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5. 他者を理解するには、とにかく長い時間一緒にいること

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ICC KYOTO 2023のセッション「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン10)」、全7回の⑤は、石川 善樹さんが昨今話題の「人的資本経営」にからめて、人間への理解にアプローチします。子どもが人との関係を築く「一緒にいる・なる・する」に対して、大人社会ではこれがまったく逆になるといいます。興味深い指摘をぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは エッグフォワード です。


【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 2F
大人の教養シリーズ-人間を理解するとは何か?(シーズン10)
Supported by エッグフォワード

「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン10)」の配信済み記事一覧


企業における人間の捉え方の変化とは、石川 善樹さん

石川 では、中村さんに続いて、僕から話をさせていただきます。

他者の全てを理解できない、どうしても部分的にしか理解できないという中で、簡単に整理してみました。

会社という組織で考えると、基本的に会社は人間を、「この人はこれができる、あれができない」と、リソースとして捉えています。

リソースとして捉え、管理しようとします。

しかし最近は、人を資本として捉えようという流れがあります。

村上 人的資本経営ですね。

石川 可能性があるものとして、スキルやキャリアに投資していこうという流れですよね。

そしてもう一つの見方であり、一番難易度が高いのは、他者を一人の人間として捉えることです。

その場合、その人にとってのWell-beingを尊重しないといけないです。

しかし、例えば「負くんもんか」がその人のWell-beingの礎になっている時、尊重するのが難しくなってくる(笑)。

▶編集注:「負くんもんか」は、スピーカーの中村さんのお母様の口癖(Part.3参照)。

村上 どう捉えていいのか難しくなりますね。

石川 人を部分的に、資源や資本として捉えるほうがやりやすいのだろうと思います。

ただ、本質的には、一人の人間として捉えてその人のWell-beingを尊重しないと、その人を管理したり、その人に投資したりしようとしても難しいので、Well-beingの流れが来ているのだと思います。

関係性の築き方は、いる・なる・する

このスライドを作った時、ハッとしたことがありました。

結局、関係性を築きながら理解していくということですが、自分が子どもだった時と大人になってからでは、関係性の築き方が違うと思ったのです。

子どもの頃は、理由もなく一緒にいるのです。

生まれた時から、パパ、ママ、という謎の存在の人がいるし、公園に行けば自分と似た背格好の人がいるわけです。

一緒にいると、友達になったり家族になったりし、遊んだり、旅行したりします。

いる、なる、するの順番で関係性を築くということです。

ですから、小学校から高校、大学もそうかもしれませんが、訳も分からず一緒にいるというところからスタートした関係性は、何かを一緒にしていなくても、もはや友達ではなかったとしても、自然とまた一緒にいることができるのです。

なぜなら、一緒にいることから関係性を始めているからです。

何十年会っていなかったとしても、学生時代の昔の友達や仲間は、一緒にいられるのです。

でも大人になると、一緒にすることから関係性を始めます。

そうすると、仲間になれるかどうかは、完全に能力で決まります。

さらに、公私ともに一緒にいるという関係性になる確率は、かなり下がります。

村上 本当に一握りですね。

会社には、そういう人はいないこともありますよね。

石川 大人は、する、なる、いるの順番で深く理解をしていく一方、子どもはまず一緒にいるから始めて、なる、するです。

これは、どちらが良い、悪いではないです。

その人をHuman beingとして、理解というか関係を深めようとすると、とにかく、どんな時も一緒にいるしかないと思うのです(笑)。

村上 これは、同じ空間でどれだけの時間を過ごしたか、ということなのでしょうか。

石川 そうですね、本当にそういうことです。

スライドの真ん中の、人を資本として捉えるときは、仲間になるんだという覚悟や意思表明が要りますよね、だから投資していくのだと。

村上 「なる」についてもう少し聞きたいのですが、これはどういうことですか?

石川 仲間や友達、同僚になっていくということです。

上司部下の関係になる、もそうかもしれません。

関係性に名前がつくということでしょうか。

村上 なるほど。

石川 ただ公園に一緒にいるのであれば、関係性に名前はついていないですからね。

ただ、いるだけです。

村上 毎朝、電車で会う人がいますよね。

石川 そうそう、それはただ一緒にいるだけです(笑)。

だけど、40年間、毎朝、通勤で同じ車両に乗っていたら、多分深い絆が…(笑)。

村上 そこに何かを1つ投入したら、何かすごいことが起こりそうな気がしますよね(笑)。

他者を理解するには、とにかく長い時間一緒にいること

石川 相手を資源として理解したければ、何かのプロジェクトを一緒にすればいいのです。

そうすれば、理解できます。

つまり、理解するという時には、いる、なる、するの方法があるということです。

ですから、僕らが他者を理解するためには、とにかく長い時間、一緒にいるしかないのだと僕は思ったのです。

ずっと、長い間一緒にいると、話すことがなくなります。

でも本当の話は、「実は…」と、そこから始まると思うのです。

村上 僕の中で、仲が良いかの基準として、「一緒にいて、話していなくてもお互い心地良い関係が築けるかどうか」がありますね。

石川 そうそう、非言語の話し合いが始まるというか(笑)。

このICCサミットという場は、一緒に何かをする場でもありますが、一緒にいることを重視されています。

結局、何が言いたいかと言うと、この「人間を理解する」シリーズで、皆さん、末永く一緒にいませんかということです。

(会場笑)

村上 一緒になる、を共有しているわけですよね!

石川 人間を理解できなくても、少なくとも、我々はお互いの理解が進むと(笑)。

井上 きっと、5年間ずっと一緒にいてくださっている方もいるから…(笑)。

石川 そうそう(笑)。

村上 このセッションに参加している仲間、もしくは「人間を理解したい勢」という名がつくわけですよね。

中村さん、村上さんが感じていた孤独や孤立を告白

中村 先ほど、孤独と孤立の話(Part.2参照)がありました。

僕のICCサミット参加は今回が6回目ですが、前回まではずっと孤独を感じていたのです。

前回、皆さんに受け入れてもらってすごく嬉しかったのですが、ICC STANDARDを作る途中に石川さんにインタビューをさせていただき、その時に孤独と孤立の話を聞いて、僕はめちゃくちゃ救われました。

「大丈夫ですよ」と聖母のように言ってくれるのです。

(会場笑)

村上 聖母・善樹が(笑)。

中村 聖母・善樹が、「大丈夫ですよ」と。

井上 いつの間に聖母になっていたの(笑)。

村上 ちょっと観音っぽい(笑)。

中村 「ただ、いればいいんです。いればどうにかなるので、頑張らなくていいんですよ」と言ってくれて、めちゃくちゃ救われたのです。

それで楽になって…。

村上 なるほど、ありがとうございます。

善樹さんの話はいつもフレームが明確で分かりやすくて、子どもと大人の逆転現象はその通りだと思いますね。

井上 面白いですよね。

石川 定評がありますから(笑)。

(一同笑)

村上 そして、一緒にいればいいということですね。

一方で、僕はボーイズクラブみたいなものがすごく苦手です。

僕自身のバックグラウンドが、小学校の頃から合唱部、ブラバン、オーケストラに入っていて、基本的には女子コミュニティの中で育ってきました。

きょうだいの中に女性がいるわけではないのですが。

感度の高い時期を女子コミュニティの中で過ごしたので、ロッカールームがあって…みたいな、いわゆる男子クラブが苦手なのです。

特にスタートアップ界隈はまだ男性が多く、わちゃわちゃしたコミュニティや飲み会が多いです。

それに参加すると、疎外感や孤立をすごく感じるのです。

今はもうあまり気にならなくなって、俺はお茶を点てようと解脱の時期に入っているのですが。

井上 だいぶ違う方向に行かれたのですね(笑)。

村上 違う方向に行くことで、気にならなくなりましたね。

リモートワークでも一緒にいるという関係性が感じられればいい

井上 先ほどの子どもと大人の関係性の違いについては、ベンチャーの始まり方にも2通りあるなと思いました。

例えば、スキルで集まることもあれば、昔から仲良しで集まることもあります。

村上 同じ研究室にずっといたから、とかね。

井上 そうそう。

どちらが良い悪いはないと思いますが、進め方に違いがあるのだなと理解できました。

そう考えると、日本企業は珍しく、「いる」をかなり重視した企業体ですよね。

それが高度経済成長を支えてきたのも事実で、比較すると面白いと思います。

 リモートワークとオフィス回帰の文脈で言えば、オフィス回帰のほうがやはり、一緒にいるという意味では良いのでしょうか?

石川 部分的な「する」だけで言えば、リモートワークのほうが楽でしょうね。

 リモートワークは、「する」ですよね。

石川 オフィスでないとできないのが、一緒にいることでしょうね。

村上 バーチャルでも、一緒にいるという関係性が感じられるのであれば、別に手段は問われないのではないかと思います。

前回の善樹さんのスライドで、「複数の居場所を持ったほうがWell-being度が高まる」とあり、僕が確か、「それはメタバースなどバーチャルの場でも良いのでしょうか?」と質問したら、OKということでした(シーズン9より)。

つまり、そう感じられれば良いのではないでしょうか。

ただ、現状の仕事の仕方だと、オフィスで一緒にいるほうが相互理解しやすい、感じやすいということなのだと思います。

 なるほど。

村上 ですから、VRもそうですし、今度、例えばにおいすら感じられるようなデバイスやテクノロジーの進化が起これば、変わるのではないかと思いますね。

 「いる」というのは、一緒にいることによって、僕らは言語化できない何かを学んでいるのでしょうか?

石川 一緒にいると、表面的な部分だけではなく…本当に長い間一緒にいると、家族の話など、その人の色々な話が出ると思います。

そうなると、つながりの中でその人のことを理解したり…。

 自分が必要と思っている情報以外の情報も交換できることですよね。

人間関係を作るのに自分が必要と思っている情報以上の情報が、結構重要だということですかね。

石川 小学校の頃の友達は、たいてい、その子の家に行ったり…。

村上 確かに、お茶を飲んだり、その子のお母さんと話したりしますよね。

井上 するする、一緒にご飯食べたりね。

石川 でも、その人の実家に行ったことがあるという会社の同僚は、少ないと思います。

(一同笑)

村上 そうですよね(笑)。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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