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破壊的イノベーションを生む組織とリーダーとは?

「この1年ちょっとはニケシュと一緒に仕事をすることが本当に多くて、今日も1日一緒にいたんですけれど、彼は口癖のように『5年後の世界はどうなっているの?』と聞くんですよね。特定の分野でやろうと思っていることを相談すると、『その分野の5年後はどうなっているの?』とか、『インターネット業界全体は、5年後にどうなっているの?』と。」
「新しい事業をやるにはどうしたらいいのか、孫さんにお聞きしたことがあるんです。その時に『今Yahoo! JAPANでは何が一番儲かっているんだ?』と聞かれて、『例えばヤフオク!です』と答えたら、『じゃあヤフオク!がぶっ倒されたとしたら、どんな風にして、どんな筋書きでぶっ倒されると思う?』と。それで私なりの考えを話すと、『じゃあ、それをお前がやれ。今のヤフオク!を自分たちでぶち壊せ』と言われました。」

トップリーダーが「新しい成長分野を創る経営とは何か」のその4(最終)の「破壊的イノベーションを生む組織とリーダーとは?」を是非ご覧ください。

登壇者情報
 2016年3月24日開催
 ICCカンファレンス TOKYO 2016
 Session 5A
 「新しい成長分野を創る経営とは何か」
(スピーカー)
 川鍋 一朗   日本交通株式会社 代表取締役会長
 川邊 健太郎 ヤフー株式会社 副社長執行役員 最高執行責任者
 田中 良和  グリー株式会社 代表取締役会長兼社長

(モデレーター)
 岡島 悦子  株式会社プロノバ 代表取締役社長

(質問者)
 宇佐美 進典 株式会社VOYAGE GROUP 代表取締役社長 兼 CEO
 中竹 竜二 公益財団法人日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター

その1はこちらをご覧ください:新しい成長分野を創る経営とは何か
その2はこちらをご覧ください:イノベーションと既得権益
その3はこちらをご覧ください:日本からイノベーションを生み出すには?


岡島 他の方も、ご質問があればお願いします。

田中 それでは(VOYAGE GROUPの)宇佐美さんお願いします。勝手に指名しますが。

質問者3(宇佐美氏) FinTechの話になりますけれど、ある程度売上や利益がある規模になってくると、新規事業をやろうとしても、担当者が頑張ったところで、全体の売上の内の3億円とか5億円とか、5年やって5億円かなというものもあれば、既存事業に隣接している領域だと、1年ちょっと頑張って3%改善したら、売上が3億円、10億円増えるんじゃないかという時に、リソース配分というのがすごく悩ましいなと思っているのです。

田中さんや川邊さんは、どういう風にリソース配分を考えておられるのか、お聞きしたいなと思います。

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宇佐美 進典
株式会社VOYAGE GROUP  代表取締役社長 兼 CEO

1972年生まれ。早稲田大学卒業後、トーマツコンサルティング(現Deloitte Tohmatsu Consulting Co.,Ltd.)にて、業務改善プロジェクト等に携わる。その後数社を経て1999年10月にアクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)を創業。2001年にサイバーエージェントの連結子会社となり、2005年から2010年の5年間サイバーエージェント取締役も兼務。2012年にサイバーエージェントから独立し、2014年7月マザーズ上場し、2015年9月東証一部上場。現在、ネット分野に特化した事業開発会社としてポイントを活用した「ECナビ」「PeX」等のメディア事業と、国内最大級のSSP「Fluct」等のアドテクノロジー事業、新卒採用支援事業「サポーターズ」等を展開。インプレスジャパンにて『新・データベースメディア戦略』(共著)、『SNSビジネス・ガイド』 (共著)

川邊 結局できていないという前提で話をすることになりますが、この1年ちょっとはニケシュと一緒に仕事をすることが本当に多くて、今日も1日一緒にいたんですけれど、彼は口癖のように「5年後の世界はどうなっているの?」と聞くんですよね。

 

特定の分野でやろうと思っていることを相談すると、「その分野の5年後はどうなっているの?」とか、「インターネット業界全体は、5年後にどうなっているの?」と。

そして「Yahoo! JAPANは、大きくなっているものだけをやればいいじゃない」と言うんです。

自分たちが勝てるかどうかは分からないけど、大きくなっていると確信がある市場に関しては、そこに全投入してでもやった方がいいよ、というようなことは言いますよね、ニケシュはね。

ただ、四半期ごとにきちんと利益を出すという、投資家とのある意味でのコンセンサスがある会社なので、全リソースを投入するようなことができるかというと、やろうとはするものの難しい面もあるのが正直なところです。

以前にも、こういった席で話したことがあると思うのですが、新しい事業をやるにはどうしたらいいのか、孫さんにお聞きしたことがあるんです。

その時に「今Yahoo! JAPANでは何が一番儲かっているんだ?」と聞かれて、「例えば『ヤフオク!』です」と答えたら、「じゃあ『ヤフオク!』がぶっ倒されたとしたら、どんな風にして、どんな筋書きでぶっ倒されると思う?」と。

それで私なりの考えを話すと、「じゃあ、それをお前がやれ。今の『ヤフオク!』を自分たちでぶち壊せ」と言われました。

実際にはそんなことはしていないのですが、やるとしたら、リソースは最大投入してやるしかないですよね。

岡島 それって大変なことですよね。

そうなると結局、すごくカニバっていく(既存事業と競合になるようなこと)ことをどんどんやらざるを得ないっていうことでしょうか?

川邊 疲れますよね、

今まで築き上げてきたものを壊したり、5年後の未来を想像して、まだやってもいないことを…

岡島 しかも働いている人たちは絶対に抵抗する訳だし…

川邊 そうですね。

抵抗勢力が、外部にだけではなく、組織内にも出てきてしまうので。

うちのアプリシフトはそれに近かったですね。

岡島 出島でやるようなことは大きな会社がやっているとはいえ、全投入してやるみたいなことになったら、社内に抵抗勢力が生まれますよね。

川邊 でも、やはりそこは意思決定とコミュニケーションの仕方次第かなという気がしますね。

意思決定したら投資家にコミュニケーションし、従業員にコミュニケーションし、そうやって決めてやっていくしかないのではないかな。

岡島 でも、そこは経営陣しか決められないということですよね。

川邊 まあ、そうでしょう。いかがでしょうか?

田中 そうですね。

自分の経営スタイルとしては、まず大きいところで勝機があれば、そこを攻めるというのがありますね。

ゲーム領域でネイティブゲームというのは大変だと言う方は沢山おられますが、そうは言っても、少しでも当ったら1,000億円の利益が何年も続くような事業です。

日本に(このような大きな利益が見込める事業は)何個もある訳ではなく、こんなにいい事業は他にないと思っているので、ここは全力でやりまくるところですよね。

ただ、では1万人、10万人でゲームを作ったらよいか、というとそういう訳ではないので、まあ1,000人か1,500人くらいでゲームをつくればいいのではないかと思います。

それで、それ以外何をするかということで、やっているのですけれども。

宇佐美さんには学生の頃から非常に可愛がって頂いていますが、事業にはやはり2パターンあるということを、私も最近思っています。

そこに(メルカリの)小泉さんもいらっしゃいますけれども、メルカリや昔のソーシャルゲームやL
INEは一瞬にして爆発的に市場参入していて、そうすると他社が参入してこなくなります。

「機を見るに敏」というタイプですね。

「そこだーっ!」というタイプのものと、先程の(アイスタイルの)吉松さんの例を出しましたけれど、20年間というスパンで圧倒的な強者になることで、今更誰も参入できなくしてしまうというものと、やはり2つのタイプがあるなということをすごく感じるんですよね。

両方とも正解だなとは思っていて、2つに共通するのは、まさにこの瞬間やらないとダメなんだ、1年後ではダメなんだということです。

これを20年間やったら勝てるとか、クックパッドが成功するなんていう話は、論理的には説明しがたいところがあるので、最終的には、自分として信じられるかどうかというところに帰結するなと思っています。

そういう意味では、ここ1年くらい、メルカリの山田進太郎さんと、コーエーの社長さんのお二人からはすごく学ばせて頂きました。

ある日会社にコーエーの社長が変わってシブサワ・コウさんが会長になるということで、社長が挨拶に来られたんです。

それで「社長さんは何をされているのですか?」と聞いたら、「今でも、半分以上はゲームを作っています」と言われてですね。

本当にこの方はゲームを作られるんですよね。

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「えっ、会社の経営大丈夫なんですか?」と言うと、「いや、本当にシナリオ作っています」と仰って、本当にゲーム作っていらっしゃるんですよ。

(レベルファイブの)日野さんはちょっと変わっているので、あの人からゲームを作っていると言われても、それはそうだなと思っていたのですけれど、まさかコーエーの社長がゲームを作っているとは驚きましたね。

それをメルカリの山田進太郎に話したら、「ネットのサイトなんて簡単に作れるから、田中さんもメルカリぐらい簡単に作れますよ」と言われまして。

簡単に作れるわけがないと思って、何を言ってるんだと思ったのですが、確かにゲームを全画面遷移作るのは難しいけれど、ネットサービスなんて100画面遷移くらいしかないので、1週間くらい篭れば全画面遷移どころかヘルプのページまで作れるな、と思いました。

確かに、うんうんと会社の経営に悩むよりも、私が一生懸命作った方が、時価総額1,000億円、2,000億円の事業が簡単に創れるのではないかと思いましたね。

しかも、その方がトラックレコードはあるなと思って。

会社の経営に労力充てるよりも、時価総額1,000億円クラスのサイトを作る方がよほど簡単かもしれないと思いましたね。

ですので、最近新しい事業を作る時は、画面遷移レベルで、全部こうしようああしようという風に考えているんです。

ライズさん(ライズカンパニー)なんかも最近はそうだと思うのですが。

画面遷移レベルで、これをこうやったら全ていけるんだよ、データベースの設計はこうするんだよ、くらいの勢いで言えるビジネスというのが、私がやっても全部できるビジネスだなという風に思っています。

こういう風なものであれば、先程も話したような、メルカリやLINEや昔のそういったゲームのようにこの瞬間やった方がよいものもそうでしょうし、これを30年やったら勝てるぞというタイプのものもそうでしょうし。

そういったものが自分にとっては確信を持ってできるものなので、リソースを投入できるなという風には考えていますね。

岡島 面白いですよね。

川邊さんはそこから足を洗われたのですよね。

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川邊 そうなんですよ。

私も95年に電脳隊を作って、20年間ずっとサービスに参画してきたのですが、最後に「Yahoo! JAPAN」トップページ アプリをやって、去年、今年度ですね、初めてそれらを全部部下に任せることにしました。

自分より上手くできる部下を作ることに喜びを見出すように、毎日気持ちが変わりつつあるという、今の川鍋さんとは全く逆方向にブレてやっているんですけれどね。

岡島 そういうのを最近は、後ろから追い込んで行く「羊飼い型のリーダー」と言うんですよね。

今一番ピカピカの人たちにやらせておく、みたいな。

どちらがいいということに関しては、アメリカでも日本でもすごく議論があると思います。

すごく思い入れがある人にやってもらうというのもあるだろうし、天才に沢山やってもらうというのもあるだろうし。2パターンありますよね。

田中 私がイメージしているのは、私と一緒に走れるタイプの人ですね。

そうは言っても、全部は作りきれませんよ。

結局、私の言っていることを理解できる人と仕事をすることが、私にとって一番いいことだなと思いましたね。

私にも、川邊さんのように経営をしている時がありましたが、自分なりにすごく感じたことは、自分の強みを活かしきれないと勝てる訳ないなということです。

自分の圧倒的な戦闘力は何かというと、このサービスがいけるかとか、この画面こう作れるとか、データベースはこうしておけとか、ビジネスモデルをこう組み込んでいけば、ここでネットワーク効果がこうできるということを一気通貫して、一気にガラガラガラと答えを出せるということなんですよね。

今日、初めて東京大学に来たんですけれど、私が偏差値75の東京大学に入れるとしたら、サービスをこうやって作ったら、こうやって儲けられるというのを説くことに関しては日本でも最大級にできる自信があるので、その偏差値でですかね。

逆に、人をまとめあげるとか、説明するとか、お金の計算をするという面では、偏差値55か60くらいしかない気がします。

そこはまあまあやっておいて、赤点をとらないようにしておきながら、やはり自分に競争優位のあるところで圧倒的に勝つべきだという風に思っているんですよね。

川邊 田中さんだったら率先垂範のリーダーシップ成果を出すと思うんですよね。

私には大した自信や能力もないので、チームワークを重視することで、以前のYahoo! JAPANよりももっと成果が出るような経営スタイルに変えていきたいと思っているんですよね。

ラグビー・フットボール協会コーチング・ディレクターの中竹竜二さんがそこにいらっしゃいますが、以前「どうやってマネジメントされているんですか?」と尋ねたら、「キャプテンがミーティングをし、そのミーティングがどうだったかということを、後でキャプテンに聞いています」と仰っていました。

これは、何だかすごいことをされているなと思って。

岡島 フォロワーシップのようなことですね。

川邊 「今のミーティングどうだった? どんな内容だった?どんな意思決定をしたの?」と、そういうものすごく間接的なやり方ですよね。

普通なら待てずに、自分でミーティングをしてしまいますよね。

けれども、監督というのはプレイヤーではないから、いきなり花園なんかには出られない訳ですよね。

スポーツで成果が出るやり方があるのだったら、経営でもそれをやってみたいなと思ってチャレンジしているところですね。

岡島 Pixarなんかではコレクティブ・ジーニアス(Collective Genius)の概念が重視されているようですよね。

どちらが正しいというのはないと思うのですが。

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川邊 イノベーションは結局組み合わせの数でしかない訳ですよ。

「メディチ・インパクト」という本で、組み合わせが乗数的に増えていくとどんなことが起こるのかということについて、音楽の事例などが引用されながら説明されています。

率先垂範で自分の組み合わせとついていく人たちの組み合わせでしかないのですけれど、Yahoo!  JAPANのように約6,000人も従業員がいると、色々な組み合わせのチャンスが増え、新しいアイディアが生まれやすいので、そういう中からイノベーティブなものが出てくればいいかなと思ってやっています。

質問者4(中竹氏) 今の話、非常に興味深いですね。

イノベーションをやっている人たちというのは、自分がイノベーションをやっていると思っているのか、そういう会社はイノベーションやるぞ!と言っているのか。

(クックパッドの創業者の)佐野さんを含めて色々な方が、「この世の中では、20年なんて当たり前なんだ」と言って、「これはイノベーションでも何でもなく、人間の原理なんだ」って。

要するに、私がすごく興味があるのは、イノベーションの再現性を、組織のリーダーがどんな風に考えて創り上げていくのかなということですね。

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中竹 竜二
公益財団法人日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター
株式会社TEAMBOX 代表取締役

1973年、福岡県生まれ。
早稲田大学人間科学部卒業。レスター大学大学院社会学部修了。三菱総合研究所でコンサルティングに従事した後、早稲田大学ラグビー蹴球部監督、ラグビーU20日本代表監督を務め「監督の指示に従うのでは無く、自ら考え判断できる選手を育む」という自律支援型の指導法で多くの実績を残す。
日本で初めて「フォロワーシップ論」を展開したひとり。現在は日本ラグビー協会コーチングディレクター(初代)として、指導者の育成、一貫指導体制構築に尽力する一方、ラグビー界の枠を超え、民間企業、地方公共団体、教育機関、経営者団体等、各方面から分かりやすく結果を出す講師として講演・研修・セミナーなどへの出演依頼多数。2015年はU20日本代表ヘッドコーチを務め、ワールドラグビーチャンピオンシップにて初のトップ10入りを果たす。2014年に株式会社TEAMBOXを設立。次世代リーダーの育成・教育や組織力強化に貢献し、企業コンサルタントとして活躍中

田中さんも川邊さんも、社内で色々なイノベーションを起こしてこられた訳ですけれど、本人もそうですけど、やらせている側のひらめきなのか、組み合わせの集合知なのか、そもそもこんなの当たり前だよねと思っているのか、不安の中でやったら何だか上手くいったよね、なのか。

そのイノベーションの再現性を、どういう風に見極めていらっしゃるのかをちょっとお聞きしてみたいですね。

川邊さんが仰った組み合わせのところなのか、逆に田中さんは違う意見を持っておられるのかというのをちょっとお聞きしたいなと思います。

川邊 イノベーションを早く成功させて、Facebookに自慢したいなくらいにしか思っていないんですけれども。(笑)

要するに自己組織化するということを言っている本がありましたけれど、この数年は、組み合わせの妙で新しいものが生まれてくるといいなと思いながら挑戦してきました。

昔は、自分の感性とひらめきでやっていたんですけれど、やはりYahoo! JAPANやソフトバンクグループのように幅が広がってしまって、何でもやっているみたいな状態になってしまうと、自分の感性とひらめきだけでは収束がみられません。

ですから今は、「おもろい奴」と「おもろい奴」をぶつけたらどうなるかとか、すごく組織立ったチームの中に1人だけ変な奴入れるとどうなるかとかというように、チームのマネジメントの中でイノベーションが生まれてくることを期待しながらやっているところです。

だから、そういう「チーミング」で再現性をもたせたいなと思っていますね。

岡島 しかも、仲良しクラブ的ではなくて、切磋琢磨するような人たちを集めて、という感じですよね。

川邊 もちろんです。

所謂ダイバーシティですけれど、なるべく異なる知識や違うバックグラウンドを持った人たちのチーム、それも、そんなに大勢のチームだと拡散するだけですから、5人くらいのチームで何が起きるのかなと思いながらやっていますね。

岡島 今そのリンダ・ヒル(Linda A. Hill)の提唱するコレクティブ・ジーニアス(Collective Genius)というのは、まさにそういう世界のことですね。

異なる種類の人たちを集めて、がりがりやるみたいな。

川邊 けれども、恐らく率先垂範より間違いなく時間がかかると思いますよ。

質問者4 そういう時に、「イノベーションをやるぞ!」って具体的に言っているんですか?

川邊 そう、大事なことを言うのを忘れましたけれど、これは会社としてやっている訳ではなくて、私個人がベンチマークにしているのは、夢中になっているかどうかだけですね。

当事者達が夢中になってやっているのか、それとも四半期の目標のためにやっているのかを見極めて、夢中になってやっているのであれば、どんどん集中してやれ、と。

目標のためにやっているなと感じたら、組を解散してまた違うようにします。

夢中になってやっているかどうかというのは、要するにフロー状態に入っているかどうかで判断していますね、個人的には。

田中 ご質問を頂いている、イノベーションという言葉の定義にもよるなと思っています。

私が求めている意味でのイノベーションというのは、はっきり言って、Googleの検索エンジン一発作ったら、Facebookのアイデア一発作ったら、LINE一発作ったら、こうなる(うなぎ登り)訳ですよ。

そういうイノベーションを1個起こせれば、はっきり言って、Googleみたいなものを5個生み出さなくても、1個でも十分ですから。

という意味においては、イノベーションの破壊力たるや半端ない訳ですよね。

これが1個あれば、隣接したレバレッジ領域をやっていくだけで、ある意味生きている限りにおいては十分ビジネスできてお釣りがくるぐらいのものが、真のイノベーションかなと思っていて、こういうものをどうやって作れるのかなということが最大のテーマです。

iPadだとかiPhoneを2、3回作れるスティーブ・ジョブズは超人ですが、我々一般人はそれを1回でもできれば人生の奇跡みたいなものかなと捉えています。

1回の奇跡をいかに掴むのかということが、最大のテーマかなと思っています。

そこで常に思っていることですが、自分がどういう考え方をしているのかということを、やはり周りの人たちに理解して欲しいなと思っています。

最近も新卒の人たちとチームを組んで、新しいサービスを作ろうという話をしていたのですが、その中の一人がポロッと漏らした言葉に、「私の言っていることを分かってくれているな」と感じたことがありました。

「田中さんは、バカバカしいほど、同じようなシンプルなことを突き詰めてやっているだけなんですね」と。

「周りの意見はこう違っていて…」とか「こういう話を聞いていて…」と言う人には、そういう周りの雑音に惑わされずに真理だと思ったことを追求するのみだ、ということを率直に言っている訳です。

私からすると、それがイノベーションにたどり着く考え方だと思っているので、実践を通して体験して欲しいと思っています。

そのようにして再現性を高めようと思っていますね。

川邊 私も、イノベーションをやろうぜみたいなことは言っていなくて、とにかく夢中になれることや、自分が楽しいと思えることをやろうということですね。

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岡島 それは共通していますよね。

質問者4 非常に腹落ちしました。ありがとうございます。

岡島 ありがとうございます。

時間になってきましたので、一言ずつコメントを頂いて、最後にしていきたいなと思います。

川鍋 こういった既存の、歴史の長い業界でイノベーションを起こしていくことには、相当な文化的軋轢がありますね。

ある意味分かりやすいのは、リソースを全て外からとってくるしかないということですね。

あとは接続人材を何人か、必死に両側からぎゅうぎゅう…

川邊 接続人材って何ですか?

川鍋 両側を行き来できる人材ですね。

そういう人材はすごく少ないんですけれど、そういう人材に蝶番になってもらうんです。

蝶番というのは非常にヘビーですが、その何人かで何とか繋ぎながら、新しい人たちをまとめていくしかないなと思っていますね。

私の場合は、タクシー業界でイノベーションを起こしたい人、可能性を信じる人を一生懸命集めているところです。

もともとイノベーションがない業界なので、皆、色々な可能性があることに大きな喜びを感じています。

そういう意味では、どちらかというと「イノベーションをやるぞ!」というタイプなんですけれどね。

来年、再来年、3年後にイノベーション起きているかどうかで評価を頂ければと思います。

ありがとうございました。

川邊 この対談を通して、今やろうとしているマネジメントスタイルを再確認できてよかったです。

ただ一方で、ちょっとリスキーなことをやっているのかなという気もしました。

でも、そこはサラリーマン役員の身軽さでですね、田中さんみたいに失敗したら自分の資産が全部なくなってしまうみたいなことではない気軽さで、ぶれずに、人を押してイノベーションを起こす、チームを押してイノベーションを起こす、任せてみてイノベーションを起こすということに、もう数年はチャレンジしていきたいなと思っています。

今日はありがとうございました。

田中 これから日本のネット業界では競合も増え、業界を二分した戦いになっていきます。

我々もどちらか一方につきますので、狭い業界でバトったらぜひご連絡下さい。(笑)

面白おかしく盛り上げるのは得意なので、その業界でイノベーションを起こしたいなという風に思っています。

我々も、ここにいらっしゃる方も、大きな会社も、業界を二分して戦っていくような時代がもっともっと加速していくのかなと思っているので、ここにいらっしゃるような方に負けないように頑張りたいなと思っています。

ありがとうございました。

岡島 ありがとうございます。

色々な角度からイノベーションについて議論してきました。

夢中になれることをリーダーが引っ張っていくことであったり、チームを作ってメンバーにやってもらう環境を整えていくみたいなことであったり、あるいは既得権益とどう戦っていくかといった政治の話、世論をどのように作っていくかというようなことも含めて、非常に多様な視点から本音で語って頂き、大変有意義な時間でした。

パネリストのお三方に、大きな拍手をお送り下さい。

ありがとうございました。

(会場拍手)

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(終)

編集チーム:小林 雅/Froese 祥子/藤田 温乃


2016年9月6-7日開催予定のICCカンファレンス KYOTO 2016 「ICC SUMMIT」に本セッションの4名の登壇者が登壇を予定しております。ライブで議論に参加する価値を是非感じてください。

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