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「トップ・リーダーの行動・思考パターンは何が違うのか?」【K16-8C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!5回シリーズ(その1)は、瞑想や禅を切り口に、リーダーの行動パターンを議論いたしました。「聞思修」など、普段ビジネスでは目にしない言葉が飛び交う異色対談を是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016「ICC SUMMIT」
Session 8C 「トップ・リーダーの行動・思考パターンは何が違うのか?」
(スピーカー)
出雲 充 株式会社ユーグレナ 代表取締役社長
川鍋 一朗 日本交通株式会社 代表取締役会長
松山 大耕 妙心寺退蔵院 副住職
(モデレーター)
松田 充弘 マツダミヒロ事務所株式会社 代表取締役
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▶「トップ・リーダーの行動・思考パターンは何が違うのか?」配信済み記事一覧
トープ・リーダーは「瞑想」をしているのか?
松田充弘氏(以下、松田) さて、トップ・リーダーの行動・思考パターンということで、何でもここに結びつくと思うのであまり固まらずに話を進めていきたいと思います。
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松田 充弘
マツダミヒロ事務所
代表取締役
東北芸術工科大学デザイン工学部卒。カウンセリングやコーチングの理論をベースに、自分自身と人に日々問いかけるプロセスを集約し、独自のメソッドを開発。質問するだけで、魔法にかかったようにやる気と能力が引き出され、行動が起こせるようになることから、「魔法の質問」と呼ばれる。講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。ニューヨーク国連本部の学校をはじめ世界各国の学校や企業で講演を行う。『賢人たちからの運命を変える質問』(かんき出版)『しつもん仕事術』(日経BP社)他30冊を超える著書がある。
【参考資料】
「問」の本質とは何か?
「問」を考えることの意味
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松田 出雲さんは瞑想しますか。
出雲充氏(以下、出雲) 瞑想…瞑想はしたことないですね。
松田 打ち合わせで今日は瞑想から始めようかと言ってたんですが、松山さん、今瞑想またはマインドフルネスという言い方もあって色んなところで取り上げられていますが、瞑想はどんなふうに位置づけるといいんでしょうか。
松山大耕氏(以下、松山) なかなか難しい質問ですね。
瞑想は別に禅だけのものではなくイスラム教やキリスト教、仏教の他の宗派でもやりますが、内面を見つめるという時間ですよね。
松田 内面を見つめることはとても必要、ということですよね。
松山 そうですね、「無用の用」という言葉があります。
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松山 大耕
臨済宗妙心寺退蔵院
副住職
1978年京都市生まれ。2003年東京大学大学院農学生命科学研究科修了。埼玉県新座市・平林寺にて3年半の修行生活を送った後、2007年より退蔵院副住職。外国人に禅体験を紹介するツアーを企画するなど、新しい試みに取り組む。外国人記者クラブや各国大使館で講演を多数行うなど、日本文化の発信・交流が高く評価され、2009年5月、観光庁Visit Japan大使に任命される。また、2011年より京都市「京都観光おもてなし大使」。2016年『日経ビジネス』誌の「次代を創る100人」に選出される。2011年には、日本の禅宗を代表してヴァチカンで前ローマ教皇に謁見、2014年には日本の若手宗教家を代表してダライ・ラマ14世と会談し、世界のさまざまな宗教家・リーダーと交流。2014年世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席するなど、世界各国で宗教の垣根を超えて活動中。著書に『大事なことから忘れなさい~迷える心に効く三十の禅の教え~』(世界文化社、2014年)『こころを映す 京都、禅の庭めぐり』(PHP、2016年)がある。
【参考記事】
「勝手に将来が決まっているのが嫌だった」退蔵院 松山大耕氏の青春
退蔵院 松山大耕氏の「有難い」の意味を知る修行時代
「ローマ教皇に会え」「ダボス会議に行け」退蔵院 松山大耕氏の”なんとかする力”
「みんなバランスを取り過ぎている」退蔵院 松山大耕氏、リーダーへの提言
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例えばコーヒーを飲みたい時にカップに入れますが、そこに仮に水がいっぱいに入っていたらコーヒーを入れたらこぼれますよね。
まず頭の中を空っぽにする、何もなくするということです。
何もないというのは役に立たなそうだけど、実はそれがすごく大事なんだ、という例えです。
松田 なるほど、川鍋さんは瞑想を取り入れたりしますか。
川鍋一朗氏(以下、川鍋) 瞑想はないですね。
ちょっとでも時間があったら何か考えてしまう癖がついてしまっていますね。
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川鍋一朗
日本交通株式会社 代表取締役会長
JapanTaxi株式会社 代表取締役社長
1970年生まれ。1993年慶應義塾大学経済学部卒業。1997年ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院MBA取得。同年9月マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン入社を経て2000年1月日本交通㈱に入社。2005年7月代表取締役社長、2015年10月代表取締役会長に就任。三代目として『黒タク』『陣痛タクシー』『キッズタクシー』『サポートタクシー』『観光タクシー』導入や『日本交通タクシー配車』『全国タクシー』アプリ開発など改革を進め、日本交通グループとして約5200台の国内最大手のハイヤー・タクシー会社を牽引。2013年6月に全国ハイヤー・タクシー協会の副会長、2014年5月東京ハイヤー・タクシー協会の会長に就任。
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その中でも、松山さんがいらっしゃるからのお話ではないんですが、茶道を10年ぐらいやっていまして、もともと茶道に興味があって始めたわけではなく、たまたま後輩が武者小路千家の千宗屋若宗匠でした。飲み友達がやるというので何となく始めました。
お茶を立てている瞬間というのは、次に何をしなければいけない等 集中はしているんですが、そこに集中しているが故に他のことは全部頭の中から抜けて、終わると普段あまり味わえないさっぱりした気分が味わえて、当然 畳とかその中での作法も含め、異空間に紛れ込んで自分を振り返る瞬間だというのはすごく感じます。
「静中の工夫」
松山 今 川鍋さんがおっしゃったように、座禅というのは「静中の工夫」といって静かな中で工夫することです。
私たちは別に座禅だけしているわけではなくて、「動中の工夫」といって動きながらの工夫というのも重視しています。
例えば庭掃除や今おっしゃった茶道、書を書く等、頭の中をすごく掻き回しながら考えるようなことはしなくていいんだけど、単純作業みたいなものにずっと深く落とし込んでいく、という時間が実はすごく大事だと思います。
松田 そういう思考状態を作ると、ビジネスや「働く」ということについてもパフォーマンスが生まれるということはあるんでしょうか。
松山 あるとは思いますが、日本の禅の考え方は功利主義的ではありません。
それをやっていたらもちろん心も落ち着くだろうし、集中力もつくと思いますが、それはある種のおまけで、別にそういうことを狙ってやっているわけではない、ということがポイントだと思います。
松田 だとしたら、そもそも何でやるんでしょう。
「己事究明」
松山 それについて、私たちはプロフェッショナルですが、「動機」は専門用語で己事究明というんですが、要は「自分とは何か」ということをずっと求めていく、そこなんです。
その過程で色んな能力等が改善される点もあるし、パフォーマンスが良くなるかもしれませんが、そういうものは後からついてくるという感じではないですかね。
松田 自分とは何か、ということを見つめていく作業や時間がとても大事だということですね。
松山 プロ的にはそうですね。
松田 出雲さんは自分とは何かを見つめることってありますか。
出雲 そういう時間ですか?全く無いですね。
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出雲 充
株式会社ユーグレナ
代表取締役社長
東京大学農学部卒、2002年東京三菱銀行入行。2005年8月株式会社ユーグレナを創業、代表取締役社長就任。同年12月に、世界でも初となる微細藻ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養に成功。世界経済フォーラム(ダボス会議)Young Global Leader選出(2012年)、第一回日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」(2015年)受賞。著書に『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』(ダイヤモンド社)がある。
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松田 ミドリムシとは何か、というのを見つめる時間はありますか。
出雲 あまり考えてないですね。
松田 考えてないんですか。
今日のテーマは「思考パターン」ですが、考えることよりも考えないでやっていることの方が多いということですか?
アクションを通じて学ぶ
出雲 今答えるのにすごく間があったと思いますが、「◯◯は何か」とか「どうしてこうなのか」とか「議論をクリアにするためには目的を明確にして」とか色々あると思いますが、そういうことは私の場合はほとんどやりません。
とにかくアクション、経験的に得られる物の方がはるかに意味があって、「ミドリムシとは何か」を考えている時間があるなら実験したり手を動かしてみたりして、それ以外のことはあまり意味はないといつも考えています。
松田 思考と行動があるとしたら、まず考える前にやってみよう、ということを大切にしてるということですね。
出雲 思考って何なんだろう、思う、考える時間があるんだったら、私はすごくせっかちなのでとにかく行動して、上手くいったり上手くいかなかったりしますが、それによって得られる物が一番多いです。
考えて考えて、頭がちぎれる程考えて何か良い結論に辿り着いた、という成功体験が私にはないんです。
「考える前にまずやる」
松山 一番最初にお会いした時に、トップリーダーの行動・思考は何かというと、考える前にやることだと言ったんですが、正にそういうことだと思います。
私はお寺の長男に生まれたんですが、中学校と高校はカトリックの学校に行ったので、6年間キリスト教の教育を受けました。
今でもヨーロッパの修道院に行って生活するような機会もあるんです。
禅の修行道場とヨーロッパの修道院はもちろん同じところもあるんですが、ものすごい違いもあるんです。
それは、ヨーロッパの修道院は朝早く起きる、お祈りの時間がある、静かにご飯を食べる、そこまでは一緒なんですが、その後に歴史を勉強する、聖書を学ぶ等勉強の時間がものすごくあるんです。
禅の修行道場は勉強の時間が1分もないんです。
ひたすら掃除、薪割り、雑巾がけ等です。
普通は物事を修得するには「聞思修」(もんししゅう)というんです。
「聞」は聞く、Studyで、「思」は考える、Imagineで、「修」は正にPracticeという流れでいきますが、禅は今 出雲 君が言ったとおり逆で、まずやるんです。
何故か?とかそういうことは考えず、取り敢えずやる。
例えば自転車に乗れるようになる時に、自転車の乗り方のDVDをいくら見ても乗れるようにはならないし、泳げるようになる時に、泳ぎ方の本を読んでも泳げないので、溺れるかもしれないけどビート板持って取り敢えず行け、というのと同じで、まずやるんですね。
その後に何でこんなことをしているか等を考えて、修行が終わった後にみんなStudyを始めます。
松田 修行が終わった後に始めるんですか。
松山 そうなんです、修行中は勉強の時間は1分もないので、ある種特殊な修行体験です。
今 出雲 君が言ったような「考える前にまずやる」というのは非常に親和性があると思いました。
松田 なるほど、川鍋さんはいかがですか。
行動する前に周りの人に聞く
川鍋 近いんですが、私の場合ちょっと違うのは、何かをやる時に自分で考えて行動する前に、周りの人に相当聞くというプロセスが入ります。
松田 聞くというのは具体的にどんなことを指すんですか。
川鍋 例えば今 全国タクシーアプリというタクシーアプリをやっていて、これはちなみにUBERより前にスタートしているのですが、これだけ差をつけられてしまいました。
私はタクシー会社の3代目ですが、タクシーのオペレーションというのは「ランダムに、自然発生的にお客様と車がマッチングする」という世界だったんですね。
それが今度スマホができたことによってお客様の位置が分かる、タクシーの位置もGPSで分かるので、「意図的にマッチングする」という計算ができる世界になってしまった。
これでタクシーという産業自体が大きく変わってしまったんです。
産業の必要な要素の軸足が、今まではオペレーションが大事だったのがソフトウェアが大事な方にすっと移ってしまったんです。
それに気付いた時に、それを「ディスラプト!(破壊しろ!)」と言ってやれる立場ではないので、どうしたらいいかと考えた時、「こういうのがやっぱり必要じゃないですか」というのをひたすら聞きまくる中で、それをやった時に誰が応援してくれそうかというのをまず見極めました。
十分に味方ができそうだということをある程度担保した上で、その中で一番組むと良さそうな人をまとめて一緒に始める、というパターンのプロセスを踏んだのです。
私はアントレプレナー、要するに初代ではないので、そこに「世界中が反対してもやる」という強い気持ちは無かったのかもしれません。
だから必要最低限の周りを固めてから1歩踏み出した、という部分は思考パターンとして少し違うなと思いました。
行動と共に「考える」
松田 聞いて回るということも行動だと思うんですが、どちらかというとやはり考えるより一歩足を踏み出すということなんですかね。
川鍋 そうですね、踏み出すことは決定していたんですが、踏み出す方向や度合い、例えば最初 日本交通 1社だけでやるのか、日本交通と8社、例えば札幌と名古屋と京都と大阪とやるのか。
また大きいところだけでやると「大きいからできるんだろ」とか言われることもシミュレーションして、そうなったら進めづらいので「小さいけどできますよ」という人も入れておくと話が早い、ということも考え、打診しながら進めましたが、これはPDCサイクルのプロセスかもしれません。
松田 今お聞きすると、行動と共に「考える」ということも結構されていますね。
川鍋 そうですね。とにかく結果を出さないと意味がないわけじゃないですか。結果を出さないと、またICCカンファレンスに呼ばれないですし。
(会場笑)
色んなやり方があると思うんですが、私は3代目なので色々持っているし、リソースあるのでそこが純粋なベンチャーと違うと思うんです。
その中でそれを前に進める、実際に結果を残すことでしか自分を証明できないですよね。
ある程度 売上も大きいし、そうすると「日本交通は変わったよね、運転手良いよね」と言われ続けることでしか自分の存在価値を見出だせないので、そこは必死にやっています。
松田 評価軸は結果であるということですね。
川鍋 そうですね。
今よりも良い方向に私が率いたという結果しかなくて、それが「ゼロイチ」ではないので結構大変ではあります。
自分が楽しいと思うかどうか
松田 出雲さんのところでは自分なりの評価軸は結果としての「売上」等になるんですか、それとも全く別のところにあるんですか。
出雲 そういうものは、もう全く関係ないです。
(会場笑)
ミドリムシが明らかにイケてて面白くてすごいから、これは絶対みんな喜んでくれる。
売上等は、今日も来ていますが、永田(取締役)がいて、「色々計算して大体こうなります」と、本当にやっていくとそうなるんですよね、だからすごいな!と思うんです。
でも私は、売上はあがったら勿論いいんですが、ミドリムシでこんなに面白いことができるのにやらなかったら勿体無いという気持ちで、自分が楽しいからやってるんです。
松田 行動の源としては「自分が楽しいから」というのが一番ということでしょうか?
出雲 はい、楽しいことをやっている時は、失敗したらどうなるのかとかこれ上手くいかなかったらどうなるんだろうとか、そんなことは考えないですよね。
(続)
続きは 「不動心とは、フレキシブルさである」退蔵院 松山大耕氏が説く”伝統を守るための変化” をご覧ください。
https://industry-co-creation.com/management/6602
【参考記事】
「勝手に将来が決まっているのが嫌だった」退蔵院 松山大耕氏の青春
退蔵院 松山大耕氏の「有難い」の意味を知る修行時代
「ローマ教皇に会え」「ダボス会議に行け」退蔵院 松山大耕氏の”なんとかする力”
「みんなバランスを取り過ぎている」退蔵院 松山大耕氏、リーダーへの提言
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/城山 ゆかり
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【編集部コメント】
続編(その2)では、トップ・リーダーとして事を継続することの重要性と、その「継続」のために必要なことについて、ビジネスと宗教の世界が交差したお話を頂きました。是非ご期待ください。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。
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