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4. 3社が描く、5年以内にアジアで利益10億円の道筋

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ICC FUKUOKA 2023のセッション「アジア市場のビジネスチャンスについて語り合う」、全5回の④は、「5年以内に海外市場で利益10億円」の道筋を3社が語ります。Global Mobility Service 中島 徳至さんは、コロナ禍がなければすでに実現していたはずとのこと。日本のスタートアップが苦手とする海外展開に各社が成功している理由とは?ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください

本セッションのオフィシャルサポーターは リブ・コンサルティングです。


【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 10E
アジア市場のビジネスチャンスについて語り合う
Supported by リブ・コンサルティング

「アジア市場のビジネスチャンスについて語り合う」の配信済み記事一覧


蛯原 僕はモデレーターをやる時はいつも、YES、NO以外で答えてはいけない、クローズドクエスチョンをいくつか用意しています。

まず1つ目のクローズドクエスチョンです。

EBITDA(税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)、税金のことなど、細かいことは言いませんので、5年以内に、日本を除く海外市場で利益10億円を作れますか?

YESの方は?(挙手を促す)

ああ、全員、迷いなく手を挙げましたね。

これは、そうではないと困りますよね。

PERが100倍でも、今1ドル約130円(2023年2月当時)なのでユニコーンにはならないのです。

10億円でもです。

ここでNOと言われたら困ってしまうのですが、さすが皆さん、YESと言っていただきました。

どういう道筋で利益10億円を作りますか?

東南アジアで勝ち切って、インドで内野安打を打つ

十河 東南アジアで押さえなければいけないのは、インドネシア、ベトナム、タイで、この3カ国である程度シェアを獲得するのが大前提です。

また、僕らはインドに結構投資をしているのですが、もう少し長い目で見ると、それなりのリターンを得られるマーケットだと思っています。

それだけでも、今の事業における直近のグロースレートを見ると、プロダクトマーケットフィットした時のリターンが大きいと感じています。

蛯原 ちなみに、やはりインドは、東南アジアとは比べ物にならないくらい大変ですか?

十河 そうですね、ローカルマネジメントには、カルチャーや人間性の面から一定のハードルがあります。

和出さんがおっしゃっていた日本へのリスペクト(前Part参照)は、インドネシアやベトナムでは感じますが、インドではあまりないですね。

そこまでのアドバンテージは感じたことはありません。

かつ、ローカルのプレイヤーの数が多く、多額のファンディング(資金調達)をしているので、真っ向勝負をするのが結構難しいです。

ファウンダーはインドのローカルマーケットを見ていますが、僕らは世界に分散している市場の一つとしてインドを捉えているので、リソース配分や投資金額など、ハードルが高くなります。

蛯原 大事な市場はやはりASEANということですね。

十河 そうですね。

僕らは東南アジアからスタートし、東南アジアのプレゼンスはそれなりに大きくなってきているので、ここで勝ち切ることが大事です。

特にインドネシアにおける、ECやマーケティング業界はYoY(前年比)で30〜40%伸びます。

その波に乗るだけで、30~40%の成長率が実現でき、マーケットシェアを獲得していれば50~60%は伸ばせるわけです。

ですから、向こう5年は、この成長率を意識しながら、打ち手を考えて一つ一つ仕掛けていこうと考えています。

ロックダウンがなければ利益10億円は実現していた

蛯原 分かりました。

中島さん、利益10億円への道筋はいかがでしょうか?

中島 そもそもコロナ禍がなければ、実現できていました。

和出さんもおっしゃっていましたが(Part.2参照)、ロックダウンが最悪だったのです。

外に出ると逮捕されていたわけですから。

私たちがドライバーに貸し出しをしていても、仕事のために外に出ることそのものが否定されていたわけです。

それで回収もできませんでした。

サービスの提供がしたくてもできず、金融機関に焦げ付きを経験させるわけにもいかない状況でした。

アンバンクト(銀行口座を持たない)層へのデフォルト率は通常20~30%だったのが、私たちのサービスでは1%以内に抑えていました。

1%以内だと金融機関もスプレッドが取れるので、金融機関は融資をどんどんして利益を上げたいということになります。

しかしコロナ禍でそれが止まったので、フィリピン、カンボジア、インドネシアの貸出量を一気に抑えました。

蛯原 売上は、金利収入によるものなのでしょうか?

中島 いえ、違います。

私たちのビジネスモデルでは、金融機関と提携するので、リスクマネーを投じるのは金融機関です。

金融機関が得られる金利の約半分の手数料を頂いています。

また、車を売るので、車のメーカーや販売店から手数料を1台あたり数万円頂いています。

蛯原 なるほど。

中島 それから、利用者がデバイスを買った場合、利用者から代金を頂きます。

利用者からすると、ETC本体を買うみたいな感じですね。

この3つが、私たちの売上を構成しています。

蛯原 オンデマンドドライバーはどんどん増えているし、桁違いのマーケットサイズなので、楽勝だということですね。

中島 楽勝です。

日本はこの領域では先進国で、フィリピンを抜いていますが、これからは、金融パートナーさえつけば海外でしっかり伸びていくことが、これまでのトラックレコードから見えています。

蛯原 素晴らしいですね。

ちなみに皆さん、アジアでの「ライドシェア」ですが、あれを行っているのはプロドライバーです。

シェアでもなんでもありません。

そのために新車がたくさん売れていますし、社会問題の解決にもなっている素晴らしい事業だと思います。

和出さん、利益10億円への道筋はいかがでしょうか?

市場参入者が増えれば利益10億円は射程圏内

和出 はい、僕も十河さん、中島さんに同意です。

やはり、時流やモメンタムに乗ることで事業はどんどん伸びますし、レッドオーシャンと呼ばれているところでも、まだまだ供給が足りていない状況です。

ですから、日本と比べると、まだマーケット獲得の余地は非常に大きいと思っています。

僕らのビジネスは、ファイナンスです。

ファイナンスに関しては、1社で全て賄える市場ではないので、もっとプレイヤーがどんどん参入してこなければ全てを網羅できないくらい大きいのです。

東南アジアでのビジネスは、国単位ではなく、面、エリアで捉えます。

例えばファイナンスにおいて、需給のバランスのズレは、年間、日本円で40兆円ほどあります。

今日も他のセッションで「2兆円の市場」と聞きましたが、桁が違いますよね。

その領域に参入しているプレイヤーがいないので、モメンタム、安定したバッカー(支援者)がつくことは本当に重要です。

それさえあれば、5年以内に利益10億円というのは射程圏内にあると思っています。

蛯原 なぜ中国、台湾、韓国など東アジアに取り組まないか、クイックに聞かせてください。

何か理由がありますか?

十河 僕らは取り組んでいます。

蛯原 どの国ですか?

十河 台湾、香港、そして、一部クロスボーダー取引のために中国の深センに拠点を置いています。

蛯原 韓国には取り組んでないのですね、何か理由はありますか?

十河 韓国より日本の方がリターンは大きいので、先に日本に取り組みました。

韓国には今後、どこかのタイミングで取り組みたいと思っています。

蛯原 なるほど。

十河 韓国の国内市場は伸びしろ含めて、そこまでリターンが大きくないと考えたので、まずは日本と考えました。

蛯原 分かりました。

中島さん、和出さんのビジネスは新興国向けですものね。

日本人が苦手といわれる海外展開がなぜできている?

蛯原 次に、日本のスタートアップは海外進出が苦手で、国内ばかりです。

なぜ一般的に苦手であって、逆に皆さんは展開できているのか、客観的に分析すると理由は何だと思いますか?

中島 リスクを許容できるかどうかではないでしょうか。

僕自身もフィリピンからビジネスを始めましたが、電気自動車を販売しようと思って市場に出た際、現地の人がこれだけ頑張っているのにローンが全く使えないという状況に、金融機関への苛立ちを感じました。

これはフィリピンだけではなく、どの新興国でも同じように人々が抱えている課題ではないかというのは、現地に行ったからこそ分かったのです。

日本にいながら、「このビジネスは上手くいくかな」と想像する程度では、ローカライズというか現地に根ざしたビジネスを作るのはなかなか難しいのではないかと僕は思っています。

蛯原 現地に行って理解して、別のビジネスモデルを作るということですか?

中島 自分が行っているビジネスの、ローカライズを行うということです。

例えば、日本で色々な大企業が新興国に進出していますが、大体がきぞな製品やサービスのラベルの付け替えだけです。

そうではなく、その国のペインポイント見て考えて、合わせることが非常に重要です。

蛯原 リスクを取ることとローカライズには、どのような関係があるのでしょうか?

中島 ローカライズとは距離がありますが、経営リスクでいえば、例えば税務リスクが挙げられます。

私たちの場合、監査法人による監査に対するリスクがあります。

蛯原 監査に対するリスクとは何ですか?

中島 良い質問ですね(笑)。

日本には、日本の監査法人がありますよね。

日本から、海外、各現法、そのネットワークの中で、監査を全部見てもらっているわけです。

スタートアップは誰もが直面する問題だと思いますが、大企業の場合グローバルをブッリッジしてくれる先生がついてくれますが、スタートアップだと現地の監査法人や日本の監査法人にブリッジしてくれる先生がいないのです。

現地にある監査法人は、有名なグループであれば素晴らしいと思うのは大間違いで、日本とは監査レベルが全く違います。

蛯原 仕事が適当ですよね。

中島 そんな監査法人のレベルであっても連結をしなければいけないというリスクのことを指しています。

蛯原 なるほど。

リスクというよりも、細々したことを、現地で泥臭く行うことはみんなしないという話に聞こえましたが。

中島 それもあります。

あとは、法的なリスクです。明日から急に、新たな法律が施行されるということもありますね。

蛯原 分かりました。

十河さんは、いかがでしょうか? 十河さんにはできて、なぜ他の人にはできないのでしょうか。

国内でなく、海外で起業を始める

十河 僕らは最初から、グローバル市場を見ていました。

その上で、組織やカルチャーを作っていったのが良かったと思っています。

経営陣も、東南アジアで一番を獲りたいと考えています。

例えば、タイのカントリーマネージャーは、タイのことだけを考えているわけではないのです。

ミッションを持っていて、それを他の国と連携しています。

うちの会社では、「海外、国内」という議論は全くありません。

蛯原 それは、もともと起業の地が海外だったという意味ではないのですか?

十河 もし日本で起業していれば、僕も、「国内事業」「海外事業」という分け方をしていたと思います。

各社の決算書を見ていても、そういう組織が多いですよね。

多分、海外の担当者がいるのでしょうね。

僕らはそうではなく、起業当時、東南アジアの全ての主要国でビジネスを立ち上げたいと考えました。

グローバルに通用するプロダクトやオペレーションの構築をしなければいけないとなった時、どのようにテックのグローバルチーム、コーポレートのリージョナルチームを作るかを考えました。

セールスについても、ケーススタディのシェアや売り方の教育が必要なので、グローバルヘッドが各ローカルのセールスに1対1でトレーニングする仕組みを作り、時差があまり出ないように行っていました。

蛯原 なるほど。

十河 そういう土壌があるので、1つの国のマーケットに拡大することは、日本国内で大阪支社を作るくらいの感覚でできるのです。

それは、最初からグローバル市場を目指していたからだと思います。

蛯原 これは1つのロールモデルだなと思いました。

十河さんは、起業前に勤めていらした会社で東南アジアの責任者をされていたので、起業時も最初から現地で行ったわけですね。

これが、十河さんが成功した理由の一つです。

これをロールモデルにして、上場したベンチャーの中で、海外担当が現地で起業をすれば良いのではないでしょうか。

十河 そうですね。やはり、その方が解像度も高いです。

蛯原 逆に言えば、日本で起業すると、海外市場が別物だというマインドセットになってしまうので、結構大変だということですね。

十河 そうですね。

国内で守らなければいけないものもありますし、特に社長であれば全ての責任を負っているので。

ただ、人によっては、社長自ら海外に出向く会社も…。

蛯原 これは発明かもしれないですね。

グローバルベンチャーを作りたい人は、一旦大手企業に就職して海外市場を担当させてもらい、その後に現地で起業する。

和出さんは、いかがでしょうか?

なぜ和出さんにはできて、他の人にはできないのでしょうか。

修正が入る前提で、計画70%で動き始める

和出 この会場にいらっしゃるのは、本当に感度が高く、興味を持っている方だと思います。

参加人数を見ると、日本には、海外市場に馴染みのない方が圧倒的に多いのだなと思っています。

特に、大企業も含めてステレオタイプの人が多く、そのステレオタイプの概念が正しいとなってしまっているので、ローカルの現場で起こっていることを理解する前に、その概念で物事が決まってしまっているのではないでしょうか。

さらに、日本人のきめ細かさが働き、新しい国に進出する際にリスクをなるべく小さくしようと考えます。

学びではなく、投資に対してリターンを得るために、100%に近いビジネスモデルを作り上げようとし、計画にすごく時間をかけます。

現地に行ってから考える、見て理解する、そこで見たものによってサービスを変化させるというよりも、先に作り込むので、それが進出しにくくしている理由の一つではないかなと、客観的に見ていて思います。

例えば我々の場合、修正が後から入る前提で、70%くらいで既に動き始めます。

最初からフレキシブルな感じですね。

各国の海外進出事情

蛯原 今の質問に関係するのですが、他の国で、海外におけるビジネスデベロップメントが上手くできている事例は何かありますか?

アメリカのユニコーンはグローバル企業になりかけですが、もっと手前の段階の…、例えば北欧とかで、シリーズBやCのスタートアップで、東南アジアでのプレゼンスがあるとか…。

つまり、日本だけが上手くいっていないのでしょうか?

日本人はマゾヒストなので、日本はダメだと言いがちですが、僕からすれば、アメリカ以外の国はどの国も海外進出が上手くいっていないように見えます。

皆さんの目には、どのように映っていますか。

和出 中国の企業には、東南アジアに積極的に進出してきている印象を持っています。

蛯原 どれくらいの規模の会社ですか?

和出 ECや家電も含め、プロダクトを持ってくる企業がすごく多いですし、韓国は、サムスンなどの大手企業は…。

蛯原 ああ、大手ですね。

和出 中華系は大手でもないですが、韓国企業の場合、何もしなくてもいいからとりあえず現地に3年くらい住んでおけという感じですね。

蛯原 なるほど。

和出 それで現地の雰囲気や現場で起こっている環境を理解し、何ができるかを考え、その間にネットワーキングを行ってほしいというアサインのされ方をしています。

ですから、3年後に本格的に進出してきた際は、事業の基盤がある程度できていて、ローンチができる状態になっているのを見ると、すごいなと思いますね。

蛯原 それはアグリーですね。

韓国は財閥系の大手が多いですが、例えば車では、Hのついている車は、残念ながらホンダではなくHyundaiばかりになりつつありますし、ホテルで会う人も韓国人が多いです。

中国は商魂たくましい国なので、スタートアップ、中小企業、大手みんながどんどん進出していますね。

十河さん、いかがですか?

十河 ファウンダーであれば、インド、中国、米国ですね。

ヨーロッパだと、元Rocket Internet組がちらほらいるなあという感じです。

Start-up factory Rocket Internet to delist, six years after going public(CNBC)

蛯原 元Rocket Internetの方がファウンダーで、上手くいっている会社はありますか?

十河 最近、Eコマースのイネイブラー(IT、流通およびマーケティング機能を備える複合企業)のような会社が出てきています。

一定のエコノミクスを意識しながら、手堅く進められているのではないかと感じますね。

蛯原 なるほど、僕の経験と仮説によると、上手くいっている会社はほとんどないです。

十河 そこまで表に出てきていないですよね。

蛯原 でも、元Rocket Internetの方がファウンダーのスタートアップは、50社くらいは出てきているのではないでしょうか。

ほとんどは失敗していて、残りは鳴かず飛ばずに見えます。

やはり、ひたすらパラシュートマネーで伸ばすやり方が染み付いていると難しいのでは、という仮説を持っています。

十河 そういう見方もできますが、今の市況に合わせて対応している経営者は結構いますよ。

蛯原 それがきちんとできれば、強いのでしょうね。

中島さん、いかがですか?

中島 CESに参加して、韓国のスタートアップはすごいと思いました。

日本で報じられているのとは違います。

特に、ヘルスケアテックの分野での韓国の勢いは、相当すごいです。

蛯原 なるほど。

中島 大企業でも、最初から海外市場を見ています。

日本には韓国を下に見る傾向がありますが、僕は学ぶべきことがあると思います。

フランスやアメリカを見に行くのもいいですが、韓国のスタートアップにはもっと注目すべきだと思いますよ。

蛯原 そうですね。官民あげて、グローバル化を頑張っていますからね。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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