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【CRAFTEDカタパルト登壇決定】ICC FUKUOKA 2022の特別プログラム は、“大名将軍の日用品”鍋島青磁を作る体験! 技術と文化を守るため奔走する「鍋島虎仙窯」を訪問しました

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4月に山口県にある獺祭の工場見学ツアーを行った折、九州まで足を伸ばしたICC一行。早くもICC FUKUOKA 2022の下見として、前回大好評だった陶芸体験ツアーを拡充できないかと、今回訪れたのは佐賀県伊万里市。鍋島焼の里にある、虎仙窯の川副 隆彦さんを訪ねてお話をうかがいました。特別プログラムを予定しているろくろ体験の模様もお伝えします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


前日の獺祭工場見学ツアーの感動も冷めやらぬまま、九州に移動したICC一行。ちょっと気が早いですが、ICC FUKUOKA 2022の最終日のツアー先の新規開拓として、会場から車で移動できる想定で、数箇所の下見を行いました。

その1つが、佐賀県伊万里市大川内山にある鍋島焼の窯元虎仙窯(こせんがま)。メイン会場のヒルトン福岡シーホークから、西へ西へ、佐賀県へ入っていきます。ドライブコースとしては気持ちがいい山の中を走ること約1時間で到着です。

畑を抜けて橋を渡ると、三方を山に囲まれた、そこだけ別世界のような集落があります。4月の訪問時には、鯉のぼりが泳いでいました。

橋を渡ると、普通のアスファルトから別の舗装がされたエリアに入ります。「秘窯の里」とはどういう意味なのでしょうか?

「鍋島虎仙窯」を訪問

今回訪問したのはこちら。「鍋島青磁 虎仙窯」と看板がかかっています。

入ってみると、ずらりと商品が並ぶショールームです。鍋島焼、鍋島青磁って何?と思われる方、これが代表的な鍋島青磁です。

きれいに重なり、釉溜まり(釉薬がたまったところ)の色のグラデーションが美しい湯呑

このつやがあり透明感のあるブルーが「青磁」の特徴的な色です。これは、釉薬(素焼きの後に塗るうわぐすりで、焼くことで表面にガラス層を作る)として使われる鉱物に含まれる酸化第二鉄を高温で焼成することで発色するそうです。

見せていただいた釉薬の原石を砕いたものは、なんと黄色。これを釉薬としてかけて焼くときれいなブルーになります。

秘窯の里 大川内山の歴史(伊万里)

ICC一行を迎えてくださったのは、虎仙窯の川副隆彦さん。いただいた名刺を見ると「番頭 兼 絵師」とあります。

鍋島焼には3種類あり、最初にご紹介した鍋島青磁のほかに色鍋島・鍋島染付があり、川副さんは藍色の下絵に赤・黄色・緑のみで彩色をする色鍋島の絵師なのです。

左が藍色で描いた下絵、右が彩色した完成品

鍋島焼とは何か?独自の特色や技法、有田焼との違いを解説します(Factory Express Japan)

ショールームの奥には、ろくろ体験のできる工房があり、そこでICC一行も体験させていただきました。

3人が並んで同時に体験できます

まずは壁にある「轆轤(ろくろ)の心得」を読んで、川副さんのお手本を見て……

「誰が書いたか知らないけれども、生まれたころから貼ってありました(笑)」と川副さん

早速体験開始です。ろくろ体験は2度目ともあって、ICC一行はスムーズにスタート、今回は大きめの器にチャレンジしました。

スポンジを当てると、形が均等に整います。うまくいかないときは、川副さんが助けてくれます

最後に糸を使って高台部分から切り離します

第1作目完成!

これを素焼きすると白くなり、釉薬をかけて焼くと、右のようにさらに焼き締まって小さくなります。左側の瓶が釉薬を一部かけたところの見本ですが、薬をかけるというより、もう1層粘土を重ねているようなイメージです。

青磁は長く使うとガラス層に「貫入」というヒビのような模様が入って経編変化も楽しめます

今回作ったものは近々オフィスに届く予定。手前のような美しい青磁色にできあがっているのかどうか、楽しみです。

ろくろ体験から1カ月少したったころ、虎仙窯からオフィスに鍋島青磁が届きました。

出来上がりに一同大満足! 青磁の釉薬がとてもきれいです

鍋島焼の文化や技術を絶やしたくない

体験が終わったあとは、川副さんにお話をうかがいました。川副さんの曽祖父の代から、この産地で窯元として鍋島焼に携わってきたそうです。

川副さん「『関所跡』とあるのを、ご覧になりましたか? あれは昔、鍋島藩(佐賀藩)が、鍋島焼の職人をここに集めた名残りです。鍋島焼は、藩主専属で、大名のためだけに磁器を作り、その技術が外に出ないようにしたのです」

この一帯に大名専属の選りすぐりの陶工を囲い、高級磁器とよばれる見事な絵付きの色鍋島や、白地に青の絵が美しい鍋島染付、そして鍋島青磁を作っていたということです。だから「秘窯(ひよう)の里」とあったわけです。

青磁は中国の殷の時代が起源の技術とされています。その釉薬となる鉱石が取れる山の周辺を川副さんの祖父が所有しています。

この鉱石を砕いて釉薬に使います

川副さん「昭和60年代から平成元年くらいまでは、この一帯にもタクシーがたくさん来て、エンドユーザーさんが買ってくださったり、直販でもよく売れて、卸でどの窯元も潤っていたのですが、祖父の代で卸をすべてやめるという決断をして、自分たちのお客さん、ファンを開拓するということをしてきました」

先見の明があるお祖父様が、素材を押さえ、ブランディングを当時から行っていたものの、高価な器が飛ぶように売れる時代は変わり、地理的にも人里離れたこの土地で、川副さんは技術と文化が途絶える危機感を感じています。

川副さん「現在、窯元は30ほどあり、組合の統括は60〜70代で、同世代の30〜40代は、10人ぐらい。ほとんどが職人さんたちで、ブランドを作ろうという人は少ないし、そもそもブランドや経営ノウハウというより、作品や商品作りをしている人たちです。

文化も衰退する一方で、空き家も出てきていて、外国の方が入ってカフェを立ち上げたりはしていますが、個人で戦うには難しくなっています。

とはいえ、組合で新しい取組などを行うとなると時間や労力が、かかりすぎるでまずはうちの会社で、『鍋島藩窯百撰』というサイトを作って産地全体の発信をしていこうとしています」

https://nabeshimahanyo-hyakusen.jp/

この『鍋島藩窯百撰』のサイトをご覧いただくと、鍋島焼の歴史や文化、技法などを知ることができます。写真も素晴らしく、鍋島青磁の鉱石が取れる山の写真なども紹介されています。

川副さん「私たちが百年先に残していくもの、伝えていくべきことを文章や写真、動画のコンテンツで紹介しています。文化を継続できて、未来に伝えてつなぐということをしたいと思っています」

「本当ならば会社を作ってやりたい」と言いつつも、少しでも早く発信せずにはいられなかった川副さんの鍋島焼への想い、焦燥感は、ICCサミットに登壇される多くのモノづくり産業に関わる方々に通じるものがありました。CRAFTEDラウンドテーブルCo-Creation Nightでは、話が盛り上がるに違いありません。

昔は大名将軍だけが使うことを許された鍋島焼は、現在、普段使いできるお値段で手に入ります。最初のほうにご紹介したスタッキングできる湯呑を買って帰ったICC小林も、毎日使ってお気に入りだとか。日常生活に美しいものを使うのは、豊かな気持ちになりますよね。

加えて窯元が立ち並ぶ、時の止まったような街並みは、まさに隠れ里という美しさ。この文化が途絶えてしまうのは惜しいと、初訪問ながら強く思わずにはいられませんでした。

窯の煙突がそこここに見える焼き物の里

「秘窯の里」の入り口、伊万里川にかかる鍋島藩窯橋の欄干に据えられている壺は、川副さんの祖父、川副為雄さんによるもの

次回ICC KYOTO 2021のCRAFTEDカタパルトに川副さんは登壇して、その熱い想いを語っていただく予定です。ちょっと気が早いですが、ICC FUKUOKA 2022では、虎仙窯を訪問し、ろくろでオリジナル鍋島青磁を作っていただく特別プログラムもご用意していますので、ぜひお楽しみに。以上、秘窯の里から浅郷がお送りしました!

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/北原 透子/戸田 秀成

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