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4.『青春と僕』――楽天CDO・北川拓也は今、科学者として「青春」を理解する

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「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?」7回シリーズ(その4)では、楽天CDOの北川拓也さんが『青春と僕』と題したプレゼンテーション(?)を開始。北川さんが回顧して語る高校一年生の青春エピソードとは? そして脳科学の視点から見た「青春」の正体とは? ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

ICCサミット FUKUOKA 2019のプレミアム・スポンサーとして、Lexus International Co.様に本セッションをサポート頂きました。


【登壇者情報】
2019年2月19〜21日開催
ICCサミット FUKUOKA 2019
Session 2F
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?
Supported by Lexus International Co.

(スピーカー)

石川 善樹
Campus for H
共同創業者

井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO

岡島 悦子
株式会社プロノバ
代表取締役社長

北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員 テクノロジーディビジョン CDO (Chief Data Officer)

(モデレーター)

村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表

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最初の記事
1. 諸科学は万物をどのように「理解」しているか? 自然科学・社会科学・人文科学で異なる“理解の作法”

1つ前の記事
3. 人間を理解するとは「受け入れる」ということ

本編

村上 事前ミーティングで「事前資料はありますか?」と聞いたら、石川さんはスライド資料、井上さんは動画で、北川さんからは『青春と僕』と返ってきました(笑)。

井上 何のセッションだったっけ?と見直しましたよ。

村上 では場も温まってきたところで、北川タイム、お願いします!

『青春と僕』(詩:北川 拓也)

北川 はい、では改めて…『青春と僕』。

岡島 えっ、朗読(笑)!?

(会場笑)

北川 これは、「青春は存在するのか」という証明問題です。

石川 ちなみに僕が1999年に東京大学を受験した際、国語の第二問が「青春とは何か、200字で書け」という設問でした(笑)。

井上 どんな回答を書いたのですか?

石川 「僕には青春がありませんでした」と(笑)。

(会場笑)

だって勉強しかしてなかったから! それが青春なのか?と思いましたよ!

村上 「これから青春を楽しみたい」という流れですね。

井上 採点者も悲しい思いで採点してたのでしょうかね…。

石川 東大受験生に聞くなと思いましたよ(笑)。

北川 ご存知の方もいるかもしれませんが、僕も石川さんも、中高一貫の男子校に通っていました。

僕は英語を勉強するため、高校1年生の時に、テキサスに交換留学をしていました。

現地に着くまで学校が決まらない交換留学だったので、現地で楽しみに待っていたところ、何と、キリスト教の男子校に入学させられまして(笑)。

(会場爆笑)

井上 一番きついパターンですね(笑)。

岡島 しかもアメリカ南部ですしね。

北川 完全に、してやられたのです。

そこで僕は思ったのです、「青春とは、都市伝説だったのだ」と。

石川 あると聞いていたのに!

北川 そう思っていた僕がこの度、「青春はある」と言わせて頂きます!

石川 生物学的に、存在するということですね!

「青春」とは「前頭葉の発達期間」である

楽天株式会社 常務執行役員 テクノロジーディビジョン CDO 北川 拓也 氏

北川 生物学的に、青春とは、「前頭葉の発達期間」のことを言うのです。

石川 理性を司る脳の部位ですね。

北川 そうです。

前頭葉とはまさに人の本能や感情をコントロール、または調整する部位で、人間の体の中で最も遅く完成する部位として知られています。

何と、20代半ばから後半にならないと完成しないのです。

これは驚くべきことです。

ですから青春期にある子どもは、本能や感情を抑えられないので、衝動的な行動をするのです。

石川 盗んだバイクで走り出したりね(笑)。

北川 そうそう(笑)。

前頭葉が発達しきっていないので、青春期の子どもは、他人のことを考えるのが苦手です。

自己中心的ですし、恋愛をすると、理屈を超えた行為をします。

今日は、これを証明するデータを持ってきました!

村上 青春が存在するということが、シンプルなチャートで解き明かされようとしています(笑)。

北川 これで青春の存在が証明されますから、皆さん、心して見てください!

こちらです!

「青春」を理解するための、たった1枚のチャート

当日のスライドを元にICCパートナーズ作成
(出典:グラフは『Behave: The Biology of Humans at Our Best and Worst』(Robert M. Sapolsky), Penguin Books, 2017より)

横軸は、左から「幼児」「少年少女」「大人」です。

この実験は、小さい報酬、中くらいの報酬、大きい報酬をそれぞれのグループに与えた時「どのくらいの喜びを示すか」を、分泌されたドーパミン量で測ったものでした。

右端の「大人」の部分が右に行くにつれて大きくなるのは、「小さい報酬には少しだけ喜び、大きい報酬を与えるともっと喜んだ」ということです。

しかし対象が「幼児」の場合、こうなるのです。

当日のスライドを元にICCパートナーズ作成
(出典:グラフは『Behave: The Biology of Humans at Our Best and Worst』(Robert M. Sapolsky), Penguin Books, 2017より)

簡単に言うと、幼児は「小さい報酬にも大きい報酬にも、同じくらいの喜びを感じた」ということです。

村上 何をしても喜ぶんですね。

石川 うちの3歳の息子は、うんちをしても喜びますからね(笑)!

(会場笑)

北川 お子さんがいる方はよく分かると思いますが、子どもはちょっとしたことでもすごく喜びます。

村上 中央のバーの値が高いのはどうしてでしょうか?

北川 これは統計上の誤差だと思います。

結果としては「どの報酬でも同じくらい喜んだ」ということですね。

これが青春期の少年少女となると……。

井上 気になる!予想しませんか?

北川 予想しますか?では、どなたか回答をお願いします!

問:報酬サイズで少年少女の「喜び」はどう変わるか?

石川 ここはやっぱり、澤さんでしょう。

すべての年代にプレゼンをしている人ですから。

澤 円氏 全ての報酬サイズで、値が低く出るのではないでしょうか?


澤 円
日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長

立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。2006年よりマネジメントに職掌を転換し、ピープルマネジメントを行うようになる。直属の部下のマネジメントだけではなく、多くの社内外の人たちのメンタリングも幅広く手掛けている。数多くのイベントに登壇し、プレゼンテーションに関して毎回高い評価を得ている。2011年7月、マイクロソフトテクノロジーセンター センター長に就任。2015年2月より、サイバークライムセンター日本サテライトの責任者も兼任。2018年6月より、業務執行役員。著書:「外資系エリートのシンプルな伝え方」「マイクロソフト伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術」「あたりまえを疑え。自己実現できる働き方のヒント」。連載:ダイヤモンド・オンライン「グローバル仕事人のコミュ力」/エンジニアtype「澤円が解説!エンジニアキャリアNew Wave」。Twitter:@madoka510

一同 あ~なるほど!

石川 彼らは絶望してますからね!

岡島 遊びを作っている人にも聞いてみましょうよ。

石川 アソビューの山野さん!

山野 智久氏(以下、山野) 青春期は感受性が豊かなので、全部の値が高くなるのではないでしょうか?


山野 智久
アソビュー株式会社
代表取締役社長

アクティビティ、体験、レジャーチケットなど「遊び」の予約ができる日本最大級マーケットプレイス「asoview!(アソビュー)」、思い出をプレゼントするギフトサービス「asoview! GIFT」などWEBサービスを運営。また、行政とベンチャー企業の垣根をなくし、共に地方創生を実現することを目的とした一般社団法人熱意ある地方創生ベンチャー連合を立上げ、共同代表理事に就任。観光庁・自治体の観光戦略のアドバイザーを歴任するなど多方面で活動。1983年千葉県生まれ。明治大学法学部法律学科卒。新卒にて株式会社リクルートに入社。2011年アソビュー株式会社を設立。

村上 逆に「より値が高いのではないか」ということですね。

北川 幸せで仕方がない時代ということですね。

山野 青い春、ですからね(笑)。

北川 どうやら回答者が若い頃、どういう青春期を送ってきたかが透けて見えますね(笑)。

では、結果を見てみましょうか!

村上 行きますよ、じゃじゃーん!

出典:『Behave: The Biology of Humans at Our Best and Worst』(Robert M. Sapolsky), Penguin Books, 2017より

(会場から感嘆の声)

北川 こうなりました!

村上 値がマイナスとはどういうことですか?

北川 その通りで、大事なのはそこです。

少年少女は「小さい報酬などいらん!そんなものは、よこしてくれるな!」ということです。

そういう人たちを、ICCサミットの会場で見たことありませんか?

岡島 あります!

北川 100億円規模ではなく、1兆円を目指すという人たちです!

井上 ここには青春が集まっているということですね(笑)。

北川 ICCに参加する皆さんは、青春期真っ只中ということですよ!

冗談はさておき、これを読み解いてみます。

青春期の脳には「大きな報酬」が見えている

北川 青春時代には、小さい報酬を与えると、それは期待値外れだという反応になります。

一方で、異常なまでに大きな「リスク」をとろうとするのです。

これは例えば、経営者であれば小さい報酬を捨てて大きい買収を仕掛けたりとか、立場を捨てて新しいことを始めたりといった行動です。

それはなぜか? 未来にものすごく「大きい報酬」が見えているからです。

それは大人が見ているよりもずっと大きなものなのです。

逆に、小さい報酬なら、むしろ捨てようということです。

これが「青春」なのです。

井上 青春時代にスタートアップを始めれば良いのでしょうね。

北川 まさにその通りで、スタートアップは若い頃に始めるべきという意見がありますが、その裏には生物学的な理解が存在していたということです。

石川 グラフを見てこんなに興奮したことは、なかなかないですよ(笑)。

村上 ないね!

岡島 すごいよね。1枚のチャートで、会場の心を全部つかんだ。

北川 「青春の証明」です。Q.E.D.と書かせてもらいたい!

井上 それは会場に通じない(笑)。

▶編集注:数学における証明の最後に記載するフレーズ。ラテン語の“Quod Erat Demonstrandum(かく示された)”より。

青春期の脳は、スタートアップに適している!?

村上 井上さんも今おっしゃいましたけど、前頭葉の完成が20代以降であるなら、20代までに起業すべきということですよね。

北川 そうです。

岡島 しかも、大きいものを狙うべきということですよね。

北川 もう1つ、大人になってからも、こういった環境を自分で創り出すことで大きな起業ができると思います。

例えば、小さい報酬だと自分自身がダメージを負うくらいの報酬設計にしておくとか。

石川 小さな成功は、むしろペナルティになるということですね。

楽天はそういう設計になっているのですか?

北川 いや…。

(会場笑)

岡島 北川さん、執行役員ですよね(笑)?

北川 立場上、若干、言いにくいこともありまして「大人」の環境にいます(笑)。

でも今後、スタートアップ界隈のしくみをデザインするなら、これを意識して、年代ごとに報酬設計を変えても良いのではないかという示唆もありますね。

井上 幼少期から大人までこういう変化をたどるのは、人間としてどういう意味があるのでしょうか?

北川 進化論の観点から、最も有効な発達の方法だったのではないでしょうか。

岡島 体が先に大きくなるけれど前頭葉がまだ完成していない、そのアンバランスな状態によって「気持ちが揺れる」ということも言われていますよね。

井上 今後人生が100年になると、このさらに右側にもグラフが立つようになります。

その場合、小さい報酬の場合でも喜びの値は大きく上がると僕は思うのですが、皆さん、どう思われますか?

村上 さっきのスーパーアダルトの…。

石川 冒頭の92歳の方!歳をとっておじいさんになるとどうなるのか、ということですよね。

(続)

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編集チーム:小林 雅/花本 夏貴/上原 伊織/尾形 佳靖/戸田 秀成/大塚 幸

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