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「知性の核心とは何か?」8回シリーズ(その4)では、答えが出ないことに問いを立て続けることの意義を議論します。リバネスの丸さんは、答えのない「自然」に触れることの大切さを説きます。知性を育むこれからの教育の在り方とは? ぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うためのエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2018 プラチナ・スポンサーの レノボジャパン様にサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2018年2月20〜22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 4E
知性の核心とは何か?
Supported by レノボジャパン
(スピーカー)
安宅 和人
慶應義塾大学 環境情報学部 教授 /
ヤフー株式会社 CSO(チーフストラテジーオフィサー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員 テクノロジーディビジョン CDO (Chief Data Officer)
丸 幸弘
株式会社リバネス
代表取締役 グループCEO
(モデレーター)
尾原 和啓
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最初の記事
1. 89.1%が“最高だった”と評価した伝説のセッション「知性の核心とは何か?」
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3. 人間の知性は「余暇のある時代」に進化する 古代ギリシャ・古代ローマとロボティクス/IoT時代の共通点
本編
石川 テスラのイーロンマスクも「競争なんかするな」と言っていますよね。
尾原 そうです。
丸 競争したくないですね。
石川 そう考えると僕は、カントのことを思い出さずにはいられないんですが。
尾原 どうぞどうぞ。知性と言えばカントですよね(笑)。
人間はどこまで望みうるのか?
株式会社Campus for H 共同創業者 石川 善樹さん
石川 ギリシャで始まった哲学は、すべてカントにたどり着きます。
丸 カント無しには語れないですよね。
石川 これは北川さんともよく話すのですが、科学の役割の1つとして「可能性を示す」ということと「限界を示す」ということがあります。
カルノーは燃焼効率の限界を示し、シャノンは情報伝達の限界を示しました。
同様の点で、カントも非常に面白いことを言っています。
彼が最初に考えたのは、「人間は何を知り得るのか?」ということの限界です。
そしてもう1つ彼が考えたのが「人間は何を望み得るのか?」ということでした。
自由の中でもどこまで望み得るのか、というのはカントが生涯をかけて考えたことで、結論は出ませんでした。
出なかったのですが、問いを立てたのが大事です。
宗教観に見る「人間の望み」の原型
石川 僕はそれを知って、人が何かを「望む」ということの原型は、やはり宗教にある気がしています。
これは「知性とは何か?」に繋がると思うのですが、例えばキリスト教において人々は光・天体に神を感じます。
教会はステンドグラスで光がすごく綺麗に見えるように作られていますよね。
光や天体というのは比較的シンプルな微分方程式で表せます。
「世の中の原理原則はシンプルなものに違いない」という物理学的な発想というのは、キリスト教の、天体や光を望む宗教観に起因すると思っています。
一方でイスラム教は全然違います。
イスラム教は光ではなく風に宗教を感じた人たちです。
ですからイスラムの宮殿は風がすごい気持ちよく通るようにできています。
アラビア物語ってだいたい風に乗ってやってきますよね(笑)。
(会場笑)
尾原 なんだかそんな気がしますね(笑)。
北川 アラジン的なね。
石川 木からリンゴが落ちるのというのは比較的シンプルな方程式ですが、木から葉っぱがひらひらと落ちるというのは線形代数です。
今のディープラーニングは線形代数ですよね。
この線形代数のイスラム教と微分方程式のキリスト教がルネッサンスで出会い、科学が最初に発達しました。
このようにキリスト教とイスラム教がありますが、僕ら日本人は結構違うのです。
何かと言うと、光でも風でもなく「自然」に神を感じたのです。
ものすごい複雑で、敵や味方もなく、「みんなちがって、みんないい」という、金子みすず先生の表現の通りです。
この自然というものをどう捉えるか。科学や知性というものは自然の複雑さですよね。
この点はまだまだ発達していないのではと思っています。
尾原 今、日本の発酵文化が着目されているのはそのような文脈ですよね。
答えが出ないことへ「問い」を立て続けよ
丸 僕の出番ですね。微生物と藻類といえば私です。
大地と微生物が、これからすごく大事だと思っています。
土なんて絶対に分からないですよね。
石川 土というのはどのような方程式を持ってきても絶対に表せないですね。
丸 無理ですね。無理なのですが、重要なのは問いを立てることです。答えを出すことではありません。
答えが出ないことに対して、問いを立て続けることに意義があります。
おそらく我々日本人は答えを求めません。
問いを立てて問い続けること。しかし答えは出ませんし、出してはいけません。
そこには絶対領域があります。
このくらいの(あと少しの)距離で答えが出ないというのが重要なんです。
石川 ちょっと待ってください。村上さん何が言いたいことがあるようです。
村上 今の話で思ったのですが、それを表す方程式は量子力学なのではないでしょうか?
丸 なかなか渋いところにきますねぇ。
村上 量子のスピンをどう捉えるかという問いであり、どこのカットで見るかで定義が変わるわけですよね。
量子力学の世界にやっぱり近いものとして、日本には八百万の神がいますよね。
そうすると土の中に死ぬほど微生物がいるという点は、1つのものに対してたくさんの神を見出した日本の知性の根源となっているのではないかと思います。
丸 僕は土を見ると興奮します。農学博士の話を1分いいですか。
安宅 はい。
「知性は土にあり」(農学博士)
丸 土を触るじゃないですか。この中に生命体がいるんです。これは本当の話です。
この生命体が我々の体を作っている。ではこの土が良い土かどうかというのはどうやって調べるかわかりますか?
石川 匂いを嗅いだり、手触りを確かめたり……とか?!
丸 君たちは本当に短冊野郎ですね。普通はそこで分析しますよね。
尾原 そっちを言って欲しかったんですね(笑)。
丸 触ったら分析するでしょう。
尾原 だって自分が顕微鏡の人間じゃないって言ってたじゃないですか!
石川 顕微鏡を見ればいいわけですね。
丸 1分ください。分析して「これがいい土です」って言います。
そしてある野菜を育てた結果、枯れました。これはいい土なのでしょうか?
分析したデータではいい土ですが、その土ではよく育ちませんでした。
でも大根は育った。レタスは育たなかった。何を言いたいか分かりますね。
すごく複合的な要因がある、これが知性なのです。
何が良くて何が悪いかすら、実は答えがありません。
石川 「知性は土にあり」と。
丸 いいですね。「知性は土にあり」(農学博士)と書いておいてください。
石川 ボールドでお願いします(笑)。
自然と触れ合うことが知性を育てる?
丸 アメリカやイギリスやイスラムの世界もいいです。アメリカに行ってビジネスをするのもいいです。
でも、これからは絶対に東南アジアです。
東南アジアには深く土を重んじる文化があり、その中で見えてくる未来がまさに知性の時代に最も重要です。
ですから「STEM教育」(STEM:Science, Technology, Engineering and Mathematics)はやめてください。
これからは「NEST教育」で、“Nature”から始まらないといけません。
▶注:NESTは、Nature、Engineering、Science、Technologyの頭文字。自然に目を向け多くを学ぶことで、そこに潜む科学を理解し、技術を生み出す。そのサイクルは、これからの時代がどう変化するとしても、決して忘れてはいけない本質的な概念だと考え、リバネスの教育事業では「NEST教育」を実践している。(リバネスHP「NEST教育」)
この自然というのは、答えがないんです。全く答えが出てこない。
答えが出てこないところに問いを立てるという知性を生み出すのが、自然と触れることなんです。
土と触れて、自然と触れて、風と触れて、匂いを嗅いで、第六感を研ぎ澄ませるための教育、これが最も重要なことです。
安宅 でも、江戸時代まで大量に自然とたわむれていた我々の先祖たちは、何も生み出さなかったのではないでしょうか?
丸 鎖国という新しい文化を生み出しました。
北川 そこで終わりですか(笑)。
石川 この国には、残念ながら学問が生まれなかったんですよね。
目をつぶれ、自然に流されろ。
安宅 最近僕は、落合陽一くんの影響で漢文をいっぱい読みました。
そうすると論語『述而』に「子、怪力乱神を語らず」という衝撃的な文章が出てきました。
石川 その心は。
安宅 「異常現象について考えるな」ということが書いてあるのです。
これは科学をやるなと言っていることとほぼ同義語ですよね。
科学者はそれしかやらないですよね。
丸 科学は万能ではありません。科学には限界があるんです。
だから感じればいいんです。
目をつぶれ、自然に流されろ。それが幸せに生きる方法なんです。
(続)
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続きは 5.「なぜ物理の公式はシンプルなのか?」人間の知性が世界を単純化できてしまう仕組み をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/本田 隼輝/尾形 佳靖/戸田 秀成
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