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日本の宇宙ビジネスに関する法整備は米国に20年遅れている【F17-6D #6】

ICC FUKUOKA 2017 Session 6D

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「民間発の月面探査チーム「HAKUTO」の挑戦」【F17-6D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!12回シリーズ(その6)は、西村あさひ法律事務所水島さんに宇宙空間における法整備についてお話いただきました。日本と米国の違いなどが興味深いです。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております


【登壇者情報】
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
2017年2月21日〜23日開催
Session 6D
宇宙資源開発ビジネスは宝の山! – 民間発の月面探査チーム「HAKUTO」の挑戦

(スピーカー)
石田 真康
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル / 一般社団法人SPACETIDE代表理事

袴田 武史
株式会社ispace
代表取締役

水島 淳
西村あさひ法律事務所
パートナー

(モデレーター)
千葉 功太郎
慶應義塾大学
SFC研究所 上席所員

「民間発の月面探査チーム「HAKUTO」の挑戦」の配信済みの記事一覧

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【本編】

千葉 SpaceXをはじめ、世界中でスタートアップが宇宙に参入し、これが意外と現実的なものになるだろうというのが、鍵となる流れかなと思いながらお話を伺っていました。

今日は更にお二方に、全体から見た今の宇宙産業に関してお話しいただきます。

最初に水島さんから、自己紹介とともに、法制度や法整備、その他宇宙ビジネスにかかる全般の状況について簡単にレクチャーをお願いしたいと思います。

宇宙資源開発産業における最新の法整備

水島 こんにちは、水島と申します。

今の袴田さんのプレゼンテーションにあったように、宇宙資源開発産業というのは、まだGoogleやFacebookのようなドミナントプレイヤーが世界に一社もいない領域なんですね。

ですので、非常にビジネスとして面白く、可能性が極めて広い産業分野だと思っています。

そういった全く新しい領域というのは、どうしても法制度、政策分野でのインタラクションが重要になってきますので、今日はその辺りについて少しお話ししようと思っています。

私は弁護士として、企業の非連続な重要ゴールを達成するために、こういうやり方がありますよ、ということをいろいろアドバイスし、デザインするような仕事をしています。

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早速ですが、世界で宇宙資源開発を取り囲む制度がどうなっているかというと、2015年にアメリカのオバマ前大統領が署名した法律があります。

これは世界で初めて、民間が宇宙資源開発をしてよいということを認めた法律です。

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次はルクセンブルク政府が進めているイニシアティブ、つまり政府施策ですが、ルクセンブルク政府は2016年2月に、同国がヨーロッパの宇宙資源開発のハブとなるという目標を大々的に発表しています。

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ルクセンブルクでも、世界で2番目となる、宇宙資源開発を認める法律案がこの冬に公表されています。

千葉 しかし、各国で個別にこういう政策を進められたら困りますよね。

水島 そうですよね。

千葉 世界で足並みを揃えないと。

水島 まさにその通りです。

宇宙法にまつわる議論

水島 いわゆる宇宙法の歴史は非常に長く、紆余曲折を経て制定されています。

まず立法過程の一般論として、そもそも、ある分野につき、その分野で活動する人がいないと、法律や制度というのは存在しません。しかし、宇宙資源開発の場合、すでに実際に活動を始めている企業が複数存在するのです。

宇宙資源開発というのは、かなり先進的なイメージだと思うのですが、既に、ispaceも含め、スクリーン上(以下のスライド)に挙げた企業が実際に宇宙での資源開発に向けて事業開発を行っています。

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それぞれ数十億円、日本では考えられないくらいの資金をきちんと集めて、着実に計画を進めています。

実際にNASAなどと提携し、ispaceの場合はJAXAですが、共同研究をしていますし、リアルなビジネスとして事業を進めています。

まさに先ほど千葉さんからご指摘いただいた点については、それぞれの国の政府がいろいろなことをやっています。

その裏側では、国際的な議論も多くなされています。

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これは決してベンチャー企業が夢物語のようなビジネスの話をしているというわけではなく、国連や国際宇宙法学会といった非常にお堅いところの専門家が、宇宙資源開発の分野でどのようなガバナンスを作っていけば公平な世界ができるのだろうか、という議論を活発に行っている状況です。

日本の宇宙法の整備は米国から20年遅れている

水島 では日本の状況はといえば、これが一番気になるところですが、スクリーン上(下の画像)の左側が日本の宇宙法の歴史、右側がアメリカの宇宙法の歴史です。

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ご覧いただいているように、大きな空白があります。

空白の30年です。

千葉 ここは何か書いてあるわけではないんですか?

水島 何も書いていない空白です。

空白だということを強調しています。

画面左下(上の図の左下)にあるように、去年(2016年)の11月に「宇宙活動法」と「リモートセンシング法」という2本の法律が制定されました。

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千葉 話題になりましたね。

水島 はい。宇宙基本法という日本における宇宙の憲法のようなものは既にありましたが、「宇宙活動法」と「リモートセンシング法」は宇宙に関するビジネス法という位置付けで、これが日本で初めて制定されました。

これは非常に画期的なことであり、また産業界にとって励みになる話なのですが、右側のアメリカの状況をご覧いただくと、1984年に「商業宇宙打上法」と「リモートセンシング法」が成立しています。

千葉 20年くらいの差があるわけですね。

水島 はい、これが昨年の宇宙二法に対応する法律です。

つまり22年くらいの開きがあるという世界です。

このように大きな空白の時間が存在してしまっていた、というのが日本の状況です。

逆に、これだけ空白の後に、2016年になって一気に法律が出てきたというのは、大きいとも言えます。

他方で、右側に示した米国では、先ほど冒頭でお話ししたような資源開発を認める法律が既に出てきていると。

これが世界的な状況、それから日本の状況ですね。

千葉 日本は今現在、資源開発を行うことができるのでしょうか?できないのでしょうか?

水島 ご質問ありがとうございます、まさにその点が問われるところです。

法律がないんですよね。

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千葉 ないですよね!?

HAKUTOプロジェクトは大丈夫なのでしょうか。

石田 アメリカに行こう(笑)!

千葉 それはまずい、日本の有能なベンチャー企業がアメリカに流れてしまう。

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水島 まさに、アメリカに行くというのは、一つの選択肢ですね。

千葉 それは止めましょう(笑)!

(続)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/鈴木ファストアーベント 理恵

続きは 日本の宇宙ビジネスが抱える「立法事実のジレンマ」とは? をご覧ください。

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【編集部コメント】

西村あさひ水島さんの大変わかりやすい解説、私も非常に勉強になりました(榎戸)。

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