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日本磁器の最高峰”鍋島焼”の技法を伝え、文化確立に取り組む「鍋島虎仙窯」(ICC KYOTO 2021)【文字起こし版】

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ICC KYOTO 2021 CRAFTEDカタパルトに登壇いただいた、鍋島虎仙窯 川副 隆彦さんのプレゼンテーション動画【日本磁器の最高峰”鍋島焼”の技法を伝え、文化確立に取り組む「鍋島虎仙窯」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る`。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2022は、2022年2月14日〜2月17日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションは、ICC KYOTO 2021 プラチナ・スポンサーのMakuakeにサポート頂きました。

【速報】見た目はガラスの割れないグラス!シリコーンゴム製ものづくりに挑む「KINJO JAPAN」がCRAFTED CATAPULT優勝!(ICC KYOTO 2021)


【登壇者情報】
2021年9月6〜9日開催
ICC KYOTO 2021
Session 8A
CRAFTEDカタパルト
豊かなライフスタイルの実現に向けて
Supported by Makuake

川副 隆彦
鍋島虎仙窯
番頭 兼 絵師

1981年、鍋島虎仙窯陶主 川副虎隆の長男として生まれる。2000年に佐賀県伊万里敬徳高等学校卒業後、佐賀県立有田窯業大学入学。2002年に、鍋島虎仙窯に入社し、2008年に技能検定一級技能士認定。その後、2014年に伝統工芸士下絵付の認定を受け、2015年に伝統工芸士。上絵付の認定を受け今に至る。


川副 隆彦さん 鍋島虎仙窯の川副 隆彦です。

本日は皆さん、よろしくお願いします。

鍋島焼の産地、佐賀県大川内山

僕たちは佐賀県の大川内山(おおかわちやま)という、三方を山に囲まれた人口157人の小さな里で、鍋島焼の製造販売を行っている窯元です。

本日、僕は3つの目標を掲げて、ここにやってまいりました。

まず1つ目は、「鍋島焼」という僕たちの産地を知ってもらうことです。

2つ目は、僕たちの最大の強みでもある「鍋島青磁」を知ってもらうこと。

そして3つ目は「経験」です。

今回、ここで発表させていただいた「経験」を産地に持って帰って力にすることです。

将軍家や大名のためだけに作られた「鍋島焼」

早速ではございますが、鍋島焼のご紹介をさせていただきます。

「鍋島焼」というのは、江戸時代に有田焼の職人、優れた職人を31人だけを僕たちの産地、大川内山という場所に連れてきて、技術が漏れないように関所を設けて、将軍家や諸大名のためだけに作られていた焼き物です。

伊万里で門外不出だった「鍋島焼」とは。窯元と歩く、お殿様が愛したうつわの里(中川政七商店の読みもの)

位置的には九州、佐賀県の伊万里市というところにあります。

有田焼や波佐見焼(はさみやき)の焼き物の産地から車で約20分のところにございます。

鍋島焼で最も有名とされる「色鍋島」

まず1つ目に、鍋島焼の特徴としまして、「色鍋島」というものがございます。

赤、緑、黄色、染付の、この4色で構成された、鍋島焼の中でも最も有名とされる特徴の一つです。

染付について(GALLERY JAPAN)

青色の濃淡だけで表現された「藍鍋島」

2つ目は「藍鍋島」です。

呉須(ごす)という絵の具を使って、青色の濃淡だけで表現していきます。

翡翠色が美しい「鍋島青磁」

そして3つ目の特徴としまして、翡翠のような美しい色をした「鍋島青磁」というものがございます。

天然の原料となる青磁鉱石が、私たちの産地で採れております。

そしてオープニングでもご紹介いただいたのですが、大変光栄なことに「藍鍋島」という技術を使って、カタパルト優勝者の優勝プレートを私たちで作らせていただきました。

ありがとうございます。

このような鍋島焼は、現代では「日本磁器の最高峰」ともいわれている焼き物なのです。

2016年、経営危機に直面

そんな鍋島焼の産地の現状も、コロナ禍で大きな影響を受けております。

年間平均20万人の来場者で賑わっていたのですが、昨年1年間で6万人と8割も減少してしまい、多くの伝統工芸と同様に衰退してきております。

ちなみにこちらの作品は、僕が作った作品です。

これまで長い期間技術を磨き、良い商品だけを作っていれば大丈夫だと僕は信じてまいりました。

弊社にはビジョンも何もなく、目指すべきものが何一つなかったのです。

2016年には経営危機に陥ります。

さすがに「このままじゃいかん」ということで、経営について必死に学びました。

今思うとこのときに、跡継ぎとしての覚悟ができていったのかもしれません。

「鍋島焼文化の確立」をビジョンに掲げ、再生

そんな中、2017年に、「鍋島焼文化の確立」という、弊社にとって、とても大きなビジョンが誕生したのです。

ビジョンを掲げると社員の意識が変わり、楽しそうに仕事をするようになったとか、会社の進むべき道が明確になったなどがございます。

もちろんその2つの社内での変化ではございましたが、やはり、一番はこれです。

僕の父ちゃん(※川副 虎隆さん)です。

めちゃくちゃ楽しそうに仕事をするようになったのです。

ビジョンがなかった時と比べたら大違いです。

まさにビジョンで親父が変わる。

つい先日、僕の母ちゃんがこう言っていたのです(笑)。

「最近は夜中も朝方もお父さん、楽しそうに仕事ばしよらすよ」と。

これを聞いたときに、「ビジョンで人が変われるのだ」と確信しました。

このように会社の状況は少しずつではございますが、変化してきております。

先人いわく「青磁に手を出すと窯が潰れる」

こんな僕たちの会社の最大の強みでもある青磁のお話を少しだけさせていただきます。

先人たちが「青磁に手を出すと窯が潰れるから、絶対に手を出すな」と言うほど難しい素材だったのです。

だけど僕のじいちゃん(※故 川副 為雄さん)が「青磁をもっともっと多くの人に知ってもらいたい」という強い思いから、十数年の年月をかけて研究開発を重ねてきたおかげで、今の僕たちがあるのです。

ここで青磁の制作動画を少しだけご覧いただきます。

このような大川内山という場所に、鍋島焼にとっては貴重な資源でもある青磁鉱石が採れる山がございます。

ここで江戸時代から現在に至るまで、今もなお青磁の原料が採れております。

動画の中にあるように、青磁の石を数カ月かけて細かくしていき、水と一緒に混ぜ合わせて青磁の釉薬が完成していきます。

次に「釉薬掛け」(動画0:29あたり)という作業に入るのですが、少しでも間違えると青磁の美しい翡翠の色を出すことができません。釉薬の厚みが非常に重要となっています。

そして一つ一つ「窯詰め」を行っていくのですが、商品を適当に窯に積んでいけばいいというわけにはいきません(動画0:48あたり)。

ここでも長年の経験が必要となってまいります。

次に重要なのがやはりこの「窯焚き」(動画1:07あたり)です。

一般的なガス窯では自動制御は主流となっておりますが、青磁を焼く弊社では全て自分たちの経験と感覚だけで窯を焚いていきます。

この技術があるからこそ、美しい翡翠色をした鍋島青磁の商品を作ることが可能となっていくのです。

ICC FUKUOKA 2022で「鍋島焼体験」を開催予定

そして最後になりますが、僕たちは鍋島焼の魅力を実際に体験してもらうために、「ろくろ体験」というものもやっています。

来年(2022年)のICCサミット FUKUOKA 2022では、体験プログラムに鍋島焼体験というものが含まれております。

【CRAFTEDカタパルト登壇決定】ICC FUKUOKA 2022の特別プログラム は、“大名将軍の日用品”鍋島青磁を作る体験! 技術と文化を守るため奔走する「鍋島虎仙窯」を訪問しました

これをきっかけに、僕たちの産地大川内山、鍋島焼という産地にぜひ遊びに来てください。

皆様、どうぞよろしくお願いします。

ご清聴ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美

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