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6. 人間を理解するためには、ビジネスも「競争」から「共生」に

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ICC KYOTO 2023のセッション「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン10)」、全7回の⑥は、リバネス井上 浄さんが、自分と他人を免疫の観点からアプローチ。免疫機能を担保するT細胞は、他者を倒すことに特化しており、他人の体の中では生きられないといいます。それほどまでに強烈な自他の区別をつける体を持つ人間は、他者をどう理解できるのか? ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは エッグフォワード です。


【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 2F
大人の教養シリーズ-人間を理解するとは何か?(シーズン10)
Supported by エッグフォワード

「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン10)」の配信済み記事一覧


村上 では浄さん、10分くらいでお話をいただきたいと思います。

ここまでの流れとしては、要さんからはロボットとのコミュニケーション(Part.1~2参照)、中村さんからは言葉に落とした時の他者理解の仕方を紹介いただき(Part.3参照)、善樹さんはそれらをフレーム立てて、子どもと大人の違い、そして「いる」「なる」「する」として整理されました(前Part参照)。

ここで、我々が誇る専門家であり、PhDである浄さんに、しっかりとまとめていただきたいと思います。

井上 薬学ですけどね(笑)。

村上 よろしくお願いします。

リバネスの経営者かつ現役の免疫研究者、井上 浄さん

井上 他者理解ということですが、ちょっと振り返ってみると、僕は5年間一度もこのセッションで自己紹介をしたことがなかったと思いまして。

村上 そうそう、今回、確かにそのスライドが入っているなと思っていました(笑)。

井上 他者理解ですから、少しでも知っていただけたらと思いまして。

21年前、大学院生の時に仲間15人で、リバネスという会社を立ち上げました。

研究で薬学に取り組んでおり、薬剤師でもありますが、一度も調剤したことがないので、聞かれてもよく分からないです(笑)。

村上 もう次のスライドに行ってもいいですか(笑)?

井上 (笑)。

ここで言いたかったのは、5年前のことなので皆さんも忘れているかもしれませんが、僕は一応、大学の先生もしているということです。

それだけ分かっていてもらえればと思います。

村上 経営者であり、現役の研究者であるということですね。

井上 はい。

そして、何の研究者かと言うと、免疫の研究を行っております。

出典:新抗体物語(KYOWA KIRIN)

2005年に出版し、大ベストセラーになった『抗体物語』は、皆さん、もう読んだと思いますが。

村上 もちろん(笑)。皆さん、抗体にはずいぶん詳しくなって。

井上 「免疫の活躍がにわかにわかる。」と、帯に書かれるという。

にわかにしか分からんのかい、と(笑)。

(会場笑)

村上 まあ、難しい話ですからね(笑)。

井上 そしてこの大ベストセラーの本をベースに、サディ(佐渡島 庸平さん)のコルクで、漫画化されました。

新抗体物語(KYOWA KIRIN)

出典:新抗体物語(KYOWA KIRIN)

村上 おお~!

井上 これは、無料で見られます。

今日の話を聞くと、免疫について学ばなければという気になると思いますので。

免疫細胞がそれぞれ、こんな感じで。

出典:新抗体物語(KYOWA KIRIN)

村上 分かりやすく。

井上 こうやって免疫ができているのか、と分かります。

ビジネスには何の役にも立たないと思いますが、ぜひ、読んでみてください。

最終回には、浄が出てくるのです!

出典:新抗体物語(KYOWA KIRIN)

村上 ブッ(笑)。

ちょっと! 吹いちゃった(笑)。

井上 最終回に。これが誰なのかは、僕は言いません。

最終回まで読まないとダメです。

村上 何かちょっと、ラブコメみたいになっていません?

井上 いや、これは後でゆっくり読んでください(笑)。この漫画、シーズン2まであるので。

皆さん、最終回だけ読むなんてしないでくださいね。

ちゃんと最初から読まないと分からないですよ。

村上 後で読みます。

完全に分かり合えるなんて幻想です!

井上 そして一番大事な、僕らが獲得している免疫には、根本的に、自己と非自己があります。

残念ながら、臣さんの細胞は僕の中では生きていけないわけです。

完全に自己と非自己に分けられています。

その免疫機能を担保しているのが、T細胞と呼ばれるものです。

自己を自己と判別する細胞が、あなたの体の中にいます。

そして、その重要な働きをしているT細胞は胸腺で教育を受けますが、自分の中で生まれたT細胞のうち、自分を認識して敵を倒す細胞だけが選ばれて、他の細胞は全て死んでいます。

ウイルスや細菌は攻撃するけど、自分の細胞は攻撃しない?(阪大微研のやわらかサイエンス)

95%以上が脱落しているのです。

何が言いたいかと言うと、我々の体はもうスペシャルな自分なのです。

村上 自分流にカスタマイズされているということですね。

井上 はい、だからもう無理なのです。

(会場笑)

村上 違うと。

井上 おこがましいという話が先ほどありましたが、分かろうと思ってはいけないのです。

分からないのだということを大前提にしておかなければいけない。

なぜなら、僕はあなたではないし、あなたは僕ではないからです。

これは、生物学的に間違いなく正しいので、完全に分かり合えるなんていう幻想は、一旦横に置いておきましょう。

(会場笑)

村上 これは、少し気が楽になる話ですね。

井上 はい、分かり合えないのです。

なぜなら、T細胞が皆さんの体の中で、他者を排除しているわけなので。

石川 これ、一卵性の双生児だったらどうなのでしょう?

井上 一番理想的な適合ではありますが、ダメな場合もあります。

ダメというのはつまり、同一の遺伝子を持っていますが、その人が育った環境によって変化していく部分があるというのが一つ挙げられます。

石川 少しずつ違うのですね。

腸内細菌の「共生」から他者理解を学ぼう

井上 一方で、僕らは体の中に腸内細菌を飼っています。

村上 出たな、腸内細菌!

このシリーズで登場するのは2回目です(※1回目の登場はこちら)。

井上 だって、触ると、もうここに僕の菌がついているわけですよ。

石川 べったりつきましたね(笑)。

井上 お腹の中にいる菌は、体の中に入ってきて、ずっとそこにいるわけです。

腸内細菌叢は人それぞれ違うのですが、ここから学べることがあるのではないか、他者理解につながるのではないかと思います。

1つ、キーワードとなるのが…。

村上 食べる、入ってくるなど、色々な要素によって、外から来た菌は住み着いていると。

井上 母親の胎内にいる時は、基本的には無菌だと考えられていますが、生後、腸内で、細菌は共生しているのです。

微生物同士も、全くの別物ですが、一緒に住んでいるのです。

菌と人間も全然違うものですが、共に生きていて、共に環境を創っているのです。

この点が、理解するということに非常に近しいので、共生というものを考えたほうがいいのではないかと考えています。

村上 共生というのは、それぞれが心地良く孤独に生きているのか、それともコミュニケーションをとっていたり、何かと何かがセットでいることがあったりするのでしょうか。

井上 共生とは、お互いに相互作用があるということです。

村上 なるほど。

井上 例えば、お腹の中に腸内細菌がいないと、人間の免疫が正常に発達しないことが明らかになっています。

腸内細菌も、僕のお腹の中で46年間育っているわけです。

先日お話ししましたが、僕のお腹の中からビフィズス菌を取り出して、増やして、それをもう一度飲んでみました。

体調は特に何も変わらなかったです(笑)。

(会場笑)

村上 まあ、そうでしょうね(笑)。やってみたかったのですよね(笑)。

井上 そう、やってみたかった(笑)。

(一同笑)

人間を理解するためには、ビジネスも「競争」から「共生」に

井上 理解はできないが、理解していくにあたり、皆さん、胸に手を当てて考えてみてください。

「競争型」は、いかに売上を上げるかで、大変ですよね。

やらないといけないですよね、僕もそうです(笑)。

(一同笑)

大変ですよ。

既存市場はあるのか、いかに競合を倒すかと考えたり、自分たちのアセットは競合に「勝つ」ために使っていたりしませんか?

それでは、理解はできないです。

(一同笑)

村上 なるほど(笑)。

井上 それで理解しようなんて無理なのです。

ビジネスも「共生型」に変わっていかなければいけないと言われています。

これは、理解するために必要でもあります。

その場合、いかに世界の課題を解決していくかと考えなければなりません。

市場があるかとか、競合をつぶすとかではなく、新しいことを共に創っていくのですよね。

そして仲間を集め、課題解決のためにそれぞれのアセットを組み合わせるという考え方が、これからのビジネスに必要だとずっと言っています。

でも、どうしても左の競争型が頭にちらついていると思います。

ただ、他者理解を本当に進めたいなら、右の共生型にならないと無理ですよ、ということです。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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