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ICCサミット KYOTO 2018 Honda Xcelerator カタパルトに登壇し、特別賞に輝いた オプティマインド 松下健さんの【オプティマインドは、“宅配ロボット×ルート最適化AI”で、次世代のラストワンマイル配送インフラを構築する】プレゼンテーションの文字起こし記事をぜひご覧ください。
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18日〜21日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
ICCサミット KYOTO 2018のゴールド・スポンサーとして、Honda R&D Innovations様に本セッションをスポンサー頂きました。Honda Xceleratorは、Hondaのオープンイノベーション・プログラムです。
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【登壇者情報】
2018年9月4日〜6日開催
ICCサミット KYOTO 2018
Session 7A
Honda Xcelerator カタパルト
Sponsored by Honda R&D Innovations
(プレゼンター)
松下 健
株式会社オプティマインド
代表取締役社長
1992年生まれ、岐阜県岐阜市出身。岐阜県立岐阜高校卒業。名古屋大学情報文化学部を卒業し、名古屋大学大学院情報学研究科数理情報学専攻博士前期課程修了。現在、博士後期課程に在籍中。専門は組合せ最適化アルゴリズム。特にコンテナへの荷物の詰込最適化問題や、配送計画問題の研究に従事。研究と実社会の乖離を埋めたいという想いから、2015年に合同会社オプティマインドを創業。2018年2月に、日本郵便とサムライインキュベートによるオープンイノベーションプログラムで全国105社の選考の中から「最優秀賞」を獲得。2018年6月に、複数の事業会社から数億円の資金調達に成功。オプティマインドでは、経営全般、営業、サービス設計、最適化アルゴリズム設計などを行なう。
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▶「ICC KYOTO 2018 Honda Xcelerator カタパルト」の配信済み記事一覧
松下 健 氏(以下、松下) 皆さんこんにちは、オプティマインドの松下健です。
「スタートアップ・カタパルト」でもご説明させて頂きましたが、弊社は組合せ最適化アルゴリズムの研究を行っている、名古屋大学発のテックベンチャーです。
愛知というと某T社さんのお膝元という印象が強いと思いますが、本日の私の頭の中はHondaさんで一杯ですのでご安心ください。
(会場笑)
我々は、「どの車両が、どの訪問先を、どの順に回ればよいか」つまり配送ルートを最適化するためのAI開発を行っています。
次のスライドは簡単なデモになりますが、緑色のプロットはアメリカの全都市です。
アメリカの全ての都市を“一筆書き”でまわる際、どうすれば最も短いルートを辿れるかをコンピューターで計算している様子を描いたイメージ化したものです。
このような「全ての点を一度通った上で一筆書きで最も短いルートを探索する」という問題は我々の研究界隈では非常に有名で、「巡回セールスマン問題」と呼ばれています。
巡回セールスマン問題は、様々な制約が組み合わさっていくと計算量が膨大になる難しい問題になっていきます。
ちなみに訪問箇所、つまり緑色の点が20個あるだけで計算は243京通りにもなり、スーパーコンピューターでも80年以上かかる計算になってしまうと言われております。
▶編集注:京は10の16乗。すなわち243京通り=2,430,000,000,000,000,000通り。
「Loogia」でラストワンマイル配送の最適化をサポート
そこで弊社は、前述の組合せ最適化の技術を活かし、ラストワンマイル配送を行う会社さん向けに、クラウドシステム「Loogia(ルージア)」を提供しております。
先程のアメリカのデモは車両1台あたりの最適化に関するものですが、我々は例えば10台の車両で100箇所、5台の車両で20箇所というように、複数の車両、配送先を一気に最適化するというソリューションを提供しております。
さらに、車両1台あたりの配送ルートについて、訪問先に対していかに左付けするか、いかにUターンを回避するかなどの具体的な提案を行っています。
ターゲット業界としては、宅配便や宅食、自動販売機のメンテナンスのみならず、お酒を居酒屋に卸している酒販会社さんや、日々薬の需要が変わる薬品卸会社さんなど、多岐にわたっております。
実際に効果があるのかという点について、日本郵便様との協業における実際の効果をご紹介します。
我々のサービスを導入したことで合計50分の時間削減に成功し、1人当たり月144,000円の増益が見込めるということも実証されました。
走行データを蓄積し、業界間・企業間で広く共有
今まではデータを入力し最適化した後、そのルートを出力して終了という流れだったのですが、そうすると計画を作るだけで終わってしまい、計画倒れになるという事態が起きました。
そこで我々は、実際にGPSのデータをロガーやスマートフォンから取得して学習させることで、次回からドライバーさんにフィットしたルートを提案するスキームを開発いたしました。
例えば「どこに車両を停車するか」を考えた時、下手なところに停めると駐車禁止のラベルが貼られてしまったり、クレームを受けたりすることがありますが、我々はそれらの情報をデータ化し、安全かつ効率的な停車位置データとして蓄積しています。
加えて、どこに訪問する時にどれ程の時間がかかるのかという、訪問先での停車時間も記録しています。
さらに、Google Mapで検索すると10分と時間が表示される経路についても、軽車両だったら何分、2トントラックだったら何分というように、車種ごとの時間も分かるようにしています。
また、各道路(各交差点間)について季節・時間ごとの走行速度を取得しているので、“配送に特化した距離”も保存しています。
最後に走行経路ですが、これはドライバーさんによってかなりクセがあります。
よく使いやすい道や避けがちな交差点などをデータから取得し、次からはそのルートを優先的に出力するようなエンジンを開発いたしました。
これらの実績データを、企業や業界を越えて、この「Loogia」というプラットフォームをご利用頂いている全ての会社さんで共有しています。
宅配ロボット×最適化AIで、新たな配送インフラを!
そして今後、自動運転、ライドシェア、移動店舗が普及していく世の中において、我々はルート最適化のところでプラットフォーマーになることを目指しております。
その中でも我々が今回着目したのが「自動運転」です。
Hondaさんと取り組みたいこととして、Hondaさんの車両データ・車両と我々が保持しているアルゴリズム・配送特化型地図を掛け合わせて、宅配ロボットと最適化AIの融合による、新しい配送インフラを構築することを提案いたします。
実際の車両データを使うことで効果を得られるのかを検証した実験例があります。
次のスライドは上が車両データを使う前、下が実際に走行したGPSの実績データを活用した結果です。
実際に社内で車を出してこのルートの走行時間を測定してみると、140秒ほどかかりました。
実績データがない状態での、このルートの予想走行時間は196秒でしたが、実績データを用いて計算すると155秒となりました。
自分たちで走行した時間が140秒ですので、155秒の予想結果のほうが近くなったことがわかります。
もう1つ、車両データの活用効果をご紹介させていただきます。
次のスライドの左側は、実績データを適用する前に提案されたルートです。
かなり急なところで U ターンをするルートです。
これに対して、約5,000の車両データを適用すると大通りでUターンするルートが表示され、より安全になりました。
そしてさらに多くのデータを適用すると、今度はUターンすらなくなり、安全な抜け道を提案するようになりました。
このような結果を見ると、走行実績データはかなり価値の高いものと考えられます。
ハブスポーク型のロボット配送の実現に向けて
さらに我々が想定する未来社会として、モビリティによる小さな配送拠点及びコミュニティの移動というものがございます。
つまり、宅配ロボットが全ての家を回るために、ロボットを搭載した車両をどこかに停車させ、そこからロボットが個人宅に配達していくというものです。
これは「ハブスポーク配送」と呼ばれるものですが、この配送モデルにおいて弊社は世界ナンバーワンのアルゴリズムを保有しております。
共通の問題に対し制限時間内にどれ程の精度の解を出せるかという比較検証があり、弊社のアルゴリズムはその比較検証において世界で最も精度が高いことが立証されております。
我々は、Hondaさんが保有されている走行データ・宅配ロボットと、我々のアルゴリズム・配送特化地図を掛け合わせることを考えておりますが、まずは特定のエリアに絞って、データ連携及び次世代の宅配ロボットによる配送インフラの構築、そして最終的に街の配送のインフラ的存在になることを目指したいと思っています。
Hondaさんのコンセプトモビリティの中で着目したのが、こちらの宅配ロボットです。
ハブスポーク型ロボット配送を目指す中で、我々は停車可能位置データを取得しているので、どこに停めると宅配ロボットが動きやすく、どう配送すると効率的かということを一緒に検討したいと思っております。
さらに、この配送を実現するためには宅配ロボットだけではなく、宅配ロボットを運ぶためのコネクテッド車両も必要になります。
現段階では宅配ロボットとの連携を考えておりますが、将来的には一緒に新しい車両のデザインもできたらと考えております。
走行データと宅配ロボット、宅配ロボット搭載型モビリティに対して我々の最適化技術を掛け合わせることで、次世代のラストワンマイル配送のインフラを実現したいと考えております。
ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/戸田 秀成/平井 優花
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