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ICCサミット FUKUOKA 2018 カタパルト・グランプリに登壇した、seak 栗田 紘さんの【seak「LEAP」は、就農プラットフォームで“素人でも農家になれる”仕組みを創る】プレゼンテーションの文字起こし記事をぜひご覧ください。
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ICCサミット FUKUOKA 2018のプラチナ・スポンサーとして、AGSコンサルティング様に本セッションをサポート頂きました。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2018年2月20日・21日・22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 6B
カタパルト・グランプリ
Sponsored by AGSコンサルティング
(プレゼンター)
栗田 紘
seak株式会社
代表取締役社長
1983年神奈川県横浜市生まれ。東京工業大学情報工学科にて計算工学を専攻。卒業後、株式会社電通にてテレビタイム業務に従事。関連会社に出向しスマートフォン事業立ち上げを行う。その後、ハードウェアベンチャーであるWHILL株式会社の創業にCOOとして参画。2014年4月seak株式会社を創業し、代表取締役に就任。個人として藤沢市認定新規就農者となり、その後法人として藤沢市初の認定を取得。農業の担い手における中心経営体として位置付けられた後、農地の確保から販路の開拓に至るまで、農業に必要な機能を全て提供する垂直統合の農業プラットフォーム「LEAP」を開発・展開。LEAPを通じて「農業のフランチャイズ化」を目指す。
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▶「ICC FUKUOKA 2018 カタパルト・グランプリ」の配信済み記事一覧
栗田 紘氏(以下、栗田)「LEAP」という農業の仕組みを作っている栗田と申します。
よろしくお願いします。
簡単に自己紹介をさせていただきますと、私は大学で情報工学を学び、卒業した後は広告代理店でテレビの仕事をしていました。
その後、スタートアップの立ち上げのサポートなどを経て、今、農業をやっています。
農業未経験で農地開拓からハウス建設まで行う
農業を始めるまで、農業の経験やバックグラウンドは、一切ありませんでした。
ちょうど3年前に、個人で神奈川県で農業を始め、そのときにお借りした農地がこのような状態でした。
畑というよりも木が30本生えている森でした。
「貸せる農地がここしかない」ということだったので、仕方なく四苦八苦しながら自身で伐採、抜根を行いました。
そして最初に自力でビニールハウスを建設しました。
栽培を進化させ独自ブランドを高級スーパーで販売
念願叶って栽培をスタートしましたが、トラブルが続出、野菜が一つも採れないということもありました。
そういった経験を経て、栽培を進化させていきました。
作った野菜は、今では、近郊にある高級スーパーの「明治屋」さんや「九州屋」さんに、「ゆる野菜」という独自ブランドで販売をさせていただいています。
誰でも簡単に農業を始められるよう仕組み化
農業未経験の人間が、草ボウボウの耕作放棄地(※)から、このような高級野菜を作るまでに至った試行錯誤のプロセスを再構築し、「一人でも多くの農業を始めたい人に、仕組みとして提供していきたい」と思うようになりました。
▶︎編集注:耕作放棄地とは、農作物が1年以上作付けされず、農家が数年の内に作付けする予定が無いと回答した田畑、果樹園のこと。(Wikipedia)
その仕組みを「LEAP」という名前を付けて、これから広げていこうと思っています。
農地とビニールハウスを効率的に確保
「LEAP」は、農地を見つけるところから垂直統合(※)で一括して価値を提供していきます。
▶︎編集注:垂直統合とは、企業が商品の開発・生産・販売を自社で一手に行うこと。(コトバンク)
農業を始めたい人を我々は”ファーマー”と呼び、まずLEAPに登録して頂きます。
LEAPは自治体から正式に認定を受けており、優先的に農地を賃貸で確保していくことが可能です。
農地が確保できたら、すぐにファーマーに耕作を委託する形で、ファーマーはすぐ農業に従事することが可能になります。
また、ビニールハウスも独自の仕様を構築しており、必要最低限の部材の選定、調達、そして職人さんと直接コミュニケーションを取ることによって、既存と比べて45%安い価格でビニールハウスを構築、提供することができます。
レシピ化した栽培方法で収穫量増大を目指す
特に重要な栽培においては、袋栽培(※)と肥培(ひばい)管理(※)を提供しております。
▶︎編集注:袋栽培とは、畑の土を一切使わず、独自の土を袋に入れてそこに苗を植えるという栽培方法のこと。(seak HP)
▶︎編集注:肥培管理とは、作物を栽培する際に、肥料やり・水やりなどを総合的に管理すること。
これによって、既存の栽培方法と比べて2.4倍の収穫を目指しています。
ご存知の方も多いと思いますが、農業のパフォーマンスは「土」に極めて依存します。
LEAPでは、弊社の土壌学研究の博士号を取得しているタジキスタン人の最高開発責任者を中心に、土の最適な構成、物性、理化学性(※)の最適化を行っています。
▶︎編集注:土の物性、理化学性とは、土の粒子構造などの物的な性質や、土に含まれる窒素・リン酸・カリウムなどの養分や酸性・アルカリ性といった理化学的な性質のこと。(参考:みんなの農業広場)
つまり、独自に土を作っています。
畑の土を一切使わないで、独自の土を袋に入れて、そこに苗をスポッと植えるという袋栽培という形を取っています。
これにより、仮に確保した農地が不耕作農地で土が栽培に適していなくても、いきなり良い環境で、かつ、均一な環境で栽培がスタートできます。
また、この土の袋にあげていく溶液、つまり水や肥料の管理を「肥培管理」と言いますが、これも独自のレシピを構築しています。
そもそもどういうふうに溶液を作っていくのか、その溶液を何時から何分間隔で打っていくのか、LEAPでは全部厳密にレシピで決めています。
ファーマーは、そのレシピ通りに溶液を作って、そのレシピ通りに朝一番に水やり装置のタイマーを設定します。
たったこれだけで良いのです。
LEAPでは、すでに多くの野菜で出荷、販売を行っています。
トマトで磨いてきたノウハウで、実がなる野菜を中心に横展開ができるようになっています。
ダイレクトな販売ネットワークを構築
販売については、先ほどのスーパーさんだけではなく、他の高級スーパーさんからも引き合いをいただいております。
高級スーパーだけで100店舗以上、ダイレクトに販売できるネットワークが構築されています。
また、朝、畑で採れた野菜を昼までに店舗に並べるという、朝採れ野菜の出荷を仕組み化することで、さらに高い付加価値を生んでいく取り組みを行っています。
これによって既存と比べて2倍の単価を実現していきます。
初期投資に対し独自のファイナンスメニューを提供
LEAPではお金の部分にもアプローチしていこうと思っています。
LEAPで農業を始めるに当たっては、先ほどのビニールハウスの建設や、苗や土を最初に持ってくるので、初期費用で最大1,000万円かかる資産になっています。
これを、農業を始めたい若者が自己資金で用意するのは、とても無理な話だと思います。
そこで金融機関と正式に連携することにより、自己資金が不要で、かつ低利率のLEAP独自の融資を中心にしたファイナンスメニューを提供できるようにしていきます。
フランチャイズモデル実現に向けて
LEAPのビジネスモデルはフランチャイズ(※)モデルと呼んでいます。
▶︎編集注:フランチャイズとは、フランチャイズに加盟する人・法人が、フランチャイズ本部から、お店の看板、確立されたサービスや商品を使う権利をもらい、その対価をフランチャイズ本部に支払うという仕組み。(Wikipedia)
農地、施設、栽培の資材、野菜の販売、そして資金、すべてのステップを一括して垂直統合で提供することによって、高いパフォーマンスを生んでいきます。
また資金を除く、すべてのステップのトランザクション(※)に一律15%だけ手数料を設定して、キャッシュポイント(収入源)を生んでいきます。
▶︎編集注:トランザクションとは、「商品を渡して、代金を受け取る」のように「ここからここまでワンセット」といった仕事の処理単位のこと。(Weblio)
このフランチャイズモデルを実現していくために、独自のプラットフォームを4つ構築しています。
ファーマーのあらゆるデータをリアルタイムに取得
そもそもの作業のやり方を、事前に予習、確認ができるようなウェブのプラットフォーム。
それでも何か苗に異変やトラブルが起きたときに、すぐにチャットで相談ができるようなアプリのプラットフォーム。
育てているビニールハウスが今どういう状況になっているのか、温度、湿度、あらゆるパラメーターを手元でリアルに確認ができるセンサー・プラットフォーム。
そして生産に潜む安全のリスクを消化するための、グローバルギャップという認証標準を標準化した生産管理プラットフォーム。
これら4つをすべて独自のシステムで、開発、提供しています。
つまりLEAPではファーマーのあらゆるデータをリアルタイムに取得していきます。
取得したデータは、本部によって学習最適化されて、エリア、品目を超えて、再利用できるナレッジとして、再度ファーマーにフィードバックされるという構造です。
未経験でも既存農家を上回る収穫量、単価を実現
すでに、現時点でLEAPが開発したノウハウを用いて、農業経験がなく、かつ社会人経験のない若者が農業を行った結果、既存の優秀な農家さんが目指すべき収穫量、単価といった指標を上振れするという事象がすでに発生しています。
さらに栽培ノウハウを最適化し、磨いていくことによって、2倍3倍の指標を実現していくことが可能になります。
下記は600平米のビニールハウスでミニトマトを1年間育てたときのKPIです。
▶︎編集注:KPI(=Key Performance Indicators)とは、組織の目標達成度合を評価するための指標のこと。重要業績評価指標とも呼ばれる。(Wikipedia)
600平米というのは既存と比べて非常に狭い面積ですが、この狭い面積で、この水準の所得、時給を実現していきます。
2019年フランチャイズモデル開始のための施策
我々は現在、直営体制で研究開発を行っておりまして、2019年からいよいよフランチャイズモデルをスタートさせる計画でいます。
フランチャイズモデルを加速度的にスタートさせていくために、すでに遠隔地の栽培も開始しています。
また、海外メンバーもすでに参加をしておりまして、あらゆるエリアでの展開に向けて、準備を進めています。
また特に、海外での展開を進めて、ビニールハウスを使わない露天の栽培を露地というのですが、露地の袋栽培での栽培、開発研究も本格化させています。
ファームサイドとビジネスサイドがお互いのメンバーが一つのチームとなって関わっているスピード感と、ファームサイドにおける指導、開発部隊と実行部隊。
これらが両輪で回っていることがLEAPの農業チームにおける一番のユニークなポイントであり、かつ競争優勢であると思っています。
現在LEAPでは研究開発の立場に立つ、特に農業、化学のバックグラウンドを持っている技術者、研究者、および実行部隊としてのフランチャイズメンバー候補者を共に絶賛募集中です。
今後資金調達を実施して、さらなるメンバーの拡充を図っていきたいと思っています。
我々はこの3年間、すべて自社の社員、自社の設備、つまり直営体制で研究開発を行ってきました。
今後直営の拡大、並びにフランチャイズモデルのスタートによって、ファーマー数も加速度的に増加させていきたいと思っています。
農業のあり方を抜本的に変えていきたい
我々は農業集団でありますので、「既存の農業における課題というのはダイレクトに解決していける」と思っています。
ただそれ以上に「LEAPを通じて、農業のあり方を抜本的に変えていきたい」と思っています。
既存の農業経営では、エリアや品目が縦に分断され、情報の非対称性が前提となっていました。
データやノウハウをLEAPの上で共有することによって、エリアや品目がネットワーク化された自律分散型(※)の農業を実現していくこと、これがLEAPが最も目指している新しい農業の形です。
▶︎編集注:自律分散型とは、全体を統合する中枢機能を持たず、自律的に行動する各要素の相互作用によって全体として機能するシステムのこと。(コトバンク)
ぜひ、新しい農業の未来の形を、皆さんと一緒に作っていきたいと思っています。
お声がけ、ご連絡お待ちしています。
ご清聴ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/戸田 秀成/浅郷 浩子/三木 茉莉子/大塚 幸
【編集部コメント】
耕作放棄地の問題や、就農のハードルが高い部分を解決するプラットフォームとなるLEAPの試みは、植物工場と並んで農業の新しい波になっていくのでしょうか。個人的にはベランダで袋栽培で野菜を作ってみたいと思ってしまいました。(浅郷)
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