「GRA」はITでイチゴ栽培を形式知化・ブランド化し、宮城発で世界に挑む(ICC KYOTO 2017)【文字起こし版】 – 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

「GRA」はITでイチゴ栽培を形式知化・ブランド化し、宮城発で世界に挑む(ICC KYOTO 2017)【文字起こし版】

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2011年の東日本大震災により壊滅的な被害を受けた宮城県山元町のイチゴ農家。故郷に新たな経済と雇用を創り、復興につなげたいという思いから生まれた「ミガキイチゴ」、そして世界への挑戦をGRA岩佐大輝さんが語ります。

ICCカンファレンス KYOTO 2017「カタパルト・グランプリ」プレゼンテーションの書き起こし記事です。ぜひご覧ください。

本記事で特集しております8分間のプレゼンテーションを行う「CATAPULT(カタパルト)」のプレゼンターを募集しております。「スタートアップ」「IoT/ハードウエア」「リアルテック」「カタパルト・グランプリ」の4カテゴリーで募集しております。ぜひ募集ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2017年9月5-7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
カタパルト・グランプリ

(モデレーター)
岩佐大輝
農業生産法人 株式会社GRA
代表取締役CEO

1977年、宮城県山元町生まれ。
株式会社GRA 代表取締役CEO。
日本およびインドで6つの法人のトップを務める。
2011年の東日本大震災後には、大きな被害を受けた故郷山元町の復興を目的にGRAを設立。先端施設園芸を軸とした「地方の再創造」をライフワークとするようになる。イチゴビジネスに構造変革を起こし、ひと粒1000円の「ミガキイチゴ」を生み出す。著書に『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』(ダイヤモンド社)、『甘酸っぱい経営』(ブックウォーカー)がある。

岩佐大輝氏(以下、岩佐) 皆さんこんにちは。GRAの岩佐と申します。

まず、GRAは何をやっている会社かというと、この大きいイチゴを作っている会社です。

このイチゴは「ミガキイチゴ」というブランド名で売っていますが、このミガキイチゴをご存知の方、どれぐらいいらっしゃいますか?

結構いらっしゃいますね。ありがとうございます。

最近では、理科の教科書に私が載るという、すごいことがありました。教科書に載るというのはなかなかありませんよね?

今はこのように、先端農業とはどういうものなのかということが理科の教科書に載り、小学校の教育にも使われています。

以上がGRAの簡単な紹介になります。

故郷である宮城県山元町の復興を目指して

そもそもなぜ私が農業を始めたのかというと、実は私の故郷である宮城県の山元町が、2011年の大震災でかなりの被害を受けて、壊滅的な状況になりました。

たった1日で、人口の4%を震災による津波で失いました。

この町の特産品というのがイチゴのハウス、イチゴの施設園芸でしたが、そのイチゴハウスも95%が飲み込まれてしまいました。

しかもあれから6年間で、人口の25%以上がこの町から出て行ってしまいました。

なんとか故郷を再び輝かせたい、復興させたいという思いが強くなり、宮城県に戻ったというのが、イチゴに取り組むきっかけです。

震災の後、東京で会社の経営をしながらボランティア活動に通っていたところ、ある町の方から「ボランティア活動もいいけれども経済や雇用をつくってほしい。自分たちの子どもたちが働けるような場所をつくってほしい」といったお声をすごくいただきました。

こうして、2011年にGRAという会社を設立しました。

変革の仮説、それはつまり地方をどうやって元気にするかということでスタートしたわけですが、「どのような条件にある地域でも、そこにグローバルレベルで勝負できる産業があれば、その地域は必ず再び栄える」のではないかと思いました。

では、ここを世界最大のイチゴ産地にして、この故郷をもう一度豊かにしようというふうに考えたわけです。

成長するイチゴ市場

イチゴのマーケット、市場の状況について説明します。

実はイチゴの市場規模は結構大きくて、卸売市場規模だけで1,748億円あって、日本の果物では最大です。

農家さんから直接消費者へ、あるいは直接リテーラーさんへ行くイチゴも合わせると、おそらく2,500億円ぐらいあるだろうというマーケットサイズで、一人当たりのイチゴの消費量はまだまだ伸びしろがありそうです。

しかも、30年間連続で、日本人の最も好きなフルーツ第1位です。

さらに世界的にもイチゴの消費は年10%で伸びているということで、農業の中でも非常に成長している分野だということがわかってきました。

時給693円というイチゴ農家の現状

一方で、農家の経営がどうなっているかというのを、当時スタートしたときに調べてみたところ、一人あたりの可処分所得は時給換算すると、693円ぐらいしか稼げていないというのがわかりました。

このまま産業を大きくしても非常に低い生産性ですから、地域が元気になるどころか貧しい農家が増えるだけです。なんとか変えていかなければいけないと考えました。

しかも農業のコスト構造、特にイチゴというのは製造原価の半分が直接労務費、つまり、摘み取りからパッキングするまでの人件費という、労働集約的なビジネスなのです。

これをなんとかしなくてはいけないということで5年前にスタートしました。

農業40年のベテランとイチゴづくりをスタート

まずはやってみないと始まらないと思ったので、3人でこのイチゴビジネスをスタートしました。

一番右が私、真ん中にいる方が橋元さんと言って、農業40年の大ベテランです。彼を取締役栽培顧問というかたちで一緒にやりました。

一番左の方が、山元町の役所で働いていた橋元君といって、彼も5歳の娘さんを津波で亡くしています。

そういった3人でイチゴ作りをスタートしたところ、1年目からこのように素晴らしいイチゴができました。

なぜこのように素晴らしいイチゴができたかというと、真ん中の橋元忠嗣さんの勘と経験のおかげです。

朝の3時ぐらいに農場にやって来て、水をあげたり、肥料をあげたり、そういうことをやって、僕らが出社する9時ぐらいになるとパチンコに行ってしまいます。

そして僕らが帰る頃にパチンコから戻って来て「XXだった」みたいな感じなのですが、やはり勘と経験が素晴らしいのだと思います。

でも、それだけでは横展開ができないので、彼に「農業のやり方を教えてください」という話をしたら「農業というのは人に教えられるものではなくて、イチゴと会話しながら学ぶものだ」と言われました。

「農業あるある来たぞ」と思いつつ、「どうやったらイチゴと会話ができるようになりますか?」と聞いたところ、「俺に15年ついてくればわかる」と言うのです。

センシングしてデータ分析ができる先端園芸施設

このままだと若い人が農業の世界に入って来ないなと思って、彼とさんざんやり合いつつ、ちょっとやり方も変えて、いわゆる先端園芸施設というものにお金を投じることにしました。

このグリーンハウスには、センサーが何百個も張り巡らされています。

例えば温度、湿度、CO2、日射量、あらゆるデータをセンシングして、24時間イチゴにとって最適な環境を保つことができるようになりました。

私の働き方もこんな感じに変わりました。

最近では画像解析ですね。例えば収穫量予想の精緻化、あるいは水やりや肥料の量を、葉の葉面を解析することで、自動的に最適化するとか、そういったことをやり始めています。

その結果、このミガキイチゴというものができて、一番いいものだと一粒1,000円で販売されています。

冬の時期になったら、皆さんには必ずミガキイチゴを食べていただきたいです。

数字的には、単位面積あたりの収穫量が日本の平均農家の2.5倍になって、キロあたりの販売単価が2倍になるという成果が出ました。

人口の2倍の人々が山元町に来てくれるように

山元町がどうなったかというと、この「ICHIGO WORLD」という先端設備を展示する場所を作ったところ、人口1万2,000人しかいない山元町に、世界中から2万5,000人が毎年来てくれるようになりました。

結果として町がちょっとにぎやかになってきたというのが、数年前にできたことです。

これは横展開しないともったいないということで、2015年から新規就農支援事業として、農業をやりたい方に農業の技術を教えて、独立をしてもらうというビジネスをスタートしました。

培ったノウハウを基に新規就農支援事業を開始

日本の農業者の平均年齢は67歳で、しかも全体の70%に農業後継者がいません。年齢はどんどん上がって、就農人口も減っていって、このままだと本当に我々は、おいしい食べ物を国内で食べることができなくなる。

そういう危機感からこのビジネスをスタートしました。

匠の技をデータ化し、15年の修業をより短く

15年間かけて修行をしなければならなかったところを、1年間でできるようにしたのです。

先ほどの頑固なおじさんにカメラなどをたくさん着けて、動線などを全部盗むというか蓄積しました。

このようなリッチメディアを使ってトレーニングをするとか、

あとは勘と経験を全部形式知化して、評価システムを作って、本当にこの人は農家として独立できるのかということをやったわけです。

あともう一つ、このビジネスをスタートしたポイントは、イチゴというのは植えてから収穫を終えるまで20カ月もかかるので、PDCAのサイクルが全然回らない。

ちなみにここ10年で、単位面積あたりのイチゴの収穫量が、日本全国、全然上がっていないのです。

なので、もっともっとデータを集めて、どんどんシェアして、いわゆるPD PD PD CAみたいなことをやっていかなければいけないということで立ち上げたということです。

”世界最後の超大国”インド市場に進出

2013年にインドにも進出しました。

インドは世界最後の超大国ということで、マーケットとして非常に有望です。

もう一つが、農村の貧困問題というのがすごく大変な状況で、この問題をなんとか解決したいと思ってインドに行きました。

2012年に1棟目のハウスを建設しました。

2013年にはインドでも栽培に成功しました。

そして、テスト販売を開始しました。

2014年には2棟目のハウスを建設しました。

2016年にインドで初の、イチゴのフランチャイズをハイデラバードでスタートしました。

このように、ITによる生産管理というものがインドに持ち込まれたことで、農村の、特に女性の方々が安心して働く機会ができました。

これらが、インドで行っている事業で、成し遂げたことの一つです。

現在の海外展開の状況は主に東南アジアを中心に輸出をしています。そして、日本とインドで生産をしています。

最近では中東での生産、あるいはアメリカ、極東ロシア、中央ロシアへの輸出にトライしているというのが、我々のこれまでの成果です。

今、国内外に十いくつの植物工場があります。

そのような中、私の故郷の山元町民は、こういう感じになりました。

「オラの町で生まれたイチゴの技術とブランドが世界中に広がっている!」

つまり地域を元気にするためには、もちろんお金も大事ですが、誇りを地方の方が持つことがすごく大事な要素で、それが少しずつ醸成されてきているのかなという思いを持っています。

AIやVRといった先端技術を活用して農業を効率化

今後の話として、おそらく2020年までには実現するであろうというものの一つが、AIを使った完全自動栽培管理です。

水やりとか、肥料、環境の制御は人間よりもコンピュータの方が遥かに上手くイチゴを作れるようになる。そのような時期が訪れてもおかしくはないと思っています。

もう一つは、海外にもいくつか農場がありますので、それらの農場の管理を遠隔でオペレーションするということを、今、技術的に、実験、研究をしていて、おそらくそれもできるようになってくるだろうと思います。

最後に自動収穫ロボットです。コストの5割が摘み取りから出荷ですから、自動で収穫するロボットというものを今開発しています。

それらが完成すると、ざっくりですけれども、高いかどうかというのは別として、農業においては高い、営業利益率30%超ぐらいの農業経営モデルができるということが見えてきました。

以上が、これまでGRAがやってきたことです。

最後に。震災でたくさんの仲間を失った中でビジネスをスタートしたわけですが、我々が生きていくうえで、失敗することは悪いことではないと思いますが、挑戦しないことはすごく罪だなと思っています。

ですから生きている限り、みんなで前のめりになって挑戦していきましょう!ということで、私のプレゼンを終わりにしたいと思います。

ありがとうございました。

(終)

GRA岩佐大輝さんのプレゼンテーション動画をぜひご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/浅郷 浩子/平井 裕

【編集部コメント】

地元の復興に端を発し、農業、就農支援、インドの貧困まで、イチゴを通じてこんなに数多い問題に挑まれていることに驚きました。ミガキイチゴの栽培施設をぜひ見てみたいです!(浅郷)

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