人間を理解するとは「受け入れる」ということ | 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

3. 人間を理解するとは「受け入れる」ということ

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「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?」7回シリーズ(その3)は、ハーバードビジネススクールの“Being教育”そしてリンクトインの“コンパッションマネジメント”から、相手を理解すること・受け入れることの大切さに迫ります。ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

ICCサミット FUKUOKA 2019のプレミアム・スポンサーとして、Lexus International Co.様に本セッションをサポート頂きました。


【登壇者情報】
2019年2月19〜21日開催
ICCサミット FUKUOKA 2019
Session 2F
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?
Supported by Lexus International Co.

(スピーカー)

石川 善樹
Campus for H
共同創業者

井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO

岡島 悦子
株式会社プロノバ
代表取締役社長

北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員 テクノロジーディビジョン CDO (Chief Data Officer)

(モデレーター)

村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表

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最初の記事
1. 諸科学は万物をどのように「理解」しているか? 自然科学・社会科学・人文科学で異なる“理解の作法”

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2. 人間を理解するヒントは、京都の『洛中洛外図』にあり!?

本編

村上 本題に戻りますが、「理解する」というのは、つまり何なのでしょうか?

例えば僕はいつまでたっても、石川さんのことも、岡島さんのことも「理解した」とは言えないですよね。

それを言い切る自信がありません。

北川 ではここで、僕の理解している「理解」について、話させてもらっていいですか?

村上 おお、ではお願いします。

楽天・北川氏「理解とは、受け入れるということ」

北川 例えば数学は分類論だと言われています。

つまり数学における理解とは「分類」なのです。

一方、物理における理解とは「予測」です。

そして工学における理解とは、望む現象を「創り出す」ことです。

これらを踏まえた上で思うのですが、人間を理解するということは、「受け入れる」ことなのではないでしょうか。

井上 深いね。

石川 愛のようなものですね。

北川 ハーバードビジネススクールにおいては、昔はLeaning(学ぶこと)は“Knowing”、つまり知ることだとされていました。

その後、“Doing”、実践することだとされました。

石川 Short tripを取り入れたりと、そういうスタイルの教育方法になりましたよね。

岡島 エグゼキューションのためのワークショップばかりしていた時期もありました。

北川 そうです、そしてその時期が過ぎ去り、2010年頃からは“Being”、すなわち「自分や他人の在り方を認め、受け入れる」のが、経営者としての在り方だとされるようになりました。

岡島 エンロン事件(※)などが起こり、ハーバード・ビジネススクールの卒業生が次々と逮捕される状況になりました。

(写真中央)株式会社プロノバ 代表取締役社長 岡島 悦子 氏

▶編集注:エンロン事件とは、2001年10月に発覚した米国の大手エネルギー商社エンロン社の不正会計に端を発した、同12月の同社破綻を含めた一連の事件。〔参照:エンロン事件の概要と米国の制度改革(みずほリポート、2002年7月31日発行 | PDF)

そこで学校側が反省し、大規模な調査をしたのです。

“Being”のためにはどういう教育をすればいいのかを、各社CEOにインタビューするなどしたわけです。

そして最終的に見つかった最適な方法は、ハーバード・メディカルスクールにあったのです。

さて、同スクールの600人ほどの学生に対し、講師は何人必要だと思いますか?

医者の教育には人格形成が必要なので、600人に対して600人、つまり1対1の教育が良いと言われていました。

しかしハーバード・メディカルスクールはOBやOGを巻き込んでネットワークを築き、卒業生を含めて講師は1万人だとしているのです。

つまり、どの病院で働くことになっても卒業生がメンターをする、相談に乗るということをしなければ、全人格的な教育はできないという考え方です。

そこでハーバード・ビジネススクールも我々卒業生を講師と捉え、同じ方法を採用しようとしたのです。

石川 ハーバード・メディカルスクールには、「医師−患者コミュニケーション」という授業があります。

この授業の試験の採点基準が面白くて、「患者に分かりやすく説明をしていること」が試験合格の最低基準なのです。

岡島 なるほど。

石川 逆に最高点がもらえるかどうかは、「患者と共に悩んだかどうか」によって判断されます。

つまり、相手を受け入れつつ、アドバイスをするというよりも一緒に悩むことが、最高の「医師−患者コミュニケーション」だということです。

村上 それ面白いね。

企業や組織における「コンパッション(思いやり)」とは

村上 今日ここにいらっしゃる人の中には、経営者の方が多いと思います。

経営者は従業員を理解し、自分の目指すビジョンやミッションに向かって、従業員をリードしなければいけません。

最近、リーダーシップスタイルが変化しているように思います。

昔は軍隊型の「俺がやるんだ!ついてこい!」というタイプが多かったと思います。

しかし今は、例えばリンクトインでは「コンパッション経営(※)」というスタイルが唱えられています。

▶編集注:コンパッション経営(Compassionate Management)とは、上司から部下に対し一方的な指導をするのではなく、部下の立場や価値観に配慮し、各人に応じた形でマネジメントを施すこと。(参照:What is compassionate management? – LinkedIn

最初に聞いたときは、「シリコンバレー企業が“コンパッション”と言い出すなんて、どうかしてるんじゃないか?」と思いました(笑)。

石川 何が「思いやり」だと。

村上 そうです。シリコンバレーは「俺が、俺が」の世界ですし、彼らは「褒めて育てる、強みを伸ばす」教育を受けてきた人たちです。

しかし最近、リーダーはServant型、つまりメンバーに尽くすタイプであるべきだと言われ始めたのは、面白いなと思いますね。

岡島 石川さんもよく、信頼や思いやりといった要素について話していますよね。

石川 そうですね。

北川 ここであえて、会場にいる朝倉さんにお話を聞きたいのですが、「ガバナンスにおけるBeing」をどのようにお考えでしょうか?

僕には、受け入れることよりも強く意見したり、指摘することがガバナンスだというイメージがあります。

しかし社外取締役には、その両方のバランスが必要だとも思います。

朝倉 祐介氏 会社のステージによっても違うと思いますね。

会社として仕上がっていて、うまく回っている状態だと、監視する要素が強いと思います。


朝倉 祐介
シニフィアン株式会社
共同代表

兵庫県西宮市出身。競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、政策研究大学院大学客員研究員。ラクスル株式会社社外取締役。株式会社セプテーニ・ホールディングス社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー

しかしICCサミットにいらっしゃるようなスタートアップの場合だと、社外取締役としては、監視の目を向けるだけではなく、共に悩むことも重要なのではないでしょうか。

また、背中を押してあげることも必要ですよね。

岡島 私も社外取締役として多くの会社に関わっていますが、孤独な経営トップに寄り添っていますね。

まさに、「ともに悩む」という行為だと思います。

経営者は長期的視点で経営を捉えていて、先が見えすぎるがゆえに「自分の見方はおかしいのではないか」と感じてしまうケースがよくあるのです。

そんな時、ともに悩んでいますね。

村上 さて…。

石川 ではここから、メインイベントといきましょうか!

村上 北川さんタイムです!

実は北川さんからもスライドを頂いています。

人間を「生物学的に」理解することの大切さ

(写真右)楽天株式会社 常務執行役員 テクノロジーディビジョン CDO 北川 拓也 氏

北川 スライドを説明する前に、少し話を戻させてください。

先ほど触れた「受け入れる」についてですが、私は人間を生物学的に理解することがすごく大事だと思っています。

特に、遺伝子の観点についてお話しします。

皆さん、同性愛などのセクシュアリティーが、実は「遺伝子」と関連している可能性があることをご存知でしょうか?

男性か女性かを決めるX染色体とY染色体があることは、皆さん何となく理解されていると思います。

この事実は皆さん、受け入れていますよね。

しかし、そうしたセクシュアリティーにも遺伝が関係しうるということが理解されるのには、かなりの時間を要しました。

一卵性双生児と二卵性双生児の兄弟のゲイの割合を調べ、一卵性双生児の兄弟がともにゲイである割合の方が多ければ、遺伝子の影響が強いことが理解されます。

いくつかの研究から、そうした結果が示唆されています。

▶参照:Kendler KS et al:Sexual orientation in a U.S. national sample of twin and nontwin sibling pairs. Am J Psychiatry, 157:1843-6, 2000

また、人体の設計図である“ヒトゲノム”のどの部分が関連しているのかということについても、いくつか例が見つかっています。

▶参照:Sanders AR et al:Genome-Wide Association Study of Male Sexual Orientation. Sci Rep, 7:16950, 2017

なぜこれが大事かと言うと、昔は教育、つまり環境要因によってLGBTになると考えられていたからです。

例えば、子どもを「男の子である」という環境で育てれば、男の子として成長すると考えられていました。

それによって、LGBTの方々は非常に苦しみました。

村上 矯正プログラムが存在していましたよね。

北川 そうです。

しかし性的指向や性自認先天的なものも含むのですから、その場合は教育などで変わるはずがありません。

一般的にLGBTは全人口の5%ほど存在すると言われています。

岡島 左利きと同じくらいの割合だと言われていますね。

北川 そうなんですね。

そうした観点からの理解もあれば、それらを当たり前に受け入れる社会を創る方向になります。

ですから、人間を理解する、受け入れるにあたり、生物学的に理解することが非常に大事だと思うわけです。

石川 例えば睡眠についても、夜型と朝型の人がいますが、これは遺伝子によって決まっています。

村上 そうなんですか!?

石川 はい。

ピリオドワンという遺伝子によってそれが決まっているという発見に、2017年にノーベル生理学・医学賞が与えられました。(※)

▶︎参照:2017年ノーベル生理学・医学賞:体内時計を生み出す遺伝子機構の発見で米の3氏に(日経サイエンス)

朝型の人は、朝はめちゃくちゃ元気で、夜にかけて眠くなります。僕は朝型です。

北川 僕もそうですね。

石川 逆に夜型の人は、朝は不機嫌です。

ですから、朝型と夜型の人が同じチームにいると合わないのです。

生物として人間を理解するというのは、そういうことですよね?

北川 まさにその通りです。最近、この分野で大きな発見をしました。

今日は、『青春と僕』というタイトルでお話をしますね。

(一同笑)

石川 北川さんが、今から話しますよ!

岡島 話しますよ~(笑)。

(続)

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続きは 4.『青春と僕』――楽天CDO・北川拓也は今、科学者として「青春」を理解する をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/花本 夏貴/上原 伊織/尾形 佳靖/戸田 秀成/大塚 幸

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