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「ポストスマホ!AR時代を大激論!」【K17-10C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!8回シリーズ(その8)では、参加者からの質問を受けて、AR時代のフィルターバブル問題、ニューロコンピューティングについて議論しました。今後のテクノロジーのUI/UXについて思いを馳せたくなる内容です。ぜひご覧ください。
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ICCカンファレンス KYOTO 2017のプラチナ・スポンサーとして、レノボ・ジャパン株式会社>様に本セッションをサポート頂きました。
ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2017年9月5-7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 10C
大激論 ポストスマホ!いよいよAR時代到来!
Supported by レノボ・ジャパン
(スピーカー)
荒木 英士
グリー株式会社
取締役執行役員
國光 宏尚
株式会社gumi
代表取締役社長
横山 直人
Facebook Japan
執行役員 新規事業開拓 兼 パートナーシップ事業部
(モデレーター)
尾原 和啓
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最初の記事
【新】ポストスマホ!いよいよ到来するAR時代を大激論!【K17-10C #1】
1つ前の記事
日本企業はAR市場で勝負しよう! 欧米IT企業に勝てる!(gumi國光)【K17-10C #7】
本編
尾原 5年後の世界、そして更にもう一周回ってARからVRに戻ってくるかもしれない世界について、ものすごく広範囲に渡るお話しをして頂いたのですが、質問に関してはもう、気になったところや、こういうところなんでしょうといったところまで含めてお話いただけたらよいと思います。
ご質問ある方、どうぞ手を挙げて下さい。
質問者1 DouZen の三浦です。
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三浦 謙太郎
DouZen, Inc.
Founder and CEO
1974年カリフォルニア州生まれ。1996年にスタンフォード大学理学部を卒業。1997年から2003年までソニー(株)にてVAIOノートPCやハンドヘルドコンピューター「クリエ」の商品企画に携わる。その後UCLA Anderson校にてMBAを取得し、ソニー・ピクチャーズ(株)のUS本社で勤務のちソニーを退社。数年間日本のベンチャーにてモバイル組み込みソフト関連の事業開発を経て、2011年にSan FranciscoにてDouZen, Inc.を創業。次世代ユーザーインターフェース製品の企画と開発を行う。現在は同社にて12月出荷予定のHale Orb(ハレ・オーブ)というIoT製品の開発を行っている。
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これは尾原さんの領域にあるトピックなのかもしれません。
ARは必ずくると思うのですが、フィルターバブル (Filter Bubble)問題のようなものがものすごく顕著に出てくると思うんですよね。
▶フィルターバブル:検索サイトのアルゴリズム等が、ユーザーの情報に基づいてユーザーが見たい情報を選択的に推定するような検索結果を出すことが原因で、ユーザーがその人の観点に合わない情報から隔離され、実質的に彼ら自身の文化的、思想的な皮膜(バブル)の中に孤立するようになっていくこと(Wikipedia)
アメリカでは、白人主義の人が非白人を見たくないから、周りを自分の好きな人種だけで固めるといったことがあります。
似たような話でAR情報が位置情報を基に人口密度が高いところにより集まるとすると、過疎化のようなものが広まるというのは、このままの流れでいくと明らかに起こることのような気がするのですが、そのことについてどう思われますか?
ARによるフィルターバブル問題とは?
尾原 恐らくこれは、全ての新しいテクノロジーにおける行き過ぎの問題をどうしていくのか、公共性の問題をどうしていくのかという話だと思うのですが、まずフィルターバブルが何かという話だけを少しさせて頂きますね。
GoogleもFacebookもユーザーに使ってもらいたい訳で、ユーザーの喜ぶ情報を提供すれば長く使ってもらえます。
そして、放っておくと、ユーザーは自分の見たい情報しか見なくなります。
尾原 今はそうではありませんが、一時期、FacebookやGoogleで、非白人が嫌いな白人にはいわゆるそういう偏った情報が選択的に推定されるということがありました。
こうしてユーザーが自分の興味関心に合うものだけに囲まれることを、「フィルターバブル」と呼んでいます。
逆に言えば、多様性を理解する方向に少しずつバイアスをかけていくということもできると思うんですよね。
歴史的に見ても、アファーマティブ・アクション(Affirmative Action)などのバイアスを減らす方向での動きがあるのですが、やはり正直なところ、今までは、プラスの方向にやろうと思ったら極端だったんですよ。
でも、例えば私の娘が行っている、インドネシア・バリ島のグリーンスクール(Green School)で行われているように、色々な人種の生徒たちが集まっている中で、シリアのVRのビデオ、つまり空爆前の街並みに入って、それが2分後には今の映像になるといったようなものを見てしまうと、やはり理解せざるを得なくなるのです。
リアリティの持つバイアス修正能力が効いてくると思うので、そこはきちんと公共性を入れていってくれるのではないかなと思います。
横山 いやー、このトピックは難しいですね。
情報は知り過ぎると不幸になる面がある
荒木 もはやARは関係ないのですが、僕は多様性や世の中の真実に耐えられる人種というのは、世の中に数パーセントしかいないと思っているんですよ。
ですから、意識が高い人や、学歴が高い人や、親の知的レベルが高い人は、そのようにダイバーシティ教育を受けたり、世界には色々な人がいるのだということを痛みと共に学んでいく世界に行くことがあると思うのです。
しかし、それ以外の大半の人にとってはちょっと受け止めきれないし、やはり心地のよい状態を守ってあげることが結果的に社会平和に繋がるということだと思うので。
多分、10年前くらいまでは、自分と違う社会や、自分の周りの人以外のことを知らずに済んでいた訳ですよ。
でも、知ってしまうから相対的に見て自分が不幸だと思うようになったり、この人は許せないと思ったりするのです。
尾原 ブータンは世界で一番幸せな国だったのは、情報隔離をしていたからだという話とかね。
荒木 ですから、緩やかに周りのことだけ知っていればいいよという人達と、コスモポリタンなダイバーシティを持った人達とに極端に分かれていくというのは、あまりいい話ではないかもしれないけれども、現実的にはそうかなと。
國光 だからジャック・アタリ(Jacques Attali)的ですよね(※)。
▶編集注:ジャック・アタリはフランスの経済学者、思想家、作家。著書に『2030年ジャック・アタリの未来予測―不確実な世の中をサバイブせよ! 』(プレジデント社)など多数。
横山 両方の力があって、例えばFacebookは世界を繋いでいったり多様性を大事にしていたりしますが、そういう動きをする人達とそうではない人達のせめぎあいというのはどの世界にもあるのかなと思います。
尾原 ですから、一つ大事なことは、選択できる権利だと思うんですよね。
荒木 そうですね。
選択できるというのは大事ですよね。今は選択できますからね。
尾原 このテーマだけで喋っても、1時間くらいは喋れそうなので、次の質問に移りましょうか。
AR/VR時代のニューロコンピューティングとは?
質問者2 本日はありがとうございました。
エフ・コードの島田と申します。
ARやVRを認識するデバイスとして、スマホがあってグラスがあってコンタクトレンズがあってというところまではある程度想像がつくのですが、AIやシンギュラリティー(Singularity=技術的特異点)の文脈ではよく聞く、ニューロコンピューティング(※)などは、ARやVRの中で具体的にどういう風に導入されるのでしょうか。
▶編集注:ニューロコンピューティングとは、生物の脳の神経細胞(ニューロン)や神経回路網(ニューラルネットワーク)の情報処理様式に学んで,脳の高度な情報処理機能の人工的実現を目指す新しいタイプの情報処理手法の総称。
國光 それは極めて簡単な話で、今、「Microsoft HoloLens」のように、ここ(目の前)にコンピュータビジョンがあって重ねて見れるようなARグラスがあります。
その次に「Magic Leap」などがやろうとしているのは、網膜照射型と言って、網膜に直接データを当てて見せるやり方です。
僕らが普段の生活の中で「見る」時には、この辺(上部)で光っていて、この辺(下部)で乱反射して目のレンズで屈折して網膜に当たって脳に行って結局視覚というものを認識しています。
そこで、わざわざ見なくても、網膜に直接(データを)当てたらよいではないかということになった訳です。
でも、よくよく考えると、視覚というのは、網膜に当たった後、網膜から脳の方に…
荒木 電気信号ですからね。
脳に直接電気信号を送れればいい
國光 ただの電気信号でしかないから、最初から脳に電気信号を送ったらよいだろうというのが、一つの考え方ですよね。
僕らの視覚や味覚や触覚などは、結局のところ脳が受け取っている電気信号なので、その電気信号で情報を扱ってどう伝えるかについては、どうインプラントするかや、この辺(耳の後ろ)に着けるのかということを含め、これから研究されなければなりません。
荒木 2016年の初めだったと思うのですが、目が見えない人に対して目の代わりに本物のカメラを入れ、そのカメラからの出力を視神経に接続したという臨床例があります。
もちろんこれは脳の側が慣れないといけないので、ある程度訓練は必要だったのですが、ぼんやりと物が見えるようにはなっているんですよね。
解像度や色などはまだ本物の目には敵わないけれども、機械からの信号を直接脳に送って視覚を実現するということは既に始まっているんですよ。
▶編集注:こうした事業を行っているQDレーザーのプレゼンテーションもぜひご覧ください。
尾原 多分、この辺の補足をCrevoの岩佐さんにして頂いた方がよいでしょう。
岩佐 ちょっとだけ補足させて頂きます。
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岩佐 琢磨
株式会社Cerevo
代表取締役
1978年生まれ、立命館大学大学院理工学研究科修了。2003年からパナソニックにてネット接続型家電の商品企画に従事。2008年より、ネットワーク接続型家電の開発・販売を行なう株式会社Cerevo(セレボ)を立ち上げ、代表取締役に就任。世界初となるインターネットライブ配信機能付きデジタルカメラ『CEREVO CAM live!』や、PCレスのライブ配信機器『LiveShell』シリーズなどを開発し世界50カ国以上で販売。2016年にはフル可動式ドミネーターを発売するなどその業務範囲を広げている。
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岩佐 2000年くらいから既に始まっていて実際にみなさんも体験できるもので言うと、電極を耳の後ろに着けて体を強制的に傾かせるみたいな、稲見さん(東京大学教授 稲見昌彦氏)がやっていらっしゃいましたが、あれなんかまさにそうですね。
今、國光さんがおっしゃったように、電気信号を皮膚から入れて脳を騙してしまうみたいなものができるようになっているので、近い感じかなと思います。
尾原 そうですね。
人間も電極刺激を受けているから、最終的には感覚全部をハックするという話になるんですね。
だからARの進化が面白くて、例えば落合陽一先生の研究室で何をされているかというと、手に電気を流したらビクッて動いたりしますが、学生自らが手に色々な電極を刺して、ランダムに電気を流して実験されています。
そして、どの電気を流したらどういう風に手が曲がるかというのを「Kinect」で記録し続けます。
それを3日くらいディープラーニングし、落合さんが横で「Kinect」に手をこうかざすと、その人の手がリモコンのように動く、というのがもうノンプログラムでできるようになっています。
最終的には全てが電気信号なので、全ての感覚がシミュレートできるし、全ての感覚がaugumentできるという時代になるということですね。
ちょうどよい時間になってきましたが、今日の話でためになったことが2つ以上あったという方…
ARスタートアップにチャンスがある
國光 忘れたらいけないので、繰り返しになるところもありますが、ビジネスでどう生きるかということをお話しておきたいと思います。
國光 特にスタートアップには大きなチャンスがあります。
結局、スマートフォンで勝った会社というのは、スマホファーストでUI、UXを再構築したところなんですよね。
メルカリもヤフオクなどがあったし、LINEもメールなどがあったし、結局UI、UXをスマホファーストで置き換えています。
AR時代もまさに同じで、デバイスがシフトしてきて、タッチパネルで見るというところから、こうして空間を使う形で恐らくインプットの中心は音声になりつつ手で操作したりすることになるでしょうね。
UIが変わることによってUXが変わる。
今までわざわざ検索しなければならなくて面倒だったのが、目の前に見られるようになり、より簡単になってきます。
結局、スマホ時代に大きかった順、つまりInstagramがいたなとか、WhatsAppがいたなとか、メルカリがいたなとか、B to Bもそうだしという順番がありますよね。
ですから、スタートアップでビジネスを作るということで言うと、AR時代が来たら、どういう風に変わっていくか、その時にUI・UXがどう変わっていくのかというのを定義して、今できることではなくて、将来あるべきARの時代をイメージした上で、それに置き換えるようにするとビジネスができてくるのかなと思います。
尾原 そうですね。
國光 全部が空いているし、結局PCで勝っていたものというのはほとんどがスマホの時に遅れたから、今スマホで勝っているものに関しては確実にAR時代に遅れます。
そこには色々なチャンスがあって大きいのかなと思います。
尾原 なぜFacebookがOculusをあんな金額で買ったかというと、Facebookってスマホに変わった時にものすごく加速度がついたというところがありました。
國光 FacebookもWhatsAppとInstagramを買収せず、もしFacebookアプリだけだったらただのオワコンですよ。
結局スマホシフトが出遅れたから仕方なく「Beluga」を買ってFacebook Messengeをやって、WhatsAppを買って、Instagram買って何とかついていったという感じです。
Facebookくらいの強いプレイヤーでも、Webにこだわってスマホシフトが遅れてこんな羽目になったから、確実です。
尾原 せっかくですので、横山さんと荒木さんからも一言ずつ頂いて終わりましょうか。
新しいプラットフォームを一緒に盛り上げよう!
横山 Facebookはマルチプラットフォーム戦略をとっていますので。(笑)
プラットフォームとかメディアとか、弊社はそういうのをプラットフォームと呼んでいますけれど、それらはどうしても移り変わるものだし、どうしても新しいトレンドが出てきて、まさにスマホで大きく変わってこれからまた次のデバイスになったり、新しいプラットフォームの展開になったりしてくるので、また大きなチャンスが生まれる潮目かなと感じています。
ですから、AR、VR、AIへはどの業界の人達もすごく注目していて、特にこのテックインダストリーで、ベイエリア(※)の人達なんかは非常に大きなトレンドとして見ていて力を入れているところなのかなと思いますね。
▶編集注:ベイエリアとは、アメリカ合衆国カリフォルニア州北部の大都市サンフランシスコとオークランド、またその近郊の都市を含めたサンフランシスコ湾の湾岸地域のこと。
横山 是非、そういったことを一緒に盛り上げていけるようなことができればなと思っています。
尾原 オトナなコメントですね。
荒木さんもお願いします。
神経接続になった時にどういうUI、UXであるべきか?
荒木 最後は神経接続なので。
神経接続になると、全部一人称視点になるんですよ。
要は、画面で指で操作しているものが、先ほどの國光さんのお話にもありましたが、UI、UXが全て変わって全て一人称視点になるのです。
一人称視点になった時に、人間とコンピューティングのインターフェースが何であるべきかというのは、すごく時間をかけて考えたり試行錯誤したりしなければならなりません。
荒木 ただ今は視神経接続で開発できる人がほとんどいないので、仕方がないので、今年出るスマホでできるARで色々試してみればいいと思います。
ただスマホでできるARは、見た目は本当にARっぽい感じにはなるのですが、操作はタッチスクリーンなんですよね。
ですから、本当のAR時代のUI、UXを今作ろうと思ったら、結果的にVRの方がいいんですよ。
それはなぜかというと、全視界をジャックされていて両手が空いているからです。
そういう世界観のもとに今HTC ViveやOculusが売れてないとかそういう話ではなくて、視神経接続になった時にどういうUI・UXであるべきかを考えて、今VRでコンテンツを開発するといいですよという感じです。
尾原 そうですね。
日本は類まれなるiOSユーザーが多い国で、尚且つジオロケーションな情報も多い国なので、日本、更には東京で実験したものが世界に広げていける可能性があるということに皆さんが気付けるという、最後に非常にお得なセッションでした。
本日はどうもありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/Froese 祥子
【編集部コメント】
私事ながら、東大のVRサークル”UT-virtual”に属しておりまして、大変ワクワクしながら編集できました。サークルにご興味ある方、VR/ARに興味がある学生と一緒に何かをしたいという方はリンク先のお問い合わせフォームからご連絡ください!
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