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衛星データの活用で、農家の所得向上と脱炭素社会に貢献する「サグリ」(ICC FUKUOKA 2023)

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ICC FUKUOKA 2023 ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 -に登壇いただいた、坪井 俊輔さんのプレゼンテーション動画【衛星データの活用で、農家の所得向上と脱炭素社会に貢献する「サグリ」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

【速報】まちなか留学で子どもたちの世界を広げる「HelloWorld」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2023)


【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

坪井 俊輔
サグリ株式会社
代表取締役CEO
HP | STARTUP DB

横浜国立大学理工学部機械工学・材料系学科を卒業。2016年に民間初宇宙教育ベンチャー株式会社うちゅうを創業、同社代表取締役CEOを務める。農業現場のアナログな状況を知り、衛星データ及びAI技術を活用した営農指導により、農業の経営発展を目指すことを目的に2018年サグリ株式会社を創業、代表取締役CEOに就任。2019年、インドに子会社Sagri Bengaluru Private Limitedを設立。同年、世界経済フォーラムのグローバルシェイパーズに選出。2021年6月、リアルテックファンドなどから総額1.55億円の資金調達を実施。MIT テクノロジーレビュー 未来を創る35歳未満のイノベーターの1人に選出。Forbes 30 under 30 ソーシャルインパクト部門受賞。農林水産省 「デジタル地図を用いた農地情報の管理に関する検討会」 委員。情報経営イノベーション専門職大学 客員教授。ソフトバンクアカデミア13期生。


地球環境の変化で思うようにいかない農業生産

坪井 サグリの坪井です。よろしくお願いいたします。

近年、世界人口の増加や、ロシアとウクライナの紛争をはじめとする様々な要因によって、地球自体が食糧危機を迎えています。

気候変動といった地球環境の変化によって、農業生産が思うようにいかない、そういった現場も増えてきている状況です。

このような、地球に存在する課題を、サグリは、衛星とAIを通じて解決しようとしています。

本日、私は、この場から、この地球課題に一緒に取り組む仲間が、ひとりでも見つかるとよいなと思っています。

ルワンダで夢を諦める子どもたちに出会いサグリ設立へ

私は、この会社を立ち上げる前、宇宙をテーマにした、子どもたちの「実現したい」、そういった夢に寄り添う「うちゅう教室」を運営していました。

あるとき、アフリカのルワンダという国で教育する機会があり、1カ月ほど滞在していました。

そこで、小学校を卒業後、中学校・高校に進学できない、そういった子どもたちに出会いました。

親の手伝いをするのだそうです。

その親御さんたちの多くは、農家でした。

その農業現場へ、一緒に連れて行っていただいたのですが、極めてアナログな状況が続いており、朝から晩まで1日中頑張って働いても、たった数百円の稼ぎにしかならない、そういった事実を、私は知りました。

このような農業の現場で働く方は、世界の人口の約3分の1に当たる26億人いると言われております。

その多くを占めているのが、途上国の農業の現場なのです。

私は、こういった農家のもとに生まれた子どもたちが、夢を諦めずに挑戦できる状況を作りたい、そのためには、途上国の農業現場の所得向上が必要だと思いました。

そうして、自分の中で、それを解決しようという使命感が生まれてから、私はサグリを設立しました。

土壌や生育の状況を衛星画像で“見える化”

農業のことをまったく知らなかった私は、この途上国の農家が抱える現状を把握するところから、仕事を始めました。

現場では、収穫を安定させることが非常に難しい状況が続いていて、肥料や農薬を買えない農家も、まだ大勢います。

また、仮に買うことができたとしても、適切な営農指導を受けられていない農家が多いため、農地の状態も、まったくわかっていない人が多いのです。

そして、近年の様々な価格高騰によって、農業資材も値上がりしていますが、与信がなくお金を借りることができない、こういった課題が、多くの農家の現場にはありました。

そういった課題を、サグリは解決していくことができるのです。

我々は、土の情報化に着目し、それを宇宙から地球を観測する衛星データによって、農地一つひとつを解析しています。

気象データを掛け合わせることによって、農薬や飼料の適切な使い方を農家に提示することができるため、農家の経費削減に貢献しています。

現在は、多くの農家が利用できるよう、サービス領域をグローバルに広げていっている段階です。

サグリが提供する営農アプリ「Sagri」、こちらは、土壌や生育の状況を、衛星画像で“見える化”することができるサービスです。

衛星画像から農地の現況区画を自動作成

世界には農地が多数ありますけれども、農地の区画が整っていない地域も、まだ多くあります。

農家による農地の登録が進まないことには、我々が衛星データでどれほど解析をしても、その情報を農家に届けることができません。

では、どのようにしたら農家が、農地を簡単に登録できるようになるだろうかと考えた末に、高解像度衛星画像から、農地の現況区画を作るという結論に至りました。

そうして、グローバルに農地を自動で区切ることができる技術を開発しました。

こちらは、国内ではもちろんのこと、グローバルで特許取得を始めています。

この技術により、農家は、ワンタッチで農地を登録することができるようになりました。

登録した農地について、我々にリクエストが来るようになっており、それを受けて、衛星画像から解析した情報を農家に届けています。

文字が読めない農家の方も大勢いらっしゃいますので、その状況を色の濃淡でわかるようにすることで、農家が理解でき、また、「撒く肥料の量を最適にしよう」といった営農指導を、農家に届けることができるようになっています。

サグリは、こういった農家に対してだけでなく、農家を支援する、農協のような組織に対しても、これらのサービスを提供しています。

これによって、グローバルで農家へ営農情報を届けることが可能となりました。

金融機関と連携しマイクロファイナンスを促進

また、お金を借りたくても借りられない農家が大勢いらっしゃっるため、サグリは、この衛星データから農地の状況を“見える化”し、それを与信に変えて、銀行など金融機関に提供しています。

そうすることで、マイクロファイナンス(※)の促進に繋げています。

▶編集注:貧困層や低所得者を対象に、貧困緩和を目的として行われる小規模金融のこと。

世界中のどのような農家も、スマホがあれば、今の農地情報が簡単に手に入り、また、農家を支援する組織も農家の管理が容易になるとともに、データを通じた営農指導を届けることによって、農家の状況を変えることができています。

肥料削減による脱炭素が農家の新たな収入源に

さらには、サグリの技術は、脱炭素社会を実現する技術としても、非常に評価していただいております。

例えば、ひとつの事例を挙げますと、サグリが提供する、この衛星データによる土壌分析を通じて農家が肥料を削減すると、温室効果ガスが削減され、脱炭素に貢献できるのです。

また、こちらの肥料の代わりに堆肥を入れると、炭素の貯蓄に繋がるのです。

この削減された温室効果ガスについて、サグリが、衛星データをエビデンスとしてカーボンクレジット(※)を申請します。

▶編集注:企業が森林の保護や植林、省エネルギー機器導入などを行うことで生まれたCO2などの温室効果ガスの削減効果(削減量、吸収量)を、クレジット(排出権)として発行し、ほかの企業などとの間で取引できるようにする仕組み。

海外に申請して承認されたカーボンクレジットは、企業に買っていただくことができます。

これが、農家にとっての新たな収入に繋がるのです。

この仕組みによって、例えば、インドでは、収入が初年度から5~10%の向上に繋がります。

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また、農業資材の大手企業、ローレンスデール・アグロ・プロセッシング・インディア社(Leaf社)とも連携をしておりまして、この脱炭素の取り組みも、グローバルで開始しています。

▶参考:ニュースリリース (2013-09-10):インドVijai社と変圧器及び開閉装置事業の買収で合意 | ニュース | 東芝 (global.toshiba)

温室効果ガスの削減量を、定量的に評価できるとご好評をいただいております。

そして、やはり、何よりも、現地の農家が喜んでくださっている状況が見えるようになってきたこと、これが私にとって非常に強みとなっています。

子どもたちの未来に負の遺産を残したくない

サグリは、こういった衛星データとAIを通じて、途上国の農家が所得向上できるように、世界の農業を支援していく、また、脱炭素社会へ貢献をしていくことで、変わらぬ地球環境を次世代に残していきたいと思っております。

それによって、子どもたちが描く夢や自分のやりたいことに何度でも挑戦できる、そういった当たり前の環境を作っていきたいと、私は人生の中で心に決めて、今、活動しています。

ちょうど1年ほど前に、娘が生まれました。

子どもたちの未来に、我々の世代からの負の遺産を、これ以上残したくないという気持ちが、娘と一緒に過ごす中で、より一層強くなっています。

私は、この場を通じて、もし、皆様が生まれながらにして機会に恵まれない、そういった状況にあった場合を想像してみてほしいと思っています。

次の未来を担う子どもたちが生きる地球環境や、そういった状況に、少しでも関心を持っていただけたら嬉しく思います。

もし、何か一緒にできることがあるのではないかと思ってくださった方がいらっしゃいましたら、ぜひ、このあと、お話ししたいと思っております。

ご清聴いただきまして、ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/星野 由香里/正能 由佳/中村 瑠李子/戸田 秀成

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