▶平日 毎朝7時に公式LINE@で新着記事を配信しています。友達申請はこちらから!
▶ICCの動画コンテンツも充実! Youtubeチャネルの登録はこちらから!
「民間発の月面探査チーム「HAKUTO」の挑戦」【F17-6D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!12回シリーズ(その3)は、HAKUTOプロジェクトにおける、従来の宇宙開発とは全く違うビジネスモデルについて議論しました。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
▼
【登壇者情報】
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
2017年2月21日〜23日開催
Session 6D
宇宙資源開発ビジネスは宝の山! – 民間発の月面探査チーム「HAKUTO」の挑戦
(スピーカー)
石田 真康
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル / 一般社団法人SPACETIDE代表理事
袴田 武史
株式会社ispace
代表取締役
水島 淳
西村あさひ法律事務所
パートナー
(モデレーター)
千葉 功太郎
慶應義塾大学
SFC研究所 上席所員
▲
▶「民間発の月面探査チーム「HAKUTO」の挑戦」の配信済みの記事一覧
【前の記事】
【本編】
袴田 我々のプロジェクトの面白さは、第一に、非常に小型のロボットを開発していることです。
今までは、宇宙開発というと国主導で行われてきました。
しかし国が主導して宇宙開発をすると、いろいろな機能が詰め込まれ、しかも絶対に失敗しないように、何重にも何重にも失敗を回避するシステムが入れられますので、そうすると重量がどんどん増えていくんですね。
今 NASAが火星に送り込んでいる「Curiosity(キュリオシティ)」という最新のロボットは900キロくらい、小型乗用車くらいの重量があります。
それを打ち上げるというのは非常に大変ですし、コストもかかります。
我々は逆に、4キロという非常に小さな、世界最小・最軽量のローバーを開発しています。
日本人が得意とする小型化や軽量化の技術を取り入れています。
出所:au×HAKUTO MOON CHALLENGE トレーラームービー2017 からキャプチャー
産・学・プロボノで挑む
千葉 今回のXPRIZEレースに出場している他のチームのロボットは何キロくらいあるのですか?
袴田 他のチームはですね、今はチーム数が絞られてしまっていますが、ローバーを持っているのが我々と、インドのチームです。
インドのローバーは10キロ以下で、彼らも攻めてきています。
千葉 先ほど5チーム残っているとおっしゃっていましたよね?
袴田 他のチームは、ローバーを使わず、ホッパーという着陸船がエンジンを蒸かしてホップする、つまりジャンプをしていくというアプローチで攻めています。
千葉 そちらのアプローチですか!
袴田 はい、そのようなアプローチで攻めていますね。
ただホッパーで成功した事例はまだないので、技術的にはリスクが高いと言えます。
もう一つ面白いのは、ispaceという私が代表をしているスタートアップ企業が、このプロジェクトを、資金や法律面、運営面から管理していることです。
そして東北大学とも技術協力をしていて、実は先ほどお話ししたローバーの基礎技術は東北大学で長く開発されてきたものです。
宇宙ロボットの分野では世界的な権威と言われる、東北大学の吉田教授と一緒にやっています。
もう一つ特徴的なことは、プロボノメンバーといって、ボランティアの皆さんに参加してもらう仕組みを作っていることです。
70人くらいの登録があり、週末などに集まってボランティアで仕事をしてもらっています。
宇宙開発を広告事業モデルで実行
宇宙開発というのはどうしても敷居が高いので、その敷居をどんどん下げていかなければならないと思い、気軽に参加できる仕組みを作っています。
本プロジェクトはauをはじめ、様々な企業に支援をいただいていますが、事業としては、データやコンテンツを提供することで、それを使用することのできる権利を各社に提供することで、協賛費という形で各社から支援をいただき、事業として成り立っています。
千葉 データやコンテンツとは、この場合、具体的にはどのようなものを指すのでしょうか。
袴田 一つには、「HAKUTO」のプロジェクトをCMなどのプロモーションで活用することができる権利があります。
そして月面データ、映像データなどを利用できる権利、またはイベントを行う権利などもあります。
auは今回ローバーの命名権や、プロジェクトの命名権も持っていますので、先ほどの「SORATO」という名前は、auがプロモーションに活用していくという形になっています。
今までの宇宙開発というのはどうしても機器を売ることが中心でしたが、我々は、広告事業モデルのようなものをパイロット的に行い、成功しています。
千葉 これは世界的に見て、どのくらい珍しい取り組みなのでしょうか。
袴田 そうですね、ゼロではないですが、ここまで大々的にやっているのは我々が初めてではないかと思います。
昔、宇宙をテーマにしたポカリスエットのCMがありましたが、あれはJAXAの協力により制作されたもので、「事業」と呼べるものではありませんでした。
今回、我々はもう少しサステイナブルな事業を構築しています。
宇宙ビジネスの新しい形になる
千葉 私のイメージでは、世界中で当然こういったプロジェクトに企業が当然のようにスポンサーとしてつくというイメージがあったのですが、全く宇宙と関係ない会社、いわゆる一般的な誰でも知っている会社が参加しているというのは初めてなのではないかと思います。
これは新しい形の宇宙ビジネスですよね。
袴田 そうですね、新しいと思います。
我々も、当然ミッションを成功させることが大目標ではありますが、ミッションを成功させるまでの過程で、いろいろな広告モデルが作れるのではないか、プロモーションをしていくことで、よりブランディング価値を高めていくチャンスがあるのではないかと思っています。
その点を理解していただいて、各社にパートナーとなっていただいています。
千葉 素晴らしい。
先日たまたまJALの飛行機の中で機内誌の記事を読んだのですが、飛行機に乗って何気なく機内誌を開いたら、「HAKUTO」の挑戦に関する記事が載っていました。
確かJALの社長との対談でしたよね。
袴田 はい、植木社長との対談でした。
千葉 自分たちも夢を掛けたいな、と思わざるを得ない対談記事でした。
やはり企業ブランドイメージに、かなり貢献していますよね。
袴田 そうですね、auもそうですし、他の会社も、ブランディングとして上手く活用されていますね。
千葉 新しいですね。今まで宇宙ビジネスというと、先ほどおっしゃったように、機器の販売であったり、JAXAの下請けであったりというイメージですよね。
どうしても「下町ロケット」の印象が強いので、「帝国重工」からの発注に、いろいろな会社が頑張って応えている、つまり一発注主の下に、ピラミッド型の垂直統合があるようなイメージだったので、これは全く違うビジネスですね。
面白いと思います。
袴田 今までのような国を中心とした宇宙開発ビジネスですと、国がオーナーになっていて、その下の企業に発注する、そしてそれらの企業は宇宙企業だけれども下請けになってしまっていました。
この後、石田さんからも説明があると思いますが、今 新しいビジネスモデルが出てきて、新しい宇宙企業は、自分たちできちんとビジネスモデルを構築し、そのサービスを国などに買ってもらうという形になっています。
既存の宇宙開発を踏襲するだけでは潰れる
千葉 これだけのプロジェクトなのに、JAXAの「ジャ」の字もないというのはしびれますね。
袴田 逆にJAXAを最初は避けていました。
避けるというと語弊がありますが、こういうプロジェクトを始めるにあたって、今までの宇宙開発のやり方を踏襲するだけでは絶対に潰れると思ったんです。
ですので、できるだけ既存の宇宙開発分野の人たちとは接触しないようにしていました。
千葉 これはオフレコでなくて大丈夫ですか?
袴田 ……それが必要なことだと思っていました!
今では、我々も自らの足で立ち上がることができたので、JAXAとも今後一緒にやっていかなくてはならないということで、協力関係を築いています。
このHAKUTOのプロジェクトには、コーポレーション・カンパニーの他に、サポーティング・カンパニーというカテゴリーがありまして、実はJAXAにはサポーティング・カンパニーになっていただき、陰でご支援をいただいています。
出所:「HAKUTO」のWebサイトからキャプチャー
千葉 ロゴには入らないわけですね。
袴田 そうですね。
千葉 新しいですね!
袴田 HAKUTOは我々にとって最初のプロジェクトであり、第一のステップです。
少し時間が長くなりますが、続けてispaceとして今後どういったことをやっていきたいか、という点について少しお話ししたいと思います。
(続)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/鈴木ファストアーベント 理恵
続きは 「Expand Our Planet」HAKUTOプロジェクトを展開するispace社のビジョン をご覧ください。
▶【公式LINE@はじめました! 平日 毎朝7時に新着記事を配信しています。】友達申請はこちらから!
▶【ICCの動画配信をスタートしました!】ICCのYoutubeチャネルの登録はこちらから!
【編集部コメント】
人々に夢やロマンを与える挑戦をスポンサーという仕組みによってビジネスにしていく、という意味では、スポーツに続く領域が宇宙かもしれません!(榎戸)
他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
更新情報はFacebookページのフォローをお願い致します。