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自然界に流出するごみの調査・回収・アップサイクルする仕組みで、環境問題に取り組む「ピリカ」(ICC KTOTO2022)

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ICC KYOTO 2022「ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 -」に登壇いただき、2位に入賞した、ピリカ 小嶌 不二夫さんのプレゼンテーション動画【自然界に流出するごみの調査・回収・アップサイクルする仕組みで、環境問題に取り組む「ピリカ」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2023は、2023年2月13日〜2月16日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

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【登壇者情報】
2022年9月5〜8日開催
ICC KYOTO 2022
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

小嶌 不二夫
株式会社ピリカ
代表取締役

富山生まれ、神戸育ち。大阪府大(機械工学)卒。京大院(エネルギー科学)を半年で休学し、世界を放浪。道中に訪れた全ての国で大きな問題となりつつあった「ごみの自然界流出問題」の解決を目指し、2011年に株式会社ピリカを創業。ピリカはアイヌ語で「美しい」を意味する。世界中から2億個のごみを回収したごみ拾い促進プラットフォーム「ピリカ」、画像解析による広範囲のポイ捨て状況調査サービス「タカノメ」や、マイクロプラスチック調査サービス「アルバトロス」等の新規製品を生み出し、全てを事業化。ごみの自然界流出問題の根本解決に取り組む。2021年に環境スタートアップ大臣賞を受賞、2022年にMIT Technology Review Innovators Under 35 Japanに選出。


小嶌 不二夫さん おはようございます、ピリカです。

僕たちは、ごみの自然界流出という問題に取り組んでいるスタートアップです。

10年前、僕は大学院を休学して世界を旅していました。

その途中に、この問題が世界中にあることを知り、是非解決したいと思って、帰国して研究を始めたのが創業のきっかけです。

京大発、ごみの自然界流出課題に取り組むベンチャー

ピリカは、実は、ICCサミットの会場の近くにある、京都大学の研究室から始まった会社です。

休学中は、学費は払わなくて良いのですが、電気代と研究設備はしっかり使っていたので、半年ほどして見つかって怒られ、大学院を中退して東京に引っ越し、創業したのがピリカです。

それから10年以上、色々なサービスや事業を通じて、この問題の解決に取り組んできました。

たかがごみではないか、と言われますが、すごく広い範囲に影響があります。

生態系、産業、人体への影響も懸念されています。

令和元年度海洋ごみ調査の結果について(環境庁)

広範囲に流出するマイクロプラスチック

特に、直径5mm以下のマイクロプラスチックと呼ばれる、小さなプラスチックの粒がありますが、最近では人間の血液からも見つかっており、東京湾でイワシを獲るとその8割に含まれているので、皆さんも食べたことがあると思います。

気づいて! 海の緊急事態(WWF)

プラスチックごみのなにが問題なの?(国民生活センター)

【専門家の解説】マイクロプラスチック汚染、海や環境、健康影響についてわかってきたこととは?(グリーンピース)

これを何とかしていかなければいけないのですが、対策を取ろうにも、もともとどんな製品だったのか、どこから漏れ出しているのかが、実は分からないのです。

ですから、対策の取りようがないという問題があるのです。

なぜかというと、まず、調査手法に問題があったのです。

今までの調査は、船で網を引いて、網の中に入ったプラスチックを調べるという、漁業みたいな調査でした。

でも、船を使おうとすると、非常に価格が高いのです。

また、船が入れないような水路や浅い川があります。

流出源をたどるには、それらも調査をする必要がありますが、そもそも調査ができないという状態でした。

国連も採用する世界最大級の調査方法を開発

ですから、安くて、どこでも使える調査方法を作りたいと思いました。

金型など1から作るととんでもないコストになってしまうので、Amazonや楽天で既製品を買って、3Dプリンタで接合部分のみ作り、コストをかけずに調査装置を作りました。

この装置であれば、橋や川岸からロープで吊り下げて、3分ほどで調査は完結するようになりまして、これですごいイノベーションが起こったのです。

というのも、紐でつり下げて、3分間で水の中のものを取るという行為は、法的には、ほぼ釣りと同じです。

ですから調査実施のための許認可がほとんど要らなくなり、色々なところで簡単に調査ができるようになりました。

この装置は今、国連でも採用されておりまして、世界最大級のマイクロプラスチックの調査手法になっています。

国連にも採択されたプラスチックごみ調査。環境スタートアップ10年目の「諦めない」秘訣|ピリカ|Road to Success Onlab grads vol.10(Open Network Lab)

直近では、東南アジアのメコン川の調査で、3,000万円ほどのプロジェクトを受注しました。

流出マイクロプラスチックの20%以上は人工芝の破片

ここから先は、気合いです。

マイクロプラスチックの元の製品を推定する手法は作りましたが、1つ1つのサンプルをピンセットでつまみ出して、分析装置に乗せることが必要です。

当時は、友人や妻を大量動員し、気合いで行っていました。

そうすると、すごい事実が浮かび上がりました。

実は、日本の川や海に浮かんでいるマイクロプラスチックの20%以上が、人工芝の破片であるということが分かってきました。

皆さん、人工芝は、サッカーのグラウンドや玄関マットなどで見たことがあると思います。

逆に言うと、人工芝を何とかするだけで、問題の20%を何とかできるということです。

すごく効率が良いのです。

ですから、4年前これを発表し、ほとんど全てのテレビや新聞に取り上げて頂きましたので、ニュースを見た方もいらっしゃるかもしれません。

調査した施設の75%から流出を確認…解決策は?

しかし、それでも何も起きなかったのです。

自治体や施設関係者に聞くと、「流出はない」と断言されまして、「では、一緒に見に行きましょう」と言うと、「調査はしたくありません」と言うのです。

なぜなら、問題が見つかった時に責任が取れないし、「怒られる調査を、わざわざお金を出してする馬鹿がどこにいますか」という話になったのです。

これは、なかなか難しい状況だと思い、勝手に調査をすることにしました。

Googleアースで、航空写真から人工芝を使っていそうな施設1,000カ所以上を見つけ、抜き打ちで、100カ所以上を訪問しました。

すると、とんでもない量の人工芝が流出していることが分かりました。

調査した施設の75%以上から流出が発見されて、ひどいところでは、写真にあるように山盛りになっているのが全て、ちぎれた人工芝なのです。

この問題を報告したのですが、やはり何も起きなかったのです。

ある担当者からは、「問題があることは分かったけれど、解決策まで見えていなければ、発表したところで怒られてしまう」と言われました。

人工芝メーカーと解決策を開発

それを聞いて、そうかと思いました。

研究していくと、人工芝がちぎれて、フェンスや水路を通じて流出していくことが分かりました。

ですから、人工芝メーカーと一緒に解決策を作りました。

フェンスに取り付けられるバリアや、水路に取り付けるフィルターを作りました。

実は、メーカーサイドもこの問題は自覚していて、「経営陣は黙っていろと言うけれど、現場が解決したいと思っている」というような状況でした。

つまり、協力者がいることが分かってきたのです。

回収した人工芝の処理費を解決、自治体も喜ぶ事業に

しかし、今度は施設管理者が導入に抵抗しました。

人工芝を回収してしまうと、余分なごみとなって捨てなければいけないので、処理費が生まれてしまうのです。

雨風によって流れていくなら、費用はかからないのにと言われました。

だったら買います!と思い、回収された人工芝を有償で買い取る技術と仕組みを作りました。

人工芝のペレットを作って製品に混ぜ込むことで、「この製品を買うと、海を守れる」という製品を作ったのです。

このプロセスを地域で完結させて、各地元の業者にお願いすることで、地域産業の活性化にも貢献するようになったので、市長や議員がすごく喜んでいただける事業になりました。

担当者の上司が、取り組みたいと思うような事業になったのです。

最後に駄目押しで、自治体や施設向けに、相談窓口を作ってできない理由や不安を全てつぶすことで、ようやく問題解決のめどが立ったという状態です。

環境の問題解決をする製品で、ぜひ協働を

ここまで行って、ようやく20%の流出削減のためのスタートラインに立ったということなのですが、こんな事業をたくさん創っており、いつの間にかフルタイム20人、パートタイム30人の、50人規模になった会社が、我々ピリカです。

こういった問題解決は超楽しいので、ぜひ皆さん一緒にやりませんか?と、強く訴えたいと思っています。

例えば、人工芝や海ごみのペレットを使った製品などを、皆さんと一緒に作れるといいなと思っています。

皆さんが当たり前に作っている製品を、買ったり使ったりするだけで、実は川や海がどんどんきれいになっていくような製品にすることもできます。

色々な解決策があり、協働ができると思いますので、ぜひよろしくお願いします。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成/大塚 幸

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