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シーズン7を迎えた「人間を理解するとは何か」、全7回の③は、リバネス井上 浄さんが興味深い実験結果を紹介します。俗に言われる「おじさんは酒を飲むと話が長くなる」は本当か? オンライン飲み会の聴覚情報を見える化してみたら、驚きの真実が明らかになったと言います。一同大興奮のその結果とは? ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2022 プレミアム・スポンサーのリブ・コンサルティングにサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2022年2月14〜17日開催
ICCサミット FUKUOKA 2022
Session 8C
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン7)
Supported by リブ・コンサルティング
(スピーカー)
石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO
北川 拓也
楽天グループ株式会社
常務執行役員 CDO(チーフデータオフィサー) グローバルデータ統括部 ディレクター
(登壇当時)
(モデレーター)
村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表
(登壇当時)
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1. 迫りくるメタバース時代、シーズン7にして人間は理解できるのか?
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2.非対面より対面のコミュニケーションが、なぜ良いと感じられるのか
本編
井上 次にコミュニケーションをするときの聴覚情報ですが、これは声の大きさやピッチ、タイミング、発している長さなどです。
コミュニケーションを目的にした場合、オンラインではコントロールができそうだと思っています。
まあ、声の大きさは聞く側が調節するのでどうしようもないですが、話す速さやタイミング、発する長さは音の情報として耳に届くものです。
これらはコントロールできそうなので、オンラインコミュニケーションにおいて、掘り下げるのは聴覚情報だと僕は思っています。
ですので、試してみたいと思っているのです。
オンライン会議の聴覚情報を可視化するサービス
井上 この分野に特化したHylable(ハイラブル)という会社があるのですが、皆さんご存知ですか?
例えばオンライン会議の際、聴覚情報が可視化されたらどうなるか。
例えば、スライドの右にあるように、人が話している長さの情報が、グラフとなって蓄積されていくのです。
また、スライドに「ターンテイク」とありますが、誰かと誰かが話している時、話している人の丸が大きくなったり、誰と誰のやりとりが多いかについて可視化されたりするのです。
コロナ禍が始まってから、このハイラブルという会社と共同開発という形で、ウェブ会議の分析をずっとしてきました。
これがめちゃくちゃ面白いのです。
例えば、それまで話しすぎていた人が、「ごめんね、話しすぎていたね」と言えるようになります。
北川 確かに。
村上 定量的に、お前は話しすぎであると言えるようになりますね。
井上 そうそう、定量的に。
また、盛り上げ役が誰であるとか、誰と誰の声が重なっていたかなども分析、評価できます。
話していた内容は一切解析しておらず、解析したのは聴覚情報、つまり音だけです。
音だけで、これだけのことが分かるのです。
でもこれらのデータで行動変容が起き、コミュニケーションの方法が変わりますよね。
小学校の授業の話し合いを分析
井上 これを使って何かできないかと思い、これまでに小学生から社会人まで4.7万人以上のデータを分析しているハイラブルと研究しました。
小学校の道徳の授業の、話し合いの時間で分析してみました。
これはオンラインではなくオンサイトで、卵の形をしたレコーダーを机に置いて、誰かが話すというコミュニケーションの聴覚情報の分析です。
この分析の成果は、自分の行動をメタ認知できるので、行動変容が非常に期待できるということです。
ここにいらっしゃる経営者で、社内の会合で1回やってみようかなという方、是非お声がけください。
最初は紹介して回っていたのですが、何せシステムがすごく不安定で(笑)。
村上 (笑)。
井上 すぐ止まっていたのです。
でも今はかなり改善されて、スライドシェアもできるようになりました。
村上 素晴らしい。
井上 分析した授業の後に、「話し合いを良くするにはどうしたらいいか」という問いかけをしていました。
聴覚情報の可視化でここまで分かる!
井上 また、我々はスクール授業を行っているのですが、小学生だけの会話では、スライドの左上にあるように、(4人いても)3人で交互に話す状況が生まれます。
そこにファシリテーターやメンターを1人入れて1対1対応をしてみると、1対1対応がきちんとできていることが見えます。
5人くらいの大人数になると、たいていの場合、テンションの高い2人だけがたくさん話す状態になります。
でも先ほどの例を応用し、ファシリテーターやメンターを1人入れると、みんなで話せる形を作れます。
これらが全て、可視化できるというのが重要なポイントです。
北川 面白い。
井上 可視化することで、声をかけてもらったから発したと、本人たちが気づくのです。
繰り返しになりますが、話の内容のデータは取っておらず、聴覚情報だけでこのような行動変容が起こるということです。
我々は、聴覚情報についてまだまだ未開拓だったということです。
村上 面白いですね、話の内容は全く分析していないということですよね。
井上 そうです。
村上 例えば、フランス人がフランス語で議論をしているのを分析すると、誰が会話をリードしているかわかるということですよね。
井上 そうそう。
フランス語が分からない我々にとっては、それは聴覚情報ですよね。
これをうまく利用することで、会議の効率化や新しいものを生むためにどうすればいいのかにつながると思います。
例えばハッカソン(※) の時、グループでの会話を録音すると、いち早く面白い形で現実的なプレゼンを生み出せるチームは、スライドの右上にある、1人のリーダーからメンバーに線が出ているタイプでした。
▶ハッカソンとは、ソフトウェア開発分野のプログラマやグラフィックデザイナー、ユーザインタフェース設計者、プロジェクトマネージャらが集中的に作業をするソフトウェア関連プロジェクトのイベント(Wikipedia参照)
ハッカソンの時は、リーダーがドライブする状態が良いのです。
スライドの右下にあるような、みんなで話し合うグループはいかにも良さそうに見えますが、結果的にものが出来上がらないのです(笑)。
村上 時間がかかるのですね(笑)。
井上 そうそう(笑)。
村上 面白いですね。
井上 ですから、聴覚情報だけでも分類ができますし、目的に合わせた最適なスタイルが分かります。
例えば、「こういう目的でコミュニケーションをしたこの会議、結果が良かったね」という場合、その履歴を残すこともできるのがポイントです。
先日のリアルテック・ラウンドテーブルでも、データを取ってみました(※) 。
▶編集注:一部のデータ分析結果が、音環境分析技術で、Webや対面の会議をリアルタイムで見える化する「ハイラブル」(ICC FUKUOKA 2021)で紹介されている。
「おじさんは酒を飲むと話が長くなる」は真実?
井上 さて、ここでちょっとアイスブレイクします。
皆さん、「おじさんは、お酒を飲むと話が長くなるのか」について、聴覚情報を用いて、真実かどうかを調べていこうと思います。
おじさんは、お酒を飲むと話が長くなりそうですよね。
心当たりはありますか?
村上 会場の皆さん、頷いている感じがしますね。
石川 僕らはそんなにお酒を飲まないので…(笑)。
北川 あまりピンときていないので、「そうなのか」と思っています。
石川 飲まないから、話すしかないので(笑)。
村上 「飲まないけど、話が長いのでは」説ですね。
井上 例えばおじさんが飲みに行った時、赤ら顔になって、態度が大きめになって、何か得意気に「あの時の話」をしようとするという視覚情報が入った場合、話は長くなるというインプットがされていますよね。
村上 そうですね。
井上 聴覚情報で可視化すると、さして長い話ではないのに、すごく長い話に感じられているかもしれません。
村上 バイアスがかかってしまっていますからね。
井上 そうです。
僕はおじさんが誤解されているのではないかという思いもあったので、実際にやってみましょうと。
村上 定量的に判断しようということですね。
井上 そう。そしてこれが、とあるオンライン飲み会の真実です。
縦軸が血中アルコール濃度で、20時40分頃からかなり濃くなってきています。
村上 かなり濃いめですね。
井上 20時50分頃には、いい感じになってきています。
北川 色が違うのは、それぞれ別の人ですか?
井上 そうです。
それぞれの別の人の濃度ですので、全員合わせてトータルの濃度が0.25%ということです。
そしてこれは、それぞれの人が発していた声の長さで、色で分けられています。
よーく見てみてください。
20時40分より前、みんな結構細かく、声を出していますよね。
村上 これ面白い!
井上 20時50分過ぎから、色が目立っていません?
村上 後半に、目立つ色が出てきていますね(笑)。
結論「おじさんは酒を飲むと話が長くなる」
井上 そして、このグラフが真実です。
このグラフの縦軸が、発話の長さです。
20時50分頃を境に、急激に話が長くなっていました!
ということで結論は、おじさんは、お酒を飲むと話が長くなる!
村上 証明された!
井上 これは間違いないです。
QRコードからアクセスすると、「オンライン飲み会実験の分析でわかった不都合な結果」というnoteがあり、そこに詳細が書いてあります。
北川 めちゃくちゃ面白いじゃないですか。
村上 最高ですね。
北川 浄さんの話は、長くなっていたのですか?
井上 僕も長くなっていました(笑)。
村上 なっていた(笑)。
井上 僕も立派なおじさんになれたということですね(笑)。
北川 もしくは、お酒を飲んだら話が長くなる人をおじさんと呼ぶのはどうでしょう。
井上 それもあるかもしれないですね、どういうベン図になるかは分かりませんが。
一緒に飲んでいたおじさんは、皆さんがよく知っている人たちではないでしょうか(笑)。
学長(楽天大学学長 仲山 進也さん)とかもいますね。
北川 学長が入っている(笑)。
村上 サンプルが偏っていますね、面倒臭い人しかいないじゃないですか(笑)。
石川 普段からよく話す人ばかりですね。
井上 普段よく話す人が集まると、それなりに気を使うので、ターンテイクは増えるのです。
でもお酒を飲むと、1人で急に話し始めるのです。
ハイラブルのロゴはカエルなのですが、ハイラブルの中におたまじゃくし研究所というものを作り、日々オンライン飲み会の解析や発話量を合わせるバランスゲームをしています。
発話量をバランス良くしようとしたり、逆に、リーダーが引っ張るタイプの会話にしようとしたり…。
石川 それ、酒を飲むための言い訳じゃないですよね(笑)?
村上 浄さん、今度、男女比を半々にして実験してみましょうよ。
井上 そうなんですよ。
お誘いは結構しているのですが、「私は大丈夫です」と断られていて(笑)。
石川 アルコールの血中濃度を測られますからね(笑)。
村上 おじさんに限った傾向ではないかもしれないですよね。
井上 オンラインなので大丈夫ですから、ご興味のある方がいらっしゃれば、是非ご連絡をお願いします。
北川 学長はチームワークのセッションをやっているじゃないですか。
チームビルディングのプロセスは、フォーミング(形成期)、ストーミング(混乱期)などとステージが分かれますが、どのステージでどの会話量がベストか、みたいな話をしたのではないですか?
井上 もう、北川さん大好き。
そういうことに、本当に真面目に取り組んでいるのですよ。
北川 ですよね。
井上 飲み会のデータだけじゃなくてね。
北川 何か気づきはあったのでしょうか?
チーム結成時の最初の段階では、これくらいの会話量が良いとか。
井上 まだ結果は出てないのですが、色々な手法を開発しようとしています。
可視化することで意識することができることから、色々なパターンを作っているところなので、もう少し待ってください。
ただ、聴覚情報だけだと(人に与える影響は)35%ほどに限られてしまうので、その点も開発を進めています。
ご興味のある方がいれば、是非おたまじゃくし研究所の定例会に来てください。
ずっと録画されるので、面白いですよ。
何か共有するものがあれば黙っていても平気
北川 あと、発話量ごとに、それぞれの人がどういうことに囚われているのかが気になりますね。
例えば、僕にもあったのですが、「話さないといけない」などの思い込みがあるのではないでしょうか。
石川 例えばオンライン飲み会の場で、3分間全員が黙るというのはできなさそうですよね。
でも一緒に歩いていると、3分黙っていても平気ですよね。
井上 そうですね。
石川 つまり、黙っていてもいいかどうかというのが、オンラインとリアルの違いではないかなと思いました。
黙っていても共有される何かがある、というか。
村上 Zoom飲み会が流行っていた時、焚き火のYouTube動画を一緒に見ながら飲み会をしたことがあります。
そういう状況だと、黙っていられるのです。
ですから共通の何か、例えばオンラインの時には共通の焚き火の動画、歩いている時には共通の景色など、何か共有するものがあれば黙っていられるのではないかと思っています。
井上 炎を見つめながら、普段は話さないことを話してしまう…、焚き火は確かにそうですね。
何か視覚情報として共有するものがあれば、視覚情報が占める55%のうち、いいところまでカバーできそうですね。
石川 触覚はどうなのでしょうか。
井上 コミュニケーションの中では重要ですね。
(続)
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続きは 4. オーラがある人・ない人の違いとは? 石川 善樹の見解 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸
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