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ICC FUKUOKA 2021 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただいた、リープ共創基金 加藤 徹生さんのプレゼンテーション動画【「リープ共創基金」は、少額からできる“寄付ファンド”で、社会的弱者やNPO起業家を継続的に支援する】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 プラチナ・スポンサーのセールスフォース・ドットコム様にサポート頂きました。
▶【速報】福祉を起点に寛容な社会を提案する「へラルボニー」が ソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICCサミット FUKUOKA 2021)
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【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICC FUKUOKA 2021
Session 13A
ソーシャルグッド・カタパルト&ラウンドテーブル
Supported by セールスフォース・ドットコム
加藤 徹生
一般財団法人リープ共創基金
代表理事
アジア及び日本におけるソーシャルビジネスおよび非営利組織の事業開発に携わり、これまで約3億円を提供し、計36社の事業開発及び変革を支援。東日本大震災の復興支援を経て、財団法人を設立し、東北、日本、アジアでの「社会的投資」を手がけてきた。AERA「アジアで勝つ日本人100人」に選定。著書に「辺境から世界を変える」(ダイヤモンド社 2011年)
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加藤 徹生さん (一般財団法人)リープ共創基金の加藤です。
本日は、我々の財団について、また、「ギビングファンド」という仕組みについてお話をさせてください。
日本になかった大口寄付に対応する財団を設立
そもそも財団を設立したのは、とある相談がきっかけでした。
「3,000万円の遺産を寄付したいのだけれど、どうしたらよいか」という友人からの相談でした。
3,000万円という金額が大きすぎ、日本の小規模の非営利組織に寄付することは勧められませんでした。なぜなら、過大な資金提供は非営利組織の腐敗を招くことすらあるからです。
欧米であれば、3,000万円という大口寄付の場合、中間に財団が入り、持続可能な助成プログラムの設立の提案を受けることができます。
運営から資産の運用まで一任することができ、資金の管理者を選ぶ立場になるのです。
でも残念ながら、当時の日本国内では基金を持続可能な形で運用し、かつ、効果的なプログラムを組んでくれる主体が見つからなかったのです。
それならば創ってしまおうと考えて、我々の財団を立ち上げました。
そして、この遺産は独自の基金として、篤志家のお名前を取り「たつえ基金」と名づけられ、我々の財団が資産運用を行なっています。
毎年、約100万円を教育系のNPOに助成させていただいています。
▶参考:「財団ってそもそも何ですか?」新しく財団をつくろうとしているREEP加藤轍生さんに聞いてみた(DRIVE)
元本を維持したまま運用益で継続的に助成するギビングファンド
この財団を立ち上げた効果はもうひとつあります。
我々は今、無利子で元本を出資していただき、その元本を運用しております。
運用すると資金は増えますので、その増えた分だけをNPOに助成していきます。
したがって、この仕組みは永続できるということです。
安心して寄付を続けられるなった点が大きな変化です。
この日本版「ギビングファンド」という仕組みは、米国の仕組みと違う部分はあるのですが、これまで数億円をかけて作った個人財団が行なっていたことを、全てできるようにしたものです。
資産を運用するにしてもNPOを探すにしても専門的なノウハウが必要ですから、そういったことを全て専門家に依頼ができるというメリットもあります。
運用に関しては、日本の鎌倉投信、アメリカのEtho Capitalといった世界のインパクト投資(※)やESG投資(※)の中から最適なものを選んで投資しております。
▶編集注:インパクト投資とは、財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的及び環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資行動のこと。
▶編集注:ESG投資とは、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のこと。
上記にあるように、「寄付」は1回限りで終わってしまう“旅行”のようなものだと言われることが多いのです。
一方で、「個人財団」というのは、数億~数十億円かかってしまう“豪邸”を建てるような苦しさがあります。
しかも、設立したとしても、スタッフに恵まれなければ上手くいくかどうかわかりません。
そういった問題を解決するのが、このような「ギビングファンド」で、相乗り型の“マンション”のようなサービスだと言われています。
この「ギビングファンド」は、日本において様々な法規制があり、なかなか実現できずにいたのですが、ようやくクリアでき、これから本格的に展開するところです。
我々は100万円の出資からご相談を承っております。
社会的な資産運用と起業家への支援で二重の貢献
やはりファンドという財務的な仕組みですので、お金の話も少しさせてください。
まず出資者には、3年以上は出資してくださいとお願いをしています。
また、運用の利回りは4%をターゲットにしているのですが、現在まで非常に好調で10%以上の利回りを記録する年もあります。
我々は非営利の財団ですので、運用益に課税はされません。
管理費は頂きますが、運用益の大半はNPOや社会起業家に寄付されます。
そして、寄付先については、我々がリストアップをさせていただいて、出資者と一緒に選ぶというプロセスを踏んでおります。
ポイントは、資産運用においても社会起業家への資金提供においても、二重のインパクトがある、ということです。
アメリカのギビングファンドは9年で3倍に成長
こういった寄付系のサービスはなかなか伸びないことが多いのですが、「ギビングファンド」は違います。
上記のグラフにあるように、アメリカでは非常に伸びていて、流入する金額が9年で約3倍に成長しています。
アメリカと日本では寄付の規模が違うのですが、アメリカでは毎年、約4兆円が「ギビングファンド」に流れています。
また、アメリカでは証券会社やさらには、PayPal(ペイパル)などのITベンチャーが「ギビングファンド」を作るという流れすら起きており、新たな産業となっています。
ICCのギビングファンドをシミュレーション
ここでひとつ提案がありまして、ぜひICCにおいても、こういった「ギビングファンド」を設けてみる、というのはいかがでしょうか?
例えば、上記にあるように、30人の経営者から100万円を募り、3,000万円の「ギビングファンド」を創設します。
そうすると、毎年100万円強が運用益で生まれますので、それを使ってNPOや社会起業家に資金提供をします。
ただ、皆さんにとっては、この100万円強の資金というのは物足りないかもしれません。
そこで、資金だけではなく、皆さんの持つサービスや技術もあわせて持ち寄り、社会起業家を支援するといった仕組みを作れないか、というふうに考えています。
例えば、我々が以前行なった事例として、e-Learning(イーラーニング)のベンチャー企業から、貧困層の教育を支援するNPOにコンテンツを提供していただきました。
こちらが新しいモデルとなり、全国の数十地域に波及しました。
さらには、行政への提供や資金調達にも成功し、インドネシアにも波及したという事例があります。
こういったモデルは、世界には多くあるのですが日本には少なく、皆さんとでしたら一緒に作ることができるのではないかと思っています。
最悪の状況にいる人々に最高の支援を届けたい
改めて、我々が何をしたいかということをお話しさせてください。
最悪の状況におかれている人々に最高の支援を届けたい ── これが我々のビジョンです。
私自身、実は社会的弱者でして、公害病患者の最後の世代です。
弱者の立場にいますと、いろいろとたらい回しにされてしまうこともあるのですが、運よく私は素晴らしい養護学校に入ることができ、このように回復して皆さんの前でお話しする機会も頂いています。
そういった最高の支援を最悪の状況にある人たちに届けるということをしていきたいと改めて強く思っています。
そのためには、やはり資金面も重要ですので、この「ギビングファンド」というサービスを立ち上げたのです。
しかし、日本における寄付市場は、アメリカのようには伸びていないのが現状です。
ソーシャルリーダーと呼ばれる存在は生まれており、また、日本のNPO法人数も数万件あるのですが、日本における寄付額は6,000億円のまま横ばいなのです。
この構造を「ギビングファンド」で変えることができれば、新しい流れを作り出せるのではないかと思っています。
この「ギビングファンド」というサービスについて、今、我々は個人から始めていますが、ゆくゆくはNPOや財団にノウハウを移植していくことを目標としています。
さらにもうひとつ大きな目標として、このような流れから1兆円産業に育成していけたらと考えています。
10万円でも基金を作ることができるようにしたい
最後に、もうひとつだけご紹介をさせてください。
とあるホームレスの方からお話を聞いていた際、彼は「若いホームレスのために基金を作りたい」と言っていました。
彼が残すことのできる金額はそれほど大きくはないかもしれません。
しかし、我々の「ギビングファンド」のようなサービスがより成長し、10万円でも基金を作ることのできる世界を作り出せたら、ホームレスの方々や本当に困っている方々の世界も変えられるのではないかと思っています。
もし「ギビングファンド」にご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご提案の機会をいただけましたら嬉しいです。
ご清聴、ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/中村 瑠李子
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