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会場騒然! 前代未聞のノンジャンル酒バトル、初開催SAKE AWARD 予選ラウンドレポート

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9月4日~7日の4日間にわたって開催されたICC KYOTO 2023。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。このレポートでは、今回初開催したSAKE AWARDのDAY1、11組の酒蔵から決勝ラウンドに進む6組を選出した予選ラウンドの模様をお伝えします。ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


 ICC KYOTO 2023で初開催となったSAKE AWARD。ICCサミットにはフード&ドリンク、デザイン&イノベーション、ガーディアンという3つのアワードがすでにあるものの、新しいアワードが設立されるときにゼロイチの苦労がある。

 出場する人たちをどう集めるか、どのような審査項目を作るか、評価基準は何なのか、予選・決勝の審査会の手順はどうするかなど、ある程度イメージはあっても実際にはどう遂行するかなど、SAKE AWARDは2日間の現場まで試行錯誤が続いた。出展企業もスタッフも、てんやわんやだった。

 しかしその苦労は最後の歓喜に昇華した。真剣勝負による気迫と、出展企業も審査員も初回ゆえの手探りの興奮と、今までにないものを創り上げた充実感があった。誰もが気に入った酒について語りたくなり、この日最後の決勝ラウンド進出酒蔵が決まった瞬間は、会場にいる皆が祝福ムードになり、誰もが酔っていた。

SAKE AWARD審査の仕組み

 今回参加いただいたのは11の酒蔵で、DAY1の予選ラウンドではそれが6つに絞られ、DAY2の決勝ではそれが4つ→2つに段階的に絞られるという流れであった。

 日本酒、ワイン、日本酒×副原料の”クラフトサケ”、はちみつのお酒ミード、クラフトビール、りんごが原料のシードル、ジンと、普通のこういったコンペティションではカテゴリーが分けられるような、ジャンルを超えた11の酒蔵が一同に会して優勝を目指す。

 オフィシャル審査員は21名、オーディエンス審査員はDAY1で81名、DAY2で74名。審査員たちは2日に渡って11グループと6グループに分かれて審査に臨む。

 まずはDAY1、会場に用意された11の酒蔵のテーブルを順繰りに回り、各酒蔵の話を聞きながら各2種類の酒を飲んで「美味しさ」「製法へのこだわり」「ブランディング」「想いへの共感」といった軸で、審査員は投票用紙、オーディエンス審査員は各テーブルにあるQRコードを読み取り投票する。

 DAY2は、6つに絞られた酒蔵のテーブルを審査員グループで回り、シンプルに「もう一度飲みたい」という視点で投票する。4つに絞られる準々決勝も、2つに絞られる決勝も同じだ。

 ポイントは、予選ラウンドでは2種類の酒を、もしも決勝ラウンドまで勝ち残った場合は、重複も可能だが最大で5種類の酒を出すことができる。どの順番で、どの酒を出すかは酒蔵に委ねられ、それも含めた勝負となる。

 酒蔵にとっては、ジャンルを超えた戦いであり、酒とともに造り手の想いを直接伝えられる機会、審査員たちにとっては、さまざまな酒を飲みながら、自分は何を美味しいと思うのか、どんな想いに共感をするのか、自らの判断基準を試されるような戦いとなった。

 なお、カタパルトであれば1社でもプレゼンを見なければ全投票は無効となるが、予選ラウンドでは11社×2種類のため、最大22杯飲むことになる。SAKE AWARDでは個人の許容量もあるので無理に全て飲まなくても投票OKとし、投票者数による平均値で次ラウンドへの進出や優勝を決めることとした。

【速報】新企画「SAKE AWARD」、4つの部門賞と予選ラウンド突破6社が決定!(ICC KYOTO 2023)

DAY1 予選ラウンドスタート

司会の2人によるルール説明があり、審査員のコエドブルワリー朝霧 重治さんと、旭酒造櫻井 一宏さんは、これから戦いに挑む11の酒蔵にエールを送った。

朝霧さん「フード&ドリンクアワードからお酒が分離して、新たにアワードとなるのが、ICCのイノベーティブなところで、お酒の業界に携わるものとしてまずはお礼を申し上げたいです。

ICC KYOTO 2023フード&ドリンク アワード全ブース紹介

11人のチャレンジャーの皆様も、審査員、会場にいる方はまさに酒好きですし、経験がとても豊かな方たちだと思うので、ブランドがどのようにジャッジされるかというのは、とても貴重な機会だと思います。それと同時に、直接説明できる機会はとても貴重です。

実は櫻井さんと初めて会ったのはニューヨークなんです。ジャンルは違えど世界に出れば『和酒』という言い方があります。私たちは共通でブランディングしていけるプラットフォームになると思います。いろいろな共創、コラボレーションにつながればと思います。わくわくするようなプレゼンテーションを期待しています!」

櫻井さん「私も朝霧さんも酒が弱いのですが、前回のCo-Creation Nightでだいぶ酔っ払って、SAKE AWARDと言いながら乾杯した記憶があります(笑)。最初私は審査員と言われて、造っている側が偉そうに皆さんをチャレンジャーとして見るというのは違うかなと辞退しようと思ったのです。

でも、自分のお酒の2杯目を飲んでもらうのが、いかに大変かということを理解しているし、私が審査員の側に立つことで、皆さんの応援や後推しになればすごくいいかなと思っています」

11組の1分間スピーチ

先輩のエールを受けたあとは、11の造り手から1分スピーチとなったが、ここで驚いたのが、11人の気迫。異業種と競うカタパルトでは緊張のあまり伝えたいこともろくに話せなかったり、ICC初参加の方々が、「ここは自分のホーム」とばかりに自信たっぷりに意気込みを語った。

阿部酒造 阿部 裕太さん「新潟県柏崎市で酒造りをしています。ちょうど1年前にクラフテッド・カタパルトでめちゃめちゃ苦い思いを、すごく悔しくて。自分の話したいことが話せなかったのですが、今回僕らが輝かなかったらどうするんだろうという、いい機会をいただきました。

造っているのは清酒で、6代目責任者で、伝統産業です。一生懸命アップデートをして、皆さんのお口にあうものづくりを頑張っています。めちゃめちゃうまいものを持ってきていますので、皆さんぜひ楽しんでください」

稲とアガベ 岡住 修兵さん「秋田県男鹿市で、”クラフトサケ”というジャンルを、ジャンルごとつくっています。阿部さんとまったく同じ思いで、昨年この場所でふがいないプレゼンをしてしまって、今回をリベンジの場としてとらえています。優勝以外、まったく見ていません。

クラフトブリュワリー協会の会長を務めていて、今回3社(阿部酒造とhaccoba)が出展しておりまして、2社には100%負けないぞという気持ちです。おいしいお酒をいっぱい持ってきていますので、ぜひお楽しみいただければと思っています」

haccoba -Craft Sake Brewery- 佐藤 太亮さん「このあとこの足で、ベルギーに醸造所を作るために出張する予定です。さきほど(ICC小林)雅さんとお話していたのですが、もしここで勝ったら、日本の全お酒の中で1位と言っていいといわれたので、ベルギーでそう言って事業を推進するために1位にしてください! よろしくお願いします」

RiceWine(HINEMOS)渡辺 毅志さん「時間に寄り添う日本酒、HINEMOS(ひねもす)を運営しています。僕たちは世界に誇れるブランドを作るために日本酒の事業を選び、IT業界から参入しています。オンラインに加えて、ルミネやヒカリエといったショッピングビルのロクシタンさんや、青山フラワーマーケットさんの隣に出店して、成長しています。

酒蔵の息子を口説いてジョインしてもらい、自社製造で日本酒を造っています。2022年はシリーズAで3億円を調達、中目黒駅徒歩10秒のところに直営店を作り、代表はシンガポールに移住して法人を立ち上げて、シンガポール、中国に展開します。なぜそんなことができるのかは、ブースでぜひ!」

フルーツガーデン北沢 北沢 毅さん「創業80年超、長野県のリンゴ農家の4代目です。2019年に弟とシードルの醸造所を立ち上げました。特徴としては、りんご農家が原料のりんごの栽培から収穫、醸造まで一貫して手掛けるところです。

まだ日本にシードルというものの定義がはっきりしていませんが、日本のリンゴ農家が手を挙げて造った、生で食べてもおいしいりんご、おいしさをそのままのかたちで丁寧にお酒に昇華させた結果、こんな味ができるんだというのを示したくて、醸造に取り組んでいます」

白百合醸造 内田 圭哉さん「『みなさん、ワインは好きですかー? ワインを飲んだら長生きできる!ポリフェノール効果です!!』……これを言ったら絶対ウケると妻に言われたんですが(笑)。

私は山梨勝沼のワイン造りの本場、100年近く続くワイナリーの4代目です。日本ワインコンクールで金賞を取るほどクラシックな造りをしているのですが、それが危機にあります。農業の後継者不足、高齢化、耕作放棄地の増加といった農業の課題は、お酒の課題で、お酒を通じてアップデートするため新しいブランドを立ち上げました!」

RICE(YOROKOBI BREWERY) 恒松 毅宥さん「ビールは喜びだと感じたのは、大学卒業後に世界を旅して多様なビールに出会い、現地で出会った友人たちと乾杯を通してかけがえのない経験をしたことからです。そのロマンを忘れられず事業を始めて、もともとビール嫌いだった商品開発の責任者とともにブリュワリーを設立しました。

美味しく、面白く、新しいをコンセプトに商品開発をしています。ビール離れが言われる世の中、個性や多様性が重要視される主に若年層向けの、こんなビールを知ってる?というような、普通じゃないビールを造っています!」

森瓦店(飛騨クラフト)森 孝徳さん「岐阜県の飛騨高山でリキュールを製造しています。2022年に酒造免許を取得して、2023年から製造販売を開始しました。弊社のリキュールはイタリアのリモンチェッロにインスパイアされた、皮を漬け込む方法をとっています。

農家さんの熱い想いを持った果物そのままの魅力を漬け込んで、味わいを知っていただければと思います。リキュールなら日本の魅力を世界に届けることができると思っています」

LIBROM 柳生 光人さん「福岡の街中醸造所、”クラフトサケ”ブリュワリーです。創業は2020年で3年になります。私は7年前、23歳のころイタリアで日本酒を作りたいという夢を掲げて、7年間この業界におります。ただ私はお酒が飲めません。

お酒が飲めないなりのアプローチで、日本酒、サケ業界に貢献できると確信しています。明日の決勝ラウンドに進めるよう、そして一人でも多くの方に共感していただけるよう精一杯がんばりますので、よろしくお願いします!」

ANTELOPE 谷澤 優気さん「滋賀県でミードというはちみつのお酒を醸造、発売しています。魅力を説明しようと考えてきたのですが、朝霧さんや櫻井さんのお話を聞いてどうでもいいなと思えました。今日は僕らの夢の話をします。

ミードはとてもマイナーですが、僕らの夢は、それが普通にお酒のチョイスに入る世の中を作ることです。僕らはビールに生ビール以外の選択肢がある喜びを知っているし、赤ワインや白ワイン以外の面白さを知っている。そういう面白さがミードにもきっとあるので、世の中に広めていきたいです。ミードのこれからを僕が背負っていると思って来ています」

Far Yeast Brewing(Azeotrope)山田 司朗さん「山梨県の山奥、人口650人の小菅村でクラフトビールと蒸留酒を作っています。もともとはビール屋ですが、好きが高じて2021年から蒸留酒も、今では二足のわらじを履いています。蒸留酒は意外とビールのノウハウが活かせます。

Azeotrope(アゼオトロープ)では単式蒸留機を使い、原材料の麦芽のフレーバーを活かしたクラフトジン造り、木樽による熟成を特徴としています。私たちの挑戦は、ビールと蒸留酒のクロスオーバー、クラフトジンの再定義です。今回はたくさんの蒸留酒を味わっていただきたいと思います。そのために決勝まで行かせてください。一生懸命やりきります!」

11人のスピーチを感心しながら聞いていたICC小林は、今回のSAKE AWARDが生まれたきっかけを明かした。

「みなさんのスピーチ、感動しました! はじめの3人はカタパルトでしくじったと言っていましたが、お酒の魅力は、残念ながら7分のプレゼンでは伝わらないし、ちょっと試飲したくらいでは他のものづくりの人たちにまったく勝てません。

そんな惨敗した方たちが本当に悔しそうな顔をしていて、前回のICCサミットのSAKE NIGHTという企画で岡住さんと話していて、アワードをやろうと決意したんです。岡住さんがリベンジの機会をくださいと言うので、捲土重来、よし、やってあげようと。

もちろん1人のためだけにやっては仕方がないので、僕らは産業を作っていくということでこういった形にしました。酒というのは、グローバルに通用するもので、国境はないから、日本から世界を驚かせるお酒づくりを、皆さんの想いを伝えてください!」

予選ラウンド 審査会

各出展企業、審査員が各テーブルに移動すると、審査会が始まった。グラスには1番目の酒が注がれ、それを味わいながら、酒蔵は自分たちの酒造りにかける想いをiPadを片手に説明する。飲んでいるお酒はどんなものなのか、酒を通してどんなことをしたいのか。

真剣に語るところも、楽しく盛り上がるところも、それぞれの個性あふれたプレゼンと試飲が始まった。その酒に合うつまみを用意しているところもある。各テーブルの様子を写真とともにお伝えしよう。

阿部酒造

「担い手を創造することと、振り幅のある製法にこだわっています。日本酒が美味しくないというイメージを変えたいんです。『FOMALHAUT Spark 2022』は、150日かけて瓶内で二次発酵させた貴醸酒製法でスパークリングの酒です」

真夏ということで、スパークリング1本で勝負した阿部さん。実は酒好きが集まる運営チームにも阿部酒造のファンは多く、優勝候補に推しているスタッフも多かった。一口飲んで思わず笑顔になった瞬間が上の写真だ。

稲とアガベ

この日、つけたろうさんと徳利は「見せるだけ」という焦らしっぷり

熱燗DJつけたろうさんという秘密兵器とともに京都入りした岡住さんは「予選ラウンドを突破したら、明日、熱燗を皆さんにつけます!」と宣言し、この日はつけたろうさんを温存。このアワードの立役者なのに、1年前のクラフテッド・カタパルト登壇を散々ネタにされているのは温厚なキャラゆえか。

“田んぼを磨く”クラフトサケ造りから、秋田・男鹿を未来につなげる「稲とアガベ」(ICC KYOTO 2022)

岡住さん「カタパルトだって本気だったんですよ!(あんなに緊張しているのは珍しいと周囲から言われ)今までたくさん登壇してきているんですけど、全く違いましたね。登壇順も1番目だったし、圧倒されてしまいました」

皆に「稲とリンゴ(オーク樽貯蔵)」のグラスが渡ると乾杯、という楽しいムードのなか、日本酒が造りたくても清酒の酒類製造免許が60年以上新規交付されていないという課題を伝え(そのため自分たちの造った酒を日本酒ではなく”クラフトサケ”と呼んでいる)、国のルールに挑戦していくことを訴えた。

写真左のヤマチク山﨑 彰悟さんは「全部美味しいから、どこに一番いい点をつけるか決められない!」

haccoba -Craft Sake Brewery-

スタートアップ、ソーシャルグッドのカタパルトに登壇、震災の後に福島県の小高・浪江に移り住み、自由な酒造りを楽しむ佐藤さんたちは、一般販売のない「jam」で勝負。日本酒が発酵する過程で自生するホップを加えるどぶろく製法「花酛(はなもと)」の説明や、さまざまな副原料を使う”クラフトサケ”について語った。

オンラインでは発売になったら即完するという人気の蔵の、販売していないレアなお酒が飲めるというだけでもテンションが上がる審査員たち。飲みながら、解説を聞きながら、メモをとる手が止まらない。佐藤さんも本気で優勝を狙うモードだ。

RiceWine(HINEMOS)

時間に寄り添う日本酒というコンセプトで「HINEMOS」ブランドを展開している渡辺さん。若い女性に人気の高いブランドだが、今回の審査員の過半数は男性。この日は「SHICHIJI(PM7:00)」「SANJI(AM3:00)」で勝負した。

審査会の時間帯にぴったりと合わせた夜7時のお酒と、深夜3時のお酒。人によって時間に対するイメージは異なるだろうが、酒を通してその時間を感じ取ろうと、酒に向き合い黙り込む審査員が続出。他のブースとは異なる独特の空気感を醸し出していた。

LIBROM

飲む人たちが口々に「メロン! これメロンだよ〜」と言っていたLIBROMの「メロン」は、米、米麹、メロンで醸した”クラフトサケ”。他の感想を聞こうとしても、何口飲んでも「メロン」という感想しか聞けなかった。

このほか副原料をレモンバーベナで醸したシグニチャーの「VERBENA」、夏のとうもろこしを使った「スイートコーン」もスタンバイ。酒に弱いという柳生さんならではの、従来の酒のイメージを超えた自由な副原料を使った酒は、審査員たちを驚かせていた。

LIBROMのブースで試飲をしていた写真左の金楠水産の樟 陽介さんは、この日のランチは美食体験でhaccoba.の佐藤さんとイタリアンのcenci(チェンチ)で、ワインペアリングを楽しんでいたそう。SAKE AWARDには「ふわふわな状態からここに突入」と言う。

樟さん「いろんなアワードがあるけど、新たな空気感ですね。審査員の方々と一緒にワッと審査するのが新しくて、楽しいです。知っている審査会の感じと全然違います」

マルカメ醸造所

絶品のリンゴを作るリンゴ農家だからといって、絶品のシードル(りんご酒)を造れるのか? それは……。

造れるのだ! 会場で予選ラウンドの投票を終えた審査員たちに、どこに投票をしたか?と聞くと「シードル」という声が意外なほど多かった。酒好きたちがそう言うのである。温泉道場の山﨑 寿樹さんも「風呂上がりにこれを飲んだら最高じゃないですか」と言った。

もう一杯!

ラクサス / エス児玉 昇司さん(上の写真右から2番目)は「11の酒造の11杯を飲むのかと思ったら、各テーブル2杯ずつだからびっくりした! でも美味しいです」と、まだまだ余裕の表情を見せた。

白百合醸造

明るい語り口で、集まった審査員を沸かせていた内田さんは「今日はちょっと暑いので、スッキリさわやかにスパークリング飲んでもらいたいなと、クラフトワイン『イチゴブランデースパークリング』(上写真右)を用意しました。口当たりがすごくいいんです」と、1品目を紹介。まるでジュースのような見た目に審査員もうっとりしている。

「もう一品は、薬草を漬け込んだ濃い味のクラフトワイン「薬草」(上写真中央)。さっぱりと濃さの両極端で勝負したいと思っています」と内田さん。

YOROKOBI BREWERY

フレッシュな造り手による、新しいビールを提案する恒松さんは、トロピカルフルーツを使い、スムージーのようなとろみのあるビール「ENDLESS PARADE – Smoothie Sour Ale」とココナッツミルクシェイクIPAの「SUMMER GATE – Coconuts Milkshake IPA」をプレゼンした。

審査員には、ノンアルでも同じ飲料業界の伊良コーラ小林 隆英さんも。もう一度味を確かめたいと、「SUMMER GATE 」をおかわり。酒好きだけでなく、食品や飲食、流通など近しい業界や、経営のプロたちが審査するのがICCアワードの特色だ。

ANTELOPE

今回ICCサミット初参加でワンオペだった谷澤さん。会場入りする姿を目撃したが、1人で重い瓶を運びながら、勝手がよくわからず手こずっている様子だった。その時は警戒心いっぱいという雰囲気だったが、アワードが始まり会場の熱気を感じると、ミードの未来を背負って誰よりも燃えていた。

谷澤さん「ライムとジュニパーベリーのジンに使うボタニカルが入っている『What Churchill Said』は、前向きな明るい匂い、きれいな清潔感ある匂いがするので、一生懸命これを推していきたい。甘みもあって、ミードの入りにすごく良い。疲れてきたときにこういう甘いお酒飲むとちょっと気持ちいいし、休憩スポットみたいになれたらいいな。

もし時間に余裕があれば、乳酸発酵させたかなり酸っぱいミードを飲んでもらいたい。めっちゃ面白くて季節によって味が変わるんですが、今はマンゴーとか、桃みたいな甘い発酵の匂いがあって、蜂蜜のニュアンスもしっかり分かるけど、酸っぱいみたいな味なんです。

これ、めっちゃいいバッチ。めっちゃ特別なバッチなんで、わざわざ持ってきた。これはマジで美味いから、審査関係なく飲んでほしいな。本当に、本当にいいバッチなんです!」

ミードに興味津々の審査員たち

飛騨クラフト

森さんには審査会開始前にお話を伺った。この日用意しているのは、国産レモンを使ったレモンチェッロだが、ほかにもオレンジや晩柑などのリキュールを造っている。

「全国の農家さんと知り合っていくなかで、完熟の果物の旬をお酒に閉じ込めてあげれば、いつでも飲めていつでも味わえるなと思いました。製法や期間などを試行錯誤しながら、苦味を弱めたり強めたりしています。

家業は瓦屋ですが、市場的に小さくなっていき、3代目ともなるとシェアが獲れてしまって、もっと世界にチャレンジしたいと酒事業を始めました。お酒造りは楽しいですね。『美味しい』と言っていただけると、造ってよかったなと思います」

イタリア産は飲んだことがあっても、国産リモンチェッロは初? 好奇心いっぱいの審査員たち

Far Yeast Brewing

ビールを単式蒸留器で2回蒸留して、和歌山県産のぶどう山椒を加えたドライなSansho Punchと、ぜひリンク先で造り方を見ていただきたいDistiller’s Choice “beta”。人気のビールではなくて、ジンでの出品となったたFar Yeast Brewingの山田さんは、

「今日は蒸留酒です。原酒のフレーバーを引き継いだ蒸留をしたいなと思ってるんですけど、麦芽のフレーバーを発酵技術で、さらにフルーティーにして、それを引き継いだ蒸留酒を造りたい」

と語る。夏にぴったりのジントニックとジンソニックで審査員たちを唸らせながらも、「審査員として、皆さんのお酒も飲みたい…」と羨ましそうな表情。自分を除くとどの酒蔵が予選を突破しそうか?という質問には「クラフトサケのトップ3も来てますし、ミードもいいですよね」とのこと。

予選ラウンド突破6組が決定

 審査会でのすべての試飲が終わり、投票が終わると集計までは待ちの時間なのだが、そこもSAKE AWARDならではで、皆、お酒から離れがたいのかブースの回りに溜まって話を始めた。当然そこにお酒も出てきて、和気あいあいとした雰囲気だ。

写真右が鈴木さん

審査員の1人、伊勢角屋麦酒鈴木成宗さんは、国際的なビールの審査員の資格を持つ。「世界中でビールの審査員をやっていますが、この異種格闘技は怖いですね! 審査員たちは半分くらい造りたがりが渋滞しているし(笑)、違うジャンルを次々に飲んでいくという、新しい体験です」

やがて集計が終わり、予選ラウンドを通過した6組が発表された。予選突破は既報の通り、その6組と重複しているが部門賞も発表された。

予選通過6社のコメントでは、決勝ラウンドに向けた気合い十分の言葉が語られた。突破ならずの5社は、翌日の決勝ラウンドに審査員として合流する。

嬉しさを爆発させる佐藤さん

1位通過 haccoba佐藤さん「改めましてありがとうございます。造り手としては、『美味しさ部門』を絶対獲りたいっていうのが本当に心の底からあったので、まず それが何よりも嬉しかったです。正直、このまま終わりたい感がすごい僕はあるんですが、明日も決勝があるので、1位だったっていうこと、覚えておいていただければ!(笑)」

2位通過 阿部酒造阿部さん「酒蔵の6代目として何ができるかなっていうのを日々今考えて、その結果が2位でね、1位の相手がとにかく悔しいっていうのはあるんですが(笑)、頑張ってですね、お弟子を超えられるように頑張りたいなと思っております!」

3位通過 稲とアガベ岡住さん「残していただいてありがとうございます。雅さんの前フリで、明日残ってなかったらもう帰るしかないなって思ってました(笑)。3位は正直ふがいない結果だと思ってまして、明日決勝に行くためにプレゼン、お酒、いろいろ用意してますので、ご期待いただければと思います。優勝目指して頑張ります」

4位通過 ANTELOPE谷澤さん「ミード っていう、慣れないお酒をこうやって皆さんに評価していただいて本当に嬉しいです。今日ダメだったらミードの業界ってもうダメになってしまうと、それぐらい気負って来たので、明日はもうマジで優勝しに行って、マジでこれからミードってもっとおもろくなるんやっていうのを、パッション作ってやっていきたいと思ってます!」

5位通過 フルーツガーデン北沢 北沢さん「残れてほっとしています。今日、皆さんに飲んでいただいたのが、うちのシードルの中でも一番発酵時間が短くて果実感が一番出ているものでした。明日はその果汁をさらに発酵させて、度数が3%から7%に上がって、もっとお酒としてキレのあるものをご用意していますので、ぜひ明日も楽しんでもらえたら」

6位通過 RiceWine(HINEMOS)渡辺さん「首の皮一つ繋がったかなというところで、非常に悔しい思いと明日へのやる気に今、満ち溢れております。今日出した7時のお酒と3時のお酒、2つで全く違ったと思いますが、明日はまた違う時間でご案内します。HINEMOSの真骨頂、様々な時間に寄り添うといったところで、挑戦していきたいと思います」

翌日の決勝ラウンドの審査方法を審査員から尋ねられ、6組から4組、4組から2組に絞られ、優勝を決定する、その間、審査のため飲み続けると答えたところ、「最高!」と笑いが起こった。審査員たちも大満足の審査法のようだ。

冒頭に獺祭の櫻井さんが「自分のお酒の2杯目を飲んでもらうのが、いかに大変か」と語ったときに、1分スピーチのために会場の一角に集められた11組が、深く同意しているのが見えた。

予選ラウンドとは異なり、決勝ラウンドでは「もう一度飲みたい」「一番良い」というのが審査の基準だ。造り手のさまざまな想いを込めながら、飲み手のシンプルな欲求にいかに訴えていくのか。白熱の決勝ラウンドの模様は次のレポートでお伝えしたい。

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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