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6. グローバル人材の採用、給与、市場への参入障壁…最前線のプレイヤーたちが実例を共有【終】

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「グローバルスケールのビジネスをいかに構築するか?」、全6回シリーズの(最終回)は、グローバル人材の採用やM&A、現地の慣習について、経験を踏まえた実例や知見が共有されます。今後海外展開を想定している企業にとって、非常に価値の高い議論が最後まで続きます。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 ダイヤモンド・スポンサーのノバセル にサポート頂きました。


【登壇者情報】
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 11B
グローバルスケールのビジネスをいかに構築するか?
Supported by ノバセル

(スピーカー)

大塚 剛司
Playco
Co-Founder, SVP, Executive Producer

児玉 昇司
ラクサス・テクノロジーズ株式会社
代表取締役社長

十河 宏輔
AnyMind Group株式会社
代表取締役CEO

玉川 憲
株式会社ソラコム
代表取締役社長

(モデレーター)

西條 晋一
XTech Ventures株式会社
代表パートナー

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最初の記事
1.グローバルに挑戦する登壇者たちが、現在進行系の取り組みを議論!

1つ前の記事
5.コロナ禍でアメリカ進出を決めたラクサスの戦略とは

国ごとに異なる転職や昇給への考え方

西條 では次はこのテーマ「グローバル人材の採用、チーム構成、マネジメント」について話していきましょう。玉川さん、お願いします。

玉川 僕らは2015年の終わりくらいから、アメリカもヨーロッパも粛々とやってきています。

プロダクトマーケットフィットが取れたらチームを拡大して、さらにそのチームである程度のMRRが作れたら“ブリッツスケール”のごとくガンと人を採用して、とやってきました。

ブリッツスケーリング 苦難を乗り越え、圧倒的な成果を出す武器を共有しよう(日経BP)

4年かかって、アメリカもヨーロッパもようやくブリッツスケーリングさせる一歩手前まで来た感じです。

僕ら経営陣の日本での経営力に比べて、グローバルにおける経営力がつたなかったという反省がありますが、学んだことは非常にありました。

まず、各市場において働いている人の仕事に対する考え方が全く違います。

日本とアメリカは顕著に違っていて、一番違うのは、やはりアメリカ人は毎年かもしくは遅くとも2年か3年をかけてポジションを上げないと、自分のマーケットバリューが無くなると思っている点です。

だいたい2年経つちょっと前くらいから他の仕事を探すのが常識で、そこがやはり日本人と全然違っています。

また給料においてもアメリカはインフレしているので、毎年2〜3%上がらないということは給料が落ちていることだと考えます。

そういうことをしっかり理解して各国ごとにHRや労務をやらなきゃいけないと気づきました。

西海岸やアジアにおける物価・給与の高騰

西條 今って、そこそこのエンジニアだと年収10万ドルくらいは普通みたいな感じですか?

玉川 カリフォルニアだともっとじゃないですか。

大塚 カリフォルニアだともっとですね。日本と比べると倍くらいかなという感じです。

西條 じゃあ、1千数百万円くらいは出さないと採用できない?

写真左から、Playco 大塚 剛司さん、ラクサス児玉 昇司さん

大塚 普通にそうですね。

僕らの場合は、カリフォルニアのエンジニアだろうがエクアドルのエンジニアだろうが技術の評価は割と平等にやっています。

その上で少し給料を変えないといけないのは、カリフォルニアだと普通に一人暮らしするにしても月30万円ではきついみたいなところに対して、違う地域だと3分の1で済むこともありますので、そこの部分の調整はします。

一方でスキルのところでは基本的に平等にしようという考え方です。

玉川 リビングコスト問題は結構ややこしいですよね。

アメリカでも西海岸のカリフォルニアやシアトルはすごく高くなっている一方で、テキサスの方に行くと安かったりするので、なかなか難しいです。

児玉 西海岸が高いからニューヨークに引っ越すみたいな、よく分からないことが起きてますよね。

皆さんもご存じの通り、毎年サンフランシスコの時給が上がっています。

サンフランシスコのハンバーガーショップの時給が去年の今頃行ったときにすでに18ドルスタートでしたから。

大塚 僕が2010年にサンフランシスコに移ったときに2,000ドルの家賃だったところは、今住もうと思うとだいたい3,700〜3,800ドル近くになっています。

今回コロナでちょっと市内は落ちているんですけど。

西條 僕や大塚さんが行っていたときって為替も円高で1ドル70数円だったから、当時はむしろ安いって感じでしたよね。

日本の7掛けとか8掛けくらいで物が買えていました。

玉川 最近、シリコンバレーから出ていくスタートアップも多いですよね。

大塚 多いですね。個人レベルでも結構多いです。

特にエンジニアはどこにいても変わらないので、どんどんシリコンバレーから出ていっています。

西條 アジアの方はどうですか? GDPもすごく成長しているじゃないですか。

十河 そうですね、やはり毎年給料は上げないといけないというのは、どの国もほぼマストです。

西條 上昇率で言うと、どれぐらいですか?

十河 5%〜10%程度です。しかもデジタル人材は通常の産業よりも高いのでもっと跳ね上がります。

ヘッドハンティングもどんどん来るので、場合によっては毎年大幅に給料が上がっている人たちもいますし。

もう国によって全然違いますね。

カントリーマネージャー採用を目的としたM&A成功例

AnyMind Group株式会社 代表取締役CEO 十河 宏輔さん

十河 また先ほどのM&Aの話ですが、そのM&Aをどう使っていくのかはグローバルで攻めていくときマストだと思っています。

実はM&Aが結構うまくいっている例があって、それはカントリーマネージャーを採用するときに、社長を採用する感覚でアクハイヤー(人材採用を目的とした企業買収)することです。

タイのカントリーマネージャーの話なのですが、タイは200名以上いる一番大きく、売上でも東南アジアで一番大きな拠点です。

そこのカントリーマネージャーは、M&A先の企業の創業者でした。

児玉 そうだったんですね、M&Aのときに、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)は付けるんですか?

十河 付けないです。

児玉 怖くないですか?

十河 自分たちは各国で事業をやっていて土地勘はあるし、ネットワークも自分たちで作れますので。

児玉 契約書はタイ語ですが?

十河 いえ、基本全部英語でやります。

英語が喋れる人じゃないとコミュニケーションが取れないので、もちろんそこは大前提です。

この方法はまだアジアだとテックのスタートアップがガーッて来ていない分、結構ありなんじゃないかなと個人的には思っています。

児玉 ちょっとこのセッション、やばくないですか? すごいですね、本当に。

西條 皆さん、すごいと思います。日本のIT業界を代表して、海外でちゃんとやっている。

児玉 俺、ここにいちゃ駄目な気がしてきた(笑)。

西條 モンスターラボとかも結構買っているし、アジアは確かにM&Aをやっていますよね。

十河 そうですね。

テックの一部銘柄だけめちゃくちゃ上がっているけど、それ以外はバリュエーションが割と普通だったりします。

かつ、今の市場観でデジタル領域である程度数字を作れている経営者って、経営能力が結構高いと思うんです。

経験もあるし、かつ向こうだとホワイトカラーの人は英語も基本的に喋れるので、コミュニケーションも困らないし、結構ありなんじゃないか。

タイとかはエグジットもそんなにないじゃないですか。

インドネシアとかは最近多いですけど、僕らのグループに入ってもらって、一緒にIPOを目指そうよみたいなコミュニケーションで口説いていくというのは、割と使えるんじゃないかなと思っています。

規制産業におけるグローバル展開の難しさ

写真左から、ソラコム 玉川 憲さん、XTech Ventures西條 晋一さん

西條 もう1つ、ぜひ議論したいテーマが「日本とグローバル市場の違い」です。

玉川さんは、ビジネスをやっていくうえでいかがですか?

玉川 これはとても難しくて、グローバルと言っても100か国以上いろんな国があって、それぞれ違います。

みんなが言っているグローバルって、たぶんちょっとずつ違うと思うんですよね。

僕らはIoT通信のプラットフォームビジネスなので、そうすると、通信ライセンスってあるじゃないですか。

いわゆる規制産業で、結構お金もかかるしそれぞれの国の法律もあるので、グローバルと言ってもいきなり全部の国はできないんですよね。

西條 技適みたいなのを取ってからじゃないと?

IoTデバイスにも必須の「技適」とは何か、どんなデバイスを選ぶべきか(MONOist)

玉川 そうなんですよ。

ガバメント・リレーションズみたいなものもあり参入コストが結構高いので、そこをしっかり理解しながら”大人プレイ”をしないといけません。

なおかつ、ちょっとずつマーケットが違います。

例えば、日本は通信というと楽天さんも入って4キャリアで、どこも非常にクオリティが高い通信じゃないですか。

日本中、どこに行っても繋がる。

アメリカは国土が広いので、AT&Tはここ繋がらない、Verizonはここ繋がらないとかがあるので、それも違うんですよね。

だから、そこを理解した上でちょっとストラテジーを変えないといけません。

なので、グローバルといっても、やはりそのなかにそれぞれの国のカルチャーとマーケットがあるので、勝ち筋をどう作るのかみたいなのは、しっかりと考えないといけません。

ソラコムが描くグローバル市場での“勝ち筋”とは

玉川 僕らは通信プラットフォームで、(親会社の)KDDIとの強い関係性もあり、日本である程度の顧客基盤が取れています。

そして日本は製造業のグローバル企業がたくさんあるので、今の狙いは、そこと一緒にマーケットを取りに行くというものです。

その製品の中に埋め込んで、それぞれのマーケットで存在感を出していくと、バイイング・パワーが付いて、さらに良い物をそのマーケットに出せるようになると。

このように、どうやったら勝ち上がっていけるかなということは毎日考えていますね。

児玉 そのときの海外との交渉は、親会社のKDDIは行ってくれるんですか?

玉川 手伝ってくれるときはあります。

とはいえ、KDDIも別に全ての国でコンシューマー向けの通信をやっているわけではありません。

ミャンマーといくつかしかやっていなくて、後はデータセンターとか回線ビジネスをやっているので、必ずしも僕らが得たい援軍をバッと送ってくれるわけではないです。

だから、そこは持ち札を見ながら、こうやって攻めるのかなみたいな感じですね。

『キングダム』の世界で言うと、今、圧倒的に将軍が足りないんですよ。

日本で戦いながらアメリカもヨーロッパもやってという感じで戦線を伸ばし過ぎているので、やはり海外でもコア人材を増やしていかないといけないのが課題ですかね。

西條 それでもAWSとかやっていたから、前職のときのネットワークが有利に働いていたりはするんですか?

玉川 もちろんそうですね。

例えばアメリカ市場に入るときに、当時一緒にしていた人が入ってくれたりっていうのはあります。

本国と現地、双方のマーケット感覚を持つ人材を

玉川 でもたぶんこの中で言うと、うちが一番ドメスティックなのかなと思います。

もともと日本で創業したので、主に日本に重心があって、売上も日本が多いので。

そうなると何が起こるかというと、アメリカで小さなチームを作ってビジネスを始めようとすると、海外拠点のメンバーからすると日本で何が起こっているか分からないんですよ。

こちらから情報をボンボン出していかないと、彼らは孤立無援みたいになっちゃうんですね。

例えば僕は、Amazonというシアトルにヘッドクオーターがある会社の日本市場の立ち上げをやらせてもらっていましたが、僕は一応MBAに行ってアメリカの経営を学んで、英語も分かると。

だから、(アメリカで)何が起こっているか想像できるし、分かるんですよね。

その上で、日本人だから日本のマーケットも分かるし日本語も喋れるし、という戦いじゃないですか。

でもその逆が、日本企業にはそれが出来ない。

というのも、アメリカ人で日本のMBAを取って、日本語を勉強したような人ってほとんどいないですよね。

アメリカは20年くらいそこに投資をしてきたので、そうした点が国力の差としてあるなと感じます。

いまは、創業メンバーがアメリカやイギリスの各拠点に赴任してサポートしたりなどして、本社と各拠点の間のコミュニケーションがうまくいくように工夫しています。

海外のエンジニア人材の給与をどう設定するか?

西條 あと3分くらいになったので、会場の方からもしご質問あれば。では、お願いします。

質問者 お話ありがとうございました。

ウェブサービスをグローバル展開する際に、グローバル規模のトラフィックをさばく上で海外のエンジニアを採用したいという企業が多いかと思います。

ただ一方で、日本から海外のエンジニアを採用するとなると、先ほどおっしゃっていたように給料面で大きな乖離が生まれて、既存メンバーとのハレーションが生じてしまいます。

そういった既存メンバーとの兼ね合いをどういう風に進めていらっしゃるのかをお伺いしたいです。

十河 うち(AnyMind Group)は海外エンジニアを多く採用しているのでお答えできるかと思います。

例えばロシアとかウクライナのエンジニアは本当にレベルが高いのですが、先ほど言ったようにリビングコストの問題もあってそんなに給与レンジが高くない人もいます。

もちろん、何を作るかによっても変わってくるし、欧米と比べると違いますが、世界全体を見れば日本のエンジニアの給料は他国とそんなに差は出ないかなと思っています。

スキルセットに対しては国籍関係なく同じような給与体系にしないといけない一方、どこに住むかによってやはりリビングコストの掛け算で給与レンジを設定していかないといけないです。

東京だったらバンガロールと比べるとリビングコストが高いので、インド人が東京に引っ越す場合は、そのリビングコスト分を鑑みて給与調整します、という感じですかね。

大塚 あとは、英語がどれくらい必要かにもよるかと思います。

英語ができるエンジニアは世界中の企業が探しているので、その値段はグローバルなマーケットで見るとやはりちょっと上がります。

でも日本語しかできないとなると、そもそも買い手がすごく減るのでその分値段も下がります。

どれくらい英語がきちんと喋れて業務ができるかというところで、それをどれだけ給与としてプラスで払えるのかは、事業の状況によっても違うのかなと思います。

西條 はい、ありがとうございました。

では、お時間になりましたので、このセッションは終わりにさせていただきます。

皆さん、ありがとうございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/浅郷 浩子/戸田 秀成/SNOWLIGHT

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