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水産養殖業の課題を解決する「海上衛星・自動給餌システム」(ウミトロン)【F17C-UMT #2】

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ウミトロン山田雅彦さんのプレゼンテーションを3回シリーズでお届けします。(その2)は、水産養殖事業者が抱える課題と、それを解決する為の、海上衛星を活用した自動給餌システムについてお話し頂きました。ICCカンファレンス FUKUOKA 2017「カタパルト・グランプリ」プレゼンテーションの書き起こし記事です。是非御覧ください。

スタートアップビジネスの「エコシステム」を構築し、日本の起業家を支援するプログラム「IBM BlueHub」は「カタパルト(CATAPULT)」のオフィシャル・サポーターです。

本記事で特集しております8分間のプレゼンテーションを行う「CATAPULT(カタパルト)」のプレゼンターを募集しております。「スタートアップ」「IoT/ハードウエア」「リアルテック」「カタパルト・グランプリ」の4カテゴリーで募集しております。ぜひ募集ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
CATAPULT GRANDPRIX (カタパルト・グランプリ)
Supported by IBM BlueHub

(プレゼンター)
山田 雅彦
UMITRON
Managing director/ Co-founder

1989年生まれ。九州大学機械工学修士卒。在学中に超小型人工衛星の開発に従事。2014年にロシアより打ち上げに成功。また学業と並行して教育、人材、観光事業等の複数領域で起業し、糸島市や九州大学から多数の表彰を受ける。大学卒業後は、三井物産に入社し、日本に先立って自由化したオーストラリアの電力市場において、発電及び小売事業会社の経営と、IoT領域の新規事業開発に従事。またグローバルでの税制・会計管理と同社の事業売却案件も兼任。2015年、上場前のメタップスに入社。同社の主軸事業であるマーケティング領域において、ビジネスと技術を横断する役割として、主にプロダクト開発、ビジネスアライアンス、消費者行動・購買履歴を活用したデータ分析及び、同データを活用したアプリ開発者向けのマーケティングコンサルを担当。その後、ウミトロンを共同創業し、IoT、リモートセンシング、データプラットフォームなど、過去の知見を最大限に活用し、世界の食問題解決に取り組む。

宇宙のデータで魚を育てる「ウミトロン」の配信済み記事

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【本編】

▼Part 1のハイライト▼
山田 ウミトロンは、水産養殖×IoTを目指すテクノロジーカンパニーです。

私は2つのバックグラウンドがあり、1つは宇宙、もう1つはデータです。ウミトロンを立ち上げた藤原と私は大学時代、人工衛星の開発に携わっていました。

しかし、衛星を打ち上げるはいいものの、そのデータをどのように解析して、誰のためにどういった価値に繋げるのか、といったことを考えられないまま打ち上げられ、データが無駄に捨てられている衛星がすごく多いここに違和感を感じました。

私は、メタップスというデータの会社に入り、スマホのセンシングで、それがユーザーにとってどういう価値に繋がるのか、つまり、データをどう活用するのか、ということに注力して経験を積んできました。

宇宙を始めとしたリアルな領域、そしてデータを中心としたネット、このリアルとネットを掛け合わせてなにかできないかと考え、そこで着目したのが水産養殖です。

面白いことに、宇宙の動作環境と海の動作環境はかなり近いんです。どういうことかというと、衛星はもともと宇宙で使われていた、実はIoT技術です。

IoTの課題は先程の衛星と同じで、センサーでデータを取得するものの、それを本当に顧客の課題解決に繋がるのか?です。

そこを我々は大事にしたいと思い、まず最初に、真鯛の生産高日本一の愛媛県の愛南町で、色々な水産養殖事業者にお話を聞き、彼らの課題、悩みをヒアリングしました。

▲Part 1のハイライトはここまで▲

▼Part 2 はこちらから▼

山田 水産養殖事業を営む方々が持つ現在の悩みは主に3つありました。

1つ目は売上面で、生産価格の変動、ボラティリティが高いということ。
2つ目がコスト面で、餌代が増加していること。
3つ目は、一次産業特有の課題ですが、労働力の減少が顕著だということ。

ウミトロンは、この中でも最もインパクトが大きいコストと雇用、この2つをテクノロジーによって第一フェーズで解決します。

まず、餌代がどれくらい高いか。

エサ代で生産コストの6-7割を占める

例えば、10メートル四方の生け簀で、鯛が12,000匹程飼われていて、自動給餌器によって餌が与えられえます。年間の餌代は、1生簀あたり1,000万円ほどかかっています。

中規模の養殖事業者さんは生簀を数十から百個前後持っているので、餌代への負担が大きく、結果的に、生産コストの6、7割が日本では餌のコストとなっています。

次に、労働環境についてです。

例えば、餌やりでは、魚を目視しながら手元の餌を魚が食べなくなるまでずっと与え続け、大体これに30分、長い時は1時間弱かかってしまいます。

思い出していただきたいのですが、1つの養殖事業者さんでたくさんの生簀を管理しています。

ここに大量の魚がいて、これら1つ1つに先程のように手であげていくと考えると、現場での作業はものすごい量になり、且つこういったハードワークを行う人材を地方で雇用するのはとても難しいんです。このような課題が今あります。

ただ、水産養殖業社もこれをみすみす見逃すわけではなく、タイマー式の給餌器を導入しています。
実際このタイマー給餌器は手元のパネルで餌をやる時間を設定できますが、課題もあります。

これら全てアナログで、給餌時間は勘で設定しています。結果として、目を離している100個近い生簀で無駄な餌が大量に発生しています。

まとめると、労働力が不足しているので、解決するためにタイマー式給餌器を導入したが、その結果、無駄餌が増えました、といったパラドックスが起きています。

最近大きめの事業者さんに話しを聞いたところ、やはりタイマー式の給餌器を使用すると、餌を効率的に与えることができないので、手やりにした、という逆流現象が起きていて、これはテクノロジーで解決するしかない、と我々は思いました。

「海上衛星」による自動給餌システム

そこで我々が提供するソリューションが、新しい衛星、海上衛星です。

これが、その(ソリューションの)プロトタイプです。

先程の生簀の中央に、生簀センサーとモーターコントローラーを設置します。

海の上もコンセントは届かないので、先程と同じ仕組みで、自分で発電し、センシングで得たデータを無線で送受信、解析した結果を基にリモートでコントロールして餌を与える、これらの自立型システムが必要です。

これは衛星と全く同じです。もう1つ衛星で重要な仕組みはこのような管制室です。

ウミトロンは、それを手のひらで実現したいと思っています。

この2つのミニマムバイアブルプロダクトによって、生簀センサーで魚群行動を観測し、リモート給餌コントローラーで、リアルタイムに給餌を制御します。

これによって、餌の1割削減を目指す、これがウミトロンの第一アプローチです。

水産養殖は人口増加率を大きく超えて成長する市場

初期市場としては、この1割削減によって年間48億円の売上を日本で見込んでいます。

次にグローバルです。我々は日本市場だけではなくて、グローバル市場も同時に攻めていきます。

理由としては、世界の人口が今右肩上がりで上昇しているのはご存知だと思います。

この緑色の人口の増加に対して青色が水産養殖の成長率に着目してください。実は世界の人口増加の2倍近い成長率です。

ここから読み取れるのは、健康意識の拡大なども牽引し、人の生活がこれまでの炭水化物中心からプロテイン中心に変わってきているということです。

そしてそれをおし上げているのはアジアの市場です。中国、インド、東南アジア、こういった市場がプロテイン中心の生活になることによって、元々魚を食べていたアジアの人たちが、今更に魚を必要としています。

だからこそ、私たちは日本だけではなくアジアをターゲットとして最初から狙っていきます。

(続)

続きは 宇宙のデータで魚を育てる「ウミトロン」が目指す姿 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/城山 ゆかり

【編集部コメント】

ウミトロンがサービス開発に挑む愛媛県愛南町に、実際にICCパートナーズ小林が取材に行っております。そちらではより詳しい水産養殖の課題について取材していますので、こちらを是非御覧ください!(榎戸)

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