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「新しすぎるアイデアが伝わると、事業が加速する」5回シリーズ(その4)のテーマは、事業の伝え方について。シード期とシリーズAのスタートアップでは、伝えるべきメッセージが明確に違うといいます。「ビジョン」は「原体験」はどこまで必要なのか?ぜひご覧ください。
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ICCサミット FUKUOKA 2018のゴールド・スポンサーとして、電通様に本セッションをサポート頂きました。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018 は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2018年2月20日・21日・22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 8F
新しすぎるアイデアが伝わると、事業が加速する
Supported by 電通
(スピーカー)
片山 智弘
株式会社 電通
ビジネスディベロップメント&アクティベーション局 プロデューサー
澤山 陽平
500 Startups Japan
マネージングパートナー
鈴木 契
株式会社 電通
関西支社 マーケティング・クリエーティブセンター コピーライター
(モデレーター)
菅原 健一
スマートニュース株式会社
ラージアカウントセールス責任者 兼 アドプロダクトマーケティング責任者(登壇当時)
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最初の記事
1.スタートアップを支援する登壇者が「新しすぎるアイデア」の伝え方を徹底議論!
1つ前の記事
3.「新しすぎるアイデア」を伝えるために留意すべき5つのポイント
本編
菅原 では、次の質問です。
「新しすぎるアイデアが伝わる」とは、どういうことなのでしょうか。
「新しすぎるアイデア」は、伝わりにくいですよね。
相手にどのくらいの理解度を求めるかを決めておく
鈴木 スタートアップは新しいアイデアを持っていることが多いのですが、周りがついてこられないことがあります。
とても素晴らしいアイデア、しかし先進的すぎて、一般的には理解されにくいアイデアです。
株式会社 電通 関西支社 マーケティング・クリエーティブセンター コピーライター 鈴木 契 氏
そこで「じゃあどうすればそのアイデアが受け入れられ、愛されるようになるのか?」を考え、サポートするのが僕たちの仕事です。
特に、スタートアップ企業の方の強い思い入れやアイデアの斬新さは、とても価値のあるものだと思います。
そこでいつも、まずはその想いの丈を語ってもらうようにしています。
菅原 まずは聞く、というわけですね。
鈴木 特に僕は投資家ではないですし、業界に詳しいわけでもないので、「他にも同じような例があるよ」と言ってプレッシャーを与えることもありません。
ですから、自由に想いをぶつけてもらえるのです。
そうすると、実はそれまで気づいていなかったストーリーが言葉の端々に見えてくることがあるので、それを拾ってストーリーにしていきます。
それが「下ごしらえ」で、そのあとまとめていきます
スタートアップの中には、かなりテック系の話もあります。
澤山 昨日のリアルテック・カタパルトなどが例に当てはまりますね。
「すごい魚群探知機できちゃいました!」のような話がありますね。
▶参考:「アクアサウンド」は70年間不変だった魚群探知機技術にイノベーションを起こす(ICC FUKUOKA 2018)【動画版】
鈴木 そうですね、それぞれ素晴らしい技術力の結晶です。
しかし、それは世間から見ると、「どう使っていいのかわからない」「その素晴らしさをどう使っていいのかわからない」「どこが新しいのかわからない」という反応になりがちです。
先日、とある大学の教授に「君、文系、それとも理系?」と聞かれました。
「文系です」と答えると、「じゃあ文系にわかるように話します」と言われました。
他のある教授と話したときは、その教授がずっと話し続けていたのですが、途中で止まり「君、どこまで話の内容を理解したいと思っているの?」と聞かれました。
澤山 面白いですね。
鈴木 「こちらがどこまで知りたいか」を試してくるのは、ある種哲学のようで面白いですね。
そのときは「全部は話さなくて大丈夫です」と伝えました。
なぜなら、伝えたいエッセンスは最初の方に詰まっていることが多いからです。
その重要な部分さえ汲み取れれば、僕のアウトプットの質・量はそれほど変わりません。
その教授に、「この内容を誰に伝えたいですか?」と聞いたら、「『知った風なことを言う人』に伝えたい」という答えをもらいました(笑)。
その教授のいるテクノロジー業界には、「何となくテクノロジーが分かった気になっている」人たちがいるようで、そういう人たちに伝えたいということでした。
これは、僕がよくする「どこまで伝われば勝ちですか?」という話に通じます。
ビジネスでいうところの、勝利条件と似たような話です。
つまり、何かを伝える際、伝えるべき相手の知識がどのくらいなのかを考え、相手にどのくらいの理解度を求めるのか、についてあらかじめ設定しておくのが大事だということです。
僕は関西出身なのですが、関西圏では「知らんがな」というツッコミがありますよね。
「そんなこと言われてもよく分からないし、どうでもいいよ」のような意味合いの言葉です。
例えば1時間熱弁しても、相手から「知らんがな」と言われてしまったら、それは伝わらなかったということです。
何かを人に話す時には、人はいつも「知らんがな」という感覚でいるということを、心に留めておくべきだと思います。
「善いことをしたい」より「どう行動すべきか」を語る
鈴木 先日、大阪にあるスタートアップの「WEFABRIK」の話を聞く機会がありました。
菅原 これはどんな事業を行っている会社でしょうか?
鈴木 BtoB向けに、余った「布」をトレードするためのプラットフォームを作っている会社です。
片山 流通システムですね。
鈴木 その際に見せて頂いた企画書の表紙が、こちらです。
菅原 布のマーケットプレイスの会社なのに、「世界を救う」みたいな話が始まりそうに見えてしまいますね…。
澤山 しかし、ベンチャー企業の場合、このような画像を選ぶことが多い気がします。
鈴木 「地球に善いことをしたい」という情熱や思想を社内で共有する場合なら良いかもしれませんが、相手がいる場合、このような抽象的な画像を選んでしまうと、本当に伝えるべきメッセージが伝わりにくくなってしまいます。
僕は、「正しいこと、善いことだからといって、人がそれを実行するとは限らない」と思っています。
例えば、献血を例にとりましょう。
献血自体が善いことなのは、誰もが分かっていることですよね。
でも、その「善いこと」をする人がなぜ増えないのか?というのが、着目すべき部分です。
つまり、「善いことをしたい、するべきだ」と叫ぶのではなく、それらを実現するために「どういう行動を起こすべきなのか?」を考え、伝えることが重要です。
起業家個人の「とっておき」のエピソードで魅力が伝わる
鈴木 先ほどのWEFABRIKの話に戻ると、おそらくあの画像は、「事業によって、環境を良くしたい」という想いから来ているのだと思います。
これは、会社がサービスをローンチする前にコピーなどを提案したものです。
実はこの会社の社長は、もともと繊維商社で働かれていた方でして、その際、「倉庫の中に、使い道のない大量の布が眠っている」という状況を、実際に体験していたのです。
その話を聞いて、「ものすごく良い体験をされているな」と感じました。
なぜなら、実際に「何とかしなければいけない」と感じる体験をされた方が、何とかするための事業を行っている、というストーリーが生まれるからです。
起業家にとって、投資家から「この起業家は絶対に諦めないだろうな、絶対にこの事業を続けるだろうな」と感じてもらうことが大事なステージがあると思うのです。
そのステージにおいて、起業家個人の「とっておき」のエピソードを事業内容に結びつけて、事業を始めることになったきっかけを数行のストーリーとして仕上げることで、より魅力を伝えやすくするわけです。
この一番大事な部分、事業を始めた理由をまず伝えることはとても大切です。
広告作りで培った「ストーリーを組み立てて、メッセージを圧縮して伝えやすくするスキル」を用いた僕らのサービスは、こういう場面できっとお役に立てるのではないかと考えています。
菅原 「何」を事業として行うかはもちろんですが、「なぜ」その事業を行うのかまでを明確に伝えなければ、なかなか投資に結びつかないですよね。
スマートニュース株式会社 ラージアカウントセールス責任者 兼 アドプロダクトマーケティング責任者(登壇当時) 菅原 健一 氏
印象に残るのは「事実」より「ストーリー」
澤山 少し関連性のある話として、プレゼンテーションのトピックの順番が挙げられます。
500 Startups Japanでは、優先順位の高い方から、「トラクション」(ユーザー数や売上などの実績)、「チーム」、「プロダクト」、そして「ビジョン」の順番で話すように伝えています。
なぜかと言うと、どれほど素晴らしいビジョンを持っていても、それを実現できるプロダクトがなければ意味がないですよね。
そして今は他社との競争が激しい時代ですから、今この瞬間に素晴らしいプロダクトを持っていても、そのプロダクトを常に改善し続けられるチームが必要です。
諦めないチームなのか、優秀な人たちを惹きつけられるチームなのか、という点もポイントです。
トラクションは、それらを示す証拠のような立ち位置です。
シードステージにある会社の場合、トラクションを持っていないことが多いため、一番優先度が高いのは、「どういう人たちが、どういうストーリーでその事業を行なっているのか」というチームの話になるわけです。
500 Startups Japan マネージングパートナー 澤山 陽平 氏
最近、Twitter上でも「事業において、原体験は必要か?」という議論がありました。
原体験そのものは必ずしも必要ではないかもしれません、ただ、「チームにいるメンバーが、なぜ、どういう想いでそのプロジェクトに関わっているのか」は非常に大事だと思います。
この文脈で言うと、先ほどの地球の絵のWEFABRIKの企画書の表紙は、ビジョンが前面に出すぎていて、飛躍している気がします。
大きな目標を持っていることは素晴らしいことですが、聞き手の共感を得るには、遠くに行きすぎていると思います。
ですので、もっと身近に感じられる、共感をしてもらえるストーリーを選んで話すことがとても大事です。
鈴木 チームが持っているアイデアとその前後にある文脈を聞いて、聞き手が内容を飲み込みやすいようなストーリーとして整理するのが、僕たちの仕事かなと思っています。
澤山 同感です。
人がピッチを何十個も聞いた時、最後に印象に残るのは「事実」よりも「ストーリー」の部分ですので、ストーリーを織り込むのが重要です。
ビジョンだけで資金調達できるのは最初だけ
澤山 資金調達の場合、どのステージにいるかによって、アピールするべきポイントが変わってきます。
ビジョンを持つのは大事ですが、ビジョンのみを語って資金を調達できるのは、シードの中でも本当に初期段階のシード、もしくはエンジェルラウンドだけだと思います。
その次の段階、僕たちVCが投資をするようなシードステージになると、やはりチームやプロダクトの話をする必要があります。
そしてシリーズA(サービスやプロダクトをリリースし、事業を開始する段階)になると、ビジョンがどれだけ実現できているか、という点にも言及します。
シリーズAの段階まで来れば、トラクションをもとに「今、事業はこういう段階まできています、だからこそ、今後こういう未来が広がっていくはずです」というストーリー展開が可能なので、ビジョンに説得力を持たせられます。
(続)
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続きは 5.電通のスタートアップ支援は「クリエイティビティ」の投資【終】 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/戸田 秀成/浅郷 浩子/本田 隼輝/尾形 佳靖/大塚 幸
【編集部コメント】
編集をする際にも、どうすれば読者の共感を得られるだろうか?というのは最も力を入れて考えるポイントの1つです。前回の「味噌汁」のお話にもあったとおり、その“原液”となる起業家の想いやエピソードは、メッセージを創る上で本当にかけがえのないものです。次回はいよいよ最終回。ぜひ最後までお楽しみください!
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