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4. AIを作ることは「人間とは何か」という大きな問いを解決しようとすること

ICC KYOTO 2024のセッション「AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン7)」、全11回の④は、哲学をバックグラウンドに持つPoetics 山崎 はずむさんが、事業を紹介。Poeticsの商談解析AI 「JamRoll」の目的は、営業のBlack Box化問題を解くことと、取得した大量の自然な対話データから日本語特化音声認識APIを開発することにあるといいます。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2025は、2025年2月17日〜 2月20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは Notion です。


【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 11C
AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン7)
Supported by Notion

(スピーカー)

青木 俊介
チューリング株式会社
取締役 共同創業者

柴田 尚樹
NSV Wolf Capital
Partner

砂金 信一郎
Gen-AX株式会社
代表取締役社長 CEO

山崎 はずむ
株式会社Poetics
代表取締役

(リングサイド席)

上地 練
株式会社Solafune
代表取締役CEO

小田島 春樹
有限会社ゑびや / 株式会社EBILAB
代表取締役社長

柴戸 純也
株式会社リンクアンドモチベーション
執行役員

武藤 悠輔
株式会社 ALGO ARTIS
取締役 VPoE

(モデレーター)

尾原 和啓
IT批評家

「AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン7)」の配信済み記事一覧


「哲学」がバックグラウンド。商談解析SaaSのPoetics 山崎さん

山崎 ニコラ・テスラ(1856〜1943)、アラン・チューリング(1912〜1954)ときて、2,000年以上巻き戻して、アリストテレス(前384〜前322)です。


山崎 はずむ
株式会社Poetics
代表取締役

音声解析AIおよび商談解析AI JamRollを提供するPoeticsの代表取締役。バックグラウンドは人文科学研究(文学、哲学)。ヨーロッパ最大級のテックカンファレンスICT Springで優勝するなどこれまで海外のピッチコンテストで6度優勝。東京大学総合文化研究科博士課程満期退学。ニューヨーク大学大学院特別研究員。ソフトバンクアカデミア第15期生。

「Poetics」という社名はアリストテレスの『詩学』という、言葉、音声、感情を扱う本にちなんでいて、その3つの領域の人工知能を作っています。

ちなみにアラン・チューリングは本当にすごい人で、1950年に “Computing Machinery and Intelligence” という論文を書いていますが、その最後に、大量に資金をつぎ込めば人間と普通に会話ができる人工知能は、子どもと教育をなぞってやればできると言っていて、LLMについてもすでに74年前に予言しているようなところがあります。

我々もアラン・チューリングの論文等々を読みながら、音声、言語、感情領域の人工知能を作っています。

尾原 そうですね、この辺りはSFの『ディファレンス・エンジン』という素晴らしい物語があるので、ぜひ見てください。

山崎 そんな偉そうなことを言いながら自分は文系なので、技術屋ではないというバックグラウンドを持っています。

少し変わっているのは、哲学をバックグラウンドに持っているところです。

言語と音声領域の人工知能を作っていますが、どうやって人間における共感形成のようなものを、コンピュータサイエンス以外の領域と組み合わせて作っていくかというところに非常に興味関心を持ってリサーチしています。

世界からデータを集め、集まったデータをもとにAIモデルを作っています。

目下取り組んでいるのは、JamRoll (ジャムロール)という商談解析のSaaSを提供し、そのSaaSから世界のデータを獲得していき、獲得したデータをもとに日本語に特化した音声認識を切り出して販売することです。

「人間とは何か、という大きな問い」を解決しに

山崎 AIを作るにあたって、僕たちの立ち位置は大きくいうとどこなのか説明します。

アナロジーを使えば、人間の身体が半導体、経験がデータ、脳がアルゴリズムになっています。

あえて言えば、食べ物は電力で、身体の拡張がデータセンターだと言えますが、これは総じて、人間のアナロジーというところで成立している世界です。

つまりAIを作ることは、「人間とは何か、という大きな問い」を解決しにいく壮大な物語だと思って僕らはやっています。

その中で半導体は、例えば、ArmがCPUを扱っていたり、エヌビディアがGPUを作っていたりという中で、なかなか僕らの手には負えないので、データとアルゴリズムにフォーカスしています。

では何をやっているのかというと、人間の知性とは何かをデザインする取り組みをしている状況です。

感染症流行で音声のデジタル化が進んだ

山崎 その中でも特にどのようなデータ、子どもにどういう教育を受けさせるかも然りだし、どのような世界を味わっていくかも然りですが、AIも全く同じで、どう良質な経験のデザインをしていくかは非常に大事なポイントです。

これまで特にインターネット空間上のデータを使ってAIを作っていましたが、ここを拡張するために先ほどの世界モデルがあります。

僕らの取り組んでいるコミュニケーションでは、実は現実空間の対話のデータみたいなものはインターネット上に落ちていません。

どうやってこれを収集するかが、コミュニケーションAIを作る上で、勝負を決める大事なところでした。

一つブレイクスルーが起きたのは、感染症がたまたま流行したことによって、従来物理空間に閉じ込められていた音声コミュニケーションがデジタル化されたことです。

これは僕らのようなプレイヤーにとって大きくて、歴史上初めて人間が自然に会話しているデータを教師データにすることができるようになりました。

商談解析で営業のBlack Box化問題を解く

山崎 そんな転機をもとに僕らが作ってきたのが、JamRollです。

オンラインと最近ではオフラインも含め、あとは電話という人間のコミュニケーションの中でもいったん営業というビジネス領域のコミュニケーションに絞り、そこでデータを獲得しながら、AIを回していくような電話商談解析のSaaSを作ってきました。

データをくださいと言ってもしょうがないので、実際の業務のワークフローに入り込んでいくような形でまずプロダクトを設計していったため、個別の具体的な課題をまず解きにいっています。

それは営業のBlack Box化問題というようなものです。

成約、失注といった結果はわかるけれども、因果関係は基本的には見えない状態になっています。

そうなるとなかなか改善策は出せません。

営業ノウハウの属人化、教育コストの課題を解決

山崎 一方、従来この因果関係は、例えばセールスフォースのようないわゆるSFA、営業管理ツールに入力していましたが、人によって記述のブレが出ますし、そもそも面倒だから書かないようなことが起きています。

そうするとノウハウが属人化するので、商談を自動解析して、まずBlack Boxを外してあげ、その後の入力作業も自動化するという、ワークフローの中に組み込めるようなプロダクトをSaaSとして提供し、そこからデータ収集をしています。

(続)

編集チーム:小林 雅/原口 史帆/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美

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