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「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコム青木さん、独自性のあるプライベート・ブランドを強化するオイシックス高島さん、オムニチャネルの成功事例であるカメラのキタムラの逸見さんをお招きし、「Amazon以外のEコマースはどのように進化するのか?」をテーマに議論しました。
(その4)は各社のプレゼンテーションを踏まえて「物販を超えたECの方向性」について、「北欧、暮らしの道具店」・カメラのキタムラ・オイシックス各社が考える顧客とのエンゲージメント戦略を議論しました。是非ご覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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登壇者情報
2016年6月25日開催
ICCカンファレンス CONNECTION 2016
Session 4
「Amazon以外のEコマースはどのように進化するのか?」
(スピーカー)
青木 耕平 株式会社クラシコム 代表取締役
高島 宏平 オイシックス株式会社 代表取締役社長
逸見 光次郎 株式会社キタムラ 執行役員 経営企画室 オムニチャネル(人間力EC)推進担当
(モデレーター)
守屋 彰人 株式会社ディー・エヌ・エー EC事業本部長
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【前の記事】
【本編】
Amazonと戦って勝てるところはあるのか?
守屋 各社それぞれの強みを持っているというお話を伺いましたけれども、今回のテーマが、
「Amazon以外のEコマースはどのように進化するのか?」ということなので、皆さんにまずは、Amazonのココだけには絶対勝てないというのを教えて頂きたいな、と思います。
例えば、私から答えますと、配送のスピードだけは対抗できないというのは、つくづく思います。やっぱり投資額が桁違いで在庫も持っているので。
青木 僕は、勝てる所は1個もないと思っていますね。
なので、当たり前といえば当たり前ですけど、勝とうと思ったことがないですし、蟻が人間を意識しないのと同じくらい、でかすぎて意識したことがあんまりないんですよ。Amazon怖いというよりも、視界に入らないくらい大きいイメージですね。
守屋 抜けるかどうかは別として、意識をしているかどうかという意味で、私の会社は意識していますという人はいますか?…いないですか。なるほど、ではそもそも真っ向勝負はしていないし、意識もしていないという感じですかね。
青木 視界にも入っていない感じですね。向こうも見えてもないでしょうし、こちらからすると大きすぎて視界に入らないですね。
高島 たまたまEコマースという方法で、ビジネスをしているのですが、提供している価値というのが大きく違うので、ビジネスモデルで区分すると同じ区分に入るということですね。
価値で競争しているのは、僕らの場合で言うと、すごく素敵なレストランが競争相手だったりするので、どちらかと言うと競争相手として意識しているのは、提供価値が似ている他者というのは意識しています。
逸見 まさに提供したいのは中身の問題ですよね。別にインフラについてEコマースは初期の投資が低いということだけですよね。
高島 お金をどこかで儲けないといけなくて、人々の食生活をよりよくしたいと思ったときに、何かビジネスモデルにしないといけなくて、今のところ、モノを売るのが手っ取り早かったので、そういうマネタイズを選んでいるという感じですね。
守屋 だから、Amazonさんが、ただモノを売るというところは、愚直に規模を活かしてどんどん投資している一方で、皆さんの場合はそれぞれ違う価値の源泉を追求しているということですね。
オイシックスさんで言うと、例えば、ここでしか買えない新鮮な野菜があるとか、少し簡単な調理をすればものすごく美味しい夕飯が作れますよ、ということを意識しています、ということですね。
青木さんと逸見さんは、価値の源泉は何であると、強く意識していますか?
青木 我々は完全にエンターテイメント産業だと思っているので、どちらかというと、DeNAさんではないですけれども、ソーシャルゲームであるとか、そういうモノと基本的には同じだと思っています。
守屋 それは、楽しそうと思ってもらいたいということですか?
青木 そうですね。要するに、暇な時間があって、何でゲームとかソーシャルメディアがアクセスされやすいかというと、アクセスしようと思ったときに、必ず新しいコンテンツなり新しい体験がそこに用意されているという信頼感があるから、暇だなと思ったときに、ゲームやろうかな、SNSやろうかな、という風になるわけですよね。
なので、我々のターゲットのお客さまが持っている選択肢の中に、我々が入りたいということですね。そうすることによって、先ほどの高島さんのお話ではないですけれども、僕らもマネタイズ物販中心なので、モノを買ってもらうということに最終的につながればいいなと思います。
ウィンドウショッピングという言葉がありますけれども、そもそも雑貨屋にこれが欲しいと思って行く人はなかなかいないですよね。とりあえず、あの雑貨屋に行って、楽しい時間を過ごすという前提があって、その中で何らかの出会いがあると購買が発生するというものです。そもそも楽しくなければ、雑貨屋に来ない、娯楽の場所なので、娯楽ビジネスであるということを忘れないようにしたいと思っていますね。
高島 モノを買いに行く場所としての店なのか、店に行った後にモノを探すのか、というのは大きな違いですよね。クラシコムさんも、店に行くことがまずモチベーションで、僕らのお客さまも、茄子を買いに来るのではなくて、オイシックスに来ているんですよね。
守屋 だから、購入前の動機付けというところで、差別化を図ろうという考え方ということですよね。
キタムラさんも、以前はカメラを売って収益を立てるというのが、1番フォーカスしていたのかなと思うのですが、今だと写真の楽しみ方を伝えるような動機付けでしょうか。
逸見 元々ビジネスモデルから言うと、写真は異常に儲かりました。
粗利が7割ぐらいあって、フィルムの時代はプリントだけでなくて、現像料も頂戴するわけですよね。なので、カウンターとボールペンがあったら、出来たビジネスで、接客なんかしていなかったというのが昔のモデルです。
でも、それがデジタルに変わった瞬間に現像料をもらえなくなりました。プリントの単価も落ちました。そもそも、プリントしない。じゃあ、そこからどうするかということで、会社が迷走したのですが、やっぱりおっしゃる通り、写真を残すということです。
うちに来るお客さんは写真を撮って、残したい。写真を撮る楽しみと残す楽しみが中核になかったら、うちの店がある意味がないよねっていうことです。
そこは皆さんから出ている通り、ただのインフラとしてモノを届けるということとは全く違います。たまたまうちはECを使っているだけで、ECの部隊は店へ送客しろ、とか、店の売上を上げよう、とかが当たり前に会話されるし、今言われているのは、全社売上3分の1のEC関与売上を2分の1にしよう、ということですね。
そうすると、店が楽になるし、受取をするお客さんの7割から9割は、店に来るわけですよ。そうすると、お客さんの手間も省けるし、お店の手間も省ける。手間というのは、無駄な作業の部分です。
お客さんがしたいのは、ゆっくり写真やフォトブックの作り方の話をすることですよね。おばあちゃん、おじいちゃんはゆっくり孫の話とかをしたいわけですよ。
そういうところが、これから買い物の中では1番大事だと思っています。だから、別に合理的に買い物したい人を否定しないし、それが便利なときもあるけれども、本当に今日届かないと困るもの、明日届かないと困るものはどれだけありますか?という話です。
守屋 なるほど。購入前の動機付けの部分で、各社の思いや強みを活かして、上手く動機付けしようというところで、独自性を出しているということだと思います。
少しテーマに戻りまして、今後どのように進化していくのか?ということを掘り下げたいなと思います。私自身も、Eコマース事業をやっていて日々頭を悩ませているので、是非色々と伺いたいです。
「北欧、暮らしの道具店」は今後どのように進化するのか?
まず、青木さんに伺いたいのが、クラシコムさんは、社員も自分が読みたい記事をきっちり理解している人、それが書ける人を採用することにこだわっていると、以前メディアで拝見しました。そういう『センス』で楽しさを売っている感じなのかなと思います。
これから今後の進化を考えたときに、当然10年、20年後を考えると、自分だけではなくて、会社も社員も年を取っていく中で、トレンドというのは少しずつ変わっていきますよね。そういう意味で、次の世代をこうやって捉えていくという点について、進化の方向性や考え方を伺えればと思います。
青木 我々は、この事業を10年近くやって来ていて、実は屋号は一緒ですが、中身の業態は3回か4回変えているんですよ。
元々、ヴィンテージの高級なブランド食器を中心としたお店をやっていて、その後に今のプロダクトも混ぜた形をやり、今では、「北欧、暮らしの道具店」と掲げつつ、7〜8割は北欧と関係ないモノを売っています。
かつ、今はもう広告の事業で収益を上げ始めているということで、1年か1年半に1回は、業態の大転換をして来ているということがあるので、あんまり古くなるということは気にしていません。
メディアのように運営するということをやっているので、例えば、POPEYE(ポパイ)という雑誌がありますけれども、時代によって全く異なったりするのと同じで、創刊的なリニューアルみたいなことを繰り返していくことですよね。
守屋 そのリニューアルする方向性、トレンドを捉えるために、こういうことをしていますというのはありますか?
青木 すごくロジックのない話ですが、「あれ、変じゃない?」というのを自分たちで感じるんですよね。
例えば、今の形に直したのが、2013年末くらいですが、2012年くらいから、「何か俺たち変だよね」みたいなのが、社内でフツフツと湧いてきていました。それがズバッと言語化出来た瞬間にバチッと変えていくという感じですね。
守屋 なるほど。
青木 将来という話で言うと、今1番意識しているのは、もうネットの中ということにあんまりフロンティアを感じていなくて、ネットで築いているユーザーベースに対して、リアルでどういうことが出来るかということが1つですね。
守屋 今後は実店舗展開ということもあり得ますか?
青木 それは、視野に入れています。
考え方として、大体我々だと経常利益で15%から20%くらい出るモデルになっているのですが、例えば、仮にこの内の10%分を広告に投資するとしますよね。
そうすると、今15億円くらいの売上があるとすれば、1.5億円くらいの広告費が使えますといったときに、これを全部ネットの広告に使って、売上を上げていくのと、1店舗当たり1,500万円の年間の赤字を許容する店舗を10店舗運営することであれば、本当の意味での広告効果とか、お客さまとのコミュニケーション創りで言うと、どっちの方にメリットがあるのかなということですね。
店舗を運営したことのある人ですと分かると思うんのですが、1,500万円の赤字を許容すると、ほぼ売上ゼロでいいんです。
そうすると、お客さまにとって、ただ単に楽しい場所を追求した結果としての場所を、全国に10店舗持つみたいなことは、広告にお金を使うよりも、はるかに意味があるのではないかということを考えていますね。
逸見 今サラッと経常利益率15%と言いましたけど、ほとんどの小売りが2%から5%以下ですからね。
守屋 そうですよね。
青木 あるいは、クラシコムという会社で、物販で何をやりたいというよりかは、長く生きていくためには、社会から必要とされる会社にならないといけないことを考えると、やっぱり「C」(コンシューマー)のお客さまからだけ必要とされるのではなくて、「B」(ビジネス)のお客さまから、どれだけ会ってほしいと思って頂けるかを考えています。
小売り事業者ですので、当然お取引先さまがあるので、その「B」の人たちは小売りとしての我々を必要として下さっていると思うのですが、我々が売れない商材を扱っているメーカーさんたちに対して、どういうことが出来るのか、サービス提供する上で何が出来るのか、というところで、ソリューションビジネスをどんどん掘り起こしていきたいというのが今のスタンスです。
守屋 なるほど。有難うございます。
オイシックスさんの強みは、新鮮な野菜の価値は永久不滅なのかなと思います。一方で、今Kit Oisixの売上も順調に伸びて、3.2万人まで来ましたという中で、それが今後30万人、50万人と新鮮な野菜を届けるビジネスが究極的にスケールしたときに、どういう風に品質を維持するのか、お考えがあれば伺いたいなと思います。
「オイシックス」は今後どのように進化するのか?
高島 関係ないことを言ってもいいですか(笑)。
守屋 もちろんです。
高島 進化の方向性というテーマで考えていることで話します。
今オムニチャネルが話題になっていて、タテ・ヨコで言うと、ヨコに広がっている、買う場所が色々と増えていますということだと思うのですが、一方で、考えている進化の方向性はタテの方向です。モノを買ったら、買った後にそれを使うわけですよね、使った結果、どうなるかみたいなところですよね。
ZOZOTOWNさんがやっているのは、元々アパレルショップがやっていたことと、ファッション誌がやっていたことを一緒にやっているんですよね。お客さまのニーズとしては、服を買うのは、服を買いたいだけではなくて、買った結果可愛くなりたいし、可愛くなった結果、モテたいということですよね。
オムニチャネルやAmazonさんがやっている、買うということの機能性が上がっていくヨコの進化の方向もありますが、タテの方向で、モノを買った後の効果を最大化していく進化ですね。
先ほどのキタムラさんのアルバムはまさにそうですね。写真を撮る後で、アルバムを見たいというところまで、カスタマイズしてやってあげるということですね。
逸見 だから、ライフタイムバリューというのは、更に(家族も含めた)ファミリーライフタイムバリューと呼べて、まさに世代をまたがっていきますよね。
高島さんがおっしゃる通り、今のオムニチャネルは、道具だとか店だとか、単なるチャネルが増えればいいという話になっていて、タテの話が全然ないです。そしたら、Amazonに負けるに決まっていますよね。
高島 そういう意味で言うと、Eコマースとファッション誌がくっついたのが、WEAR(ウェア)だとすると、Eコマースと、他に何がくっつくんだろうというのを僕らは考えています。
先ほど3.2万人という数字を上げましたが、それとは別に、実験的にやっているママ向けの食材宅配サービスが6千人くらいに利用されています。それは妊娠したときに予定日を入力すると月齢に応じて何を食べたらいいかということを、栄養士さんが1人1人にカウンセリングしながら、食材を提供するというサービスです。それはお店と栄養士の機能を1つにしつつあるということですね。
僕らで言うと、食品小売業とお医者さんとか、食品小売業とスポーツトレーナーとか、そういう形で、Eコマースと何かが一緒になることによって、後工程までをカバーするような方向に進化していくのかなというイメージを持っています。
守屋 そうすると、進化の方向性のイメージとしては、規模を拡大するというよりかは、高い品質のまま、周辺領域をよりシームレスに繋げて、より必要とされるような状態を創ろうという感じでしょうか。
高島 どちらかと言うと、新しい価値を生み出すことによって、規模が拡大されると思っています。
世の中にお店にあったコマースという機能を、オンラインのコマースに変えたというだけで、ある程度Eコマースが伸びてきました。でも、これから先は、Eコマースという機能と雑誌とか専門家とかをくっつけることによって、更に価値が上がって、それが結果的に規模を拡げていくと思っています。
守屋 なるほど、有難うございます。
青木 たしかに今のお話であった通り、EC=ネットショップという風に言われると思います。
でも、ネットショップというのは、Eコマースのシステムを最初に売ろうとするベンダーがクライアントから「ECとは何ですか?」と言われたときに、「ネット上でやるお店みたいなものですよ」と言ったことが多分始まりで、要するにネットの中にあるお店だというメタファーで捉えていたわけですよね。
守屋 いわゆる物販のECですよね。
青木 そうですね。それはある1側面に過ぎないにもかかわらず、その1側面が呪いのように日本で10数年お店としてのレッテルを貼られてしまっています。本質は、旅行もECということと一緒で、ネット上で決済が完了できる仕組みであることに過ぎないわけですよね。
それを使って、何をやるかということは、今のお話通り、色んな可能性があって然るべきだよな、と考えています。
守屋 我々も、『航空券の予約前にもハピネスを届けよう』ということを標語にして、予約事業以外の可能性も色々と検討しています。
カメラのキタムラはどのように進化するのか?
あと逸見さんに伺ってみたいのが、私もこのセッションでご一緒させて頂けるということで、御社のアプリを今更ながら全てダウンロードして、色々発注して試してみました。
すごく使いやすかったです。今までスマホに大量にあった写真データを全然プリントしてなかったのですが、簡単に写真を選んでオンデマンドで注文したら、店舗で受け取るか、自宅に配送してもらえるかということで、極めて簡単だなと思いました。
一方で、スマホアプリは市場が大きく伸びていて、カメラ系のアプリは、それこそInstagramとか色々なアプリが大量にあって、日本でも普及しつつあります。そういったプレイヤーがオンデマンドプリントに参入してくる脅威は、どういう風に考えているのか。
あるいは、そういうことをヘッジするために、例えば、買収とか投資とか、こんなことを考えていますというのがあれば、可能な範囲で伺いたいなと思います。
逸見 そうですね。使って頂いて分かると思うのですが、アプリ自体、全然洒落たアプリではないんですよね。画像が色々と加工出来るとかではないです。
あれは、なぜなら、既存のお客さまが、スマホから簡単にプリントが出来る、もしくは、フォトブックや年賀状が作れるアプリです。なので、説明を聞かなくても使えます。要は、注文手段を家の外へ持ち出しているだけですよね。
なので、本当は、集客のアプリやプッシュ情報をあそこに盛り込むことも出来ますが、今はやりません。アプリの方針として、基本的に私が掲げてきたのは、簡単な注文端末であることです。スマホをどうやって注文端末に変えていくのかが、まずステップですよね。
今話にあがっていたようなInstagramさんなどの色々なアプリがすでにあるので、そこで画像加工してもらって、うちでプリントしてもらえばいいだけですよね。だから、全く競合にならないです。
守屋 最後のプリントの場所だけは、しっかり確保しようということですね。
逸見 そうです。安売りプリントが出て来ているのですが、5円のプリントもある中で、うちは38円で売っています。
でも、うちを使うのはなぜなのか?という話ですね。それは、先ほどの店に来る理由であったような、専門的な話を教えてもらえるということもありますし、5円プリントというのは昔ながらのサービス版をいっぱい出す話であって、うちが今売ろうとしている自動で編集するフォトブックや、自動で写真を並べ替えるシャッフルプリントといったものではないです。
彼らがそれらをやった瞬間に、スケールメリットを活かせないので、コストがものすごくかさむんですよ。単純プリントだからこそ安く出来る。
でも、先ほどの話とも絡んでくるのですが、もうたくさんモノなんて要らないですよね。
昔の大量消費、大量生産の時代は、あちこちでたくさん買い付けてやればいいとか、クオリティーよりまずモノがあることが大事だとか、そういうことが重視されていました。写真もそうでした。プリントをたくさんすることがニーズとしてありました。
だから、せっかくデジタルの時代に変わったのに、うちもL版のプリントをたくさん出すことに主軸を置いていたから、お客さんのニーズとずれていたわけですよね。
そうではなくて、1枚でいいから、ちゃんと選んで綺麗に作ったモノが残っていればいい、そして、それをプリントする頻度が増える中で、その思い出をどう残すかというクオリティーにこだわるのが、うちです。デジタルのデバイスが苦手でも使えます。
今まで17年ECをやってきて、よく言われるのが、「仕事でも使うようになって、これからどんどんネットが得意な人が増えてきますよね」ということですが、そんなこと自分の両親とか周囲を見ていてもあり得ないと思っています。65歳、70歳を過ぎたら、もうパソコンなんか面倒くさいし、スマホは字が小さいから使いたくないですよね。誰かがやってくれたらそれに越したことはないと感じていて、だからお店でやってもらえたら便利ということです。
そのお客さんのニーズをずっとタテ堀りしていくことを、いかにやっていくかということですね。その延長で、ITとしての画像クラウドだとか、そういうサービスがあるのかもしれないですけど、別にそれは画像クラウドを作ることが目的ではなくて、お客さんのニーズを深めていったら、いっぱいある画像データを1箇所で預かってあげて、しかも整理してあげたら楽ですよね。それが結果的にマネタイズするプリントに繋がる手段になるわけです。
守屋 なるほど、有難うございます。それぞれ強みが違う中で、アプローチも違いますけど、やっぱりユーザーのニーズに徹底的にフォーカスして、こだわりを持って事業を進めているということですね。
逸見 だから、Amazonがそこを満たしたら、怖いなと思いますが、彼らは見ないですよね。良い悪いという話ではなく、Amazonが言っているユーザーファーストと、日本人が言うユーザーファーストは全く違うと思っています。
Amazonはアメリカで合理的なサービスをしています。記事で読んだ方もいらっしゃると思いますけど、ジェフ・ベゾスさんが、「コールセンターに入るのは人生最悪の日だ。但し、そこで出てきたクレームは全てシステムで解決する」と言っていますが、日本人にはその考え方はないですよね。彼らは、仕組みでしっかり解決をしていく、ソリューションを提案していくという考え方です。
守屋 徹底した効率主義ですね。
逸見 彼らは、お客さまを分析する、深くまで入っていくというよりも、購買履歴の方が大事なんですよね。
それは彼らの合理的な考え方であって、日本人みたいにお客さまに深く入っていく、お客さまもそれを求めているというところでは、少し売り方が違うのかなと思っています。
守屋 なるほど、有難うございます。
(続)
編集チーム:小林 雅/藤田 温乃
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