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3. 人間の知性は「余暇のある時代」に進化する 古代ギリシャ・古代ローマとロボティクス/IoT時代の共通点

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「知性の核心とは何か?」8回シリーズ(その3)では、人間の知性に飛躍的向上をもたらす時代背景を議論します。IoTやロボティクスが人間の雑務を担う未来、私たちは自由意志のもと、何を生み出すことができるでしょうか? ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うためのエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2018 プラチナ・スポンサーの レノボジャパン様にサポート頂きました。


【登壇者情報】
2018年2月20〜22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 4E
知性の核心とは何か?
Supported by レノボジャパン

(スピーカー)

安宅 和人
慶應義塾大学 環境情報学部 教授 /
ヤフー株式会社 CSO(チーフストラテジーオフィサー)

石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者

北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員 テクノロジーディビジョン CDO (Chief Data Officer)

丸 幸弘
株式会社リバネス
代表取締役 グループCEO

(モデレーター)

尾原 和啓

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最初の記事
1. 89.1%が“最高だった”と評価した伝説のセッション「知性の核心とは何か?」

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2. AIが「君はチョコレートが食べたいよね」と渡してきても、きっと僕は、最後にその提案を断るだろう

本編

尾原 モデレーターですが、僕もちょっと違う話をしてもいいですか?

石川 どんどん行きましょう!

興奮し続けるために、新たな発見をし続ける

尾原 和啓さん

尾原 最近、仕事の再定義がされていますよね。

石川 働き方改革ですね。

尾原 そうです。でもこれだけ仕事とプライベートがまざっていくと、実は「仕事を再定義する」よりも「余暇を再定義する」方が早いのではないかと思っています。

それは今の話にも近くて、知性というのが人間固有の能力だとすれば、その周りにある遊びや興奮することを定義しにいった方が、その本質に迫れるのではないかと思うのです。

北川 尾原さんなら、どう定義するのですか?

尾原 人間は飽きる生き物だから、「飽きない」という状態が興奮するわけです。

ですから飽きないものを作るためにどうやって新しい発見をするのか、という話だと思います。

商売も自分が飽きないためにやるから「あきない(商い)」じゃないですか。

安宅 本当?

尾原 いや適当です。

 すべてが雑ですね(笑)。

石川 うまいこと言い合い合戦が始まってませんか。

尾原 短冊から始まったんですよ(笑)。

興奮しながら生きれば、知性は育つ?

株式会社リバネス 代表取締役 グループCEO 丸 幸弘さん

 ちょっといいですか。「働き方」なんていう小さい話をしていて、くだらないじゃないですか。

そもそも僕は基本的に働いてないですから。僕は生きているだけなんです。

生きていて灰になるのを待っている訳です。その間に興奮したいから色々なことをやっていると。

そうしたらいつのまにか「知性がついてきた」と言われ、新しいことがもっとできるようになるからもっと興奮して、もっと動いているのです。

世の中の人たちがなぜ働くことが嫌になってしまうかというと、働くという行為がきちんと定義されて、箱の中に入ってしまっているからです。

そうすると、僕のやっている「生きること」を、「働くこと」をして余った時間でしなきゃいけなくなります。

そもそも働くことを皆やめれば話は終わるじゃないですか。

だから皆さん、働くのをやめませんか?

(会場笑)

いや、そうすると知性が集まるんですよ!

個の感性と感情と欲望のままに皆が手を取り合って何かをやっていくと、外から見れば「働いている」と言われるかもしれません、それが世の中をよくするものであれば、皆が興奮しながら生きることができるじゃないですか。

一方で大企業という箱の中で「働く」という定義に囲まれて仕事をしていくと、そのベクトルは、知性がなくなる方向に進みます。

だから個のネットワークが組織を創るという感覚で、どうやって生きていくかが非常に重要なのではないかと思います。

北川 『ティール組織』という本が最近流行っていますが、まさに丸さんの言うような生き方をすべきだと主張をしていますね。

▶参照:『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(フレデリック・ラルー/著)、英治出版

石川 それはどういうことですか?

北川 今までの組織はトップがディレクションを決めて「これを達成するんだ」と言い、皆がそれに向かって取り組んでいました。

それを達成するためには「働くこと」がすごく大事でした。

しかしそのやり方はもう古い、もっと自発的な仕事の仕方が大事だとおっしゃっている方々がいます。

自分の一部で仕事をするのではなく、全身で生きなさい、というような主張で、

(最前列の村上さんと目があう)

…ということで村上さん、あっていますか?

石川 まさかのご専門でいらっしゃるのですか(笑)。

人間の知性は、余暇のある時代にこそ進化する

村上 今の丸さんの話はすごく面白くて、僕は「スマートギリシャ時代」と言っているのですが、要はこれまでの歴史の中で、知性がリニア(直線的)ではなく、ジャンプアップした時代がありましたよね。

リンクトイン・ジャパン株式会社 日本代表 村上 臣さん

例えば古代ギリシャや古代ローマでは、今でも使われる技術が生み出されました。

当時の社会のベースに何があったかというと、圧倒的な奴隷制度です。

ですから、確かにそこで暮らす市民は働いていませんでした。

働いていない時代にこそ人間の知性はジャンプアップして、進化してきた訳です。

もちろん奴隷制度は適切な制度ではありませんがが、ロボティクスやIoTの普及で雑務をロボットに任せることにより、我々は「スマートギリシャ時代」を再び創造できるというのが僕の持論です。

尾原 それはある意味正しいです。

日本語だと、仕事していない時間は“暇を余らせる”と書いて「余暇」と表現してしまいます。

しかし英語の「レジャー(leisure)」の語源であるラテン語の「リセーレ(licēre)」は「自由であること」という意味です。

つまり、働くという行為を誰かに任せて、自分の意志で何かができることが「余暇」なのです。

▶編集注:古代ギリシャ語で「余暇」を表わす「schole」という言葉は、英語の「school(学校)」の語源だそうです。このことからも、古代より自由な時間こそが「学び」を生んでいたことが窺えます。

仕事というものがAIやロボットにどんどん移っていくと、「自分の自由意志で何をするんだっけ?」という話に戻ってきますよね。

村上 ちょっと思ったのですが、自由意思って「決まっていないこと」に自由があるわけですよね。

そうするとさっきの話と矛盾してしまうのではと思いました。

つまり、やりたいことやビジョンに向かって進んでいくことが知性だという話とは逆の、「俺何しよう」と言っている状況にも関わらず知性が進化していくという状況ですよね。

この矛盾をどう考えればいいのでしょうか。

石川 自由な時間に何をしているのかと考えた時、本当に自由なことをしている人って意外と少ないのかなと思いました。

別に観たいわけでないテレビやNetflixを観ていたりします。

もしかしたらLinkedInを見てるかもしれないですが(笑)。

(会場笑)

議論をする時には、源流まで遡って考えることが重要ですよね。

そこで今考えてみたのが「本当の自由を手にするとは、どういうことか」ということです。

考えながら思ったのですが、皆さん「ユーステノプテロン(Eusthenopteron)」をご存知ですよね。

 普通の人は知らないと思います。

石川 僕らは、ユーステノプテロンなしには存在していません。

なぜなら、生き物の中で初めて地上に上がったのがユーステノプテロンだからです。

ユーステノプテロンがどういう生き物だったかと言うと、もう最弱でした。

 そうなんですよね。

「逃げ出すこと」で新たな自由を手に入れる

(写真左)株式会社Campus for H 共同創業者 石川 善樹さん

石川 ユーステノプテロンは海の中にすら居させてもらえない生き物で、ある意味不自由だったと思うのです。

そのような最弱の生き物が新しい道を切り開いて、地上という新たな自由を手に入れたのです。

なので、次の自由といいますか、次の働き方や生き方をする人は、今の世界で最弱の人であるのかなと少し思います。

尾原 今の話について真面目に、ICCなのでビジネスっぽい話をすると、最近「エマージェント・ストラテジー」という考え方が出てきました。

「変化の時代には戦略を決めることで選択肢が狭まります。したがって戦略は決めずに逃げて逃げて逃げた先に新しいものを見つけて、それを広げた方が結果的に自由度が増しますよ」という考え方です。

Netflixもその一例です。実はNetflixは当初、店舗でDVDが借りられる時代にそこでは勝てないからと言ってDVD宅配レンタルサービスでスタートしました。

石川 テスラのイーロンマスクも「競争なんかするな」と言っていますよね。

尾原 そうです。

 競争したくないですね。

石川 そう考えると僕は、カントのことを思い出さずにはいられないんですが。

尾原 どうぞどうぞ。知性と言えばカントですよね(笑)。

(続)

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続きは 4.「知性は土にあり」「答えは出さない」 農学博士・リバネス丸幸弘さんが語る“幸せになるための教育論” をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/本田 隼輝/尾形 佳靖/戸田 秀成

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