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9. 最先端のコールセンターを自律AIで構築する試み

ICC KYOTO 2024のセッション「AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン7)」、全11回の⑨は、ソフトバンクの100%子会社であり、企業のAI-Transformationを推進する「Gen-AX」代表の砂金 信一郎さんが登場。様々な問い合わせに対応するソフトバンクのコールセンター自動化に向けた実証実験を語ります。孫 正義さんのエピソードも必読です。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2025は、2025年2月17日〜 2月20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは Notion です。


【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 11C
AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン7)
Supported by Notion

(スピーカー)

青木 俊介
チューリング株式会社
取締役 共同創業者

柴田 尚樹
NSV Wolf Capital
Partner

砂金 信一郎
Gen-AX株式会社
代表取締役社長 CEO

山崎 はずむ
株式会社Poetics
代表取締役

(リングサイド席)

上地 練
株式会社Solafune
代表取締役CEO

小田島 春樹
有限会社ゑびや / 株式会社EBILAB
代表取締役社長

柴戸 純也
株式会社リンクアンドモチベーション
執行役員

武藤 悠輔
株式会社 ALGO ARTIS
取締役 VPoE

(モデレーター)

尾原 和啓
IT批評家

「AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン7)」の配信済み記事一覧


⽣成AI技術によってAI-Transformationを支援、Gen-AX 砂金さん

尾原 (前パートで)柴田さんがフレームワークしたことを、まさに砂金さんが企業向けに実践しているので、砂金さんに先にプレゼンしていただいて、全体でディスカッションしたほうが盛り上がると思うので、砂金さんのプレゼンからお願いします。

砂金 何の打ち合わせもしていませんでしたが、柴田さんの後で非常に良かったです。

手短にお話ししますね。


砂金 信一郎
Gen-AX株式会社
代表取締役社長 CEO

生成AIに特化したB2B SaaSと業務変革コンサルティングを提供するソフトバンクの100%子会社Gen-AXの代表を務める。業務知識や接遇の高度なチューニングが必要な、カスタマーサポートや照会応答業務の効率化・自動化を、自律エージェントやLLM Opsなどの技術で実現する。 東京工業大学卒業後、日本オラクル、ローランド・ベルガー、マイクロソフトでのテクニカルエバンジェリスト、LINE(現LINEヤフー)でのプラットフォーム推進やAIカンパニーCEOを経て現職。2019年度より政府CIO補佐官、その後発足時よりデジタル庁を兼任し、インダストリアルユニット長を兼任。

「砂金さんはLINEの人」という認識があるかもしれませんが、Gen-AXというソフトバンク株式会社の100%子会社の代表を務めています。

生成AIを用いた企業改革を支援するGen-AXの挑戦(ソフトバンク)

先ほど尾原さんに、読み方を聞かれたのですが、「ジェナックス」という略称にしています。

Generative AIでトランスフォーメーションを実現するというところまでセットで、「ジェナックス」という形です。

尾原 ガイナックスみたいな感じにしたいのかなって。

砂金 それは商標的にいろいろまずいです(笑)。

宮川さん(宮川 潤一:ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO)に私はあまり最近の活動をフィードバックできていなかったのですが、さすが我らが大将で、ソフトバンク株式会社の直近の、8月だったか、決算説明会できちんと答えていました。

尾原 大変わかりやすいです。

砂金 最近KDDIはELYZAと業務資本提携しているし、生成AIでいろいろなことをやっているが、ソフトバンク株式会社はどうなのかみたいな質問がありました。

それに対して、Gen-AXでやっていることを説明しているのですが、赤い文字の「Gen-AXは企業の業務をデジタル化し、それを経た上でAIに学習させるためにアノテーション作業を行う部隊」というのはすごくシンプルにやるべきことを言い当てていて、さすが我らがCEOはわかっています。

尾原 すごいですよね、CEOがこのレベルで理解しているというのは。

Gen-AXの位置づけ

砂金 Gen-AXの位置づけですが、この後私の説明の中で何回かSB Intuitions株式会社の話をするかもしれません。

SB Intuitionsは、ソフトバンク株式会社の100%子会社で、先ほど(Part.3参照)言った、ソフトバンク株式会社のA100のSuperPODを2クラスタ使って、日本語フルスクラッチのLLMを作っています。商用ではない、研究開発用に「Sarashina」というモデルはもう公開しています。

独自の日本語LLMを構築(SB Intuitions)

SB Intuitionsの役割は、生成AIの事業を作ることよりは、いかに性能の高い日本語LLMを開発するかに重点を置いています。

元LINEで一緒にLLMを作っていたメンバーも、SB Intuitions側に参画しています。

一方で、LINEからソフトバンク側に移って仕事をしていると、良いことが1つあります。

ソフトバンク、つまり孫さんの近くにいると、自分の作ったAIが地球上で一番賢いと思っている人たちとの接点が増えるのです。

尾原 おお。

砂金 ですから、柴田さんのnoteの生成AI事例集を私も買って読んでいて、大変ありがたいですが、孫さんの近くにいると色々な話がどんどん来ます。スタートアップで独立してやるのもいいけれども、ソフトバンクの近くにいると、日本という特殊な状況においていろいろな面白い話や情報が得やすいです。

日本語に追加学習、強化学習をしたら、何かニーズがあるのではないかという部分に関しては、我々は連携して事業にしていくようなことをしています。

SoftBank World 2024

砂金 SoftBank World 2024をまた開催しますが(※10月3〜4日に終了)、昨年(2023年)は孫さんが金魚の話をしました。

このままAGI(Artificial General Intelligence、汎用人工知能)が発展すると人間はAIから見た時に金魚みたいな存在になるから、そうならないようにちゃんとAIを使いこなせるように頑張ろうみたいな、事業の話というよりはAIとの向き合い方、スタンスみたいなお話をして、結構YouTubeで再生回数が伸びていたはずなんですね。

AIは「AGI」へと進化し、今後10年で全人類の叡智の10倍を超える。孫正義 特別講演レポート(ソフトバンク)

今年孫さんが何を話すかは全くわかりませんが、推測ではAgentに振って話をするのではないかと思います。

AIは数年で超知性へと進化し、パーソナルメンターに。孫正義 特別講演レポート(ソフトバンク)

直近では医療方面の株式会社SB TEMPUSという合弁会社を設立するなど、業界特化のAgentみたいなものがそろそろ事業、社会実装として出てくるぞみたいな話をするのではないかと。

尾原 そうですよね。昨日ちょうどSakana AIにエヌビディアが出資したりと。

生成AIスタートアップ Sakana AI エヌビディアから出資と発表 2024年9月4日(NHK)

Agentが来ています。

「satto」で仕事をサッと済ませよう

砂金 スライドで、孫さんの並びに私がいるのもいろいろな思いがあるのですが、平岡(拓)さんが私の隣にいます。

まだ25歳の若者ですが、もともとX方面で、生成AI関連でいうとちょっとやんちゃなことをいろいろしていた情報発信量が多い方で、いわゆるDeFi(分散型金融)のようなものを作っていました。

ソフトバンクに来て平岡さんたちが作っているのは、B2C向けの生成AIエージェント「satto(さっと)」です。

仕事はみんなでサッと済ませよう(satto)

つまり、ChatGPTにテキストで問い合わせをするのではなく、自分のちょっとしたタスクを便利にしてくれるような、細かくて小さなAgentをたくさん登録しておいて、それで自分の仕事というか生活を楽にしましょうというプロダクトです。

こういったことがソフトバンク内や周辺でいろいろ起こっているので、ウォッチしておいていただければと思います。

尾原 レゴのような感覚で、AIの小さいパーツを作ってつなげると、自分の仕事が全部できるみたいな感じですね。

砂金 最初に平岡さんたちのプロダクトアイディアを見た時のインターネット老人会の反応は、「これ知ってる、IFTTT(イフト)みたいなのだ」でした(笑)。

それとはまた時代も変わって、使っている技術も違うので、これは本当に事業として成立するのか、世の中に定着するのかでいくと、今回はいけるのではないかと、私も近くで見て思っています。

コールセンター自動化に向けた取り組み

砂金 ここから先は、Gen-AXのプロダクトの話になっていきますが、その前に一例としてソフトバンクのコールセンターの話を先ほどの自律AI(Part.8参照)も含めてお話をしていきます。

まず前提として、現在ソフトバンクは、自社のコールセンター業務の自動化を進めるため、日本マイクロソフトと共同でシステムを開発しています。そのシステムをベースに、Gen-AXが外部企業のニーズにあわせたシステムを開発し、提供します。

いろいろやっていますが、フォーカスが当たっているのはカスタマーサポートです。

いわゆる携帯キャリア、通信ネットワーク、電気など幅広くやっているソフトバンクのコールセンターには、非常に多くのお問い合わせが入ってきます。

FAQを見たり、チャットで解決する方もいますが電話で問い合わせされるお客さまも多くいます。

電話のお問い合わせをオペレーターの方々が対応していますが、これをタスクとして解くために、マイクロソフトと共同開発という形で進めています。

自己紹介を省きましたが、昔私はマイクロソフトでテクニカルエバンジェリストをずっとやっていたので、日本マイクロソフト側のご担当者、元戦友というか仲間の方々も関わっています。

Azure上でOpenAIサービスを使うことは企業の方がよくされていると思いますが、これを使ってカスタマーサポートの課題を自律エージェント手法で解くやり方を取っています。

これは私がLINEにいた時に作っていたプロダクト(LINE AiCall)で、今はLINE WORKS AiCallになっています。

「AI」とついていますが、ルールベースです。

業務シナリオを設定しておくと自動応答で勝手にいろいろ喋ってくれるようなもので、本人確認をしますとか、住所を聞き出しますみたいな定型業務では有効です。

しかしこれですべての課題を解こうとすると、「3万業務のシナリオを全部書くんですか? 無理です」みたいな話になるので限界がありました。

(続)

編集チーム:小林 雅/原口 史帆/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美

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