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ICC FUKUOKA 2023のセッション「アジア市場のビジネスチャンスについて語り合う」、全5回の③は、アジア進出によって日常的に起こり得るハードシングスと、あらゆる領域にビジネスチャンスがあり圧倒的な勝者は不在の現況が語られます。インドネシアで日本人として初めての上場を果たしたVENTENYの和出 潤一郎さんがアジアからビジネスを始めた深い理由とは?ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは リブ・コンサルティングです。
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【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 10E
アジア市場のビジネスチャンスについて語り合う
Supported by リブ・コンサルティング
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▶「アジア市場のビジネスチャンスについて語り合う」の配信済み記事一覧
現地でのハードシングスと対策
蛯原 アジアでビジネスをするとき、人材に関して、分かりやすいハードシングス、事件や事故はありますか?
例えば、厳しいことを言った次の日からいきなり来ないというのも、普通にありますよね?
和出 そうですね、日常茶飯事ですね。
蛯原 それ以外に、「マジで?」と思ったようなエピソードはありますか?
和出 まあ、ハードシングスはありますね。
日々のモニタリングをしていなければ怠けてしまいやすい体質であるとか…、あと会社の現金に対するアクセスは最低限にしていきたいと思いますね。
蛯原 魔が差すということですか?
和出 そういうことが日本よりも起こりやすいように思います。
中島 基本的に、会社が不正をさせない仕組みを作らないと、魔が差す可能性が高いです。
蛯原 日本よりも、性悪説に基づくマネジメントが必要だということですね。
中島 台風が来て屋根が飛んだから、お父さんが病気になったから、お金を貸してほしいと、日系企業のトップにせっつくのが一般的です。
目の前にお金があったとして、回収して牽制する機能がなければ、魔が差しやすいです。
そのコントロールを日本から、または現地法人がしっかりやらなければそこから蝕まれていくので、注意が必要です。
蛯原 十河さん、何かありますか? 身の危険を感じたほどの経験などはないですか?
十河 それはあまりないですね。
蛯原 意外とないのですね。
十河 もう麻痺してしまっているかもしれないです。
ただ、ハードなのは回収ですね。
お金の回収は、営業や経理のメンバーで行わなければいけませんが、基本的に、期日通りに払ってくれる会社はあまりないのです。
蛯原 お客様からの回収ですよね。
十河 はい。それに対して怠けてしまうというか、あまり責任を持って回収までしてくれません。
仕組みとしてトラッキングをして、改善はしていますが、営業や経理の意識の薄さは、スタートアップでは特に、最終的にはキャッシュフローが回らないというクリティカルな状況につながります。
ですから、結構気をつけないといけないですね。
蛯原 では売上は、計上ではなくて回収を基準にして立てているのでしょうか?
十河 そうですね。
インセンティブは回収ベースで払っているので、回収されなければインセンティブも払われない仕組みに変えました。
蛯原 一番回収が大変なのはどの国ですか?
十河 インド、インドネシアですね。
蛯原 そうですね、インドネシアは基本的に払わないですからね。
2、3回催促してようやく払うくらいです。
コールドチェーン物流にチャンスがある
蛯原 少し話が戻りますが、有望な事業、産業、分野、技術など、アジアで注目しているものはありますか?
これから伸びるのではないか、これがホットなど…。
和出 個人的には、ロジスティックスです。
今、コロナ禍をきっかけに、オンラインやEコマースにシフトしている方がたくさんいますが、コールドチェーン、つまり生鮮食品を運ぶツールが今はないのです。
その領域で事業を始めれば、インドネシアの大手物流会社のJ&T Expressなども参入してきましたが、伸ばしやすいのではないかと思います。
蛯原 とはいえ、ユニコーンやユニコーン候補の物流会社は、相当出ましたよね?
さらに出てくるということでしょうか?
和出 一般的なロジスティックスではなく、コールドチェーン(生鮮食品や医薬品などを生産・輸送・消費の過程で途切れることなく低温に保つ物流方式)など、プラスアルファの特徴を持つ会社はまだまだ成長の余地がありますし、プレイヤーもそこまで多くはないと思っています。
蛯原 インドで、佐川急便のような会社に投資をしていますが、今一番ホットなのはコールドチェーンですね。
おやじギャグではありません(笑)。
日本の大企業はコールドチェーンが大好きなので提携もしていますし、アジアはコールドチェーンがすごく遅れています。
昔から疑問に思っていたのですが、タイやインドネシアは平均気温が毎日30℃くらいなのに、路上で生魚を売っていますよね(笑)。
和出 絶対に食べないようにしています(笑)。
蛯原 どうなっているのだろうと思いますが、そういうレベルなので、そもそもコールドチェーンという概念がないのでしょうね。
中島 コールドチェーンというよりも、インドネシアでもどこでも、肉は屠殺場からそのまま生の肉を運んでいます。
蛯原 そうですよね。
中島 卵も常温で運んでいるので、そりゃ、生で食べるとお腹が痛くなりますよね。
蛯原 (笑)。
中島 コールドチェーンは、物流を進化させるには絶対に必要です。
そうなると、高い車を買わないといけないので、様々な金融の問題も出てきます。
蛯原 今日のテーマはビジネスチャンスです。他に、いかがですか?
B向けSaaS企業にも大きな可能性
十河 それを言えば、全ての産業においてチャンスがあると思っています。
例えばレストランチェーンも可能性があると思いますし、王道なら、Eコマース周辺の領域は間違いなく伸びます。
マーケットプレイスを作るだけではなく、支援系、ツール系もまだまだプレイヤーはいないですし、フィンテック領域もチャンスがあります。
全ての領域にビジネス機会はあると思います、圧倒的な勝者がまだ生まれていません。
蛯原 数兆円単位でローカルのスタートアップが資金調達をしており、ユニコーンも何十社もあり、ユニコーン候補も100以上あると予想されます。
ここに、これから日本の企業が参入するとして、全ての産業、分野にチャンスがあるのでしょうか?
十河 個人的には、B2Bの事業にはチャンスがあると思います。
B2Cの超王道、例えばECなどは、タイミング的に結構難しいと思います。
SaaSのサブスクモデルのソフトウェアが今、めちゃくちゃ儲かるかと言われればそこまでではないです。
しかし、例えばSaaSと一緒にコンサルティングやエグゼキューション(実行)もセットで提供するなど、つまりDX関連であれば、あらゆる領域にチャンスがあると思います。
会計ソフトなども、そういう状況だと思いますね。
人件費が安いので、会計事務所に丸投げしているケースが多いですよね。
蛯原 多いですね。
十河 ソフトウェアを提供しても、インターナル(内部)のチームが全員使いこなせないかもしれないので、コンサルティングとセットにするモデルには、可能性がまだまだあるのではないかと思います。
蛯原 なるほど。
日本の、B向けSaaSの会社であればチャンスがあるということですね。
十河 あると思いますね、純粋なサブスクリプションモデルにはならないかもしれませんが。
蛯原 B向けSaaSの会社のうち、強いて1社頑張っているところを挙げるとすると、どこですか?
十河 日本の会社ですか(笑)?
蛯原 ちょこちょこ進出はしていますよね? まだ、名前を挙げられるほどではないですか?
十河 あまり聞かないですね。
蛯原 では皆さん、もっと進出しましょう。
十河 でも日本のSaaSのソフトウェアが負けているかと言えば、そうではないと思います。
ローカライズの際、セールスマーケティングにおいて一定のハードルがあるのではないかという印象ですね。
蛯原 なるほど、分かりました。
コールドチェーンの物流、B向けSaaS、中島さん、他に何かありますか?
優秀な開発人材がいるハノイ、ホーチミン
中島 スタートアップが台頭してくると、開発人材が不足しますよね。
日本でも人件費が高騰していますよね。
ベトナムのオフショア拠点も、かなり長い歴史を持っていますし、大企業の開発をしっかりと支えています。
そこで経験した若手がスタートアップを興しています。
インドでも同じかもしれませんが、オフショア拠点でも、進化したバージョンのSaaSでも、フィンテックでも、色々なビジネスの種を内包しているので、彼らに資金やしっかりとしたメンターがつくことで、ワークすると思います。
今までは、日本から見れば都合の良い下請けでしたが、知恵や資金さえ提供すれば、彼らは自分たちでプロダクトやサービスを作ることができると思っています。
なぜそこにVCやメンターが進出しないかが、すごく不思議です。
蛯原 ローカルの開発リソースが、自社プロダクトをもっと作れるのではということですか?
中島 自分で起業することもできるし、それを取り込むことで様々な情報を入手することも可能です。最新の情報がなければ開発はできないので、情報を持っている彼らを受け入れることで付加価値が増していきます。
蛯原 日本企業は、ベトナムにオフショア拠点を相当作っていますよね。
中島 そうですね。
蛯原 そういうことではなくて、オフショア拠点で自社プロダクトを作った方がいいということですか?
中島 当然、そういう知恵も生まれますよね。
皆さんも現地に行かれれば分かりますが、相当優秀な若手がいます。
特に、ハノイあたりはすごいです。
蛯原 私も先週、ホーチミンに行っていましたが…。
中島 ホーチミンもすごい。
蛯原 山あり谷ありですが、直近、上場したオフショア会社もありますね。
中島 たくさんありますね。
蛯原 そこにビジネスチャンスがあるのではないかということですね。
中島 あると思います。
蛯原 なるほど。
アジアからビジネスを始めるメリット
和出 広い意味でビジネスチャンスという言葉を捉えると、アジアでビジネスを行っていると、日本人もしくは日本という国に一目置いていただいているというか、親日感情があると感じます。
日本クオリティ、日本人が行っていることはすごく信頼されやすいので、これがアジアにおけるビジネスチャンスだと思うのです。
僕は東南アジアの前はアメリカにいましたが、そこにいるとやはりマイノリティであり、僕のようなスペックの人、もしくは僕よりも高いスペックの人はごろごろいるわけです。
彼らはアメリカ人で、親や祖父母もアメリカ人で、若い時からネットワークがあるので、何かを始めようと思ったら、スタート時点で既に、誰か声をかけられる人がいるのです。
それに対して僕たちが、外国人として調達した現金5億円を持ってアメリカの市場にいきなり参入しようとしても、そこから導き出される成功の確率は個人的には非常に低いものだと思います。
それで失敗して日本に戻ってくるよりは、まずは親日であるアジア市場でしっかりとビジネスを作り、アジアのチャンピオンのような、アメリカ人にはない特徴やキャラクターを持ってアメリカに入っていく方がやりやすいと思っています。
蛯原 それはつまり、近い将来、米国も…。
和出 そうですね。アメリカへの足がかりとして、海外でビジネスを作る経験が大事だと思っていたので。
蛯原 なるほど、分かりました。
(続)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成