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ICC FUKUOKA 2021 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただいた、まもるをまもる 西垣 孝行さんのプレゼンテーション動画【「まもるをまもる」は命をまもる現場の課題と向き合い、医療と産業が共創する社会作りに挑む】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 プラチナ・スポンサーのセールスフォース・ドットコム様にサポート頂きました。
▶【速報】福祉を起点に寛容な社会を提案する「へラルボニー」が ソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICCサミット FUKUOKA 2021)
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【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICC FUKUOKA 2021
Session 13A
ソーシャルグッド・カタパルト&ラウンドテーブル
Supported by セールスフォース・ドットコム
西垣 孝行
特定非営利活動法人まもるをまもる
代表理事
大阪出身。2000年から国立循環器病研究センターで17年間、臨床工学技士として人工心肺や補助循環、補助人工心臓などの臨床業務に従事。並行して博士(応用情報科学)を取得。2010年から医工連携事業として複数案件を立ち上げ、その中の一つ、感染予防用アイガード「パラシールド」を商品化。経済産業省の始動Next Innovator2016に参加(シリコンバレー派遣組み20名に選抜、最終プレゼンター選出)。2017年経済産業省医療福祉機器産業室を経て、2018年に森ノ宮医療大学に着任。同年「医工デザイン融合」をコンセプトに、命を守っている人を守るための新しい構造を創るNPOまもるをまもるを法人化。
医療界と産業界の共創を実現するプラットフォーム「evaGraphy」を開発(12月14日にローンチ)。CancerX、臨床工学技士100人カイギ発起人など医療者の「出島」を造っている。
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西垣 孝行さん 皆さん、こんにちは。(特定非営利活動法人)まもるをまもるの西垣です。
皆さんは「臨床工学技士」をご存知でしょうか?
▶臨床工学技士とは | 臨床工学技士を目指す方へ | 公益社団法人 日本臨床工学技士会 (ja-ces.or.jp)
臨床工学技士は、医療機器の専門家です。
今、新型コロナウイルス重症患者を救うためのECMO(エクモ)というデバイスがありますよね。
▶エクモ(ECMO)とは(一般社団法人 日本体外循環技術医学会)
臨床工学技士は、そのECMOの専門家でもあります。
つい先日、ECMOについて、タレントのSHELLY(シェリー)さんとYouTubeで対談をさせていただきました。
▶【コロナ治療・最後の砦】エクモを操作する臨床工学技士のお仕事とは!?SHELLY&ハリー杉山が専門家にリアルな話を聞いてみた【医療従事者が語るコロナ禍①】(YouTube)
医療現場に蔓延する「死のデザイン」とは?
ECMOは、その種類によっては、電源スイッチに当たるだけで電源が落ちてしまいます。
生命維持管理装置であるにもかかわらず、ただ当たっただけで電源が落ちてしまうというのは問題ですよね。
このようなことを、私たちは「死のデザイン」と呼んでいます。
「命を守ろうとしている人」が、「命を奪った人」に変わってしまうデザインなのです。
実は、こういったことは医療現場において、非常に蔓延しています。
私は17年間、こちらのスライド画像にある「人工心肺装置」にも携わってきました。
私はこの人工心肺装置がとても好きでした。
しかしながら、皆さんにご理解いただくのは難しいかもしれませんが、実はこの写真の中にも数多くの「死のデザイン」が写っています。私たちの職場はまさに死と隣り合わせなのです。
私もこの「死のデザイン」の罠に陥り、もう少しのところで、大切な命を奪いかけたことがあります。
全身が硬直して一歩も動けなくなるほどの、耐え難い思いを経験しました。
このような「死のデザイン」をなくしたいと考えています。なくすことで、守ろうとする人と守られる人の両方を救えると思っています。
そして、大好きな人工心肺装置に携わる仕事を辞めて、「死のデザイン」をなくすことに注力する、そう決断しました。
日常生活にも「死のデザイン」が存在している
「死のデザイン」は、医療現場だけに存在しているわけではありません。
皆さんが日常生活でよく見かけるAED(自動体外式除細動器)にも「死のデザイン」が多くあるのですが、皆さん、おわかりになりますでしょうか?
この議題をワークショップでディスカッションすると、40点ほど挙げられます。
AEDは、皆さんの大切な人の命を皆さん自身で救うための医療機器です。
にもかかわらず、「死のデザイン」で溢れていてよいのでしょうか?
社会の高齢化によって、在宅医療や介護は、すでに始まっています。
皆さん、「死のデザイン」に対する防御は整っていますか?
医療業界から医療を支える産業界へシフト
医療現場における「死のデザイン」に関する多くの情報を集め、それらが産業や日常生活に実装される際には、その情報をもとに改善していかなくてはいけません。
その取り組みを、インダストリアルデザイナーの 大浦イッセイさんと共同代表でNPOを設立して行なうことになりました。
5年前に、大浦さんと1ヵ月で商品化したものが、こちらの「パラシールド(Parashield)」です。
▶パラシールド|トップページ (parashield.jp) – 医療現場の人たちの眼を曝露からまもり、従来のものと比べて装着感を改善し、患者からの視点も考慮したデザインのアイシールド
異なる施設の20人から私が現場の写真を集め、大浦さんが試作するといった作業を2人の間で高速で行なって1ヵ月で商品化しました
こういった取り組みを社会的な仕組みにできないか、というのが我々の仮説検証です。
また、それをビジネスモデルとして仕組みを作るために、経済産業省のイノベーター育成プロジェクト「始動 Next Innovator 2016」において、半年間のアクセラレーションを受け、シリコンバレーにも派遣していただき、どのようにして社会的な仕組みにしていけばよいのか、ということを学びました。
▶イノベーターを育成する「始動 Next Innovator 2020」 (sido.jp)
そして、私は医療業界から足を洗い、産業界の力で医療を支えていく側にシフトしました。
2017年には経済産業省の医療・福祉機器産業室に入省して1年間勤めたあと、「国と産業」という視点を持って、2018年4月から大阪の森ノ宮医療大学 臨床工学科 准教授に着任しました。
▶森ノ宮医療大学 – 想いのすべてを、医療の力に。森ノ宮医療大学 – 想いのすべてを、医療の力に。 (morinomiya-u.ac.jp)
命の課題を可視化するWebプラットフォームを構築
その後、同年11月にNPO「まもるをまもる」を法人化し、その3ヵ月後に中小企業知的財産活動支援事業費補助金を頂いて、命の課題を可視化する「evaGraphy(エヴァグラフィー)」というWebプラットフォームを構築しました。
こちらの仕組みについて、簡単にご説明します。
まず、医療現場で死のデザインを見つけた場合、あるいは違和感を覚えたレベルの場合にも、その対象を写真に撮ってevaGraphy内のクラウドに公開します。
こちらは私が作成している作品集で、このようなものをクラウドに蓄えていきます。
こういった活動ができる人と産業界が、共に高速でプロトタイピングを回す仕組みにしていきたいと思っています。
医療者が具現化した写真は作品として著作権を守る
このように、evaGraphyに写真とコメントを残すアート活動にすると、著作権が発生します。
医療者が産業界に協力してくれた際に発生したお金の一部を、著作権をもとにインセンティブとして還元することができます。
医療者を産業界に巻き込むことができるのです。
そうすることによって、「死のデザイン」が次々と減っていく仕組みを作ろうと考え、今、活動しています。
発案から25時間で必要物資を医療現場に届ける
コロナ禍の前は、1枚の写真からどのようにしてビジネスを生み出すかといったワークショップを多く行なってきました。
でも、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、昨年はそういったワークショップは全く行えなくなりました。
コロナ禍において命を守ってくれている方々を全く救えていない状況となってしまったため、「コロナ対策ニーズソン」というオンラインイベントを1週間で緊急企画し、約100人にお集まりいただきました。
現場で働いている医療者に、現場の状況について匿名でオンラインプレゼンしていただきながら、参加者全員でニーズを掘り下げていき、今すぐ必要なものは何かをアイデアソン(※)して、15チームにその結果を各2分間でYouTubeに公開してもらいました。
▶編集注:アイデアideaとマラソンmarathonを組み合わせた造語で、新しいアイデアを生み出すこと。
そのうちの半分の取り組みを、社会実装していただくことができました。
その一例として「りびんぐラボ大正 医工福連携プロジェクト」をご紹介させてください。
▶【寄附金での支援をお願いします】りびんぐラボ大正の医工福連携プロジェクトが、医療現場に飛散防止製品を作って届けます! | スマートサプライ (smart-supply.org)
大阪府大阪市大正区の地元のものづくり企業10社ほどと、地域基幹病院の大阪府済生会泉尾病院では、連携して活動するという枠組みがもともと決まっていました。
しかし、コロナ禍において、病院の問題を解決するワークショップができずストップしていたのです。
それらの企業が「コロナ対策ニーズソン」に参加してくださり、「もう迷っている場合ではない、とにかく今、必要とされているであろう飛散防止カバーフレームを作って届けよう」と、25時間後に医療現場へそれを届けてくれました。
すると「こういうものが欲しかったのです!」と病院側は大変喜び、「実は、こういうことにも困っています」「あれもこれもなくて困っています」と次々に話が進み、コミュニティや信頼が再構築されて活性化したのです。
産業界から医療へ、歩み寄り共創する社会に
この時、私は確信しました。
医療と産業が共創する社会を作るには、産業界から医療のほうへ歩み寄らないといけないということです。
「Industry Co-Creation」── 私はこの言葉が大好きです。このICCのロゴである旗の真ん中には、“命”を意味するハートマークが、私には見えています。
「Medical & Industry Co-Creation」
医療と産業のコラボレーションは、産業界の皆さんにとっても他人事ではないと思いますので、ぜひ私に協力していただきたいと思っています。
ぜひ手伝ってください。
よろしくお願いいたします。
ご清聴ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/中村 瑠李子
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