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「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?」7回シリーズ(その5)は、科学の発展によって変わる人間の理解を議論します。テクノロジーが解き明かす「人間」の本質を、私たちはどれほど理解できているのか? 私たちがいま認知するべき「事実」とは? ぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
ICCサミット FUKUOKA 2019のプレミアム・スポンサーとして、Lexus International Co.様に本セッションをサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2019年2月19〜21日開催
ICCサミット FUKUOKA 2019
Session 2F
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?
Supported by Lexus International Co.
(スピーカー)
石川 善樹
Campus for H
共同創業者
井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO
岡島 悦子
株式会社プロノバ
代表取締役社長
北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員 テクノロジーディビジョン CDO (Chief Data Officer)
(モデレーター)
村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表
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最初の記事
1. 諸科学は万物をどのように「理解」しているか? 自然科学・社会科学・人文科学で異なる“理解の作法”
1つ前の記事
4.『青春と僕』――楽天CDO・北川拓也は今、科学者として「青春」を理解する
本編
井上 幼少期から大人までこういう変化をたどるのは、人間としてどういう意味があるのでしょうか?
北川 進化論の観点から、最も有効な発達の方法だったのではないでしょうか。
岡島 体が先に大きくなるけれど前頭葉がまだ完成していない、そのアンバランスな状態によって「気持ちが揺れる」ということも言われていますよね。
井上 今後人生が100年になると、このさらに右側にもグラフが立つようになります。
その場合、小さい報酬の場合でも喜びの値は大きく上がると僕は思うのですが、皆さん、どう思われますか?
石川 冒頭の92歳の方のような歳をとった方の「喜び」がどうなるのか、ということですよね。
人生100年時代、「年齢を重ねた脳」は何を喜ぶのか?
石川 人間は95歳を超えると、脳が恒常的にハッピーになるという報告があります。
岡島 機能が衰えるからハッピーに感じるということ?
石川 そこはまだ研究、解明されていません。
ただ、95歳を超えると、常に幸福な状態に陥るみたいなんです。
井上 じゃあ、幼少期と同じ状態に戻るということだ。
岡島 なるほど~。
井上 80歳から95歳くらいまでのデータが気になりますね。
石川 もしかしたら、50歳から75歳は、青春期の状態に戻るかもしれませんね。
北川 「もう人生の終わりが見えてきたから、何でもやっちゃえ!」となるかもしれない(笑)。
村上 ということは、70歳で「第2の青春」が来るかも?
井上 青春、ではない名前にしましょう。
石川 何だろう…白秋(はくしゅう)?
(会場笑)
岡島 「白秋」面白い(笑)。
村上 白い秋(笑)。うん、何か人間への理解が深まってきましたね。
石川 きてますね!
岡島 データも、これからもっと取れますよね。
脳のMRI検査をすればいいわけですよね?
北川 そうですね。
岡島 「白秋ステージ」の方々に被験者になってもらえばいいのですよね。
私、被験者になりますよ(笑)。
我々は、科学による「人間の理解」に追いつけていない
北川 こういったヒトの脳に関する実験ができるようになったのは、ここ10年くらいのことです。
楽天株式会社 常務執行役員 テクノロジーディビジョン CDO 北川 拓也 氏
つまりここ10年で、「人間への理解」は急速に深まっているわけです。
石川 functional MRI(※)ができたのも1990年代ですからね。
▶︎編集注:fMRI (functional MRI) とは、MRIによって撮像した脳の構造情報上に、脳の機能活動がどの部位で行われたかを画像化する手法。その基本原理となる「BOLD効果」の発見およびfMRIの開発は、日本の物理学者・小川誠二博士による業績。(参考:東北福祉大学「fMRIとは」)
北川 この話は、スタンフォード大学の教授が書いた『Behave』という本に書かれています。
僕たちが気をつけなければいけないのは、この10年間で人間に関する新事実が急速に解明されてきている中で、それまでの自分たちの理解は誤っていたかもしれないということなんです。
『FACTFULNESS』で描かれるように、僕たちの理解が追いついていないということですね。
ですから、現在のビジネス手法も、人間の理解と実は調和していないかもしれません。
村上 アップデートがされているということですね。『FACTFULNESS』は、かなり面白い本です。
石川 「先進国と途上国」という考え方から抜け出そうということですよね。
村上 そう、もはやその考え方のフレームはないということです。
我々の知っている「人間のありよう」というのは、1960年代に確立された理論をベースにしています。
岡島 しかもそれらは、これまでの「体験」から確立されたものですよね。
しかし今は脳のMRIが行われるなど、「体験」ではなく「事実」をベースに議論できるようになってきています。
村上 ゲノムの解析なども進んでいますしね。
…お、質問ですね、どうぞ。
森口 拓也氏(以下、森口) Mellowの森口です。
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森口 拓也
株式会社Mellow
代表取締役
1992年生まれ、埼玉県出身。2013年、早稲田大学在学中にALTR THINK(株)を創業。孫泰蔵氏が主宰するMOVIDA JAPANに採択され、出資を受ける。その後数度のピボットを経てチャットアプリの開発に集中。様々なデータ分析⼿法を駆使して100万⼈以上が使うチャットアプリを複数開発。2014年に同社を上場企業へ売却した後、企業のデータ分析基盤構築など多くのプロジェクトに携わる。その後、売却先企業の取締役であった柏谷、フードトラックのベテラン石澤と共に株式会社Mellowを創業。2018年11月より現職。個人の幸せと事業の成功を両立する組織づくりを推進している。
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先ほどの実験では、報酬の大きさが分けられていましたが、大きい報酬とは何を指すのでしょうか?
小さい報酬と大きい報酬の違いを教えてください。
北川 僕も論文を読み込んでいないので、細かいところは分からないのですが、例えばマシュマロ10個のように、おそらく個数で設定したものだと思います。
森口 自分の外側にある嬉しさが報酬ということでしょうか?
北川 そうだと思います。
石川 もしくは単純に、100円、1,000円、10,000円などですね。
井上 お金を報酬とした実験は、よく見ますよね。
森口 共通化しやすい尺度で測ったということですね。
岡島 子どもにはきっとマシュマロでしょうね(笑)。
科学や医学の発展は、ときに常識を覆す
石川 小さい頃にどれだけマシュマロを我慢できるかで将来のキャリアや学業における成功につながるという、マシュマロテストというものがあります。
しかし、その実験による研究は正しくなかったという研究結果が、最近出ました。
もともと行われた実験を分析し直すと、相関関係は全くなかったようです。
それよりは家庭環境が要因として大きいみたいですね。
村上 最近だと、暴力的なゲームで遊ぶことと、遊んだ人が実際に暴力的になるかどうかには全く関係がないことが証明されましたね。
岡島 そうなると今後、教育も変わってきますよね。
石川 少し前までは、教育においては「グリット」つまり“やり続ける能力”が大事だと言われていました。
しかし僕が書いた論文で最近一番引用されているのが「グリット」に関する論文で、それは単純化すると「グリットは存在しないのではないか」という論文なのです。
▶参照:Suzuki Y et al:Grit and Work Engagement: A Cross-Sectional Study. PLoS One, 10:e0137501, 2015
少なくとも日本を対象にした研究においては、なさそうだということが分かったのですが、そこで今、注目し直されている考え方というのが、ビッグファイブです。
ビッグファイブ、つまり「人間の性格には、5つの要素がある」という、昔からある理論です。
岡島 その5つとは、どんなものですか?
石川 神経質かどうか、真面目かどうか、外交的かどうか、新しいものに興味を持つかどうか、協調性があるかどうかです。
北川 先ほど話に出た家庭環境に関してですが、往々にして、児童虐待は極めて大きい要因になります。
岡島 愛着障害(※)ですね。
▶︎編集注:愛着障害とは、乳幼児期に長期にわたって虐待やネグレクト(放置)を受けたことにより、保護者との安定した愛着(愛着を深める行動)が絶たれたことで引き起こされる障害の総称。(デジタル大辞泉より)
北川 児童虐待を受けていたとしても、問題なく生活されている方はたくさんいらっしゃいます。
しかし、ある遺伝子、例えばセロトニンの分解酵素を司る遺伝子を持っていることと、暴力を受けることが同時に起こってしまうと、状況が一気に悪くなってしまうことがあります。
これはエピジェネティクスと呼ばれ、進化の過程でのみ変化すると思われていた遺伝子が、経験や環境によってその発現量としてが制御されているということなのです。
井上 「素養」と似たような話ですね。
我々は遺伝子を持っていますが、その遺伝子が発現するかしないかという総体が「エピゲノム」と呼ばれています。
何らかの素養を遺伝子として持っていた場合、エピゲノムの性質によって、その素養が発現したり、しなかったりということが起きます。
また、2つの素養を遺伝子として持っている場合、エピゲノムによって片方の素養の発現が抑えられることで、他方の素養の発現が強くなるという現象もありえます。
このエピゲノムというものが、環境によって変化すると言われているのです。
つまり、遺伝子そのものは変化しませんが、環境が変わることでエピゲノムが変化する。
これによって、それまで遺伝子として持っていた素養が、急に表れることもありということです。
村上 なるほど。
ではこの流れのまま、井上さんの映像を流す時がついにやってまいりました。
井上さん、よろしくお願いします。
(続)
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続きは 6. 個人データの蓄積が拓く新学問「ヒューマノーム」は、人間の未来を予測する をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/花本 夏貴/上原 伊織/尾形 佳靖/戸田 秀成/大塚 幸
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