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お茶の産業をつなぎ、「文化資本」によって世界を豊かにすることを目指す「文化資本研究所 / TeaRoom」(ICC FUKUOKA 2024)

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ICC FUKUOKA 2024 クラフテッド・カタパルトに登壇して、3位に入賞した、文化資本研究所 / TeaRoom 岩本 涼さんのプレゼンテーション動画【お茶の産業をつなぎ、「文化資本」によって世界を豊かにすることを目指す「文化資本研究所 / TeaRoom」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜 9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。

【速報】古民家宿でその土地に根差した職人技と文化を継承する「LOOOF」がクラフテッド・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2024)


【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング

岩本 涼
一般社団法人文化資本研究所 代表理事 / TeaRoom 代表取締役 
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1997年生まれ。幼少期より裏千家で茶道経験を積み裏千家より茶名を拝命、岩本宗涼(準教授)としても活動。21歳で株式会社TeaRoomを創業。静岡県本山地域の日本茶工場を承継し、農地所有適格法人の株式会社THE CRAFT FARMを設立。お茶の生産から販売までを一貫して担う垂直統合モデルで、国内外で新たな需要創造を展開。世界を変える30歳未満30人の日本人「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2022」や「Forbes 30 Under 30 Asia 2023」への選出、ダボス会議グローバルシェイパーズのメンバーなど、グローバルでの様々な実績を持つ他、株式会社中川政七商店の社外取締役、一般社団法人文化資本研究所を設立し代表理事を務める。


岩本 涼さん よろしくお願いします。

文化資本研究所で、TeaRoomの代表をしております岩本と申します。

本日は、「文化資本」を通した新しい社会について、お話をさせていただきたいと思っております。

不登校の日々に出会った2つの文化

私自身の自己紹介を簡単にさせてください。

私は幼稚園、小学校になかなか馴染めず、いわゆる不登校の生活を送っておりました。

社会から断絶した心苦しい生活を送っていた時にたまたま出会ったのが、「お茶」と「空手」という2つの“道”の名のつく文化でした。

空手は5歳から始めて9歳で黒帯になりました。

母によると、「スーパーの角を全て型(かた)で回っていた」というのが私の面白いエピソードとして残っています。

史上最年少で裏千家茶道の準教授に

お茶は9歳でたまたま出会い、そのまま修業を積み、史上最年少の25歳で準教授になりました。

私にとっては、お茶室の中でいただくまさに一碗のお茶が大好きで、その景色に救われたと思っております。

その後、世界中でお茶会を開催、まさに人種や宗教を問わず様々な方々がお茶を通じて出会う場所というのが素晴らしく美しいと思いながら事業を展開してまいりました。

アメリカの国際アートフェア「SCOPE MIAMI BEACH 2023」 にてB-OWND(丹青社)× TeaRoom による “アート茶会” を開催(PR TIMES)

まさに、文化・精神性は国を越え、世界に行ってくれるということを思いながら実行してきた次第です。

経済成長しても生産者、文化は衰退し続けている

そのような世界が私の逃げ場で、それを残していきたいという想いで事業活動をしてきたのですが、その時に出会ったのが90万円という数字です。

今回参加されている皆様、審査員の皆様も同じ感情だと思いますが、経済がどれだけ成長して効率的な社会になっても、裏側の生産者、文化はずっと衰退し続けている──こういった現状を感じていると思います。

日本茶生産者の平均年収は90万円、工芸の作り手の平均生産高は153万円という数字が出ております。

大切にしてきた文化をなくしてはいけない

このままでは自分たちが大切に思ってきたこの文化がなくなってしまうので、これではいけないと私は立ち上がりました。

文化を支える産業構造、社会構造がおかしいのではないかということで立ち上げた会社が、TeaRoomです。

21歳の時に起業しまして、「対立のない優しい世界を目指して」という理念とともに活動しております。

生産者、文化というならば、自分たちが生産者、文化の当事者でなければならないと、課題を自分たちでしっかりと見つめたいと思いまして、当時1億8,000万円した日本茶工場・茶畑を承継しながら農業法人 THE CRAFT FARMを設立しました。

「美味しいお茶」はもちろん「美味しいお茶を飲める世界」を作る

その後、新しい価値創造のために奮闘してきました。

実際、私たちのミッションは「美味しいお茶」を作るだけではなく、「美味しいお茶を飲める世界」を作っていくことだと、創業当時から謳ってきました。

アート、ホテル、外交など様々な場面で評価していただけるお茶を美味しく飲める世界を作っていくということに対して場作りを行ってまいりました。

美味しいお茶を作るということに、もちろんこだわります。

皆さん、毎日お茶を飲まれると思うのですが、毎日ペットボトルのお茶を飲まれるということは、皆さんもステークホルダーの1人であり、社会の全員でこの産業を支えていくという覚悟と決意で様々な企業の皆さんとご一緒してきました。

事業成長とともに気づいた自分たちの役割

今年(2024年)は7億円くらいと、しっかりと着実に成長をしております。

お茶屋としては成功していると思うのですが、私たちのミッションは文化を正しく評価し、その後“生産者”と“文化”というものを正しく後世に繋げていくことだと思っております。

その上で自分たちの事業を見直して、この「文化資本」という構想を立ち上げて、文化資本研究所を設立いたしました。

文化の深層に潜む「無形資産」

では、「文化」とはそもそも何かといいますと、「人々が豊かに生きるために蓄積してきたもの」と定義しております。

それでは、「文化資本」とは何でしょうか?

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それは、文化の裏側にある無形の資産、これは思想や技術などを指すと私たちの中では定義しています。

割れてしまった茶碗に未来の希望を見る

具体的に申し上げますと、例えば茶碗が割れてしまった──様々な有形の物は割れると価値がゼロになってしまうということがあるのですが、我々の日本の文化では「その時代に紡がれた景色」と見る。

割れてしまった時点でネガティブに悲観的に思うのではなく、それをポジティブに未来の希望として見ていくということが言われています。

「壊れてしまったもの」ではなく、「物語が紡がれたもの」と見ていくことによって、この廃棄に溢れる世の中において、新しい価値を創造していけるのではないでしょうか。

この見方自体も、実は日本の「文化資本」なのではないかと考えています。

西洋のマグカップと東洋の茶碗

例えば、西洋のマグカップと東洋の茶碗はどのような違いがあるのでしょうか。

マグカップには、人間が自らそれを掴むための取っ手がついていますよね。

一方、茶碗の場合は自然にあるがままに焼きあがって、それを私たちは両手でいただくわけです。

その両手でいただくという動作も、人間主体でものを考えるのではなく自然主体という考え方で、その考え方は日本の文化資本の中に眠っているのではないかと考えています。

クロネコヤマトのロゴ、物を大切に扱う精神も「文化資本」

具体的に経営のお話に置き換えてみますと、クロネコヤマトさんのロゴもそうだと思います。

AmazonやUPSといった会社は、通常、効率性を重んじて物流を回していると思うのですが、クロネコヤマトさんのロゴをよく見ると、親猫が子猫を抱くように運ぶイメージのロゴが使われています。

破損率が著しく低い日本においては、世界中で物を物として効率的に回すよりも、まさに親猫が子猫を抱くようにその物を大切に扱っているという精神性が込められているからこそ、日本の企業は破損率が低いのだと思います。

こういった物自体も裏側にある思想、哲学自体も「文化資本」なのではないかと考えています。

「文化資本」を正しく評価し後世に繋ぐ

その意味でいえば、今回登壇される皆様、審査員の皆様、作り手の熱い想い、人、場所、そこに眠る魂、また企業文化、地域文化、思想や哲学、技術なども全て「文化資本」と呼び、これらを正しく評価する社会を作っていかなければということで研究所を設立しております。

まさに文化資本の視点で世界を見ていく、こういったもので無形の価値、まさに日本は文化資本大国、文化大国と言われますが、文化大国は今年おそらく増収増益で、大企業は一番利益が貯まっていますし、預貯金も最大額です。

株価も最大額になりました。

ただ裏側にある生産者、まさに文化というものはどこまで衰退するのか──これは経済が成長しようとも心が貧しくなってしまっては申し訳ないということで、後世にこの思想を残すためにこのような研究所を立ち上げ、それを実装するように努めております。

「文化資本」の考え方を通じて世界を豊かに

これが最後のスライドになります。

能登半島地震で被害を受けた金沢は私にとってゆかりのある地域で、震災後すぐに伺いました。

審査員をされているseccaさんのところにも伺い、そこで割れた茶碗をお借りしてお持ちしました。

この割れた茶碗を、大規模な震災が起きた時にどう見るかによって私たちは未来への行動が変わると思っております。

割れた茶碗をまさに未来に、この時期にこの場所でこういう人たちが想いを込めてこれを作っていたという記憶を未来の方々に残すのか、それともこの現状を全てがなくなってしまったと悲観視するのか、この2つの問いはまさに「文化資本」という考え方を通して、未来に対する希望として残していきたいと思っております。

「皆さんの文化資本の裏側にある思想、哲学は何ですか」と問いながら、この文化資本によって世界を豊かにしていくという取り組みを、これからもしていきたいと思っております。

ご清聴ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/星野 由香里/戸田 秀成

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