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インテグリカルチャーは細胞培養で「純肉(クリーンミート)」を創り出し、食糧生産の超省資源化を実現する(ICC KYOTO 2018)【文字起こし版】

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ICCサミット KYOTO 2018 リアルテック・カタパルトに登壇し、見事第3位に輝いたインテグリカルチャー羽生 雄毅さんの【インテグリカルチャーは細胞培養で「純肉(クリーンミート)」を創り出し、食糧生産の超省資源化を実現する】プレゼンテーションの文字起こし記事をぜひご覧ください。

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18日〜21日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

ICCサミット KYOTO 2018のゴールド・スポンサーとして、電通様に本セッションをサポート頂きました。


【登壇者情報】
2018年9月4日・5日・6日開催
ICCサミット KYOTO 2018
Session 3A
REALTECH CATAPULT リアルテック・ベンチャーが世界を変える
Supported by 電通

(プレゼンター)
羽生 雄毅
インテグリカルチャー株式会社
代表取締役

2010年、オックスフォード大学博士(化学)、東北大学多元物質科学研究所、東芝研究開発センター、システム技術ラボラトリーを経て、2014年、細胞農業の実現に向けて研究者や学生数名とともに純肉の研究開発の有志団体”Shojinmeat Project”を立ち上げる。 2017年、米国シンギュラリティ大学主催の”Japan Global Impact Challenge”に優勝、シリコンバレーでのGlobal Solutions Programに日本人として初めて参加。純肉の事業化に向けて2015年にインテグリカルチャー(株)を設立、代表取締役を務める。

「ICC KYOTO 2018 リアルテック・カタパルト」の配信済み記事一覧


インテグリカルチャー代表取締役の羽生と申します。

私が取り組んでいるのは、「細胞培養で肉を作ろう」という、アイデア的には非常に単純なものです。

ウシ・ブタ・ニワトリなどの細胞を少しもらい、大きなタンクの中で培養液とともに細胞を育てて肉にするというものです。

実際にやってみたのがスライド右下の写真で、「培養鶏レバー」と書いてありますが、ニワトリの肝臓細胞を増やしました。

3日前にちょうど『君の膵臓をたべたい』という映画が公開されましたが、「君の肝臓を食べたい、だから作って食べてみた」というのがこれです。

(会場笑)

純肉培養が実現するとどうなるかというと、次のスライドのような農村風景があり得るのではないかと考えています。

現在の肉生産には莫大な資源を必要とします。

例えば牛肉の生産には、餌の穀物が大量に必要です。

人間が穀物をそのまま消費するのに比べ、生産された牛肉の40倍近いカロリー量の穀物を消費します。

しかし、細胞培養で作れば資源を大幅に節約することができます。

水消費マイナス95%、土地消費マイナス98%というように、2桁以上もの節約が可能です。

最終的には、「培養液をどのように作るのか」という問いに辿り着くのですが、それは藻類や人工光合成によって作られるのではないかと考えています。

それによって実現する未来がスライド上に示されていますが、これを長閑な農村風景と呼ぶかどうかはともかく、1つの形だと思います。

細胞培養で食糧生産の超省資源化を実現

この技術が解決しようとしているのは、食糧生産の超省資源化ということになります。

これは昔からSFの定番で、もう1950年代からこんな話はありました。

実は、スライドのような漫画になる遥か以前、19世紀の終わり頃に「肉が細胞でできており、細胞は増やすこともできる」と分かったときから「細胞を増やせば肉になるのではないか」という話は既にありました。

私はこれを小さい頃に見て、『SimCity』でそれができる建物を自分で作ってみたりしていました。

技術的な課題:細胞培養には膨大なコストがかかる

ですが、実際に肉を作ろうとすると、まだ技術的な課題があります。

スライドは、2013年にマーストリヒト大学で、マーク・ポスト先生が実際に挑戦した時のものです。

これはGoogleを設立したセルゲイ・ブリンさんからの寄付で作られたハンバーガーなのですが、200gで2,800万円しました。

このような、コストに直結する技術的課題があります。

細胞培養はなぜこんなにお金がかかるのか?

原料である細胞培養液の内訳は、このようになっています。

このうち「基礎培地」に関しては糖分やアミノ酸などの、割とスーパーマーケットでも買えるようなものです。

ただし問題は「成長因子」、つまりホルモンがとてつもなく高いということです。

現在、再生医療の研究所などで行われている細胞培養は、ほぼこの方法で行われていて、非常に高価な成長因子を外から入れています。

このように、再生医療の研究にはすごくお金がかかります。

新発想「体内と同じ仕組みで人工的に細胞を殖やす」

でも、皆さんは体の中に何兆個の細胞を飼っていますよね。

では、体内の細胞を増やすためにドラッグストアに行って成長ホルモンを買っているかというと、そんなことはしていません。

肝臓や膵臓などが、こういった成長ホルモンを自前で作っています。

だから細胞が増えるわけなのですが、それをシステムの中で再現させたのが弊社の技術です。

これは大学発ベンチャーなどではなく、全て我々が独自で開発しているものです。

知財も全部持っておりますし、知財に加え運用の方法も持っています。

プロトタイプ1号機と2号機に加え、今月末に3号機が入る予定ですが、これは自動化しています。

これをどんどん拡大していくと、以下のスライドのようになると考えています。

これが弊社の細胞培養方法です。

「カルネット・システム」と呼んでいるのですが、これを実際にプラントにしたイメージです。

肝臓細胞に加え他の細胞もいろいろ培養していて、なおかつ閉鎖系で培養されています。

閉鎖系ならばどこへでも持っていけます。

外の景色は「火星」と書いてありますが、それが野望です。

同じ方法で、最近ウナギやマグロが激減していると言われていますが、もちろん魚の細胞でも可能です。

実は人間の細胞でも可能ですが、それは再生医療の分野で使ってください。

倫理的な問題になるので、食べないでください(笑)。

火星でも肉を食べたい!

それと同時に、この培養システムを火星に持っていきたいというのが自分の夢です。

火星でやったら、スライドのようになるのではないかと思い描いています。

でも中にはマクロスやガンダムが好きな方もいらっしゃるので、次のようなのもありなのかなと考えております。

(会場笑)

汎用大規模細胞培養技術でコスメ・サプリも作れる

この技術で要するに何ができるのかということを改めてまとめると、これは「汎用大規模細胞培養技術」です。

色々な細胞を大量に作れる技術です。

ということは、「肉に限らないんじゃないの?」と思いますよね。

実はそうでして、この弊社のカルネット・システムのインプットは糖分とアミノ酸です。

出てくるものは何かというと、いろいろな細胞と、細胞のだし汁も含めます。

有用物質と書いてある部分ですね。

コスメ、サプリ、食品というように、最終的にはもちろん肉を狙いたいということですが、それぞれ重量単価が違います。

そうすると、では上の方から事業化していけばいいのではないかということに当然なります。

そのうえで、最終的に狙う市場規模はこれです。

全世界で60億〜70億人が食べているものですから、市場規模が大体200兆円ぐらいあります。

牛肉だけでも世界で70兆円あり、国内の牛肉市場は5兆円という数字です。

しかし、この数字の裏では、まさに地球を食い潰しているような状況が起きています。

これがもし2桁でも解消すれば、少なくとも食料部門における環境負荷の問題はもうほぼ解決に向かうと考えております。

今後の事業展開:純肉の農村風景の実現に向けて

ただし、最初から肉に取り組みたいところなのですが、まずはできるところからということで2020年にこの有用物質・バイオ試薬などの分野からスタートして、2023年にコスメ・サプリ、そして最終的に肉の細胞培養を実現という方向を目指しております。

コスメの段階で、既に細胞培養で作ることによる利点が色々あります。

これに関しては既に弊社のシードラウンドで参加いただいたコスメ会社さんからも引き合いを受けており、商品開発に向けて動いています。

弊社は現在、事業提携先を探しております。

まず目先のところでは有用物質・機能性食品、そしてより中期的なところでの食品の共同開発や細胞培養による事業モデル、そして最終的にはこの純肉工場を目指しています。

段階ごとに、分野ごとにいろいろな関り方があるのですが、技術は全部つながっています。

ですから、どういう形で提携いただいても、この「純肉」の農村風景の世界にどんどん近づいていくことになりますので、どうぞよろしくお願い致します。

(終)

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編集チーム:小林 雅/戸田 秀成/本田 隼輝/尾形 佳靖/鈴木ファストアーベント 理恵

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