県民の皆さんが困っていてもお金は入ってくるわけです。
県のサービスが悪いから税金は払いませんと言うと、最終的には逮捕されてしまうわけです。
そういう世界なので、自己規律が働かないシステムになっているのです。
だからポイントとして、組織にいかに自己規律を働かせるかがものすごく大事です。
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成


