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8.セキュリティ、KPI、おすすめサービス…怒涛の質問に登壇者が一挙回答!【終】

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「クラウド化とデータの活用で経営はどのように進化するのか?」8回シリーズもいよいよ最終回。会場からの5つの質問に登壇者がずばりお答えします。そして最後に、SmartHRの宮田さんが「解約率0.3%」という驚異的な数字の秘訣を語ります。ぜひご覧ください!

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ICCカンファレンス KYOTO 2017のプラチナ・スポンサーとして、ジョブカン(株式会社Donuts)様に本セッションをサポート頂きました。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2017年9月5〜7日開催
ICCサミット KYOTO 2017
Session 1B
クラウド化とデータの活用で経営はどのように進化するのか?
Supported by ジョブカン

(スピーカー)

大宮 英紀
株式会社リクルートライフスタイル
ネットビジネス本部
グローバルソリューション事業ユニット長

倉橋 健太
株式会社プレイド
代表取締役社長

東後 澄人
freee株式会社
取締役COO

宮田 昇始
株式会社SmartHR
代表取締役CEO

(モデレーター)

山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役

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最初の記事
1.クラウド・サービスの注目プレイヤーがデータ活用のリアルを語り尽くす!

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7.人事労務の効率化のために、日本中のデータフォーマットの統一が必要(SmartHR 宮田)

本編


山内 この辺りで、会場の方からご質問を何問か受けたいと思います。

今をときめくクラウド企業さんが並んでいますが、ご質問はございませんか?

今日は質問を何問か同時に受けて、まとめて回答していただくという方式でやらせていただければと思います。

質問者1 ダイソンの守屋と申します。


守屋 彰人
ダイソン株式会社
Head of Direct

1980年生まれ。慶應義塾大学を卒業後、2003年4月にソニーへ入社。ホームオーディオ事業における経営企画・商品企画を担当後、Sony Ericsson Mobile Communications AB, Swedenにて、グローバル企業とのアライアンス交渉を含めた携帯電話事業のアプリケーション・サービス企画を担当。その後、A.T.カーニーにて経営戦略コンサルティングに従事し、2010年9月にディー・エヌ・エー社長室へ入社。VP, Head of Global Alliancesとして米国赴任、社長室長を経て、EC事業本部長として全てのEC事業(トラベル・決済・オークション・ショッピングモール・EC新規)を統括し、DeNAトラベル・ペイジェント・モバオクの3社における取締役を兼任。2016年11月にDyson Leadership teamへ参画し、Head of Directとして直販チャネル(特にDigital, E-Commerce)の責任を負う。

今回はテーマは、「経営はどのように進化するのか?」という明るい面にフォーカスが当たっていますが、逆にクラウド・サービスを活用する側の立場として、契約する時などには特に負の側面も気になります。

昨今、個人情報の漏洩問題とか、大企業が突然大きなリスクを背負うというような事件が多数起こっていますが、やはりSaaS系の事業ですと、どうしても「1対多」の契約を結ぶので、そういった大きな問題が起こった時に、基本的には補償できないという部分があるのかなと思います。

私は現在、比較的大きい会社に勤めていますが、その辺りのセキュリティは非常に厳しくグローバルに管理されています。

そういった経営リスクに対する各社の取り組み方、考え方、ポリシーや、今後それがどうなっていくのか、クライアント側がそれに対して備えておくべきことなどについてコメントをいただければなと思います。

山内 分かりました、ありがとうございます。

まとめて回答させていただきます。

では次の方どうぞ。

質問者2 GameWithの眞壁と申します。

今日はありがとうございます。

経営を進化させるという点ですが、今日ご登壇の皆さんは、企業の経営・事業をドライブさせるサービスをご提供だと思うのですが、皆さんが自社で使っている他の会社のクラウド・サービスで、「これはよかった、役に立っています」というサービスがあれば教えていただけますか?

そのクラウド・サービスが、皆さんの会社のどのような経営課題を解決したのか、サービスの名称とどのような経営課題を解決したのかという2つを教えていただきたいと思います。

よろしくお願い致します。

山内 分かりました、ありがとうございます。

他にご質問ございませんか?

質問者3 Phone Appliの石原と申します。

非常に興味深くお話しいただきました。

1つ知りたいのが、私もPhone Appliという会社でウェブ電話帳のクラウド・サービスを始めているのですが、残念ながら売上の割合がまだオンプレ(オンプレミス)が60%で、クラウドが35~40%という悲しい状況で、なかなかクラウドに移行できていません。

皆さんもクラウド・サービスを提供されていると思いますが、オンプレの頃はユーザーの利用率などが全然把握できませんでした。

クラウド化になってようやくお客様の利用率など、いろいろな情報が見られるようになってきたのですが、まだどのような指標を見ていけば、クラウドのサービスを効率的に運用できるのか模索している段階です。

一般的な解約率などの指標は当然のことながら見えているのですが、「自社のクラウド・サービスがこうなる」といった予測ができるような、何か面白い指標のアイデアがあればお聞きしたいです。

山内 経営者がチェックする指標ということですかね?

石原 オンプレの頃には見えなかったけれど、クラウド・サービスだと圧倒的に見える指標があると思います。

山内 そうですね、しかも結構リアルタイムで見ることができますね。

石原 ですので、運営側のクラウド・サービスの話をぜひお聞きしたいと思います。

山内 ありがとうございます。

他にご質問ございますか?

質問者4 京都信用金庫の中島です。

今日はどうもありがとうございました。

クラウド化によっていろいろな情報が共有できて、また多様なユーザーに様々な付加価値ないしは新たなサービスが提供できていると思います。

そういったデータを、API連携などを含めて共有することに対し、ユーザーがそれをどこまで許容しているかについて、それを今肌で感じられての感想などがあれば教えてください。

先ほど1つ目の質問で個人情報や情報セキュリティについての話がありましたが、情報が独り歩きする懸念があると同時に、その裏返しで、よりよい付加価値のサービスにつながっていくという側面があると思います。

山内 そうですね、少し紙一重のところがありますよね。

質問者4 そうですね、本当に。

それに対するお客様の抵抗感というのを含めて、何か感じられていることがありましたら、最後にお願い致します。

山内 ありがとうございます。

では次の質問を最後にしたいと思います。

質問者5 本日は貴重なお話をありがとうございました。

リンクアンドモチベーションの尾上と申します。

SmartHRさんにお伺いしたいのですけれども、1年半で6,000社というところと、解約率が月に0.3%、セールスが45%~50%ほどの成約率ということで、素晴らしい数字です。

我々もぜひ参考にさせていただきたくて、肝となるポイントというのでしょうか、たとえば解約率0.3%を達成するための肝のようなところを教えていただけると大変助かります。

よろしくお願いします。

山内 ありがとうございます。

そのKPIの組み合わせだと、もう儲かって仕方ないのではないかと(笑)。

(中央)宮田氏、(右)山内氏

すいません、下世話な話で。

今の質問をまとめさせていただきます。

全部お答えいただかなくても結構なのですが、5つの質問をいただきました。

1つ目は「セキュリティ」の質問、

2つ目は「うちでも使っている、使ってよかったというクラウド・サービスはあるか」という質問、

3つ目は「経営者として見ていくべき指標・KPI」の質問です。

4つ目が、1つ目の質問とも絡むのですが、「利便性とセキュリティは紙一重なのではないか、連携すればするほど利便性は上がるけれども、少し危うさも孕むのではないか」という質問。

5番目は宮田さんにピンポイントでお伺いしたいのですが、SmartHRはどのようにして高いレベルのKPIを達成しているのですか、という質問ですね。

いかがでしょうか、大宮さんからお願いできますか?

5問全部でなくて結構ですので、これはというものを。

クラウドの方がセキュリティが堅牢な場合も

大宮 では、セキュリティについて。

山内 1番目と4番目はセキュリティ関連の話ですね。

リクルート社は結構しっかり取り組んでいらっしゃるかと思いますが。

大宮 そうですね、いくつもサービスやっていますので、何かしらのレピュテーションリスクがあると他のサービスが全滅するため、そこは社内基準を必ずクリアするというのが最低限のルールとして決まっています。

株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部
グローバルソリューション事業ユニット長 大宮 英紀 氏

たとえばいろいろなサービスをリリースする際に、外部のセキュリティ会社を使って攻撃してみるということも定期的にやっています。

対外的な攻撃を受けた時にエンジニアが取るべき作法や対策のための勉強会のようなものを含めて、組織としていろいろ取り組んでいます。

セキュリティというのは、決済でいうと本当に肝の部分です。

それでも今までと比べると、クラウドの方がセキュリティは堅牢だと考えています。

オンプレミスの頃というのは、たとえば店内にサーバーを持っている店舗というのがほとんどなんですよ。

お店の中にサーバーを置いていて、たとえば、ハンディ(ハンディ・ターミナル:ハンディ型のデータ収集端末)とかを使うところは、店内サーバーを全部構築しているんですね。

お店の中にすべての情報があるというのは、プロでも何でもない人たちが管理しているので相当なリスクですよね。

それと比べるとクラウド側に情報を置いた方がリスクは少ないです。

それはレジだけでなくて、クレジットカード業者も基本は同じような動きになっていて、たとえば百貨店などはバッチ処理をしていたりします。

百貨店が持っているサーバーに、クレジットカード情報を1回溜めて、時間単位のバッチ処理でクレジットカードの処理を渡しています。

そのように必ずどこかのサーバーに中継されるよりは、僕たちがスペシャリストとして様々な対策を取ってセキュリティを担保しているところに預けていただいた方が、全体的にはセキュリティレベルは高くなるのではないかなと思います。

実際リクルートは、セキュリティリスクについても検証を行っていて、攻撃元についてもウォッチしています。

中国方面からやはり毎年同じ時期、過去にいろいろなことがあったタイミングになると、明らかにサイバー攻撃が増加します。

そういうことも含め、会社をあげてセキュリティ対策に取り組んでいます。

ユーザーの情報はユーザーのために使おう

大宮 後は、4つ目の質問の個人情報の話ですが、僕たちが大事にしているのはまさに、個人情報の使い方です。

Amazonを利用すると、購買情報からおすすめの商品がリコメンドされてきますよね。

個人情報がどう使われるかが、ユーザーのことを考える時には一番大事だと思っています。

昔、Suicaの個人情報の販売が問題になったと思うのですが、やはり使われた情報がどう自分に返ってくるかというのが大事であって、利用者がベネフィットを受けられるようにしないといけません。

山内 そこの直接性といいますか、ベネフィットを体感できるかでだいぶ議論が変わりますよね。

大宮 そうです。

提供した情報が他に転売されるというのは、すごく気持ち悪いですよね。

でも、提供した情報が自分により良いものとして返ってくると、違ってきます。

それが本当に嫌だったら将来的にはオプトアウト(個人情報の第三者への提供を本人の求めに応じて停止すること)するという最終手段ができると思うのですが、オプトインしている場合は、基本的には自分にフィードバックが返ってくるような仕組みが必要です。

そのようなフィードバックループをいかにサービスとして作るか、情報を提供したら提供した分だけよりベネフィットを与えられるかということが、個人情報を収集するサービスを提供するうえで、ユーザーに対するサービスの作り方として大事だと考えています。

Salesforceでセールス・サービス情報を一元管理

大宮 あと、使って便利なクラウドは「Salesforce(セールスフォース)」ですね。

セールス情報とかサービス情報を一気通貫にしていかないと結局SaaSは成り立ちません。

Saasビジネスというのは、まさに先ほどのSmartHRさんのチャーンレート(解約率)を羨ましいなと思いながら聞いていましたが、それが経営指標ですよね。

それを考えると、リアルで知り合ったお客様も、オンラインで知り合ったお客様も、いろいろなサポート情報も、お問い合わせがあったお客様も、一元管理していかないといけません。

サービスのバージョンアップも含めて、トータルでのカスタマーサクセスをやらないといけないので、Salesforceを導入して全部一元管理しています。

導入して何がよかったかというと、弊社はアプリを作って営業担当者にiPadでお店の情報を見せるんですね。

たとえばGoogle Map上に、「Airレジ」を導入しているお店が表示されるようになっています。

そこで色分けをして、この店は0~20%の可能性でアクティブになるとか、20~40%、40~60%というように何段階かに分けてあるので、営業マンは地図を見ながら効率よく営業を行うことができます。

言ってしまう、と60~80%くらいの間に位置しているお店にサービスを案内して100%近くに持っていくというのが一番効率的なわけです。

直接営業をかける場合は、Salesforceで溜まったデータをiPad上で表示させて、現地へ行って、そのお店をクリックすると過去にどのような問い合わせがあったとか、そういう情報が全て見られるようになっています。

このように誰がやっても一元管理できているような形にすると、営業生産性が10%アップしたりします。

山内 それは大きいですね。

大宮 リクルートでいうと3桁億以上の営業コストがかかっているので、10%だと2桁億円の改善につながります。

そのようなデータを活用し、人の行動とオペレーションを変えることによって、いくらでもコスト改善とか生産性アップというのはできます。

Salesforceを導入して情報を一気通貫で管理し、「Sales Cloud(セールスクラウド)」や「Service Cloud(サービスクラウド)」を使いながら、自社で開発したシステムとつなぎ合わせて使っています。

山内 なるほど。

Salesforceを相当使いこなしてそうですね、リクルート社は。

大宮 いや、まだこれからですね。

今までは弊社も本当にExcelでして。

山内 それは意外ですね。

大宮 部署がたくさんありすぎて、それぞれにExcelで管理された情報があり、Excelの帰属をめぐるような島争いも結構あって、やっとそれが統合化し始めているという状況です。

山内 先ほどKPIの質問もありましたが、リクルートというとKPIのイメージがあります。

日本でKPIのようなものをやり始めたのは、むしろリクルートなのではないかというくらい強い印象があります。

大宮 そうですね、よく言われる「ミッションツリー」がそれに相当すると思います。

責任者が見る数字があり、そこから分散化してマネージャーが見る数字、担当者が見る数字、というようにツリーが分かれていき、担当者レベルではその数字を達成するための行動目標に落とし込まれます。

今日は10件アポを取って、何件行きます、その成約率が何%だから、マネージャーはこのくらいのスタッフを抱えます、というようなツリー構造になっています。

データについても、見る人によって必要なデータがやはり違うので、階層を分けながら管理しています。

山内 リクルート社は、きちんと適所適所に因数分解されているイメージがあります。

大宮 そうですね。

山内 それに加えて、徹底してそのKPIを追わせますよね。

大宮 そうですね、本当に。

山内 その徹底ぶりが半端ないなと思っています。

大宮 エグゼキューション(=実行)でここまできた会社なので。

ただ、SaaSビジネスをやっていて思うのは、やはりメディアビジネスだと期末まで皆机の中に申込書を隠して、最後の2日くらいに一気に顧客を獲得するという慣行があると思います。

メディア企業あるあるで、リクルートでは(その成長曲線の形から)「エビ反り」と言うのですが、そういうことはSaaSビジネスだと、それほど意味がありません。

むしろ、先ほど言ったSalesforceなどを入れて、いかに予測可能なものにしていくかの方が大事なので、それは結構苦労しながらやっていますね。

山内 なるほど、ありがとうございます。

有名企業での導入実績がセキュリティへの信頼となる

山内 倉橋さんはいかがですか?

倉橋 大宮さんのお話を伺い、かなり共感する部分が大きかったです。

おそらくセキュリティまわりというのは、「やりすぎる」ということがないと思います。

完璧な状態というのは、恐らくありませんよね。

ただ一方で、何かしらの事件性というか、何かしらの問題が起こる時というのは、ほとんどが人為的なものだったりすると思います。

僕たちがしていることでいうと、サービスインの前からISMSPマークを取得して、きちんと社内のオペレーション体制を構築することに注力しました。

山内 あとは基本的な社員教育などですね。

倉橋 はい、そういうこともやっています。

僕たちはお客様のデータをお預かりして、消費者体験を変えていくということをサービスとして提供していますが、個人情報も含めて取り扱うケースと、そうでないケースとを、お客様側のポリシーに分けて対応していたりします。

山内 リクルートさんだと知名度も高いですし、正直セキュリティ投資も十分に行っているはずなのですが、ベンチャーの場合、セキュリティに関しては酷いことを言われないですか?

「お前のところにそんな情報を出せるか」系の話ですね。

倉橋 ご質問いただくことはあります。

山内 最初の1、2年は特にそうですよね。

そのような中で、社歴10年、20年ではない皆さんの会社が、サービスインして数年でこれだけの情報を預かっているというのはすごいと思います。

信用を築くのに数年かかったりしますよね。

倉橋 我々のスタンスとしては、お客様側の環境よりも、恐らく我々のクラウドの環境の方が安全であろうということを自信を持って言えるレベルまで、まずセキュリティレベルを引き上げています。

もう1つは、事業を推進するにあたって、非常に著名な企業を味方につけることが重要です。

僕たちも最初はEC系のお客様が多かったのですが、今ですとメガバンクであるとか、証券会社などの金融機関にも使っていただいています。

その実績が、ある種1つのレピュテーション(評価)になって信頼を得ることに繋がります。

山内 それは本当に日本的ですが、大きい要素ですよね。

倉橋 結局それをどう積み重ねていくかが、セキュリティまわりではすごく重要なポイントだと思います。

山内 どちらかというと、基本的なことを積み上げているということですね。

倉橋 そうですね、特殊なことはそんなにしていないと思います。

山内 なるほど。

絶対に見ておくべきKPIのみにフォーカスせよ

倉橋 ちなみに、指標に関する質問が先ほどあったと思うのですが、僕たちのビジネスはまだ正直、KPIなどはがっつりとは見ていないんです。

株式会社プレイド 代表取締役社長 倉橋 健太 氏

チャーンレート(解約率)はもちろん見ていて、僕たちは大体 月に1%くらいです。

ただ新規獲得の売上目標などもそれほどしっかり追っていなくて、基本的にインバウンド、もしくはリファラルでお客様からご紹介いただいています。

山内 それはすごいですね。

倉橋 ですので、あまり営業のオペレーションチェーンのようなものを科学していくということはまだやっていません。

山内 やらずに済むのだったら、それに越したことはないですよね。

倉橋 今はその流れが続いているので、ほとんど、プロダクトのクオリティアップなどにフォーカスをしています。

納得のいくクオリティ、それを補完するポイントのオペレーション、まずはそこにフォーカスしています。

山内 そちらにリソースを割けますよね。

倉橋 事業を始めたタイミングから1つずっと意識しているのが、僕たちのサービスのビジネスモデルというのは、ユニークユーザー数、要はクライアント側の管理されるユーザー数に応じた従量制なんですよね。

なので、僕たちが月に管理させていただいている総人数と、山内さんが先ほどおっしゃったARPU(Average Revenue Per User)ですよね、1エンドユーザーあたりどれくらいの管理コストをいただけるのか、その2つの掛け算が僕たちの収益なので、その掛け算の推移だけはずっと追うようにしています。

山内 なるほど。

かなり基本的なところをしっかり押さえられているということですね。

特殊なKPIを追っている会社というのは、あまりクラウド系では聞きません。

その代わり、伸びている会社は基本を徹底しています。

その基本的なことを全員で共有し、経営層から社員まで徹底して取り組まれている印象があります。

倉橋 結局KPIとかデータというのは、デジタル系のサービスをやっているといくらでも無限に取れてしまうし、いくらでも細かく見ていけるため、やりすぎると、その時のフォーカスが絶対に崩れるということです。

そういう意味では僕たちも、絶対に見ておくべきKPIにだけフォーカスしています。

山内 なるほど、分かりました。

ありがとうございます。

能動的に対応する専任セキュリティチームを置く

山内 時間も迫ってきましたが、freeeさん、どうですか?

東後 そうですね、大体、既に倉橋さんと大宮さんにお話しいただいた通りなのですが、少し違う角度から付け加えたいと思います。

freee株式会社 取締役COO 東後 澄人 氏

まずセキュリティについてお話しすると、弊社の場合、当然セキュリティはすごく重要だという前提で、組織的な取り組みとして明確にCISO(Chief Information Security Officer)を置いています。

山内 責任者を置く。

東後 はい。そしてその下に、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)と言われる、いわゆるセキュリティ対応チームを設置しています。

山内 さすがですね。

東後 セキュリティ対応チームには、いろいろな部署の人間もアサインしています。

山内 部署連携もしっかりやっている。

東後 はい、かなりプライオリティの高い経営のトピックとして取り扱うようになっています。

最近いろいろな攻撃が弊社にも来るようになってきています。

大事なことは、いろいろなリスクが見えてきている時に、受動的に対応するだけではなく、むしろ能動的に先を読んで、「こういうことが起こりうる」「この日にはこんなことがあるだろう」と想定して対策を取ることだと考えています。

おそらくリクルートさんはものすごく意識されていると思うのですが、こちらからセキュリティのリスクを検知しながら、先を読んでやっていける体制を構築するにはやはり専任を置くことが不可欠です。

セキュリティというのはどうしても、日々のオペレーションから後回しになりがちです。

一方で専任でそれを担当するメンバーがいることによって、その先を見ることができるようになります。

山内 緊張感が走りますよね。

東後 はい。その体制から結構変えていけることは多いかなということで、弊社の組織的な取り組みを少し共有できればなと思いました。

山内 ありがとうございます。

東後 あとKPIに関してもほぼおっしゃっていただいた通りで、SaaSで通常見るようなLTV(Life Time Value)、チャーンレート(解約率)、MRR(Monthly Run Rate)、後はROI(Return on Investment)など、基本的な指標を見ています。

山内 基本的な指標ですね。

写真左から、倉橋氏、東後氏、宮田氏、山内氏

東後 でも大事なことは「スピード」かなという風に思っています。

freeeがこだわっているのは、たとえば毎月の経営会議を月初にやることです。

月初に数字が揃っているかどうか、意思決定に必要な、判断をするために必要な情報が揃っているかどうかということを重要視しています。

そのためにはクラウドのサービスを自社でも使い倒して、リアルタイムの情報がすぐに上がってくる状況、かつ自社のデータベースともつながっていてというところを作り込むのが大事だと思っています。

山内 分かりました、ありがとうございます。

「解約率0.3%」を達成するSmartHRの秘訣

山内 では最後に宮田さん、解約率0.3%の秘訣ですね。

宮田 その前に少しセキュリティとおすすめのクラウド・サービスを話しても良いですか?

山内 ごめんなさい、よろしくお願いします。

宮田 セキュリティは僕たちももかなり気にしています。

今まででなかった話だと、お客様側で情報が流出しないように非常に気を使っています。

たとえば、お客様側で2段階認証を設定できるようにします。

他には監査ログを用意して、おかしなログがあれば、ユーザー側が自社でチェックできる機能を用意して、人為的な流出が起こらないようにというところまで対策を立てています。

おすすめのクラウド・サービスは、「Intercom(インターコム)」という海外のチャットサービスと、後は「KARTE」さんです。

(倉橋氏、おじぎ)

山内 控室でも盛り上がっていましたね。

宮田 うちのサービス(SmartHR)の秘訣は、カスタマーサクセスチームが、お客様をいかに成功に導くかというところに非常に力を入れています。

たとえばIntercomだと、高額プランを契約したのに従業員の登録数が少ない場合、従業員データを取り込みにくいのではないかというような仮説を立てます。

それから、ダミーのExcelデータを使ってトライアルをしていただいたり、運用をサポートします。

KARTEだと、開発のリソースが追い付かないけれどケアしたいところに対して、カスタマーサクセスチームが画面上でサポートしたり、ページごとによくある質問を表示させたり、非常に細かいことができます。

これを話し出すと30分くらいしゃべってしまうので、またの機会にしますが(笑)、すごく良いです。

解約率に関しては、SmartHRが頑張っているところは、やはり「プロダクトにこだわること」です。

1年目はあえて、退会させるということを結構やっていました。

SaaSだと年間前払い1本のプランでやっているところが多いですよね。

年間前払いにすると、チャーン(解約)のマネジメントがきちんとできたり、後は前受け金で料金が一度に支払われるので、キャッシュフロー的にも良いのですが、あえて月額制を残しました。

なぜかと言うと、毎月チャーンしていくからです。

そしてチャーンしたユーザーに、その理由をヒアリングさせてもらいました。

そうすると退会する理由を1つずつ潰していくことができます。

あえて退会方法を分かり易くして、退会後にヒアリングさせてもらうということに力を注ぎました。

その結果、チャーンレートはどんどん下がってきています。

あとは会社一丸となってプロダクトに向き合うということを重視していて、他の会社に言うとびっくりされるのですが、営業チームが商談メモを非常に細かく1商談1,000文字くらい上げて共有してくれています。

株式会社SmartHR 代表取締役CEO 宮田 昇始 氏

これを開発チームも見ています。

具体的に言うと、「Qiita:Team(キータチーム)」という情報共有ツールがあるのですが、そこに日報や議事録を全部書きます。

商談メモがすべてあがっていて、開発チームは日常的にそれに目を通します。

お客様がどのような課題感を持ってSmartHRに興味を持ってくれたのか、どういう理由があるから導入に至らなかったのか。

そういう情報を目にするので、最近こういう要望が増えた、ということが営業側だけでなくてすべてのチームにダイレクトに入ってきます。

営業やカスタマーサクセスだけでなく、チャットサポートに流れてくるユーザーからのメッセージも全部「Slack」に流れていて、どういうところが使いにくいと思っているのか、迷っているのか、クレームが上がっているのか、ということが分かるようになっています。

そのようなお客様の要望を、開発チームが肌で感じて、すぐにプロダクトに盛り込んでいく。会社全体が高速でお客様の課題に向き合うということをやっています。

すごく普通のことなのですが、これが秘訣です。

山内 ありがとうございます。

本当は最後に登壇者の皆さんからそれぞれコメントをいただく予定だったのですが、時間が過ぎてしまいました。

今日は90分以上、たっぷり話しましたので、これで締めさせていただきたいと思います。

本日はご参加どうもありがとうございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/戸田 秀成/本田 隼輝/尾形 佳靖/鈴木ファストアーベント 理恵

【編集部コメント】

最終回は、本セッションの議論がぎゅっと凝縮された密度の濃いものになりましました!登壇者の皆様、改めまして、貴重なセッションをありがとうございました!(尾形)

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