「福祉×アート」の社会実装で、障害に対する意識を変えていく「ヘラルボニー」(ICC FUKUOKA 2021) | 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

「福祉×アート」の社会実装で、障害に対する意識を変えていく「ヘラルボニー」(ICC FUKUOKA 2021)

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ICC FUKUOKA 2021 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただき、見事優勝に輝いた、ヘラルボニー 松田 文登さんのプレゼンテーション動画【「福祉×アート」の社会実装で、障害に対する意識を変えていく「ヘラルボニー」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 プラチナ・スポンサーのセールスフォース・ドットコム様にサポート頂きました。

【速報】福祉を起点に寛容な社会を提案する「へラルボニー」が ソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICCサミット FUKUOKA 2021)


【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICC FUKUOKA 2021
Session 13A
ソーシャルグッド・カタパルト&ラウンドテーブル
Supported by セールスフォース・ドットコム

松田 文登
株式会社ヘラルボニー
代表取締役副社長

1991年岩手県生まれ。代表取締役副社長。チーフ・オペレーティング・オフィサー。大学卒業後、ゼネコン会社で被災地の再建に従事、その後、双子の松田崇弥と共にへラルボニー設立。自社事業の実行計画及び営業を統括するヘラルボニーのマネジメント担当。岩手在住。双子の兄。日本を変える30歳未満の30人「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN」受賞。

 

松田 文登さん 株式会社ヘラルボニーの松田です。

私たちは、日本全国にある芸術に特化した福祉施設とアートライセンス契約を結び、様々なアートを通じて、モノ・コト・場所に落とし込むことで、障害のある方に対するイメージを変容していく会社です。

知的障害がある方の月額賃金は平均16,118円

知的障害のある方は、世界に2億人以上、日本国内には108万人いると言われています。

知的障害に限らず、障害のある人は国内に936万人いると言われています。

障害者の数(国民生活基礎調査)(厚生労働省)

実は、知的障害のある方の月額賃金の平均は16,118円であるという現状があります。

この現状を根本的に変えていく、それが私たちの課題です。

すでに海外で評価を得ているアーティストも

ここで、アーティストのご紹介をさせてください。

例えば、黒丸を延々と描くことを何年も続けているアーティスト(佐々木 早苗さん)や、文字と文字を繋げ続けているアーティスト(小林 覚さん)、現時点ですでにパリで高い評価を得ているアーティスト(八重樫 道代さん リンク先ページ下部で紹介)がいます。

障害のある方はルーティンどおりに生きている方がとても多く、そのルーティン自体が障害でもあり、その障害が「絵筆に変わる」のだと思っています。

アート作品を活用したビジネスモデル

例えば、芸術家・草間彌生さんも統合失調症などの障害があると言われているのですが、自己プロデュースをすることができる方です。

私たちは、自分でプロデュースすることがなかなか難しいという方々とクリエイトし、その作品を全国各地に放っていくことで、障害に対する意識を変えていこうと考えています。

現時点では、青森から沖縄までの25の社会福祉法人とアートライセンス契約を結んでおり、2,000点以上のアートのアーカイブデータを会社として保有しています。

こちらがビジネスモデルです。

私たちがアートデータの管理や契約手続き、企画・編集、自社事業に落とし込むことで、クライアント・代理店からお金をいただき、それを福祉施設やアーティストに適正価格でバックしていく、というビジネスモデルです。

「才能は披露して初めて才能になる」と私自身は思っていますので、その才能を披露する場を提供していく、そのように考えています。

ZOZOTOWNで月間売上1位を獲得

私たちは、大きく分けて3つの事業を展開しています。

まず1つ目にアートライフブランド事業、2つ目はアートライセンス事業、3つ目が原画販売事業です。

アートライフブランド事業では、日本の職人と障害のあるアーティストを掛け合わせることで、それを社会にアウトプットしています。

“支援”や“貢献”などは一切抜きにして、単純に「この作品が欲しい」という購買活動や消費行動を作っていきたいと考えています。

今は、全国各地の百貨店を中心に販売を行わせていただいております。

昨年、アパレル事業をメインとしたセレクトショップTOMORROWLANDとコラボレーションした際は、“障害”や“福祉”といった言葉は一切抜きで、ファッション通販サイトZOZOTOWNの月間売上ランキングで1位を獲得することができました。

ホテルのプロデュースや原画販売

今は、「ソーシャルホテル(※)を一括プロデュースしてほしい」という依頼を受け、2022年のオープンに向け準備中です。

▶編集注:ソーシャルホテルとは、ゲストとホスト、あるいはゲスト同士のコミュニケーションを大切にし、ホテル単体だけではなく地域やカルチャーと混ざり合う機能を持った空間のこと。

私たちが目指すのは、marimekko(マリメッコ)というブランド名だけでマリメッコの柄が連想されるように、ヘラルボニーという名前だけでヘラルボニーの柄が連想される世界を作ることです。

そのような世界を作っていけたら、障害のある方に対するイメージが根本的に変わっていくのではないかと考えています。

順番が前後しますが3つ目の原画販売事業では、今年、ギャラリーをオープンします。

昨年は、東京ミッドタウンなどで販売し、売上が1日で200万円を超えることもありました。

アートとしての価値を、プライスリーダーとしてきちんと作っていきたいと考えています。

デザイン転用など作品のライセンス事業

そして、先ほど2つ目として挙げていたアートライセンス事業です。

現在保有している2,000点以上の作品を用いて、どのような事業を行っているのかについて、お話しさせていただきます。

例えば、アーティストのアート作品でオフィスそのものを彩ったり(Panasonic Laboratory Tokyo)、ジンの海外向けパッケージ(ジャパニーズ・ティー・ジン「REVIVE from NINJA」)やプロバスケットチーム岩手ビッグブルズのユニフォームに採用していただいたりしています。

街を彩るアートのアップサイクル

また、「全日本仮囲いアートミュージアムプロジェクト」では、建設・住宅を守る仮囲いを、新発見ができる期間限定の「ミュージアム」と捉え直す地域活性型のアート・プロジェクトとして、街づくりそのものをアートで彩っています。

東京都の吉祥寺駅では、「ステーションミュージアム吉祥寺」という地域福祉連動型プロジェクトで、地域のアーティストと一緒に駅をアートで彩りました。

こちらのスライド写真は、高輪ゲートウェイ駅をアートで彩った際の様子です。

実は、こちらのプロジェクトはただ街を彩るだけではなく、ターポリンという非常に耐久性が高く強度もある素材を使うことにより、その後、ゴミではなく資源としてトートバックに再利用し、付加価値をプラスさせ、その売上をアーティストに還元するというプロジェクトでした。

JR東日本、高輪ゲートウェイ駅前で「Takanawa Gateway Fest」開催。仮囲いにアート作品を展示、トートバッグに再活用(トラベルWatch)

そして、つい先日決まったのですが、こちらの仕組み(「アップサイクル×福祉×JR 東日本」による SDGs推進 ~駅等のインフラを活用した新しいアップサイクルモデルの構築と障害のある人も活躍できる社会づくりの応援~)が、日本オープンイノベーション大賞の環境大臣賞を受賞しました。

「第3回 日本オープンイノベーション大賞」の受賞取組・プロジェクト一覧 – 内閣府 日本オープンイノベーション大賞

「ヘラルボニー」という会社名の由来

なぜ私がこのような事業をしているかと言いますと、実は、4歳上の兄が自閉症(自閉症スペクトラム障害)という先天性の障害を持っているからです。

私たち兄弟は、幼い頃から、兄のことを可哀想だと言われる機会が多くありました。

私たち兄弟の中では可哀想だという認識はまったくないのですが、社会から見ると「障害があるのは可哀想」と思われてしまう、このバイアス(偏見)を変えていきたいと思ったのです。

そういった思いから、私たち健常者では到底描き出せないような、リスペクトが生まれてくるアートの世界との出会いを作っていくことで、障害に対する意識が徐々に変わっていくのではないかと考えました。

「ヘラルボニー」という会社名も、実は、4歳上の兄が7歳の頃に書いた謎の言葉で、それをそのまま会社名にしています。

兄に「ヘラルボニーとは、どういう意味なの?」と尋ねると、「わからない」と答えます。

このように、障害のある方々には、言語化できていないだけで、心の中では非常に面白いと思っているけれども社会にはまだ通じていないことが多くあるのではないか、と思っています。

それらをきちんと言語化していける、そのような会社でありたいと思い、「ヘラルボニー」という会社名にしています。

「障害」=「欠落」というイメージを変えたい

会社のミッションも「異彩を、放て。」として、知的障害のある方々を僕らは「普通ではない」とあえて言っています。

普通ではないことは、同時に「可能性」だと思っていますので、障害のある方々を異彩と定義して全国各地へ放っていくことで、障害に対する意識を変えていきます。

スライド写真の向かって左の人物、松田 崇弥が、創業者です。

私たちは双子で会社を運営しています。

である私は、元々、放送作家・脚本家である小山薫堂さんのもとで、企画編集やくまモンのライセンス事業などを行っていました。

私は、元々ゼネコンで営業をしていたので、街づくりそのものにアートを組み込んでいっています。

私たちは、以前、ヘラルボニーとして初めて意見広告を出しました。

それは、“この国のいちばんの障害は「障害者」という言葉だ。”という内容で、国会議事堂の近くにある弁護士会館敷地内に掲示しました。

「異彩を、放て。」をミッションに掲げる福祉実験ユニット・ヘラルボニーが、ブランド初となる意見広告「#障害者という言葉」を展開(PR TIMES)

なぜこのような意見広告を出したかと言いますと、桜を見る会の名簿のシュレッダー処理について、前首相が「担当は障害者雇用の職員でした」と答弁したからです。

安倍首相、名簿のシュレッダー処理「担当は障害者雇用の職員」と答弁 批判相次ぐ(毎日新聞 2019年12月3日)

シュレッダー処理を担当したスタッフが障害者雇用であったことに言及したのは、それが国民に対する言い訳として成立すると判断したからだと私たちは推測します。

「偏見が根強く残り続ける社会や仕組みそのものに問題があるのではないか?」

私たちは、「障害」=「欠落」というイメージを、「障害」=「違い」「個性」に変換していく、そのような社会を作っていきたいと思っています。

障害のある方の生き方そのものを変えていく

現状では、「障害者」という言葉自体が持つネガティブなイメージの強さが、最大の足枷となっているのではないかと考えています。

ですので、“この国のいちばんの障害は「障害者」という言葉だ。”という意見広告において、「障害者」という言葉をBanksy(※)のオマージュとして、シュレッダーにかけたようなポスターを掲示しました。

「異彩を、放て。」をミッションに掲げる福祉実験ユニット・ヘラルボニーが、ブランド初となる意見広告「#障害者という言葉」を展開(PR TIMES)

バンクシーの絵、1億5000万円で落札直後にシュレッダーで裁断。なぜ?(HUFFPOST)

▶編集注:Banksy(バンクシー)は、イギリスを拠点に活動する匿名の芸術家。政治や社会問題に根ざした風刺的な作品を手がけるアーティストとして評価されている。

「障害者」という人物はこの世にひとりも存在しないということ、そして私たちヘラルボニーの思想が広がっていくことで、障害のある方の生き方そのものを変えていく、そのような未来を作りたいと思っています。

ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/中村 瑠李子

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