【NEW】ICC サミット FUKUOKA 2025 開催情報詳しくはこちら

1. 長野県諏訪市からエリアリノベーションの街づくりを発信する「リビセン」

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ICC KYOTO 2024のセッション「地方創生を実現する新しい「街づくり」とは?(シーズン2)」、全4回の①は、ReBuilding Center JAPAN(リビセン)の東野 唯史さんが登場。東野さんは諏訪で空き家の解体時に出る古材や古道具を販売する店を営みながら、エリアリノベーションという手法で街づくりに取り組んでいます。リビセンの取り組みが学べる2泊3日のスクールも人気だそう。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2025は、2025年2月17日〜 2月20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。


【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 2G
地方創生を実現する新しい「街づくり」とは?(シーズン2)
Sponsored by EVeM

(スピーカー)

東野 唯史
株式会社ReBuilding Center JAPAN
代表取締役

中川 敬文
株式会社イツノマ
代表取締役CEO

松田 文登
株式会社ヘラルボニー
代表取締役Co-CEO

村岡 浩司
株式会社一平ホールディングス
代表取締役社長

(モデレーター)

岩田 真吾
三星グループ
代表

各務 亮
株式会社 電通
クリエイティブ プロジェクト ディレクター

「地方創生を実現する新しい「街づくり」とは?(シーズン2)」の配信済み記事一覧


岩田さん、各務さんのダブルモデレーターで進行

岩田 真吾さん(以下、岩田) このダブルモデレーターのセッションに、これまで来てくださっている方も、今回が初めての方もいらっしゃると思います。


岩田 真吾
三星グループ
代表

1887年創業の素材メーカー「三星グループ」の五代目アトツギ。慶應大学を卒業後、三菱商事、BCGを経て2010年より現職。欧州展開や自社ブランド立ち上げ、ウール再生循環プロジェクトReBirth WOOL、産業観光イベント「ひつじサミット尾州」、アトツギ×スタートアップ共創基地TAKIBI & Co. (タキビコ)等を進める。  2019年ジャパン・テキスタイル・コンテスト経済産業大臣賞(グランプリ)、2022年Forbes JAPAN起業家ランキング特別賞を受賞。  個人として株式会社AB&Company(東証GRT9251)社外取締役、認定NPO法人Homedoor理事、神山まるごと高専起業家講師、フィンランド政府公認サウナ・アンバサダー等も務める。

基本的に、各務さんがテーマ設定や時間管理など全てしてくださるので、僕はその船に乗りながら、会場の皆さんの代表になったつもりで、詳しく聞きたいポイントやツッコミを入れていく担当です。

登壇チームと会場が一体になった時にしか本当に良いセッションにならないと思っているので、僕は会場の皆さんをできるだけ巻き込む担当として、進めたいと思います。

ということで、各務さん、お願いします。

各務 亮さん(以下、各務) よろしくお願いいたします、各務と申します。


各務 亮
株式会社電通
クリエイティブ プロジェクト ディレクター

中国、シンガポール、インドの海外拠点を移り住みながらグローバル企業の海外マーケティングを担当。 2011年 電通京都支社帰任、グロー バル企業海外戦略を担当しながら、伝統工芸の海外発信プロジェクト「GO ON」はじめ各種文化プロジェクトのプロデュース多数。 既存商品のマーケティングやブランディングに留まらず、日本の伝統や文化ベースに、まだ世にない価値を生み出す、事業クリエーション、サービスクリエーションを実践中。 目下は、25年開村を目指し京都太秦に日本文化を体験する新しい村をプロデュース中。 佐治敬三賞、カンヌライオン、D&AD、One Showなど受賞多数。 著書に「すべてのビジネスに、日本らしさを。」(クロスメディアパブリックシング)

12年前に京都にまいりまして、日本文化の発信を中心に京都の街づくりに参加させていただいています。

京都の街も課題山積、全国の街づくりのフロントランナーとしてご活躍の皆様のお話を聞かせていただくのを、とても楽しみにしています。

前回から引き続き、アジェンダは大きく3つです。

まず、自己紹介を兼ねて、街づくりのアイデアを聞かせていただきたいです。

さらに成功事例だけではなく、失敗からも学ばせていただけると嬉しいです。

街づくりに関わる方は、皆さん全国で大変な思いをしていらっしゃると思うので、未来のアクションにつなげるため、どうしたらいいかについて聞かせていただきたいです。

最初は、1人3~5分間で、自己紹介を兼ねてアイデアをご紹介いただき、その後にアジェンダ2と3に進みます。

前半30分、後半30分、最後の15分間はQ&Aという形で進めたいと思います。

岩田さん、そんな感じで大丈夫でしょうか?

岩田 うちの相方、完璧でしょ?

(一同笑)

岩田 ということで、お願いします。

各務 では、東野さんから順番にお願いします。

空き家や古材を活用し街を活性化する「リビセン」

東野 唯史さん(以下、東野) 「空き家と古材で暮らしをする豊かにする、地域資源のリユースカンパニー」ReBuilding Center JAPANを、長野県諏訪市で運営しています。


東野 唯史
株式会社ReBuilding Center JAPAN
代表取締役

1984年生まれ。名古屋市立大学芸術工学部卒。 2014年より空間デザインユニットmedicalaとして妻の華南子と活動開始。全国で数ヶ月ごとに仮暮らしをしながら「いい空間」をつくりつづけてきました。 2016年秋、地域資源のリユースショップReBuilding Center JAPANを長野県諏訪市に設立。ReBuild New Cultureを理念に掲げ、次の世代に繋いでいきたいモノと文化を掬いあげ、再構築し、楽しくたくましく生きていける、これからの景色をデザインしていきます。 2022年に株式会社すわエリアリノベーション社設立し、諏訪の空き家活用を進めています。 2023年には「リビセンみたいなおみせやるぞスクール」の開催をスタート。全国にリビセンみたいなお店が増えて、みんなの地域資源が循環する仕組みづくりのサポートをしています。

よろしくお願いします。

ReBuilding Center JAPANを始めたのは2016年ですが、それまでは仮暮らしで全国を転々としながら、お店を作って引き渡して次の土地に行く、という生活を4年間していました。

諏訪発、空き家や古材の“健やかな循環”があるまちづくりを全国に広げる「ReBuilding Center JAPAN」(ICC KYOTO 2024)

岩田 設計士ということですか?

東野 もともとデザイナーです。

でも、腰袋を巻いて大工の仕事もしますし、左官も解体も何でもやるスタイルでした。

当時はゲストハウスが多かったので、4年間で12のゲストハウスを全国に作りました。

そして2016年にReBuilding Center JAPANを、この5人のメンバーでスタートさせました。

岩田 ReBuilding Center JAPANで、「JAPAN」とついているので、これは海外にもある概念ということでしょうか?

東野 はい。

アメリカ、オレゴン州のポートランドにReBuilding CenterというNPOがありまして、その団体公認で運営しています。

岩田 なるほど。

東野 Tシャツについているロゴも、ポートランドで作ってもらったものです。

松田 文登さん(以下、松田) そんなにちょいちょいツッコミが入って、3分で終わりますか、これ?

(会場笑)

岩田 各務さんが計ってくれていますので(笑)。

松田 そういう感じですね、理解しました(笑)。

東野 お店の写真を、いくつか紹介します。

1,000平米の3階建てのビルをコンバージョンしたものです。

1階は古材売り場です。

空き家から古材をレスキューする活動をしているので、レスキューした木を売っています。

2階は古道具売り場です。

全部で40,000点の商品があり、食器だけでも毎月1,500枚くらい売れて、新しいものが入荷しています。

行っていることをまとめたスライドです。

カフェを経営しながら家財と古道具を販売しつつ、設計の仕事も引き続き行っているので、店舗や家具のデザインに古材を使ったり、自社で、空き家からレスキューした古材を使ったプロダクトを作って販売したりしています。

空き家だった場所に店舗が続々オープン

東野 この取り組みを始めて3年ほど経った時、周りにお店が増え始めました。

エリアリノベーションという考え方に基づいて進めているのですが、地域の空き家を使って店を開いています。

コーヒーロースターや、4K長屋を改修した複合施設、ウッドデッキのある建物です。

諏訪市は歩道もないくらい道が狭く、余剰空間が街にないので、敷地内にスペースを作り、公園のように使ってもらっています。

最近、リビセン(ReBuilding Center JAPAN)で修行した元スタッフが、なぜか麻婆豆腐屋として独立しました(笑)。

デザインは僕がアドバイスしましたが、内装は自分で行っていましたね。

雑貨のあるカフェ、古本屋もあります。

岩田 これらは全て、リビセンがデザイン、施工をしたのでしょうか?

東野 はい。

岩田 オーナーは全て、別々?

東野 個人事業主で、諏訪への移住者ですね。

あ、ここだけは、オーナーが移住者ではないです。

創業108年の老舗パン屋さんで、コロナ禍をきっかけにリニューアルを担当させてもらいました。

岩田 地元の人にも火がついていったのですね。

東野 そうですね。

ここは空き家だった場所を花屋にしたものです。

岩田 これも古材ですか?

東野 タイルは新しく買いましたが、ドアや部屋の木材は古材ですね。

壁に塗っている材料も、土壁を解体した時の土と漆喰を半々で配合した、廃材使用率50%のオリジナル材料です。

ReBuilding Center JAPANのカフェはこんな感じです。

奥に見える土の塊は、ちょっとしたキッズスペースです。

授乳やオムツ替えができて、子どもも遊ばせられるので、家族連れに大人気の古材屋ですね。

ちょうど昨日、わざマート諏訪店がオープンしました。

コンビニ型店舗わざマート2号店開店のお知らせ | 株式会社わざわざのプレスリリース

平田(はる香さん、わざわざ 代表取締役)さんが半年、諏訪に住んでくれています。通うのは大変なので……。

よき生活をつくるために、パンも店も会社も手づくりする「わざわざ」(ICC KYOTO 2022)

松田 住んでいるってすごいですね。

岩田 これもローカルの?

東野 うちの店から、歩いて3分の距離ですね。

エリアリノベーションのスクールも開催

東野 2023年、このような取り組みとエリアリノベーションの考え方を学べるスクールを始めました。

リビセンみたいなおみせやるぞスクール

ビジネスレクチャーだけではなく、オペレーションやチームビルディング、そしてリビセンのマインドについてのレクチャーをしています。

実際に街歩きをして解説をすることもあります。

30人ほど、色々な事業を手掛けている人が集まるので、彼らがどんなことをしようとしているのかプレゼンしてもらい、できるアドバイスもしています。

岩田 これは有料ですか?

東野 1人12万円くらいですが、毎回30人くらい参加してくれています。

2泊3日のスクールだとカバーしきれないので、ローカルリユースコレクティブという月額3,000円のオンラインコミュニティも運営しています。

ここには今、50事業者が参加してくれていて、全国でリビセンのようなお店を開くために奮闘しているので、我々はそのサポートをしています。

岩田 すごいですね。

色々な取り組みをされていますが、何年くらいかけてここまで来たのでしょうか?

東野 9期目なので、丸8年かかったかなという感じです。

岩田 8年でこれだけ街が変わるのは、早いですよね。

松田 岩手にも、リビセンの息のかかった店舗がありますよね。

CAFE & LIVING UCHIDA(カフェと託児所)(ReBuilding Center JAPAN)

東野 あります、あります。

松田 めちゃくちゃ素敵なんですよ。

岩田 諏訪から全国に広がっているのですね。

東野 そうですね。

諏訪の街づくりに取り組んだきっかけ

各務 今の諏訪の街づくりの状況や課題は後でお聞きするとして、エリアリノベーションという手法で諏訪の街づくりをしようと思ったきっかけを、簡単にお聞かせ願えますか?

東野 最初のきっかけは、古材を使った店が全国に増えていけば、古材を使うことのかっこよさが伝わり、使いたい人が増えて、結果的に日本全体の古材レスキュー量が増えればいいと考えたからです。

でも、それだと僕のリソースが全て外に向いてしまい、自分の周りの暮らしが全然楽しくならなかったのです。

例えば、「岩手にあるあの店が諏訪にもあれば、すごく楽しいのに」という思いを持つようになりました。

それで、自分のリソースを諏訪で使うために、近所にたくさんある空き家をうまく活用できないかとアイデアが切り替わったのです。

今、徒歩5分圏内をスモールエリアと定義していますが、良い空き家が見つかっても、そのエリアの外であれば手を出さないようにしています。

歩ける範囲であれば景色を作れるので、そのエリアに絞るよう、気をつけています。

リビセン単独で頑張るよりも、エリアに人を増やすことで、結果的にリビセンの売上も増えていく流れを作れるかなと考えていますね。

エリア内に5年で30軒の店が増える

各務 諏訪という地域全体を考えると、若手の流出、産業創出などの要素があると思いますが、リビセンの取り組みはどう影響するのでしょうか?

東野 リビセンの取り組みは、大きい動きにはそんなに抗えないので…人口は順調に減っているし、空き家は順調に増えています(笑)。

その状況は変わらないのですが、エリア内にお店は増えていて、この5年で30軒も増えたのです。

岩田 そんなに?

東野 はい。

岩田 徒歩5分圏内に?

東野 はい。

松田 すごい、もう商業エリアに変わりつつあるということですか?

東野 はい、でも1軒あたりの規模は小さいので、ナショナルチェーンは全く入ってきません。

松田 なるほど、それが逆に、らしさになっているのですね。

東野 そうそう。

岩田 当たり前ですが、諏訪市全体は、徒歩5分圏内ではなく、もっと大きいですよね?

東野 あまり合併をしてこなかったので、他の市よりは大きくないと思いますね。

人口も47,000人です。

岩田 徒歩6分の人は、「東野さん、何でこっちのエリアまで…」と思わないのでしょうか(笑)?

(一同笑)

東野 あるかもしれないですね(笑)。

岩田 ずるくない?って(笑)。

松田 土地の境界線の話みたいですね(笑)。

東野 僕が本当にしたいのは、空き家を所有している人や不動産屋、エリアが盛り上がってきたから投資しようと空き家を買う人たちが、パブリックマインドを持って、街のために物件を使ったり貸したりできるための知識を増やしていくことです。

今後、その勉強会などを行っていく予定です。

村岡 浩司さん(以下、村岡) それらの店に入居したい人はどうやって見つけるのでしょうか?

東野 スクールにいるのは、諏訪以外でリビセンのような店を開きたい人たちです。

例えば、ボランティアを月に50人ほどサポーターとして受け入れており、関係人口が増えていく仕組みになっています。

それがきっかけでリビセンに就職する人もいれば、諏訪が気に入って引っ越してきて、店を始める人もいます。

あと、諏訪でお店をしたいという相談がリビセンに来て、一緒に空き家を探すこともあります。

岩田 リビセンが既にブランド化されているというか、何かしたい人が相談しに来る場所になっているのですね。

東野 ありがたいことに、そうだと思います。

ただ、僕らが知らないところでも新しいお店がどんどんできているので、相談してくれればもっとかっこよくしたのに…と思うこともあります(笑)。

(一同笑)

松田 街の不動産屋とも連携しているのでしょうか?

結構重要ですよね、街の不動産屋さんと意見が違えば、もはや成り立たなくなると思うので。

どういう街にしていくか、合意しているのでしょうか?

東野 そこは、あまり巻き込みきれていません。

最近も、「近所に空き家があったので不動産屋に相談したところ、200万円くらいかけてリノベーションすれば5万円くらいで貸せるというアドバイスをもらったので、リフォームをしたいと思っている」という相談をもらいました。

それで実際に僕が見に行ったのですが、現状のままDIY賃貸として家賃3万円で貸し出すと、絶対に借り手がつくだろうと思う物件でした。

まだまだそういう発想はないのです。

ちょうどリビセンのスタッフが移住してきたばかりなので、その物件を紹介したら、住みたいということでした(笑)。

各務 このモデルは全国展開が可能な気がするのですが、真似するときのハードルや気をつけるポイントはありますか?

真似してもらうためにスクールを運営しているのだと思いますが。

東野 そうですね。

まず、スクールはエリアリノベーションよりも、古物商のようなリビセンの店舗を展開するにはどうするかの要素が強いです。

配送方法をどうするかも含めて、古材のレスキューの仕方をレクチャーしています。

エリアリノベーションは、空き家が出た時に、その空き家をベースにして家主も借主も僕らも幸せな状況を設計するということです。

僕らは不動産業ではないので、仲介も売買も関わりません。

つまり、不動産を紹介した部分は僕らの売上にはなりませんが、設計と施工で関わる分が売上になります。

また、エリアが盛り上がると人が増えて、結果的にリビセンの売上も上がります。

岩田 総取りというわけではないのが良いですね。

東野 そうですね。

家主が仲介料を節約したいのであれば、当事者同士のDIY賃貸契約を結ぶために、国交相の雛形を使って個人間契約をすることもあります。

間に不動産業者が入ってもらう方が安心ということであれば、地元の不動産業者に声をかけて仲介だけしてもらうこともあります。

各務 興味深くて…盛り上がってしまってすみません。

松田 いやいや、きっかり3分で終わりましたよね(笑)。

(一同笑)

各務 では引き続き、中川さん、よろしくお願いいたします。

(続)

カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください!
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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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