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「新しいアイデアの実現と法務・知財戦略」7回シリーズ(その5)は、“国をまたいだ特許”に関するレクチャーです。鮫島弁護士によると「まず生産国で、次にマーケット国で」というのが一般的な出願セオリーとのこと。ベンチャー企業は、各国特許の出願コストをどう考えるべきなのでしょうか? ぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18-21日 福岡市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2017年9月5-7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 3D
新しいアイデアの実現と法務・知財戦略
(スピーカー)
鮫島 正洋
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
代表パートナー弁護士・弁理士
田川 欣哉
Takram
代表取締役
丸 幸弘
株式会社 リバネス
代表取締役CEO
水島 淳
西村あさひ法律事務所
パートナー
(モデレーター)
尾原 和啓
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丸 時間軸の話もそうですが、後もう1つ、「国をまたいだ特許」について疑問に思っている人が多いのですが、これはどうすればいいのでしょうか?
どこの国にどう出願するかなど、ベンチャー企業は全然分からないですよね。
尾原 PCT国際出願がありますね。
「国をまたいだ特許」の古典的セオリー
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表パートナー弁護士・弁理士 鮫島 正洋氏
鮫島 一般的に言われているセオリーは、「まず生産国に出しなさい、次にマーケット国に出しなさい」と。
これが古典的なセオリーなんですよね。
それから最近言われているのが、例えばタイで現地生産するという事業計画があったとしたら、やはりタイで特許を取って、子会社からロイヤリティを貰わないとなかなか税務的にはお金を還流できませんから、子会社の現地生産国では特許を出しなさいというようなことが言われ始めています。
後は、これは私が個人的に言っていることですが、商流というのが製品によって当然違うわけですよね。
例えばハンダのようなものは、日本でインゴットが作られて、台湾でペーストが作られて、中国で組み立てられて、製品がアメリカに行きますという流れがありますが、極論すると、本当に極論ですが、アメリカでだけ特許を取っておけばいい。
国を転々とまたぐような製品は、国の数が少なくてもいい。
だけど逆に今度は、例えばプレス機のように、日本で作られてタイに据え付けられて、日本で作られてマレーシアで据え付けられますというのは、全ての据え付け国に特許を取らなくていけないというように、国の数は商流によっても変わってきます。
そういったことと、後は予算やプロジェクトの規模などを全部勘案して、どこに出すかを決めていきますね。
丸 製品を売る前に特許を出願するのですか?
鮫島 いやいや、売ってからでもいいんだけど、PCT国際出願の国内移行期限は、原則優先日から少なくとも30ヵ月しかないから(※)。
丸 本当ですか!
▶編集注:PCT専用の特許出願フォームにて、日本国特許庁のPCT専用窓口に書類を提出することによって行い、PCT出願をした瞬間に、世界中の国に対して出願したのと同一の効果が生じる。ただし、30ヵ月以内に特許を取得したいと考える国の特許庁に、その国の言語・方式による特許出願をする必要があり、これを行わなかった国については出願しなかったものとみなされる。(鮫島先生の記事「パリルートとPCTルート」より引用)
各国特許出願のコストを「高い」と思うか?
水島 鮫島先生のおっしゃる通りだと思うのですが、目線を少し変えるといいのではないかなと思うことがしばしばあります。
写真左から、Takram 田川氏、リバネス 丸氏、西村あさひ法律事務所 水島氏、尾原氏
というのは、各国特許出願というのはお金がかかるのは確かですが、言っても知れていますよ。
もちろん物によりますが、多くても1国、数百万円とかです。
ただね、これって何のためにやってるんでしたっけ?という話です。
例えばウォーターサーバーだったら数千万円は高い、でも将来の数百億、数十億円のビジネス、収益を守るための設備投資としてだったら安いよね、という見方があります。
特許はどうしてもキャッシュインが後に来るので、コストの方ばかりが見えて、コストセンター的に物事を決めてしまいがちです。
しかしそうすると、いざ儲かる時に十分な特許がないために競合がバタバタと出てきたというような事態を招き、結構逸失利益があるはずです。
ですから、手元キャッシュとの相談はもちろんあるのですが、この比較をしないと、恐らく正しい判断ができません。
これは他の設備投資も全部同じだと思うのですが、そういう見方をした方がいいのではないかなと思いますね。
丸 大企業はどうやっているんですか?
ベンチャーと大企業で、作戦は違うものですか?
鮫島 作戦は同じですが、資金力が明らかに違いますから、結果も全く異なってきますよね。
ベンチャーはとにかく苦しい。
特に30ヵ月目に、最終的にどの国で取得を目指すのかという国内移行の手続きを行わなければなりませんが、その期限が訪れます。
例えば今だったら、米欧中印などだと思いますが、そこでボーンとお金がかかります。
それは日本での出願日から30ヵ月後、つまり2年半です。
ベンチャーの経営者によっては、いやもう2年半の間に自分たちは資金調達できているからと言う人もいるのですが。
尾原 そこの間ですよね。
今は昔と違ってPCT出願があるから、いったん最初に出願しておけば2年半後にどの国に転換するかというのは留保できるので。
PCTをとにかく出しておくという戦略もアリ!?
尾原 逆に言えば2年半あれば、今のベンチャーの資金調達の速度を考えると、僕はもう大企業並みの戦い方ができるのではないかなと思いますね。
丸 PCTをとにかく出して、金を集めて考えろと。
田川 そうかもね、簡単に言うとね。
尾原 逆に言うと、今PCTでやっている特許の中身が良ければ……
丸 良ければね。
尾原 海外、特に中国の企業は特許をすごく見てくれるので、提携や資金調達の話が舞い込んでくるかもしれません。
丸 ということはもうできるだけ早くいい弁護士、弁理士に出会って、できるだけ早くPCTまで出して、その後資金調達にガンガンいってと。
田川 だから国内出願だとしても、PCTで軽く出しておくということでもいいんですか?
鮫島 うーん、まあそういうのは……。
丸 請求書がたくさん来ますよ!(笑)
鮫島 だいぶ話が細かくなってきているので、会場の方々の関心に沿っているか危惧しつつも、普通はまず国内出願を出して、1年後に優先権主張というのをやって、PCTを出して、それから国内出願の日から30ヵ月後に今度は各国におろしていくというのが、スタンダードプロセスです。
その趣旨はやはり、日本の国内出願を出した時からPCTまでにやはり改良があるだろうということです。
改良まで入れて1年後にPCTを出したい、というのが通常のやり方です。
だから改良がない場合、最初からPCTで出しますよ。
田川 たぶん知財を全く触っていない人は、PCTというのは初めての話題なのではないかと思います。
しかし非常に便利な仕組みなので、今日はそれを覚えてもらえるだけでも結構有益なのではないかと。
尾原 そうですよね、やはり昔に比べて小さい資本力だとしても幅のある特許を取るやり方ができているということを、たぶん今日は覚えておいていただければいいと思います。
残り30分くらいになってきているので、少しフォーカスを変えたいと思います。
(続)
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編集チーム:小林 雅/横井 一隆/尾形 佳靖/浅郷 浩子/戸田 秀成/鈴木ファストアーベント 理恵
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