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子どもが大切に育てられる社会のために、児童養護施設の職員不足解消を目指す「チャイボラ」(ICC FUKUOKA 2023)

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ICC FUKUOKA 2023 ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 -に登壇いただき4位に入賞した、チャイボラ大山 遥さんのプレゼンテーション動画【子どもが大切に育てられる社会のために、児童養護施設の職員不足解消を目指す「チャイボラ」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

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【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

大山 遥
NPO法人チャイボラ
代表理事
HP

2009年(株)ベネッセコーポレーション入社  2016年 日本児童教育専門学校入学 2017年 任意団体チャイボラ設立 2018年 NPO法人チャイボラ設立 ベネッセコーポレーション入社後、教材を寄付できないかと児童養護施設に問い合わせをしたところ、「ほしいのは物ではなくて人なんだよ」と言われ、社会的養護における人材不足の課題を知る。その後、自ら施設職員となるため資格取得に向けて保育士の専門学校へ入学。学校生活をおくる中で、施設に関心を持ったクラスメイト達が施設に繋がることができず、別の道に進んで行く状況を目の当たりにし、チャイボラを設立。現在も児童養護施設で現役で働きながら、NPO法人チャイボラの代表として「施設職員の確保と定着」のために取り組む。


児童養護施設を含む社会的養護施設の職員不足という課題

大山 遥さん 現在、日本における、年間の虐待相談対応件数は、約21万件。

厚生労働省 令和3年度の児童虐待相談対応件数を公表(児童虐待防止全国ネットワーク)

その中で、虐待などを理由に、児童養護施設などで生活する児童の人数は、約35,000人です。

今、それらの施設には、圧倒的な職員不足という課題があります。

私たちチャイボラは、日本で唯一、このような施設の職員不足解消に挑む団体です。

チャイボラの原点となった一本の電話

チャイボラは、一本の電話から始まりました。

私は、元々ベネッセコーポレーションという教育教材の会社に勤めていたのですが、その当時、教材の一部を寄付できないかと思い、ある施設に問い合わせをしてみました。

寄付ですので当然喜ばれるかと思っていたのですけれども、返ってきたのは、「欲しいのは物じゃなくて人なんだよ」という言葉でした。

問い合わせ先の職員さんは、「時間帯によって、1人で8名、多いときには15名の子どもを見ている。下は2歳から上は18歳まで、大半は虐待が理由で入所していて、発達や知的の課題もある。そのような状況下で、『進研ゼミ』(※添削式の通信教育講座)の教材が毎月送られてきても、とても手が回らない」と話してくれました。

私は衝撃を受けました。

退職し保育士専門学校に入学

衝撃を受けた私は、「私が職員になるから待っていてほしい」と伝えて、その1週間後にベネッセコーポレーションに辞表を出し、保育士専門学校の夜間部に入りました。

入学当初、クラスメイトのうち施設への就職希望者は私のみ(私以外のほとんどが保育園志望)だったのですが、授業を受けるうちに約3分の1の学生が施設就職へと希望先を変えました。しかしその半年後にはまた就職希望先を保育園に戻してしまったのです。

興味があっても児童養護施設の情報が見つからない

どうしてなのだろうかと思い、150人以上にインタビューしていきました。

そうすると、「興味はあるけれども、施設の情報が見つからない」という回答がありました。

今、施設の予算は、国と自治体から、およそ半分ずつ下りてくるのですが、その中に、広報費という勘定科目がないのです。

ですから、ホームページを作ることができなかったり、有料の求人サイトに掲載できなかったり、広報担当を設けられなかったりという現状があります。

そのため、広報のノウハウも蓄積されず、また、そもそも秘匿性が高い部分もあるので、施設の中の情報を外に発信するという文化自体がなかったのです。

イベント開催から始め、総合情報サイトを立ち上げ

その現状を打破できれば、職員の採用数をもう少し伸ばせるのではないかと思い、2017年、保育士専門学校のクラスメイトと一緒に、施設の子どもたちと遊ぼうというボランティアイベントから始めました。

その後、様々なスタイルの施設見学会へと発展していき、現在の私たちの基幹事業である、社会的養護 総合情報サイト「チャボナビ」を立ち上げました。

無料の「チャボナビ」で職員の確保・定着を支援

「チャボナビ」は無料で、施設が様々な情報を発信できます。

ホームページがなくても、発信することができます。

また、施設と求職者が、チャットで直接やり取りができるようになっており、それによって、採用数が大きく伸びていきました。

今、施設職員と連携して、興味喚起から接点創出、そして理解を深めてもらい、定着事業としての職員向け相談窓口なども運営しており、確保から定着まで一気通貫でサポートしています。

これまでに施設につなげた人数も2,800人を超え、この必要性を国に訴えかけたところ、ついに2022年、国が事業(※社会的養護魅力発信等事業)を開始し、チャイボラが公募事業に採択されました。

厚生労働省「社会的養護魅力発信等事業に係る公募」にて施設職員の確保・定着を支援をするNPO法人チャイボラが採択決定(PR TIMES)

公費以外にも収益の道筋

全国の約3分の1の児童養護施設をサポートするまでになりました。

現在は、児童養護施設のシェアも、全国の約3分の1にまで到達しました。

私たちはこれまでずっと、この活動を施設から対価を得ずに行ってきています。

寄付と助成金で運営してきましたが、近年は、「対価を払うから、もっとサポートしてほしい」と言ってくださる施設が次々と出てきています。

さらには、今、企業と施設をつなぐマッチング・コンサルというサービスで、企業からの対価を得るという事業も生まれてきています。

施設の「あと1人いれば…」

ここでひとつ、Aちゃんと、ある施設職員さんの話をさせてください。

Aちゃんは、生まれたときから両親が行方不明で、施設に預けられて育っていました。

皆さんは意外に思うかもしれませんが、施設の子どもたちは、食事中などに、ご家族の方の話を結構するのです。

ただ、Aちゃんは自分のお父さんやお母さんのことを知らないため、ほかの子どもたちの話を聞いていて、自分のお母さんはこのような人だと思うというふうに、その職員さんに話していたそうなのです。

そんなある日、Aちゃんのお母さんが見つかりました。

協議に協議を重ねて、会えることになったのです。

Aちゃんは、期待と不安でいっぱいで、お気に入りの洋服を着て、お気に入りの髪型をさせてもらって、想像でお母さんの似顔絵を描いて、面会に臨んだそうです。

ですが、実際に現れたお母さんは、Aちゃんが想像していたお母さんとは少し違っていました。

その日、その職員さんは宿直で、Aちゃんが「寝るまで傍にいて」「お休みトントンして」と言ってきたそうなのですが、1人で8人、夜は15人を見なければならず、さらにはタイミング悪く、ほかの子どもたちの間で喧嘩が起こってしまったのです。

その職員さんがAちゃんに「少し待っていて」と言って、喧嘩を収めに行き、急いで戻ったときには、Aちゃんは自分の体にタオルケットをぐるぐると巻いて、ベッドの隅で小さくなって、枕を涙で濡らして寝てしまっていました。

不安になると、体にタオルケットを巻きつける子だったようです。

あと1人、その施設に職員がいれば、もしかすると、その子が人生の中で最も誰か傍にいてほしかった瞬間にいられたかもしれない。

このように、職員にどれほどの思いがあっても、できないことが多くあるのが、今の施設の現状です。

子どもが親を思う気持ちは計り知れない

ただ、この話には続きがあります。

この子は、数年かけて家族のもとに帰っていきます。

実は、私も、施設で働いている現役職員で、今5年目です。

施設で働き出して感じるギャップは、親御さんから頻繁に連絡が来るということ。

ですが、それ以上のギャップは何だと思いますか。

子どもが親を思う気持ちは、計り知れないということです。

強く思っていて、信じているのです。

そのような親子を、どうにかまた幸せいっぱいに歩いていけるように、職員は日々奮闘しています。

私たちは、子どもたち一人ひとりが大切に育てられる世の中を目指して、職員不足という課題を、必ず解消します。

最後に、皆さんに、お願いです。

施設に子どもを預けている親御さんや施設にいるお子さんには、皆それぞれ、様々な家族の形があります。

偏見を持たずに、温かく受け入れてくれる社会を、私たちと一緒に実現することで、このビジョン達成につながっていくと思っています。

ご清聴ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/戸田 秀成

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