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注目ベンチャー特集「今、フィンテックが熱い」【F17-3E】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!8回シリーズ(その2)は、なぜ今フィンテックと呼ばれる事業領域が盛り上がっているのか、その理由について議論頂きました。業界関係者注目の議論です。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
井上 今、金融の民主化という土台が整い、その動きが加速してきたと思いますが、なぜこのタイミングだったと思いますか?
スマートフォンやクラウドがFinTechを加速させる
柴山 私たちウェルスナビのシステム構成を見ると、スマホとクラウドとAPIとなります。
井上 なるほど。
柴山 まずスマホですが、一昔前のスーパーコンピュータに相当するものを今では誰もが持ち歩いています。
例えば弊社のサービスですと、「資産運用をするとお金が増えるから良いよね」と感じるかもしれませんが、資産運用には当然元本割れのリスクがあります。
最悪のシナリオですと、半年後にリーマンショックが起こるとした場合、資産にどのような影響が起こるかということを全てガラス張りにし、スマホで確認することができような仕組みにしています。
難しい数式が分からなくても、ビジュアルとして自分の資産状況やリスクを把握することができる訳です。
これはスマホなしにはありえなかったと思います。
井上 なるほどユーザーとのインターフェイスとしてスマホが必須だったということですね。
柴山 はい。これがガラケーでは途方にくれる訳です。
東後 そうですよね。
(ICCカンファレンスFUKUOKA2017 カタパルトグランプリ登壇時)
柴山 そしてクラウドですが、このようなサービスを新しく作るには、どれだけ良い意味での「コモディティ」になれるか、どれだけシステムコストを抑えられるかということになります。
弊社が立ち上げた際のシステムは、証券取引システムをAWS(アマゾンウェブサービス)というクラウドに乗せています。
公開としては日本初となります。
初期費用としては、50万円程度で構築したと記憶しています。
もしデータセンターを自分達で設置し、サーバーを立ち上げた場合は、億単位の資金が必要だったかもしれません。
そうすると、サービスとして誰でも利用できるという、ビジネス構造で作ることができません。
APIにおいては、弊社はシステムの殆どを内製化していますが、やはり既存の色々なサービスを組み合わせて利用しています。
例えば、株価のデータですとか、銀行との資金のやり取りについては手作業をするのではなく、基本的にはお金がそのまま流れていく仕組みにしています。
ニューヨークと取引をする時も、一人一人状況を見て「この方はこれを購入し、これを売る」といった判断を行い、それを全員分まとめ、そのデータをAPIでヘッジファンドが使っているようなブローカーに流します。
この三つがあって初めて可能となるビジネスなのですが、これはつい最近までなかったビジネスです。
先程、弊社は証券取引システムをクラウド上に日本で初めて構築したと申し上げましたが、これはFISC(金融情報システムセンター)の安全基準にクラウドが準拠したのは2015年の夏頃になります。
一同 頷く。
柴山 もしこのことが1年遅かったならば、弊社はデータセンターから立ち上げていかなければならなかったかもしれない。
正にこのタイミングだったということを感じます。
契機になるのはユーザー体験の革新
東後 今のお話しの通り、最初の契機になったものはUX(ユーザーエクスペリエンス)革命だと思っています。
ユーザーエクスペリエンスが変わるような、圧倒的サービスが生まれた時、ユーザーのそれまでの行動が変わります。
そして、UX革命はユーザーが元々期待しているエクスペリエンスと現状のギャップを埋めることから起こると思います。
BtoCにおける海外送金を例にすると、ユーザーとしては「ワンクリックでできて欲しい」と思う手続きですが、実際は非常に細かい書類を記入したり、高い手数料がかかったりと大変な作業になります。
でも、その海外送金を簡単に可能とするサービスが生まれると、そのサービスが急激に広がるということが起こります。
弊社の領域でいうと、会計帳簿を付ける業務の多くの部分は単調な作業です。
ずっと同じ作業を続けている感覚なので、ユーザーとしては「テクノロジーが進化した今の時代に、なぜこのような作業をしているのだろう?これぐらい簡単にできて欲しい。」という、もやっとした期待値がある訳です。
個人であればインターネットバンキングで簡単にできるようなことも、法人はできないという状況もあります。
こういった期待値とのギャップを埋めるUXの革命が起こると、急激にユーザーが増えるということが起こっています。
井上 なるほど。
東後 そのUX革命を起こす上で、事業者がイノベーションを起こすことが大事になります。
一方、イノベーションを阻害する要因となるものが二つあると考えています。
一つは周辺環境によるものです。
先程柴山さんがおっしゃったように、周辺環境がある程度整備されたことによって初めてビジネスが成立するというケースもあると思います。
例えば、弊社はクラウドサービスなので、そもそも通信速度が遅い場合や、どこからでもインターネットが使える環境でなければ、このサービスはとても不便なものです。
これは、あらゆるクラウドサービスに当てはまることですし、現在は、良い方向に環境が変わってきていると思います。
もう一つは、自分達から変化を起こさなければならないということがあります。
新しいイノベーションを起こすということは、そのプロダクトは今まで世の中になかったわけで、それが存在することを想定された社会ではないということです。
だからこそ、そのイノベーションを実現するうえで、ロードブロックとなる障壁をいかに壊すことができるか。
イノベーションを起こす主体となっている人達が、率先して行っていかなければならないことだと考えています。
井上 なるほど。
東後 それが全て完了した時、UX革命が現実となり、そのサービスにユーザーが急激に流れ込むということが起こると考えています。
「紙」ベースによる金融の非効率をなくしたい
柴山 今でもそのような阻害要因はありますよね。
例えば、今世の中では確定拠出年金が盛り上がっています。
特に(今年から制度対象となった)公務員の世界では盛り上がっていると思います。
東後 そうですね。
柴山 でもこの制度を利用するには、申し込みをしてから口座開設まで1カ月半程度時間がかかり、その間ずっと書類のやり取りがあるようです。
今、この2017年に1ヶ月もの間書類が行き来している。
「これは何なのだろう?」と感じます。
年金を始めようにも始められない訳ですし、これでは途中で挫折しますよね。
このような分野が金融の領域には沢山残っていると思います。
東後 沢山ありますよね。
井上 それは、先程東後さんがおっしゃったロードブロック、障壁の大きな塊というものは、これまで当たり前とされてきた既存のプロセスのようなものに多くあるということですか?
東後 そうですね。
大きな要因となりうるものは、「紙」によるコミュニケーションや、「紙」を使わなければできないことです。
これはクラウドのサービスを通し、世の中の働き方やビジネスの仕方を変えようとする時必ず障壁となります。
弊社のコンセプトの一つに、「クラウド完結型社会を目指そう」というものがあるのですが、この「完結」ということが大事だと思っています。
99%クラウド化されているけれど残り1%はクラウド化されていない世界と、100%クラウド化された世界とでは、利便性やUXが飛躍的に異なります。
例えば会社設立の手続きにおいて、最終的には紙で提出しなければならないとした場合、その点が不便なので、提出前の作業についても革命は起き難いと思います。
クラウドで全ての作業ができるようになって初めて「これは便利だ」ユーザーも感じるようになると思います。
ラストワンマイルといいますか、最後の1%を乗り越え、少なくともある特定の領域においてはクラウド完結が可能となる社会を実現することがとても大事だと思います。
銀行の法人口座手続きがようやくオンライン化され始めた
井上 内山さんも頷いていらっしゃいますが、融資分野にも同じような非効率のロードブロックがあり、その部分に取り組まれているということでしょうか?
内山 そうですね。
(ICCカンファレンスFUKUOKA2017 スタートアップコンテスト「カタパルト」登壇時)
内山 弊社が資金のやり取りをするには、やはり銀行にあたるという状況がどうしてもあります。
紙の処理を主流としているということもありますが、銀行には莫大な投資を行い作った既存のインフラがあり、このシステムが基盤として存在しています。
そのため、簡単にはシステムを変えられない状況にあります。
例えば、法人の口座振替手続きは45日ほど日数がかかります。
柴山 何ですかそれ?
内山 法人同士で口座振替をする手続きです。
ハンコを捺印した書類を提出するのですが、個人口座はオンライン化されていますが、法人口座はオンライン化されていません。
東後 45日もかかる?
内山 はい。
柴山 例えば、ウェルスナビ株式会社の口座から毎月10万円ずつどこかの会社に振込するという引き落としの手続きですよね?
これに45日かかるということですか?
内山 はい、かかります。
銀行は今まで個人のインターフェイスを整えてきたので、最近やっとオンラインで口座振替ができるようになった段階だと思いますが、法人については全く手つかずの状況です。
井上 何に時間がかかるのでしょうか?
内山 私も分かりませんが、人の手続きに時間がかかるということなのでしょうか?
ただ、段々と金融機関も動き始めているということがあります。
個人向けのAPIが提供され始め、段々と法人向けのAPIが提供されてきているというところで、参照系から始まり、更新系への流れが起きてくると、その上で新しいインターフェイスを作るフィンテック事業者にとっては事業に取り組みやすい環境になってきていると思います。
弊社はその環境があってこそ初めて成り立つ事業です。
我々の立つ土台には、まだ一部紙が使われている等非効率な部分もありますし、理想には届いていない状況ですが。
例えば、信用調査をする際は、専用線を引いたPCを利用し、それ以外のインターネットに繋がらない状況で見なければならないといった縛りがあります。
このような非効率を変えることは難しいですが、それでも以前の環境より大きく前進しています。
柴山さんのお話にもありましたがクラウド化、デバイス、API全て利用している上に弊社は成り立っているので、環境が前進していることは大きいと思います。
(続)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/鎌田 さくら
続きは 国民の期待値と金融サービスのギャップこそがフィンテックブームの源泉 をご覧ください。
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【編集部コメント】
続編(その3)では、フィンテック・ビジネスの難しさや課題について各登壇者が思うところをお話いただきました。ウェルスナビ柴山さんのロンドン前市長のエピソードは必見です是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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