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8月31日から開催予定のICC サミット KYOTO 2020。今回の特別企画として、政治家・山縣有朋が南禅寺近くに建てた別荘「無鄰菴」を貸し切り、休憩スペースとしてICCサミット参加者にご提供することになりました。素晴らしい日本庭園も合わせて下見してきましたので、その模様をお伝えいたします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは
公式ページをご覧ください。
ICC サミット KYOTO 2020のメイン会場から北へ歩くこと10分弱のところに、日本の伝統的家屋が残る別荘地一帯があります。そのなかでもこの「無鄰菴(むりんあん)」は最も古く、1896年に政治家・山縣有朋(やまがた ありとも)の別荘として建てられました。
明治維新の後に寺社が所有していた土地が召し上げられ、南禅寺が所有していた周辺の土地は、地元の有力者に別荘地として販売されました。その制度を制定した山縣自らがその一角を購入して、敷地内に琵琶湖疏水を引き入れ、庭は對龍山荘同様、七代目小川治兵衛が手掛けています。
今回のICC サミットは、時勢を反映して、なるべく人が密集しないような試みを数々用意しています。そのひとつとして、開催期間中の3日間の昼も夜も無鄰菴を全館貸し切って、休憩場所として利用いただこうと考えています。
当初は對龍山荘の近くで、同じく植治の七代目小川治兵衛が作庭したという理由で無鄰菴を訪れたのですが、あまりの静けさ、居心地の良さに、ICCサミット日程で予約が入っていないことを確認し、その場でこの貸し切り企画が決定しました。
このレポートでは、對龍山荘の見学に続き、智の田岡 敬さんと、のぞみの藤田 功博さんとともに行った下見の模様をお伝えします。
歴史の舞台となった「無鄰菴」
この別荘地界隈の別荘群で唯一通年公開されている庭園で、1951年に国の名勝に指定されている無鄰菴。ここは、建築から7年後の1903年4月21日、敷地内の洋館にて日露戦争直前の日本の外交を決めた会合「無鄰菴会議」が、伊藤博文、小村壽太郎、桂太郎、山縣有朋の四者で行われた、歴史の舞台でもあります。
1894〜1896年に造営された無鄰菴は、庭園と母屋、洋館・茶室の3つの建物からなり、ときの総理大臣を務め、築庭造園に高い見識と手腕をもつ山縣有朋の指示に基づいて七代目小川治兵衛により作庭され、近代日本庭園の傑作といわれています。
ホームページの解説によると、それまでの池を海に、岩を島に見立てる象徴主義的な庭園から、里山の風景や小川そのもののような躍動的な流れをもつ、自然主義的な新しい庭園観により造営とあり、1951年には国の名勝に指定されています。
以前は庭と建物で別々の管理者がいたそうですが、近年は一括で、植彌加藤造園が指定管理者として管理に携わっています。庭を臨む母屋で、知財企画部の山田 咲さんが、近年の管理を紹介してくださいました。
「現在は造営当初の景色を古写真などで検証し、施主である山縣有朋の作庭意図を汲んだ管理をしています。こちらのお部屋は、当時珍しかったその庭園が180度見渡せるしつらえになっています。
日本庭園は経年変化が価値でもあるので、造営当初と異なる部分はもちろんあり、芝を好んだ(山縣)有朋が苔を剥がして芝を植えていたところがあったのですが、環境的に適応して苔に遷移している部分もあります。有朋自身もこの遷移を美しいものと認識していたようで、現在はその部分は苔のエリアとして管理をしています」
作った時と異なるのは、芝を好んだ(山縣)有朋が苔を剥がして芝を植えていたところがあったのですが、環境的に無理があるので苔に戻しているところです」
窓の外に広がる緑の庭は、なだらかで涼しげで、誰かのお宅にお邪魔したようなくつろげる雰囲気です。山田さんが続けます。
「無鄰菴は、クローズドにして守るのではなく、使っていくことで保存につなげるという考え方です。
飲食も建物の中のみで可能で、着席の食事は40名位まで、立食は80名が可能です。お茶会や、ドバイから来たお客様のご希望で、プライベート能の上演を行ったこともあります。雪のある季節で、息をのむほど美しかったですね」
見学は現在、新型コロナの影響で9時〜6時の間で予約制入場となっており、2階は貸し切りでの使用とのこと。2階のお部屋を見てみましょう。
終日貸し切り企画決定!無鄰菴の2階
上がってみると、窓一面に広がる緑に、ICC一行は思わず歓声を上げてしまいました。冷暖房完備ですが、窓も開け放っていて入る風が心地よく、夏休みに素敵な別荘へ遊びに来たような、くつろげる雰囲気があります。
古い建物のため、2階の定員は20名となります。せっかくお越しいただいても満員の際は、入場料としてお支払いいただく600円(現金のみ)で、一般のお客様と一緒になりますが、1階や敷地内の無鄰菴会議が行われた洋館、お庭を見学してみるのはいかがでしょうか?
次に、そのお庭を見にいってみましょう。
山縣有朋と植治が造った庭園を見学
建物から庭へ出たらすぐに「足元の石の形を見てください」と言われました。
さまざまな形の石があります。小さな石や隆起した石のところは、足が砂利に落ちてしまわぬよう、気をつけて歩く必要があります。
「では、平たい石の上に乗って、顔を上げてください」
日差しが強い時間帯もあり、手前に母屋の影が出てしまっていますが、一挙に広々とした美しい景色が開けます。この明るい芝生の空間こそが、この庭の中心。一番奥の東山から、芝生の築山、景石、植栽まで連続的に構成されています。中央に見える平たい大石を立てずに置いているのも、すべて東山を観るという構図ゆえだそうです。
「足元が安定したところで立ち止まり、庭を眺めてくださいというつくりです。それ以外は足元に注意して歩き、安定したところで顔を上げると、見える景色が変わります」
靴が砂利で汚れないため、歩きやすさのための石かと思ったら、それは景色を眺める演出まで担っているのです! 石を辿って庭を回遊していく間、この石が幾度となく、有朋や七代目小川治兵衛の仕組んだ景観ポイントを教えてくれるというわけです。
ちなみにこの上の写真の中央の芝生の小山の向こうには、もう1つ小川が流れていますが、この地点からは高低差を使って見えなくしています。
こちらも平たく安定した石からの眺め。歩いてきた方向を振り返る
琵琶湖疏水がながれる庭園
歩き進んでいくと、芝生の山を越えて、もう1つの川を見つけました。
山田さん「有朋は、深さのある池だと水の表面が動かないため川を好み、そのために水深をあえて浅く造っています」
たしかに、深さのある池は水面が止まっているように見えます。浅い川だとせせらぎを感じられますね。
この川から母屋を振り返ると、ずいぶん遠く見えますが、これも視覚的効果を考えて造ったもの。なお、この小川の源泉となる小さな滝が敷地の奥にあります。
水量は多くないものの絶え間なく落ちる滝は、疎水をサイフォンの原理で汲み上げているそう。
この水は、この土地を買った有朋が1890年に完成した琵琶湖疏水を直接引き入れたもの。琵琶湖疏水は、皇居が京都から東京に移って京都の人口が激減した際に、町興し的一大事業として有朋も関わったプロジェクト。その裏には大きな目論見があったのだそう。
山田さん「もともと琵琶湖疏水の水で、水車を回して発電したり、陶器や紡績など小さな工場をたくさん造って、この周辺に工業地帯を創ろうとしていたそうです。しかし疎水事業を進めている間に、発電の技術が海外から入ってきたのです。
今も疎水による発電は使っていますが、左京区高野にある団地や鐘紡紡績の工場へ送電して使っていました。そしてこの地は工場にはならず空き地になったため、別荘地開発として有力者に売ることになったのです」
興味深かったのは、琵琶湖疏水を最初に引き入れた無鄰菴を通った水は、お隣の京都の老舗料亭・瓢亭の庭へ流れ込み、その水はまた別の別荘地へと流れ込んでいること。ここでは疎水で各別荘やお店がつながっているのです。その水道代は月額で約6万円。第1取水者が支払うことになっていますが、共有しているところで交代にしているそうです。
無鄰菴オフサイトでも特別企画を準備
庭園の歩き方として、3つの事項が無鄰菴のパンフレットに載っています。
・走らない=あなたも景色の一部
・砂利を蹴散らさない=その砂利はあなたをお迎えするためのカーペット
・竹でできた結界を越えない=あなたの安全のため
とあります。この3点を守って、母屋だけでなく、この庭園を合わせてぜひお楽しみください。「庭コンシュルジュ」の方が解説する庭園ツアーも予定していますので、お時間が合うときはぜひ予約の上(その際は別途募集いたします)、ご参加ください。
加えて、18時以降の夜の全館貸し切りでは、特別プログラムとしてCRAFTEDカタパルトに登壇する金剛流 能楽師の宇髙竜成さんによる能のパフォーマンス(9月2日を予定)や、おいしいお酒を飲むイベントを企画しています。こちらも日時詳細決まったらお知らせしていきますので、ぜひお楽しみに!
<参考動画>宇髙さんの過去の無鄰菴でのパフォーマンスの動画です
「イエス、能。」第3回 出演:金剛流 宇髙竜成 演目:藤、杜若 【京都・日本庭園 無鄰菴公式 / Murin-an: A Japanese Garden Masterpiece in Kyoto】
夜の無鄰菴は、庭が立体的にライトアップされ、また別の魅力を醸し出します。こちらは別の機会に訪れたときの写真です。
對龍山荘の伊集院兼常同様、明治維新から大正にかけての激動の時代を生きた政治家・山縣有朋の歴史や京都の風情を存分に感じながら、熱い討論のあとはここへ来てリラックス、空いた時間にワークプレイスとして利用というのはいかがでしょうか? 夜は特別な企画も用意しています。
最後に見学におつきあいいただいた田岡さん、藤田さん、どうもありがとうございました。以上、現場から浅郷がお送りしました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成
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