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「トップ・リーダーの行動・思考パターンは何が違うのか?」【K16-8C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!5回シリーズ(その2)は、トップ・リーダーとして事を継続することの重要性と、その「継続」のために必要なことについて、ビジネスと宗教の世界が交差したお話を頂きました。ぜひ御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016「ICC SUMMIT」
Session 8C 「トップ・リーダーの行動・思考パターンは何が違うのか?」
(スピーカー)
出雲 充 株式会社ユーグレナ 代表取締役社長
川鍋 一朗 日本交通株式会社 代表取締役会長
松山 大耕 妙心寺退蔵院 副住職
(モデレーター)
松田 充弘 マツダミヒロ事務所株式会社 代表取締役
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【前の記事】
【本編】
松田 行動の源としては「自分が楽しいから」というのが一番ということでしょうか?
出雲 はい、楽しいことをやっている時は、失敗したらどうなるのかとかこれ上手くいかなかったらどうなるんだろうとか、そんなことは考えないですよね
松田 川鍋さん、今の話し聞いてどう思いますか。
やり続ける喜び
川鍋 そこまで何かを好きになれるって羨ましいと思います。
共通点があるとすれば、私の場合は家業でタクシーから逃れられないというのがあるんです。
タクシーから逃れられないけれども、15年タクシーをやっているとやり続ける良さとかやり続ける喜びというのがものすごく大きくあります。
それはベンチャーでピボットしながら「今何が儲かるか、今何が大きくなるか」というような軸は全く無いわけです。
「タクシーをどうやっていくか」という軸しかなくて、だがしかし、そのビジネスモデル自体も当然変わっていきますし、ただ人が動くことに変わりはなくて、テクノロジーが変わろうがUBERが出ようが、タクシーだってやるべきことはある。
ICCカンファレンスに来ても何を聞いていてもこれはタクシーにどう活きるか、ということしか考えないんです。
でもそういった軸というのはものすごく強くて、そうすると「このハードウェアいいよな、この知財の先生にあとで話を聞こう」とか、そこから全部繋がっていきます。
川鍋 15年やっていて少なくてもタクシーにおいては敵はいないぞということになると、意外と色んな情報も集まってきますし、最近はテクノロジーの軸でどんどん広がってきてますのでこういうところ(ICCカンファレンス)にも出させていただいています。
ある意味やり続ける喜びというか、磨きに磨き続けた故にタクシーのことなら中身の構造まで良く分かる感じがする。
今は自社もそうですが、タクシー産業全体をどうやって良くしていこうかということばっかり考えていて、それをやっていけば自社も絶対に上がってくるんです。
自社がやっていることをどうやってライバルも巻き込んでいくか、例えば陣痛タクシーというものを作ってライバルにもやってもらってマーケットを広げるとか、そういう考えばかりです。
やはりやり続ける喜びはあります。
松田 出雲さんもそうですよね、何でもミドリムシに関連付けますよね。
1つのことを継続することの重要性
出雲 もう、全く一緒です。
どんな話を聞いていても、「これはミドリムシだとこうだな」とミドリムシに置き換えるとすぐ理解できるんです。
ITは難しい話が多いのですが、「これは通信が速くなる」といわれた時に、ミドリムシの工場で流れるミドリムシの量が増えてるんだな、と置き換えると大体分かるんです。
ミドリムシもパイプラインでどんどん速く送るためには、出発点の圧力を上げなければいけないです。ミドリムシはロケットで宇宙に持っていっても生きているぐらい垂直や横から押されても全く問題無いんですが、渦になっていて横断旋力と言うんですが、そういうものがかかるとミドリムシはビリっと破れて死んじゃうんです。
例えば水圧を上げるといっても水流を一定に発生させなければいけないんですが、恐らくLTEとか4Gとか、専門じゃない話をすると馬脚が現れますが、通信の速度を上げるというのも電圧を上げて電波を速く飛ばせばいいというものでもないはずで、パケットが一定の割合でロスするということを前提に、受け取ったパケットを復元する方が早いというのは通信の世界もそうですし、流通の世界もそうだと思います。
結局こういう場に一番意味があるのは、みんな分野は全然違いますが、大体同じことで悩んでいるということです。例えば、ミドリムシにまんべんなく光合成させるために光を当てる必要があるのでミドリムシが勝手に動かないようにしなければいけないのですが、タクシーのマッチング1つ取ってみても、タクシーをコントロールする技術とかを聞いていて、タクシーが1箇所に溜まってしまうと遠くに住んでる人に配車するのに15分かかったりするからお客さんの密度に合わせて面的にタクシーが最適に待ってなければいけないアルゴリズムが完成しました、と聞いたら「すぐミドリムシに使おう」となるんです。
でも切り口がないと話を聞いても全く分かりません。
松田 今のお二人の共通点は、1つのことを継続してきたからこそ色んな話を自分に置き換えられるんじゃないかと思うんですが、継続することは重要で、継続することによって得られることは大きいですよね。
松山 そうですね、大きいと思います。
新しいものを取り入れて初めて「継続」できる
松田 松山さんの視点から、継続するためにすべきこと、心がけていることはありますか。
お寺の中ですることも多分ずっと色んなことの継続でしかないと思うんですよね。
松山 継続だけじゃないと思いますね。
来週ローマ教皇に謁見しに行きますし、結構色んなところで「空飛ぶ坊さん」とか言われていますが、
(編集注:松山さんの世界での活躍は、「ローマ教皇に会え」「ダボス会議に行け」退蔵院 松山大耕氏の”なんとかする力”をご覧ください。)
実は昔はお坊さんぐらいしか諸国を行脚できなかったんですね。
語学もお坊さんが一番できたんです。
最新の技術を持ってくるのはお坊さんの役目だったので、うちのお寺にも杉戸絵があるんですが、そのモチーフが棕櫚の木やヤギなんです。
何でそんな物が描いてあるかというと、当時の最新の動植物だったからです。
それまで日本には無かったんですが、諸国行脚している中で「こんな面白いものがある」ということでお寺の中で紹介し始めたわけです。
禅の教えは1,000年以上続いていて、しかも教え自体は1,000年以上「ノーイノベーション」ですからそれを継続させるのは勿論大事ですが、やはり現代に役立たなければ意味がないので、新しい物もちゃんと取り入れながら両方あって初めての継続だと思います。
「不動心」とは「フレキシブルであれ」
松田 新しいものも取り入れつつ、ずっと取り入れるとたくさんになってしまうので手放すものも決めつつ、ということですね。
松山 何もしなければいい、というわけではないんですね。
松井秀喜さんとかがよく使っていますが、「不動心」という言葉がありますよね。
あれは今は「1回決めたらぶれない」「決めたことはやり続ける」という意味で捉えられていますが、実は本当はそういう意味じゃないんです。
「不動心」とは「フレキシブルであれ」という意味なんです。
例えば京都嵐山でボートに乗ってると仮定して、私が渡月橋の上から「おい、動くな」と言ったとします。
そうするとそこには2つの理解があり、まず1つ目は文字通り何もしないこと、もう1つは船が川の真ん中にあるんだったらその緯度経度を変えるな、という意味の「動くな」なんです。
伝統を守るとはそういうことなんです。
川はずっと流れているので、緯度経度を変えないためにはどうしなければいけないかというと、動き続けてないといけないんです。
「自分は何をするべきか」という軸はぶらさずに常に動いている、というのが継続するということに繋がると思います。
松田 なるほど、川鍋さんはすごく共感できるんじゃないですか。
「破壊」するのではなく「共に創る」
川鍋 そうですね。
昨日の夜もICCカンファレンスの楽しそうな宴会(パーティ)に参加できずに何をしていたのかというと、京都のタクシー協会の幹部の方と会食していました。
それはやはりこのタクシーアプリみんな一緒にやりましょう、という話しもしないといけないし、自分としては変えていかなければいけないんだけど、彼等が持ってる歴史、伝統、人脈みたいなものは非常に分厚いものがあります。
やり方は遅れていますが、各地域で長年生き延びてきただけあって、もちろん税収もそうだし先生方を応援するということもそうですが、その地域にそれなりに貢献をしてきた人達なんですね。
その過程があるのにいきなり「ディスラプト!(破壊しろ!)」というのは私にはできないし、そうではなくて彼らにまず変わって欲しいし、彼らが変わるにはどういうことをしなければいけないか、ということをひたす飲みながら彼らにお願いするわけですよね。
タクシーとしては、ITをやらなければいけないというのは当たり前なんですが、同時にそのITをやることにおいて、政府や地方自治体の組長が実証実験をする等、必ず場を作ってそこで進めていきます。
「行政が動かない」と言うのではなく、常日頃からきちっとコミュニケーションを取り、各地域のタクシー会社は全員そこの市町村の市長さんとコミュニケーションを取っていつでも会える状況にするというのが、ITを進めるのと同じぐらい大事な軸で、その両方をやれ、という話を昨日しました。
そうじゃないと既存の物って動いていかないんですね。
単に「変わったらいいじゃん、分からないやつはバカだ」ではなくて、分かっていただけない人たちもやはり引っ張っていかなければいけないんです。
そのためにはそういう人達と一緒に時間を過ごして彼らを巻き込んでいくことが少なくとも私のタクシーという軸では必要です。
でもそれをやった時に血を垂れ流しながら、みんな誰かを殺しながら変えていくというやり方ではなくて、ある程度その中で新陳代謝は起きるんですね。
それについてこれない人は事業を売ったり、そしてそれを残る人が買ったり、俺はもういいけど息子はもうちょっと新しいやり方をしてるから息子に任せよう、という形で無理じゃない新陳代謝が必ず起きて、それが起きた時グググッとすごくスムーズに進むんです。
ステークホルダーのほとんどが「まあしょうがないよね」という感じで、決して恨みつらみではなく、そういう変化の仕方を私はしたいし、そうするのが日本的だと勝手に思っています。
少なくともタクシーではそういうやり方をしています。ずっと仮想敵はUBERなんですけどね。
自分自身が本気じゃないと周りはついて来ない
松田 伝統を守るというのは、新陳代謝の循環が上手くいっているという状態なんですかね。
川鍋 例えば松山さんもお若い年代ですが、「フライングお坊さん」と言われたり、産業の中で結構揶揄され、疎まれ、「あいつ何目立ってるんだ」等言われていると思うんですが、そのあたりご自身はどういうご理解なんですか。
松山 多分言われてるとは思うんですが、私は結構 鈍感なので分からないんです。
川鍋 鈍感力。
松田 いい思考パターンですね。
松山 お寺の業界も大事ですが、お寺の業界ばかり見てる人がほとんどで、私達の究極の目的は「衆生済度」と言って皆さんを導いていくことが私達お坊さんの役目なので、お坊さんの業界以外の人達がどういうことに悩み、何を求めていて、そこにアプローチしていくのが仕事だと思ってやっています。
松田 自分の中ではとても自然な成り行き、ということですね。
松山 自分はどうか分かりませんが、トップ・リーダーはマジじゃないといけないと常に思っています。
松田 そこで言うマジとはどういうことでしょうか。
松山 出雲君が言っているのと同じで、失敗するとか上手くいかないかもしれないとかそんなことはどっちでも良くて、まず自分自身が本気じゃないと周りはついて来ないと思うんです。
宗教でもやっぱりそうなんです。
イスラム教の預言者のモハメッド(ムハンマド)は、「山を動かす、奇跡を起こす」と言って、みんなが集まって来るわけです。
モハメッドが「山よ動け」と言うんですがびくともしないわけです。
もう一度「山よ動け」と言うんですが、何も動かない。
更にもう一度「山よ動け」と言ってもびくともしない。
それで彼はどうしたかというと、「今日は山の調子が悪いから」と言って自分から動いていき、それを見て回りの人がついて行ったんです。
これは笑い話じゃなくて、結局マジじゃないとダメだ、ということなんです。
山が動くとか動かないとかではなくて、とにかくリーダーは本気じゃないとダメというのはどの分野でもそうだと思います。
(続)
続きは 「ベンツを売って覚悟は決まった」日本交通 川鍋氏が語る”マジになった瞬間” をご覧ください。
https://industry-co-creation.com/management/6603
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/城山 ゆかり
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【編集部コメント】
続編(その3)では、各登壇者の方々がマジ(本気)になった瞬間を語って頂きました。是非ご期待ください。日本交通 川鍋さんの家業を継ぐ葛藤と決意のお話に注目です。
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