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2. アジアで躍動する3社が注目する、インドネシアの可能性

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ICC FUKUOKA 2023のセッション「アジア市場のビジネスチャンスについて語り合う」、全5回の②は、ブランドコマース、独自のカーローン、従業員向けスーパーアプリなど、各スピーカーがアジアで展開する自社事業を紹介。インドネシアに圧倒的なビジネスチャンスがあるというAnyMind十河 宏輔さんの見解から、話題は現地人材に広がります。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください

本セッションのオフィシャルサポーターは リブ・コンサルティングです。


【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 10E
アジア市場のビジネスチャンスについて語り合う
Supported by リブ・コンサルティング

「アジア市場のビジネスチャンスについて語り合う」の配信済み記事一覧


蛯原 ものすごく駆け足になりましたが(前Part参照)、こういうマクロ状況の中、登壇者の方々がそれぞれアジアで、どんな事業をどう行っているかについて、十河さんから簡単にご紹介いただけますか?

13の国と地域でビジネスを展開するAnyMind Group 十河さん

十河 宏輔さん(以下、十河) 皆さん、初めまして。

AnyMind Groupの十河と申します、今日はよろしくお願いいたします。


十河 宏輔
AnyMind Group株式会社
代表取締役CEO

1987年香川県生まれ。 2016年AnyMind Group(旧AdAsia Holdings Pte. Ltd.)を創業。横断的なデータ活用を軸に、商品開発、生産、EC、物流、マーケティングまで、ブランドビジネス全体を一気通貫で支援する事業をアジア13ヵ国・地域19拠点で展開する同社の成長を牽引している。  エンデバー・アントレプレナー、Forbes JAPAN誌「日本の起業家ランキング2022」TOP10への選出など、国内外で複数の表彰歴を持つ。前職の株式会社マイクロアドでは最年少取締役としてアジア全域におけるビジネス拡大に貢献した。

僕らはシンガポールで創業した会社で、プロダクトは非常に多いですが、事業としては2つを行っています。

まず「ブランドコマース事業」です。

ブランドのマーケティング、生産、物流、それぞれにソフトウェアやサービスを提供して、ブランドのビジネス支援を行っている事業です。

もう一つが、「パートナーグロース事業」です。

オンラインのメディアやコンテンツクリエイターに対して、収益化やビジネスグロースの支援を行っています。

シンガポールで創業しましたが、一気にグローバル展開し、今は13ヶ国でビジネスを展開しています。

去年(2022年)、売上は247億円まで上がりましたが、そのうち37%が東南アジア、16%がインド・中華圏、残りの47%が日本です。

創業時は東南アジアメインでしたが、直近、日本も含め、各国で事業を伸ばしています。

蛯原 ボードメンバーの国籍の構成はどうなっていますか?

十河 インド人と日本人のミックス体制です。

ナンバー2であるCOOはインド人で、執行役員クラスも含めてインド人と日本人が60%を占めています。

各国のカントリーマネージャーも執行役員ですが、基本的にはローカルの人材を採用しています。

タイのカントリーマネージャーはタイ人、インドネシアのカントリーマネージャーはインドネシア人です。

蛯原 ボードメンバーが何人いて、そのうちの何人がインド人ですか?

十河 5人中2人です。

正式なボードメンバーは1人だけですが、もう1人、ボードミーティングに入っています。

蛯原 素晴らしい。

では次に中島さん、お願いします。

与信審査に通らない現地の人へ独自ローンを提供、Global Mobility Service 中島さん

中島 徳至さん(以下、中島) Global Mobility Serviceの中島です、よろしくお願いします。


中島 徳至
Global Mobility Service株式会社
代表取締役社長 CEO

東京理科大学大学院修了。Global Mobility Service(株)を2013年に設立。世界中の様々なモビリティに対して遠隔起動制御を可能とするIoTデバイス「MCCS」と「MCCS」から抽出した情報を処理・AI分析し情報を価値化するFinTechプラットフォーム「MSPF」を活用し、これまで与信審査に通過しなかった貧困層・低所得層に対して就業機会を創出する金融包摂型FinTechサービスを提供している。現在、日本をはじめASEANにサービス提供エリアを拡大。SDGsの達成に直接的に貢献する稀有なビジネスモデルとして各方面より高評価頂いており、2019年「G20」では「将来性」「革新性」の点から「持続可能かつ包括的な成長に貢献する国際ビジネス事例」として選出された。経済産業省のSDGs経営/ESG投資研究会委員、経団連審議員、東京大学大学院工学系研究科 非常勤講師などを歴任。

世界では、自動車を買いたくても買えない人が17億人います。

私たちはアジア、特にフィリピン、インドネシア、カンボジア、そして日本でサービスを展開しています。

私たちのサービス利用者の総走行距離が、6億kmを超えたところです。

世界の低与信層が金融サービスにアクセスできる社会をつくる金融包摂型スタートアップGMS、FinTechサービス利用車両の総走行距離が6億kmを突破(PR TIMES) 

ファイナンス創出額が約200億円です。

ローンやリースを全く使えない方々に、遠隔起動制御デバイス(「MCCS」)を車に設置することを条件に、世界30カ国の金融機関と提携して、ローンサービスを提供しています。

皆さんご存知かどうか分かりませんが、GrabやGojekなどのドライバーのうち、自分の車を持っている人はほとんどいません。

オーナーから車を借りて、何年、何十年と使用料を払い続けているのです。

与信が全く通らないので、自分の車を所有できない方が非常に多いのです。

そういう真面目に働く人が正しく評価される仕組みを作ろうと考え、この会社を9年前に設立し、現在250人ほどの社員で運営しています。

アジアという視点から色々な話ができればと思い、楽しみにしていました。

よろしくお願いします。

蛯原 250人中、日本以外の国籍を持つ方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。

中島 180人くらいですね。

蛯原 どの国の国籍を持つ方が一番多いのでしょうか?

中島 フィリピンです。

蛯原 いざという時に、車を担保にできるデバイスを付けているということですよね?

中島 基本的にそうですが、ただデバイスを付けるだけではなく、電子決済で支払えば遠隔で起動解除をし、すぐに車が動く仕組みを作ったのです。

この技術の特許を世界で取って、展開をしています。

蛯原 さすがに、運転している時に車を止めることはないのですよね?

事故を起こしてしまいますものね。

中島 その通りですね(笑)。

基本的には、安全に、節度ある形で止める…、止めるというよりも、動かそうと思ってもエンジンがかからなくなる仕組みです。

走っているものを止めるのは良くないですから、そういうことは一切行っておりません。

蛯原 なるほど。ありがとうございます。

では、和出さん、お願いします。

インドネシアの従業員向けスーパーアプリを展開、VENTENY 和出さん

和出 潤一郎さん(以下、和出) VENTENYの和出と申します、初めまして。


和出 潤一郎
PT. VENTENY Fortuna International Tbk.Founder and Group 
CEO

米国Northeastern University経済学部卒業。PwC Consultingに新卒として入社。国際案件を中心にコンサルティング業務に従事。その後国内外の企業に従事した後、2015年にフィリピンにてVENTENYを創業。 主な事業内容は従業向け福利厚生サービスをきっかけとしたFinTech事業と、中小企業向けフィナンシャルサービスの二軸で構成される。2020年からはインドネシアを中心にサービスを展開し、2022年12月、日本人創業者のスタートアップとしては東南アジアの歴史上初となる、インドネシア証券取引所に上場。

私どもは2022年12月15日、インドネシアの証券取引所で、初めて日本人のファウンダーとして上場をしました。

今日(2023年2月15日)の時点で、会社は230億円くらいの価値だと思っています。

私どものビジネスは大きく2軸で、一つはBtoB、中小企業向けのファイナンスです。

もう一つは、従業員向けの、福利厚生をきっかけにしたファイナンス、および保険、教育、従業員割引等を含めたスーパーアプリ(VENTENY)を作っている事業です。

スーパーアプリとは?利便性と圧倒的なユーザー数が成功の鍵(ebisumart)

インドネシアでは約350社、25万人の従業員に使っていただいています。

2015年にフィリピンで創業しましたが、コロナ禍の真っ只中である2020年からインドネシアに本格展開し、ビジネスを作って一気に上場まで果たしました。

ですから、今の主な市場はインドネシアです。

従業員は百十数名、日本人は僕だけです。

蛯原 1人ですか。

ちなみにバハサ(インドネシア語)は話せるのですか?

和出 全く話せません(笑)。

蛯原 英語ですね。

和出 英語だけです。

蛯原 英語が話せる人だけを雇っているということですね。

和出 はい。

蛯原 今、簡単におっしゃっていましたが、和出さんはインドネシアで日本人として初めて上場したという、とんでもない記録を打ち立てた人です。

リロクラブ出資先『VENTENY Fortuna International』インドネシア証券取引所上場のお知らせ~東南アジアの証券市場における日本人創業の現地法人としての上場は史上初※1~(PR TIMES) 

どちらかと言えばフィリピンの印象の方が強かったのですが、なぜインドネシアに移ったのでしたっけ?

和出 2015年にフィリピンで起業し、70名くらいの規模の時にようやく損益分岐点が見え、あとは伸ばしていくだけだと思っていたところで、コロナ禍が起こってしまいました。

5年間、毎日積み重ねてきたものが全て吹き飛び、70名を断腸の思いで解雇しないと会社が潰れてしまうという状況にまで追い込まれました。

幸い、2019年にVENTENYインドネシア法人は作ってあり、社員も2、3名いました。

フィリピンでのコロナ対策は、家の外にも出られないという世界有数の厳しさだったので…。

蛯原 マニラですか?

和出 マニラです。インドネシアはまだ経済が若干ですが動いていて、営業活動も許されていました。

みるみる口座残高が減っていく状況下で、最後にどの一手で仕掛けるかと考えた時、一度フィリピンはたたんで、残りのお金を全てインドネシアにフルベッドすることにし、2020年からインドネシアに集中したのです。

蛯原 日本というマーケットを攻めるという考えは、全く脳裏をよぎらなかったのでしょうか?

和出 よぎらなかったです。

蛯原 それはなぜですか? 日本は嫌いなんですか(笑)?

和出 いえ(笑)。

東南アジアには福利厚生という概念がそもそもないですし、人口密度や中小企業の金利などを総合的に考え、判断し、インドネシア市場が非常に魅力的だったということです。

蛯原 なるほど。ちなみに、僕が若手起業家の中で英語が一番上手いと思っているのが、和出さんです。

和出 とんでもないです。

アジアでビジネスチャンスがある国は?

蛯原 今日のテーマはアジアのビジネスチャンスです。

どこにビジネスチャンスを見出しているか、つまり、どの国の、どの産業、業種に興味があるか、伸びているかなどについて、ご自身の事業領域以外で教えていただけますか。

ちなみに、今日のセッションはほとんど事前打ち合わせなしですので、普段どれだけ考えているかどうかが露呈されます(笑)。

(一同笑)

蛯原 では、十河さんから(笑)。

十河 全然予想していなかった質問ですね(笑)。

どこの市場だろうなあ…、国で言うと、東南アジアの中ではインドネシアが圧倒的だと思います。

全ての産業が伸びており、かつ、直接的な回答ではないかもしれませんが、唯一、外国人ファウンダーが活躍できる可能性がある国だと思います。

蛯原 その理由は?

十河 日本人に対して、ローカルからの一定のリスペクトがありますし、日本式の経営スタイルもある程度効果があると思います。

もちろん、ローカルで優秀なカントリーマネージャーやヘッドを採用する必要はありますが、ローカルとの信頼関係構築やフィット感という観点から言えば、インドネシアは、インドやフィリピンと比べると、そこまでハードルが高いわけではないと思います。

これは経験則ですが。

日本人の中でも、和出さんはローカルマネジメントが上手い印象ですね。

蛯原 僕は、やや異なる印象を持っています。

僕はインドネシアで、1ダースくらいの会社に投資をしており、ボードメンバーとして参加している会社もあります。

例えばベトナムに比べると、ハードシップは高い気がします。

十河 そうですね、ベトナムの方が勤勉な印象ですよね。

蛯原 印象はね。

十河 ビジネス感度という面でも、ベトナムには商売っ気が強い人が多いと思っています。

蛯原 そうですね。

十河 ですから、ベトナムでは本当に優秀な経営チームを作れれば強くなると思います。

一方インドネシアは、設計図を書いてあげて、トラッキングをきちんとし、可視化してマネジメントしていくことができれば、それだけで案外アドバンテージになっている感覚を持っています。

蛯原 それは、のんびりしていて、ハードワークをしない人が多いからですか?

十河 そういう一面はあるかと思います。逆にハードワークをした分だけ、人材の力で勝てると思います。

蛯原 その裏で、インセンティブ等の設計をきちんとするのでしょうね。

十河 そうですね、セールスインセンティブはしっかり設計しています。

蛯原 なるほど。

和出さん、フィリピンと比べて、今の人材の話はどうお考えですか?

和出 フィリピンと比較すると、新しいものへの寛容性は、インドネシアの方が高いと僕は思っています。一方でフィリピンでは、最終的には物ごとをコンサバに判断をする傾向があるように思いました。

インドネシアに関しては、大きい会社でも、面白いアイデアでmakes senseして(理にかなって)いれば採用いただけるケースがありましたので、僕もビジネスを伸ばしやすいと思いました。

蛯原 どちらかと言えば、お客様側ということですか?

和出 お客様もそうですね。

蛯原 中島さん、いかがでしょうか?

中島 フィリピンには、基本的にオペレーション思考の方が多いのです。

誰かから言われたことはしっかりやろう、というオベ思考のことで、そういう教育を受けていますので、自発的に指示されていないことを行おうという方が非常に少ないのです。

ですから、横を見ながら1つのことに取り組むような感じです。

教育がしっかりされている方が雇用できればワークするのですが、そうではない方を雇用するとなかなか大変だと思います。

我々は、フィリピンに8拠点を構えています。

安い給料で雇えるのはメリットがある気がしますが、人の質で言えば、ビジネスを深掘りしようと思ってもできないので、人材の層の薄さという問題にどうしても直面してしまいます。

蛯原 なるほど。

和出 それは共感します。

インドネシアの人口が2億7,000万人で、そのうち労働人口は1億7,000万人です。

つまり、人材が豊富なのです。

ジュニアレベルで400~500ドルの給料で入社してもらっても、英語でのコミュニケーションには全く問題がありませんし、勤勉です。

フィリピンとはまた違う形でマネージができていて、事業も伸ばしやすいのかなと思っています。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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