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ICC KYOTO 2023のセッション「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン10)」、全7回の④は、引き続きコピーライターの中村さんが「理解」という言葉を考えます。自分の中の他人の言葉を生きてみようとすることで、自分自身や言葉が変化するかもしれないという発言に、人間を理解したい面々は大興奮です。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは エッグフォワード です。
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【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 2F
大人の教養シリーズ-人間を理解するとは何か?(シーズン10)
Supported by エッグフォワード
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▶「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン10)」の配信済み記事一覧
理解するという行為自体おこがましいのかも
中村 今回このお題(※他者理解)をいただいて思ったのですが。
近ごろは、「理解をして、それをみんなが分かるように分解して、応用できるようにすること」が、重視されすぎているのではないかと思うことがあります。
僕にとっては、理解するという行為自体がおこがましい気がしています。
できるとしたら、その言葉を、ちょっと自分なりに生きてみるというようなことではないかと…あまりうまく言えないのですが…。
村上 これは、例えば尊敬しているなど、その言葉をいただいた方との関係性があるから、おこがましいということなのでしょうか。
中村 そういう要素もあるかもしれないです。
「理解したい」は良いと思うのですが、「理解した」と思った瞬間に、それは嘘じゃんという感じがするというか…理解すればいいというよりも、理解しようとすることが大事なのではないかと感じています。
実践というか、実際にやるというか…。
井上 すごく良い話だと思って聞いていたのですが…。
僕も実は、自分を作っている言葉を並べています。めちゃくちゃメモをしているのです。
中村 そうなんですね。
井上 でも、この「負くんもんか」がインストールされているというか、その言葉を発するのが母親であり、「ウダウダいうなら俺が書くぞ」という厳しさは、実は中村さんの中にあって中村さんを作っているわけですよね。
中村 はい。
井上 それで今、非常にまっとうな「五島の良心」である中村さんができあがっていると。
中村 (笑)。
井上 それをちゃんと客観視するというか…自分に影響を与えた言葉は残していて、いつかそのテキストを使って僕のボットができないかなと思って溜めています。
中村 なるほど。
井上 そのリストに最近入った言葉があるのですが…「We will rock you」です。
これが今、僕を作る言葉の中に入っています。
その1つ前は、「I was born this way」が入っていました(笑)。
中村 強い言葉ばかりですね。
井上 だいぶ海外のアーティストに影響されています。
村上 そうですね、何から影響を受けているのかかなり分かってきました。
井上 そうそう。
そうだな、自分を作っているなと実感しながらもう一度見返した時、自分にどんどん溶け込んでいくというか。
それを始めたのは、ノーベル賞を獲った、北里大学の微生物分野の大村(智)先生が出している本がきっかけです。
ノーベル賞受賞者はたいてい、伝記みたいな本を書きますよね。
でも大村先生は、『人をつくる言葉』という本を書いていたのです。
村上 へー!
井上 その大村先生が、影響を受けた言葉として、良い言葉もたくさん書いてあるのですが、一見ネガティブな言葉でも自分の一部になるのだときちんと見返して消化できれば、良い話になるのではと思いました。
中村 そうかもしれないですね。嫌だ、嫌だとは言いつつも…。
井上 そうそう。
最後に思い出になるだろうと思える言葉たちが、結論の一つなのかなと思ったので、とても共感しました。
僕もそのリストを作っているところだったので。後で話しましょう(笑)。
他者から投げ込まれた言葉を生きてみる
中村 先日、映画『すずめの戸締まり』を観たのですが、観た方はいますか?(挙手を促す)
あ、結構いますね。
僕は何となく、観るのを避けていたのですが、観たのです。
僕がめちゃくちゃ象徴的だと思ったのは、主人公であるすずめ(鈴芽)がその土地を鎮めるためにしたことが、「その土地に生きた人たちの声を聞く」ことだった、ということです。
その土地に生きた人には、死んだ人たちも含まれます。
彼らの声を聞くと、扉を閉めることができるという物語になっています。
理解があるわけではないけれど、他者の言葉というものに、とりあえず耳を澄ませてみる、何か行動してみる。
新海 誠監督が、どういう意図からこういう展開にしたかは分かりませんが、そこに生きた人たちの声を聞いて何かをしてみるというのは、僕にとってはめちゃくちゃ象徴的なシーンでした。
こちらが結論です。
「つなぐ手の わたしの部分が 少しずつ わたしではなく あなたでもなく」。
言葉が自分に投げ込まれた時点で、手をつないでいる、つまり接点ができているのだろうと思います。
投げ込まれた他者の言葉を、理解したいとももちろん思うけれど、それを生きてみるというか。
そこまで言うなら、その瞬間は「負くんもんか」をちょっとやってみる、ウダウダ言わずにコピーを書いてみる、など、その場面ごとにやってみる。
それによって、僕が僕ではなかったものに変化することもあるし、投げ込んだ人の言葉も、投げ込んだ時点とは意味を変えて新たなものになるのかもしれない、と思いました。
他者理解とは、「自分の中に住み着いてしまった『言葉たち』を生きてみる」。
結論というよりは、最近はこういうことを考えながら生きていましたという話です。以上です。
奥深さを知っている人ほど理解したとは言わない
村上 中村さん、ありがとうございます。
要さんのロボットとの対話から、中村さんらしい言葉を中心とした話でした。
井上 いや~、すごい、面白い。
村上 面白いですね、言葉のキャッチボールの中で、もらうつもりはなかったけれど自分の一部になってしまっているものがあると。
面白いのが、理解するのはおこがましいという意見です。
関係性によるものでもありますし、理解してしまうとそこで止まってしまうので、理解するよりも生きてみる、営みとして続けることで新たな理解を得られる。
そして止めないというのは、その関係性へのリスペクトもあるからだろうと思います。
IT業界、特にエンジニア界隈のジョークなのですが、「Pythonを完璧に理解した」という言葉があります。
要は、特定の技術要素において、いわゆるニワカの人がガーッと勉強をして、「もう完璧に理解した」と言うのです。
でも、神のようなエキスパートは、絶対に「理解した」とは言わないのです。
なぜなら、その技術要素には限りがないからです。
専門家も、学会などで「私はこの分野は専門外ですが…」などと言いますよね。
井上 そうですね。
村上 その奥深さを知っているほど、理解したとは言わない、言えない傾向があるのかなと思います。
そんなことを思い出しながら、聞いていました。
林 僕らとステージが違うなと感じたのは、僕らの使っているロボットはノンバーバル(非言語)であることです。
言葉を絡めると、とにかく複雑になりすぎるのです。
人間と犬や猫は、ノンバーバルであそこまで良い関係を作れるのですが、言葉が絡んだ瞬間、こじれるのではないかと思います。
浄さんの「We will rock you」も、その単語そのものには、大して意味がないと思ったのです。
「負くんもんか」も、明るいトーンで常に言われていたら、受け取っているものは全然違うのではないでしょうか。
言葉はフックですが、そのフックによって想起される感情がすごく大事だなと、ノンバーバルの世界にいる私は思いました。
中村 なるほど。
第三者が媒介することで他者理解が進む
石川 これは、京都ならではの話なのですが…。
分かり合えた仲だと思っている人は、そんなにこじれません。
例えば中村さんとお母さんのように、分かり合えない仲であると、亡くなった後が大変です。
先に亡くなったほうはいいのですが、亡くしたほうにはずっとわだかまりが残るのです。
村上 もやもやし続けるのですね。
石川 昨日、京都の妙心寺春光院の川上(全龍)隆史さん(※) というお坊さんから、檀家制度とは、お坊さんとは何なのかという話を聞かせていただきました。
▶編集注:川上(全龍)隆史さんは、シーズン2に登壇いただきました。
ある人が亡くなって、みんなが「あの人は良い人だったね」と言うのなら、それで良いのです。
でもそういうケースばかりではなくて、こじれていることもあります。
その際、分かり合えない仲で残されたほうはずっともやもやが残るから、33年間その面倒を見るのがお坊さんであるとのことでした。
一同 へー!
石川 亡くなった人と亡くした人の媒介を、お坊さんが33年間やる制度が、檀家制度らしいのです(笑)。
村上 確かにそうですね。
石川 ですから、他者理解には33年がかかると(笑)。
中村 経験的に、33年はだいたい…。
石川 亡くした人自身も亡くなるかもしれませんけどね。
井上 コミュニケーターとして、お坊さんが必須ですね。
石川 第三者が言うことで、他者理解として、ゆっくり雪解けするということがあるのでしょうね。
村上 寺だけではなく神社や仏閣も、地域コミュニティとしてずっと存在し、柱になっていたわけですからね。
石川 『すずめの戸締まり』も、すずめさんが、声を聞いて媒介者になっているということですよね。
中村 そうですね。
(続)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成