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「今、アグリテックが激アツだ!」【F17-9D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!11回シリーズ(その9)では、日本の農業のグローバル展開について議論しました。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 9D
今、アグリテックが激アツだ!
(スピーカー)
岩佐 大輝
株式会社GRA
代表取締役CEO
小林 晋也
株式会社ファームノート
代表取締役
前田 一成
アグリホールディングス株式会社
代表取締役社長
安田 瑞希
株式会社ファームシップ
代表取締役
(モデレーター & スピーカー)
高島 宏平
オイシックス株式会社
代表取締役社長
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【前の記事】
【本編】
高島 では最後に、皆さんのグローバル展開の話を聞きたいと思います。
前田さんはシンガポールで事業をしていますが、元々グローバルなマーケットだけを前提としていたのですか?
国内は見ていない?
日本のコメは世界で売れるか?
前田 私達が始めた事業はおにぎりやお弁当というものなので、国内には既に沢山の事業者がいますし、その事業をすることによるバリューが低いなと思っています。
劣後していますよね。
売上がきちんと出るのであればそれで良いと思ってはいるのですが、同じ投資をかけるのであれば先に海外で取り組みしたいと考えています。
高島 取り組みしてみてどうですか?
海外だと、マーケットが肌感では分かりづらいですよね?
一方で差別化はしやすいということだと思うのですが、実際の手ごたえはどうですか?
前田 手ごたえは非常に良いです。
弊社ではグローバル・バリューチェーンやグローバル・サプライチェーンを作るということを行っていますが、まずはおにぎり・お弁当の自社店舗を先端に出しています。
弊社のおにぎりやお弁当を小売チェーンやBtoBで販売する。
さらに、アグリやSAMURICEのお米は美味しいねと、横の飲食繋がりの人達に少しずつお米などを販売していく訳です。
一歩ずつ一歩ずつ後ろに下がりながら業務を広げていくということを行っています。
始めに情報を得るための情報収集基地として、小売店や飲食店を手掛けたことはとても良かったと思っています。
高島 おにぎりを売るということと、日本のお米を売るということはギャップがあると思います。
料理は売れるけれど、その真似をした業者がタイでお米を作り、(そのタイ米で作った料理を)販売するということが流行るかもしれません。
おにぎりを売る所から、日本のお米を売るまでは上手く繋がっているのですか?
前田 そうですね。
「弊社のおにぎりが美味しいから、同じお米を使いたい」と言ってくれる他の飲食業の人達がいますので、そこから繋がっています。
日本米のグローバルなサプライチェーンを創る
高島 今はシンガポールですよね?
前田 シンガポールです。
高島 次はどこを考えていますか?
前田 今、アメリカのニューヨークに酒バーを開いているのですが、ニューヨークのアップステートに湿地があるので、そこでも米を作ってみようかという話になっています。
日本産の輸出も増やしたいですし、一方で、日本人による農業も広めたいと思っているので、そういう意味ではアメリカで生産もしたいと考えています。
また、弊社のおにぎり屋では使っていないませんが、ベトナム産の日本米を他に卸すということをサプライチェーン作りの一環として行っています。
そこでは50~100ha分のお米を使っているので、ベトナムでも生産を始められると思っています。
高島 それは技術を輸出しているということでしょうか?
メイドインジャパンではなく、メイドバイジャパニーズの技術を輸出している?
前田 そうですね、トヨタのような会社…よく塾とかで「多国籍企業」と習ったじゃないですか?(笑)
30年ぐらい前の中学受験の時、社会の授業で習った「多国籍企業」みたいなものはありますが、「多国籍農業企業」は日本からあまり出ていないと思います。
海外からは結構出ているかとは思いますが、そういった農家が日本から出てくれば良いと思います。
海外で生産した経験やノウハウは絶対日本での生産に活きると思っています。
もちろん、環境が異なるので、全く同じ農産物にはなりませんし、全く同じ技術で生産できる訳でもないと思います。
けれど、人材の交流も、技術の交流もできますし、賃金の安い方が日本に入り、農業に従事することで助けになるかもしれません。
お米の価格は、天候や様々な事情、政治的意向も考慮され毎年大きく変わります。
為替も様々な要因で変動し、輸出がまた厳しい状況になったり。
日本の農業を輸出産業にしようと言っている一方で、吉良上野介の袴の裾が踏まれるといった状態になっている。
すいません、例えが良く分からないですよね(笑)
(会場笑)
そういった「経営環境の変化」に農家が対応し、大規模になっていくためには、海外でも同時に生産し、その中で規模を大きくしていくことが重要なのではないかと思っています。
多分それができる農家は日本でも一握りだと思いますが、そういった農家を作っていく必要があると思います。
高島 ありがとうございます。
ITリテラシーや販売で魅力的なインド市場
高島 岩佐さんはインドでも事業をしていますが、生産もマーケットも日本とは異なると思いますが、共通する所もあるからシナジーがあるのだと思います。
どの辺が通用し、どの辺をローカライズしなければならないのか?
今までの取り組みの中で感じましたか?
岩佐 インドの良い所は、テクノロジーに通じる農業人材が沢山いることです。
農村部に行っても皆さんITに詳しいですし、IT機器を用いて日本のテクノロジーを使うということが容易にできます。
一方、インドは日本とかなり気候が違うので、日本の栽培方法を慣らしていくことに時間がかかっています。
生産量でいうと、同じ面積で同じ量を作った時、インドは日本の半分位しかまだ収穫できていません。
けれど、マーケットはとても良く、作れば作っただけ全部売れます。
作れば全部売れて、「もっと作ってくれ」という要望もある。
現時点ではインドはそういったマーケットだという印象です。
高島 求める味覚の違いといった所はどうですか?
岩佐 インドに限らず南国はとても甘いフルーツを食べ慣れているので、甘酸っぱいだとか、味が濃いという概念はなかなか通用しないと感じています。
高島 ただただ甘いものが好まれる。
岩佐 はい、とにかく甘ければ良い。
(会場笑)
甘酸っぱいというものが禁止ワードになっていて、極端ですが甘くなければダメです。
高島 なるほど、ありがとうございます。
では会場の皆さんの質問に答えていただきたいと思いますが。
先程いただいた質問の中で、まだ触れられていないものとしては、マーケット、トレンドの話に触れられていませんので、まずはどなたかに答えていただきたいと思います。
どうですか、岩佐さん。マーケットのトレンドどのように考えていますか?
日本・そして世界の味覚が時差を持ちつつ変化している
岩佐 国内海外で色々あると思いますが、マーケットのトレンドは完全に二極化しているように思います。
コモディティは例えばスーパーで購入するような、安くて高品質なものは徹底的に安く普通の価格で買いたいという人が多い半面、ものすごくオリジナルで他にはないというものを欲しがる人もどんどん増えている印象を持っています。
実際の所は分からないので、むしろ高島さんの方が詳しいかと思うのですが?
高島 野菜に関して、弊社は作る人と食べる人のおいしさをずっと記録しているのですが。
日本人が美味しいと思う野菜は少しずつ変わってきています。
少し前までは、正に甘い野菜を美味しいと感じていました。
トマトはもちろんですが、キュウリを食べても甘い、サツマイモも超甘いというように、甘いという表現が褒め言葉で、甘ければそれだけで良かったのですが、最近は甘いだけのものに少し飽きている感があります。
新しいトレンドが二つあるのですが、一つは食感です。
食感が新しいというものが売れています。
もう一つは苦みです。
これは松嶋シェフ(松嶋 啓介氏/KEISUKE MATSUSHIMA オーナーシェフ)も日本人は苦みとえぐみの違いが良く分からないので、苦みを美味しいと思いにくいとおっしゃっていたのですが、去年一昨年位から、弊社でいうとケールが大ヒットしています。
「苦いを美味しいと思いだしたな」と感じています。
そういった最近の変化は感じますね。
岩佐 私も先日松嶋シェフのお店でイベントをさせていただき、彼に教えてもらったのですが、欧米、特にアメリカやヨーロッパはどんどん甘いものだけではなく、複雑な味わいを好むようになり、なんというか味覚が進化したように感じます。
一方、アジア圏、特に中華圏はまだまだシンプルな甘さだけを求めているような気がします。
そうすると、日本のマーケットの感覚で作ったイチゴをアジアに持って行くと、なんだかウケなかったりします。
「もっとただ甘いだけにしてくれよ」と言われたりもします。
日本のものが海外でそのままウケルかというと、そうではないという現象が起きつつあると思います。
高島 明らかに味覚はグローバルにいうと時差がありますよね。
(登壇者うなずく。)
ヨーロッパ、アメリカ、日本、そしてアジアにと時差経由ができると思います。
(続)
続きは 農業ベンチャー経営者たちが考える事業の「選択と集中」 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/鎌田 さくら
【編集部コメント】
アグリホールディングス前田さんの「吉良上野介の袴の裾が踏まれる」との例えはどんな意味だったのでしょう、、、。ネットで調べてみたのですが、分からず、、、(横井)
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